経済審議会総括部会(第4回)議事録

時:平成12年11月28日
所:経済企画庁特別会議室(436号室)
経済企画庁


経済審議会総括部会(第4回)議事次第

平成12年11月28日(火)14:00~15:35
経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 総括部会報告書(案)について
  3. 閉会

(説明資料)

  1. 経済審議会総括部会報告書(案) 「経済審議会活動の総括的評価と新しい体制での経済政策運営への期待」
    1. ・別紙1:「1950年代半ば(昭和30年代)以降の日本経済の時代区分とそれぞれの時期における経済審議会活動の評価」
    2. ・別紙2:「経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させる上での対応方向-1980年代以降の経済審議会活動を踏まえて-」
  2. 経済社会指標集

(関連資料)

1.経済指標実績と主な出来事(付.時代区分)

[出席者(敬称略)]

(委員)

香西泰部会長、荒木襄、角道謙一、嶌信彦、長岡實、畠山襄、原早苗、グレン・フクシマ、星野進保、鷲尾悦也

(経済企画庁)

中名生事務次官、牛嶋総合計画局長、永谷総合計画局審議官、塚田総合計画局審議官、仁坂企画課長、藤塚計画課長、前川計画企画官 他


経済審議会総括部会委員名簿

  部会長   香西 泰   (社)日本経済研究センター会長
  部会長代理 清家  篤  慶應義塾大学商学部教授
        荒木  襄   日本損害保険協会専務理事
        伊藤 進一郎   住友電気工業(株)代表取締役副社長
        岩田 一 政   東京大学大学院総合文化研究科教授
        浦田 秀次郎   早稲田大学社会科学部教授
        角道 謙一   農林中央金庫特別顧問
        木村 陽子   奈良女子大学生活環境学部教授
        嶌  信彦   ジャーナリスト
        高橋  進   (財)公庫住宅融資保証協会理事長
        長岡  實   (財)資本市場研究会理事長
        畠山  襄   日本貿易振興会理事長
        原  早苗   消費科学連合会事務局次長
        グレン・フクシマ  日本ケイデンス・デザイン・システムズ社社長
        福武 總一郎   (株)ベネッセコーポレーション代表取締役社長
        星野 進保   総合研究開発機構特別研究員
        水口 弘一   (株)野村総合研究所顧問
        森尾  稔   ソニー(株)取締役副会長
        盛岡  通   大阪大学大学院工学研究科教授
        森地  茂   東京大学大学院工学系研究科教授
        八代 尚宏   上智大学教授、日本経済研究センター理事長
        吉川  洋   東京大学大学院経済学研究科教授
        鷲尾 悦也   日本労働組合総連合会会長


〔 部会長 〕 ただいまから、第4回の総括部会を開催いたします。

 本日は、委員の皆様方にはご多忙中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 前回申し上げましたとおり、今回が総括部会としては最後の回となります。本日は、従って「報告書(案)」の取りまとめに向けてご審議をお願いしたいと存じます。なお、本報告書につきましては、来月の12月18日月曜日に経済審議会の総会が開かれますので、取りまとめができましたら私から報告させていただくという予定になっております。

 それでは、事務局から「報告書(案)」の説明をお願いします。前回の部会でもスケルトンを一応ご審議いただいておりますので、大きな流れと前回からの変更点を中心にご説明いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、30分程度お時間をいただき、ご説明させていただきます。

 今日は、5つの資料をお配りしております。報告書、別紙1、別紙2、経済社会指標集、関連資料でございますけれども、この5つの資料すべてを総会にも資料としてはお出しする予定でございますが、今、部会長からもお話がありましたとおり、前回のスケルトンからかなり書き加えさせていただきました「報告書(案)」と、その元になっています「別紙2」につきましてご説明させていただきます。

 それでは、「報告書(案)」本文でございます。まず、目次が2ページ、次に「はじめに」がございます。前回のスケルトンでは「はじめに」は略しておりましたけれども今回、このように1ページほど書かさせていただきました。

 簡単に内容をご説明いたしますと、まず、経済審議会の設置ですけれども、サンフランシスコ対日講和条約が発効した1952年(昭和27年)に、経済安定本部が廃止されて経済審議庁ができたと同時に、経済審議会が創設されました。

 第2パラグラフですが、経済審議会の特徴としまして、産・官・学等の各界の有識者により構成され、単に行政組織内で役人のみの企画立案、調整による政策形成を行うのではなく、国民各界各層の英知を幅広く結集し、特定の立場にとらわれない我が国経済全体の観点からの調査審議を通じた政策形成に寄与していただき、我が国の中長期の経済運営の中核的存在として活動を今日まで行ってきていただきました。

 具体的なものとしては、高度経済成長の象徴ともいえる「国民所得倍増計画」等、その時代時代を代表する総計で14本の経済計画をはじめ、長期展望や政策提言を数多く世に送っていただきました。

 中央省庁改革に伴い来年の1月6日をもって廃止されますが、ご案内のとおり、今後の我が国の経済政策は内閣総理大臣のリーダーシップの一層の発揮を助ける経済財政諮問会議及びその事務局としての内閣府という新しい組織を中心として行われることになります。

 それでは経済審議会の機能はどうなるかということですが、その新しい組織の機能の一部として、経済審議会及び事務局としての経済企画庁の機能等は発展的に受け継がれることになりますので、経済審議会の最後の活動にあたりまして、総括部会を設置して調査審議をお進めいただき、経済計画の策定等を通じて経済審議会が担ってきた機能と役割をご評価いただくとともに、新しい中央省庁体制における経済政策運営への期待を取りまとめるというように、「はじめに」を書かさせていただきました。

 第1章「これまでの経済審議会活動の総括的評価」でございます。その最初の文章は、いわば第1章の問題意識、第1章の節だての説明をしたものでございます。

 その下の(1)「経済審議会の主要な活動」につきましては、スケルトン段階とほぼ変更はございません。

 3ページ以下は、「経済計画」、「長期展望」、「政策提言」について述べております。4ページの2)「経済審議会の調査審議体制」は、前回のスケルトンでは「略」となっていましたものを書き下しております。ただ、内容は第1回の部会資料でご説明しました、委員が各界の幅広い方から構成されていたとか、調査審議体制としていろいろな下部機関が設置され多様な専門家、有識者の方に参加していただいたという事実関係を述べております。例えば、下の脚注の3で延べ人数等を述べておりますし、なお書きのところでは、延べ参加人数がいわゆる前半期に比べて後半期は少し減少したり、下部機関数も前半期の方が少し後半期よりも多かったということを数字を挙げて事実をご紹介しております。

 2.「過去半世紀の活動を通じて経済審議会が果たしてきた機能、役割の評価」でございます。ここはスケルトン段階では3つに分かれていまして、その3つの構成は報告書でもそのまま取っていますけれども、(1)が総括的評価、(2)が52年の創設から石油ショック後の調整期までの前半期を扱い、(3)が後半期を扱っていますけれども、(1)の全体的な総括的評価と(2)の前半期の評価はスケルトンとほとんど変わっておりません。

 そうしますと、具体的に変更があるのは、(3)「安定成長期から今日に至るまでの経済審議会活動の評価」の箇所でございます。部会のご審議を通じて、安定成長期以降が反省点や参考にする点が多いということで審議の中心になった時期ですけれども、11ページの2)「経済審議会の機能、役割がそれまでほどには発揮されなかった場合も見られた背景」として、「キャッチアップ終了後における日本経済社会の方向付けの困難性」、「経済活動の専門化、複雑化及び変化の速さと政府や企業の情報開示の不十分性」、それから12ページの「総論賛成でも各論反対という傾向の強まり」、ここまではスケルトンとほぼ同じでございます。

 大きく修文しましたのはその次でございます。この「報告書」案では、「関係者全員の合意による取りまとめ方式の限界」としていますが、前回のスケルトンではここが「利害対立克服のための総理大臣による政治的リーダーシップの役割の強まり」としておりました。そこでは2つ大きなご意見がございまして、まずコンセンサス方式という言葉の使い方につきまして、ある箇所ではコンセンサス方式をいわば非難の対象とし、ある箇所ではいわば国民のコンセンサスを形成したというように良く評価しているということで、混乱があるので、それを整理した方がいいというご意見がございました。もう一点は、総理大臣による政治的リーダーシップの役割の強まりということを書いていたのですが、それは経済審議会の機能がそれまでほどには発揮されなかった背景ではなく、むしろその結果であるということでしたので、その2つを踏まえて、まず題名として「コンセンサス方式の限界」というのは使わないことにし、我々が言いたかった方式の内容を書き下す形で、表題になっていますとおり「関係者全員の合意による取りまとめ方式の限界」という用語に変えさせていただきました。

 なお、ほかの箇所でコンセンサスという言葉が出てくる場所がありますけれども、それは国民の間でコンセンサスを形成するといったような、いわば価値中立的な用法として使っております。

 今申し上げましたような「関係者全員の合意による取りまとめ方式」では、対応が困難な場合も出てくるようになった。特に、明確なリーダーシップが不在の場合はそういう場合が多かったということでございます。それから、このパラグラフの最後に書いていますけれども、そういう取りまとめ方式の限界は、「経済審議会に限らず我が国において広くこの時期に見られるようになったと考えられる」としております。

 そういう問題点に対する対応方向として、80年代以降、総理大臣によるリーダーシップが必要とされる、例えば臨調方式がとられたわけですけれども、それを紹介するとともに、総理大臣のみならず関係大臣によるリーダーシップも必要であったという指摘をしております。

 3.「経済審議会が果たしてきた機能、役割の今後における重要性」でございます。2)にありますとおり、21世紀初頭においては、ここに示しましたような4つの傾向が一層強まるとしています。この4つの傾向は、スケルトン段階と変わっていませんが、これからの論旨の中に大きく関係しますので簡単にご指摘しておきます。

 第1の傾向として、IT革命とグローバル化の一層の進行に伴い、経済社会の状況変化が大きくかつ速くなり、これまで以上に的確な状況把握が必要である。さらにそれに基づく迅速、的確な政策の形成が必要であり、その政策の確実な実行が求められる。

 第2の傾向として、そういういろいろな新しい事態の中で、経済社会にどのような影響を与えていくのか、将来の方向がどのようになるのかについて、国民の関心が強まる。

 第3の傾向として、情報公開の世界的な流れの中で、国民から政府に対する説明責任と透明性への要請が強まる。

 第4の傾向として、財政赤字の拡大、少子高齢化の一層の進行の中で、効率的な資源配分に向けてのいわゆる縦割りを超えた総合的な政策形成が求められる。

 このように分析をしたわけでございます。

 「こうした傾向を踏まえれば、経済審議会がこれまで果たしてきた機能、役割は、21世紀初頭においても引き続き有用なものも多い」としております。ただし、経済審議会でもいろいろ克服が困難であった課題も多く見られるので、それについては対応が必要であるとしております。

 14ページの(3)ですが、最初のパラグラフを前回よりもかなり変更しております。前回もここは経済財政諮問会議の性格を説明していた場所ですけれども、経済財政諮問会議と経済審議会の違いを、より明確に説明するように変えております。例えば、1行目の終わりの方から、「経済財政諮問会議は、各省より一段高い立場に立って、行政各部の施策の統一を図るために必要な企画立案・総合調整を内閣全体の観点から行うことに資するための新しい合議制機関」であるとし、従前のような審議会とは法的位置も違うということでを説明しています。メンバー構成も大きく異なります。さらに審議案件ですけれども、これも従前(現在)の経済審議会のようにいわゆる経済政策のみならず、予算編成の基本方針ですとか、財政運営の基本をも対象とし、さらには全国総合開発計画のような経済政策以外の案件につきましても、経済政策との政策の一貫性及び整合性の観点から審議対象とするということで、経済審議会とはその性格を異にするということを述べております。

 それから、下の脚注の5で経済財政諮問会議の構成員について詳しくご説明していますけれども、経済財政諮問会議は、本会議での審議を従前以上に重視しますが、必要な場合にはその下に専門委員及び専門調査会を置くことができるということが政令で規定されていまして、それを解説しております。これは前回の部会で、10名という非常に絞った経済財政諮問会議の議員数では多様性を代弁した議論を行うことは不可能なので、何かそれに代わるものが必要であるというご指摘がございまして、現在の法令でもそういう専門調査会等が予定されていることを明示したわけでございます。

 本文に戻りまして、先ほど申し上げたような意味で、新しい中央省庁体制においては、経済審議会の経験がそのまま適用できるわけではないと考えますけれども、経済政策運営に関する事項を経済全般の立場から扱うという点では、経済財政諮問会議と経済審議会には共通するものもありますので、これまでの半世紀にわたる経験を踏まえ、第2章で述べるような方向で経済審議会の機能、役割が発展的に継承されることを期待する、というふうに第1章と第2章をつなげる文章を入れております。

 それでは、新しい中央省庁体制に対する期待を述べました第2章でございます。

 第2章につきましては、項目だてはスケルトン段階と変わっていませんけれども、ご覧になってわかりますとおり、前回は項目を並べるということだけでしたけれども、その中身を詳しく書いたものでございます。

 1.「新しい体制において期待される重要政策課題への効果的な取組」で、これまでの経済審議会の経験を生かしつつ、かつ新しく加わる経済財政諮問会議の新しい大きな性格等を踏まえ、新しい時代における効果的な取組への期待を表明したものでございます。

 (1)~(3)まで3つございます。まず、(1)「構造改革問題をはじめとする重要政策課題への分野横断的、省庁横断的取組」でございます。21世紀初頭に予想される日本経済の課題としては、例示ではありますが、そこに書いてありますとおり、財政再建、社会保障制度改革、社会資本の形成、環境制約が強まる中での持続可能な経済社会の構築、高コスト構造是正や急速な経済社会の潮流変化に対応した経済制度・システム改革等の重要問題が山積しております。

 そういうものに対応するためには、まず、内閣総理大臣のリーダーシップやそれを支える特命担当大臣の積極的役割ということを期待しております。スケルトン段階では、総理大臣のリーダーシップしか書いていませんでしたが、今回新しく設置されます特命担当大臣またはそれ以外の各省大臣の総理を支える役割も当然あるわけですので、それを表題にも明示させていただきました。先ほど例示として挙げさせていただきました財政問題、社会保障問題等の重要問題の多くは構造改革というものが必要でして、また個別分野での縦割り的対応では解決できるものではございません。したがいまして、経済財政諮問会議等の新しく導入される制度や仕組みを活用して、個別分野にとらわれない経済全体の観点から取組を進めていくことが求められるとしております。その際、過去の反省において大きな問題になった制度的硬直性や大きな利害の対立を乗り越えていくためには、経済財政諮問会議等を通じた総理大臣のリーダーシップとそれを支える特命担当大臣等の積極的役割が強く求められる、としたわけでございます。

 その総理大臣のリーダーシップ発揮の基礎として、政策オプション及び各界各層の多様な意見を把握し、それぞれの相違点を明らかにすることが求められる、としたわけでございます。

 (2)「加速する経済社会の変化に対応した迅速な政策の形成と実行」につきましては、その頭書きのところで書いておりますが、「政府の政策対応においても、スピードがこれまで以上に重要な要素となってくる」として、まず、そのような変化の加速化等に対応できる認識体制の整備でございます。いろいろな整備がありますけれども、こうした観点から以下に書いていますとおり、ITを最大限に活用したデータ・情報の整備、充実やアクセスの改善、さらには、内外の実務家や専門家を積極的に活用することを求めております。

 それから、重要政策課題への時機を逸しない迅速な取組も重要であるとしていますけれども、ご案内のとおり経済審議会では、経済全体を対象とした包括的な内容の経済計画という政策手法を中長期の政策対応の核としてきたわけです。しかしながら、これだけ状況変化が急速になってきますと、状況の急変によって発生した重要政策課題に対しては、時機を逸せず迅速に取り組み、包括的な政策体系の見直しは必要に応じて行うという機動的対応が求められるとしております。

 そういう状況変化があった場合には、迅速な政策の改善、見直しということで、今回の行政改革で非常に注目されています政策評価といった手法を使い、経済財政諮問会議あるいは内閣府においても、各省庁及び総務省における政策評価も活用しつつ、自らも経済全体の観点から重要政策課題に関する政策の実施状況等の調査審議を行い、必要な場合には各省庁に政策の改善、見直しの働きかけを行うことを期待しております。

 前回にも項目だけは書いておりましたが、短期と中長期の一体性、連続性がより強化された形で、経済政策運営がなされることを期待しております。これは前回もご説明申し上げましたけれども、経済審議会はどうしても中長期が中心であったのに対して、経済財政諮問会議は経済見通しとか、経済対策とか、そういう短期も含めて、すべて経済関係は扱いますので、こういった短期と中長期の一体性、連続性がより強化されるということでございます。

 (3)国民的要請に応じた経済社会全体についての包括的なビジョンの構築、いわゆる将来ビジョンの問題でございます。ビジョンにつきましては、過去3回の部会で中軸的議論になったものですけれども、まず柱書きとして、ビジョンには2つの種類があるということを述べております。いわばITに関する戦略として、まさしく一昨日作成されましたような個別の政策課題に対応するものと、これまでの経済計画のように非常に包括的なものの2種類がある。それは目的や状況に応じて両方のタイプが必要であるとしているわけですが、まず、特に最近求められているものとして、課題対応型ビジョンの活用ということを述べております。特定の重要政策課題に対して、先ほど申し上げましたけれども、時機を逸しない迅速な取組を行うために、その分野の課題に関する政策目的あるいは目指すべき姿と政策の基本方針を明らかにした上で、各省庁の個別政策を全体が整合するように、かつ可能であればスケジュールを明確にした形で取りまとめる課題対応型のビジョンが、これから一層その必要性が増すとしております。

 次に、包括的なビジョンですけれども、これにつきましても17ページの最後からですが、先行きの不透明感の強まり等を背景にして、国民の間で将来の展望や目指すべき経済社会の姿に関する相対的な将来ビジョンが求められた場合には、課題対応型のビジョンのみではなく、経済社会全体を対象とした包括的なビジョンを構築していくことも引き続き必要であるとしております。

 それから、「国民へ強く訴える力をもったビジョンの作成」、これにつきましてはまず「国民の生活や活動にどのようなかかわりあいがあるのかをわかりやすく示す必要がある」としました。部会でも、国民がリアリティをもてるようなビジョンが必要だというご指摘があったところでございます。そのためには、ビジョンを作る側でも国民が求めていることを感じ取る努力、感性というようなものが必要である。ビジョンの受け手が具体的なイメージを描きやすいように、可能な場合には数字等を用いてビジョンの意味するところをわかりやすく表現することが必要である。さらに、ビジョンが実際に実現されるという確信を国民がもつことがビジョンに対する信頼性、訴える力を増してまいりますので、それを会得することが必要である。そのためには、戦略性をもった政策を策定し、それを着実に実行していくことが必要であるとしております。ただ、迅速な対応と申しましたけれども、このビジョンの最後に書いていますとおり、ビジョン実現に向けて継続性を持って粘り強く取り組むことも当然必要であると述べております。

 次に、2.「経済審議会の機能、役割の効果的な発揮を支えてきた活動特性の発展的継承」は、これまでの経済審議会の活動特性のうち機能、役割の効果的な発揮を支えてきたと思われる活動特性であって、新しい中央省庁体制においてもぜひとも発展的に継承していただきたいことを3点述べております。

 1点目が(1)「広範な分野の有識者、専門家の知見の活用」でございます。ご案内のとおり、経済審議会の調査審議に当たりましては、非常に幅広い分野の方々に参加していただき知見を活用させていただきました。これからますます経済社会の多様化が進む中で、新しい体制においてもそういう広範な方の知見を活用する方策を講じていただきたいということでございます。

 その次が、広範な知見の活用とともに、実務家、専門家の方々の知見の活用ということを述べております。

 新たに加えました考え方としては、ここでは「また」以下で、特に、複雑な構造問題への対応や新規の制度設計が必要な場合には高度な専門性が要求されることから、実情に詳しい実務家の方に加え、最新の研究成果や海外事例に精通している専門家の活用が必要であるとしたわけでございます。

 (2)「経済学等の社会科学に基づく理論的分析や計量的手法の開発と活用」でございます。内容的には3つのことを述べておりまして、経済審議会の比較優位の1つでございました計量モデルなどによる分析につきましては、引き続き高度な分析能力を活用していくことが望まれる。2番目としては、特にミクロ的な分析手法がこれからは有用である。3番目としては、経済学のみならず社会学等の経済学の隣接社会科学の成果を活用した多様な分析手法を開発・活用していくことが望まれるとしております。

 3)「政府と国民の幅広い情報の共有」でございます。今まで申し上げましたとおり、調査審議過程に多くの方に参加していただいたほか、その成果を経済計画の最終報告等で平易に提示していただき、またその背景となるデータ等も広く公開していただいて、国民との間にいろいろな情報を共有する努力をしてきたわけですけれども、そういうことを新しい体制におきましても従前以上にすることが望まれるということでございます。

 特に、IT等を活用した国民との双方向の対話を望むとともに、前回の部会でご指摘がありましたとおり、国民に対する情報提供のみではなく、世界に対して我が国の経済政策かどこでどのように形成されているかということも含めて、わかりやすく情報発信していくことが重要であると最後に結んでおります。

 以上が報告書(案)でございます。

 前回たくさんご意見を頂戴しました別紙2につきまして、変更点を中心に簡単にご説明させていただきます。別紙2の1ページ目にありますとおり、4つの経済計画の主要な構成要素に従って、今後の対応方向を提示させていただきましたけれども、1ページ目の1.「経済の現状認識と将来予測」につきましては、前回は表題だけであったのを説明を加えた部分がございますけれども、実質的な修文は、現状認識の対応方向として、実務家、経済人の方との意見交換を述べたところで、3ページ上から5行目の「なお」以下、実務家、経済人の方々との意見交換をする場合には、少数意見であっても十分な注意を払うことが必要である。これは前回、変化にいち早く対応するためには少数意見にこそ注目すべきだというご意見がありましたので、それを踏まえてこのようにしたわけでございます。さらに、時々の時代の雰囲気に流されないためにも、過去の類似の事例や外国の事例も参考にすることが必要であるとしております。

 次に、5ページの経済計画の2つ目の構成要素である将来ビジョンに関してでございます。一箇所、7ページの一番最後に、前回のスケルトン段階でも別紙2のこの箇所では、ほぼ同じような表現をしておりましたけれども、前回ご指摘を受けまして、書いていたことを再度強調させていただきますと、「また」以下に、「それまで有効であった既存のシステムについても、時代の変化に対応しているかを常に吟味することが必要である。過去の成功体験は貴重な体験であるが、それに過度にとらわれると新たな発展の制約になることは、企業でも政府でも共通した課題である」ということを述べさせていただいております。

 3番目の構成要素の「重要政策課題と政策の基本方針の形成について」ですが、8ページで重要政策課題の例を挙げているところ、その2行目にⅲとして「少子高齢社会に対応できる社会保障制度や労働市場の変革の必要性」についても、重要政策課題の認識が遅れた例として挙げさせていただきました。

 8ページの一番下から「対応方向」が書かれておりますが、9ページの一番上で、先ほども述べましたけれども、諸外国の経験や過去の類似の事例について深い知見を有する専門家の方との意見交換が重要である。さらには、たとえ少数意見であってもその重要性を適切に評価しうるように、事務局の側でも認識能力を高めることが必要であるとしております。

 それから、重要政策に関する(課題2)が9ページの下の方からございますが、「その要因と背景」の1番目が、先ほど報告書本体で申し上げましたけれども、従前はコンセンサス方式の限界としていましたのを、先ほどご説明した考えにならいまして、「関係者全員の合意による取りまとめ方式」と語句を改めさせていただきました。

 10ページに、経済計画の構成要素の4番目として「政策の基本方針に基づいた具体的政策の形成促進とその実行性の確保」がございますが、この箇所につきましては、次の11ページの「対応方向」の3番目「総理大臣のリーダーシップ~」のところに、これも報告書でも述べましたけれども、単に総理大臣だけではなく、それを支える特命担当大臣等の積極的な役割への期待を入れさせていただきました。

 さらには、その次のページの12ページですが、スピードを持った対応が必要である。その際には、少数意見や反対意見との相違点、政策選択の理由を明確に示すことが望ましいとしました。

 それから、その12ページの下ですけれども、従前はコンセンサス方式という用語を使っていましたのを、「関係者全員の合意による取りまとめ方式」と変えさてせいただきました。

 簡単でございますが、以上が報告書本体と別紙2の変更点を中心としたご説明でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。ただいま説明のありました報告書(案)につきまして、ご意見をお願いいたします。

〔 A委員 〕 全体として大変よく整理されてまとめられていると思いますが、ご説明を伺って非常に強い印象を1つ受けました。それはどういうことかと申しますと、これは哲学、理念、視点あるいは問題意識のことかもしれませんが、いくつかの世界の変化あるいは時代の変化という言葉は使われているのですが、最も重要な変化についてはあまり直接触れていないと考えるのです。

 それはどういうことかといいますと、私は、戦後の日本経済と90年代の日本経済の非常に大きい違いというのは、冷戦構造の崩壊によって、市場の役割、市場の力というのが非常に増してきたことだと思うのです。その「市場」という言葉あるいは概念があまり出ていないということが1つ。もう一つのキーワードとしては、「民間」の役割あるいは意見。3番目としては、「競争」です。

 この3つの「市場」、「民間」、「競争」ということが、報告書に盛り込んでいるかもしれませんけれども、先ほどのご説明を伺った限りでは、ほとんど触れられていないと思うのです。それが非常に印象的でした。

 そういう意味では、非常に継続性を感じさせる、あるいは連続性を感じさせる問題意識ではないかと受け止めたのです。ですから、過去の日本経済の運営に関して、そのままでいいかどうかということになると思うのですけれども、私は、90年代まではよかったことが、いくつか政策面でも、あるいは民間企業のあり方も、90年代になってからまさにグローバリゼーション、IT革命、世界の変化、時代の変化によって、より市場の力というものが間近に感じられるようになった。

 IT革命がなぜ重要かというと、1つには、経済学者が理想としている社会にだんだん近づいてきて、地理的制約が減少するとか、時間の短縮とか、取引コストの削減とか、そういう市場の力というのが非常に重要な役割を果たすようになったと思います。それと、スピードという言葉も何回も出ていましたけれども、なぜスピードが重要かといいますと、市場のスピード、株価、金融に関する情報を含めて、市場がいかに過去と比べて効率的といいますか、速く動いている、加速化している。企業の行動そのものも市場に反応する、対応するための努力が非常に重要だ、そういうことではないかと思うのです。

 ですから、一般論としては、世界の変化あるいは時代の変化という言葉で、この文章を読んで皆さんは理解するかもしれないですけれども、私は、むしろはっきり市場の役割、民間の役割あるいは意見をもっと導入するとか、政治的リーダーシップというのは私も非常に重要だと思うのですが、政治的リーダーシップだけではなく、1つには問題のとらえ方というのは政府対市場というように考えるとらえ方もあるのですが、そういうふうに考えますと、政治的リーダーシップも重要かもしれないのですけれども、むしろ民間の活力とか、民間がいかに競争できる環境をつくるかとか、市場をいかにうまく活用するかということが今後の日本の経済の活性化のことを考えると非常に重要だと思うのです。ですから、今度の経済財政諮問会議も、いかに民間の意見、経験を導入するか、市場の役割をよく把握し、それにどう対応するかという政策を考えるというのが最大の課題ではないかというふうに考えていますので、「市場」と「民間」と「競争」というものをもう少し具体的に盛り込んでいただきたいと思います。

 最後に申し上げたいことは、一番最後に書かれた外に対する説明も、まさに市場、民間、競争という概念を1つの枠組みとして考えることによって、日本経済の普遍性あるいは外に対する説得力も増してくるのではないかと思うのです。日本特有の制度に基づく政策という形ではなく、むしろ普遍的な市場、民間競争をもう少し重視することによって、世界も日本の経済のことをよりよく理解できることになるのではないかと思います。

〔 B委員 〕 私も、今までの審議会の総括部会の議論をよく反映はしているというふうに思います。ただ1つだけ、文章表現に入れた方がいいかどうかというのがちょっと悩ましいところなのですけれども、アカウンタビリティの問題です。ここには何度も専門家や実務家の幅広い知見を吸収するというふうに描かれているのですが、今後の経済財政諮問会議の役割も含めてですが、今非常に大事なのは、そうした吸収する方も必要ですけれども、国民に説明をするという役割も非常に重視しなければいけない。流れとしては、発想はアカウンタビリティの部分が書いてありますから、読めばわかることではあるのですが、もう少し明確に今までの経済審議会の役割も、例えば経済白書その他に反映して、これは明確に国民の間に国の政策だということで明示されたが、それは不十分な部分もあったということも含めて、今後の役割と評価という意味からいうと、しっかりとした説明をするということを頭に置いて、文章をある程度修文できるのであればした方がいいのではないとか思います。

 もう1つは、新しい経済財政諮問会議は少人数である。専門部会も作られるとは思いますけれども、少人数であるということになっているのですが、今までの経済審議会の役割で、例えば、労働界とかマスコミとか学界とか産業界とかがここに書いてありますけれども、吸収する方ではなくて、例えば、私の場合は、この審議会に出ることによって、ここで議論した内容について、自分たちのグループというとおかしいですけれども、自分の所属している層にはある程度説明責任が今までもあったのです。5カ年計画、2000年の日本とか、2010年の日本とか、こういう作業の中でもそうした議論の中で意見を聞くということは、結局、出た結果についても説明をしているわけです。もちろん、そういう立場ではない、独立した個人の知見でもって参加されている方も当然おられると思いますけれども、産業界とか労働界とかマスコミ界とかを反映して出ている委員もいて、その方々がここの議論を自分の責任範囲でもって説明する、あるいは自分たちが作っている政策に反映しているという役割もありますので、新しい経済財政諮問会議が機能する場合にはそういう役割も必要なのではないか。

 もちろん、これは具体的には政治に反映し、予算に反映し、様々な政策に反映するのは本筋ですけれども、そうではなくて、合意形成のための限界ということがありますけれども、合意形成するためには、決まったことについてきちんと明確に説明できるかどうかというのが非常に重要でありますので、こういう審議会に参加している人間が、これまでもそうした説明責任を果たしているのだし、これからも明確な形で説明をする機能といいますか、そうしたものをちゃんとつくらなければいけないという指摘はしておいた方がいいのではないか、こういうふうに思うわけです。

 私も別に市場主義者ではないですけれども、マーケットや競争や民間の力で物ごとや政策が自動的に決まってくるという機能は非常に強くなってくると思いますので、そうした指摘をしておかないと、それに対する新しい経済財政諮問会議が果たす役割も明確でなくなってきますので、先ほどのご指摘も、私はそういう指摘として受け止めていただいて、明示される方がよろしいのではないかと思いました。

〔 C委員 〕 3点、それから字句の問題が2点です。ここまで書き上げられて、盛り込むことができるのかどうかは分かりませんが、意見として申し上げたいと思います。

 1つは、全体的にこれから総理のリーダーシップということが書かれていて、強力なリーダーシップがないと政策の展開が難しい時代に差しかかっている。これは80年代行革の議論の頃からあったかと思うのですけれども、私自身としては、総理も一個人というふうな感じがしていて、総理のリーダーシップというところに代表されるのだろうかと疑問に思っていて、解決しなければいけないのは縦割り行政の部分ですとか、予算が単年度で行われていてなかなか効果的な政策を継続してやれないというところを何とかしたいというところにあるのではないかと思います。総理の個人の資質というのでしょうか、そこのところだけにおんぶをする話ではないでしょうから、政策を展開できる強力なリーダーシップ、そういう機能が必要なのだということではないだろうかという感想です。

 2つ目ですけれども、一番最後のところに、これからも発展的に継承していってもらいたいということで3つの項目が書かれていて、その3番目のところに国民との情報の共有という話がありまして、前文として経済審議会としての活動特性の中から拾ってきた3つの点と書かれているのですが、その国民との情報の共有がうまくいっていたのかどうかというところでちょっと疑問を持っております。確かに経済審議会は歴史が長いですから、前半の部分はそうだったというふうに私も思うのですけれども、80年代に入ってからは必ずしも情報が共有されていたとは思わないし、それから出されている政策の方向と私ども一般国民との間がぴったり一致していたかというと、決してそうではなかった。それが大きなずれとなって出てきたのがこの10年間ではなかったかというふうに思っております。ただ、今後も、国民との情報の共有というのは非常に大きなポイントだと思いますので、その前文のところの書き方が、これまでもやってきたからこれを継続しようではなくて、これまでやってきて不十分な点もあったかもしれないけれども、これも継続していくべき活動なのだというふうな書き方にしていただけないかということです。

 3つ目、これが非常に難しいところだと思うのですが、私たち一般国民から見ると、必ずしもこれからの政策は経済政策だけではないという気持ちが非常に強くて、確かに戦後すぐには経済が引っ張っていく、それで豊かになって社会資本が整備されていく、国民もゆとりを感じるということだったと思うのですけれども、経済政策だけで成り立っていかないところが非常に難しくて、それがどこに書かれているかというと、18ページの上4行目から6行目の部分がそのことについて書きたいということで書かれた文章なのだろうと思うのですが、これでは弱いという感じがしておりまして、ここの3行の肉付け、経済政策だけではなくて、多面的な政策の中での経済政策をどうしていくのかという位置づけになっているのではないかというふうに思っておりますので、この肉付けももう少し考えていただけたらと思います。

 あとは字句の問題ですが、11ページに、これはほかの方もそう思われたと思うのですが、2)に「それまでほどには発揮されない場合も見られた背景」と長々しい文章があって、これは私の感じとしては、経済審議会の役割、機能がただ単純に発揮しにくくなった背景という、それだけではないかと思いますので、ここはもう少し文章を考えていただけたらと思います。

 それから、17ページの上から2行目のところに、「政策評価という手法が、今回の中央省庁改革で導入された」となっているのですが、この「政策評価」ですが、これは知っていらっしゃる方はもちろん知っていらっしゃるのですけれども、これを一般国民に出されたときに、この「政策評価」という手法はどういうものなのだろうかというふうな質問もあるかと思いますので、ここはもう少しどういう手法なのかということを書き込んでいただきたいと思います。

〔 D委員 〕 別紙2と本体との関係はどういう関係でしょうかというのが1つ目の質問です。

 第2点は、やや感想に近いのですが、課題対応型のビジョンと書いてありますけれども、もう一つは包括的なビジョンで、こちらの方は経済学などを使ってやるというので、こっちはわかりやすいのですけれども、課題対応型のビジョンというのは各省との関係をどう考えるのかというのが非常に問題だと思うのです。それで、ここに例示みたいなものが高齢化社会とかいろいろ挙がっていますけれども、それぞれ対応する省庁があるわけで、提言実行型とどこかに書いてありましたけれども、それらの意見を無視して経済財政諮問会議で提言をなさるのか、それとも協議をするのか。協議をすると、何の変哲もない各省と同じようなものをなぞるようなことになりますし、どういう考えなのでしょうか。そこのところで、各省協議をするのかしないのか。しないとなると、内閣としての重みもない、そういうジレンマがおありになるのだろうと思うのですが。

 第3点は、先ほど官民の情報共有という話もありましたし、情報公開という話もあちらこちらに書いてあるのですけれども、あえて言えば、民間と役所との間の情報公開というのがいろいろ昨今の情勢からして進んできたと思うのです。問題は、官と官の間の情報公開です。これは誰もうるさく言わないわけです。

 それで、例を挙げて恐縮ですが、昨日の日本経済新聞に今度の補正予算の数字が「見通し甘い公共投資」とかいう題で書かれていましたけれども、要するに4兆7,000億円もの補正をし、それにあわせて経済企画庁は見通しを改訂した。見通しを改訂したら、公共支出が減ってしまった。当初に出した0.5%の見通しのときは39兆円程度であったが、今度1.5%になってみたら、財政支出というか、公共支出の方は35兆円程度になってしまった。4兆円も減ってしまったが、これは一体どういうことなのか。4兆7,000億円全部が今年度内に消化されないことはわかるけれども、少しは消化されるわけでしょう。それなのに、当初の見通しに比べて減ってしまったというのは、どういうことですかと書いているわけです。

 しかも、民間の方が予測はしにくいわけです。ところが、政府の行う公共投資ですから、政府が最も予測しやすい項目であるというのに、こういう大幅な狂いが生ずるというのは一体どういうことなのか。恐らく、どこかは存じませんが、自治省なのか、大蔵省なのかいろいろあると思いますけれども、また地方公共団体もあるでしょうから、申し上げるほど簡単ではないかもしれませんけれども、それにしても民間の個々の設備投資主体がいろいろ設備投資するのが狂うというよりは、ほかならぬ政府がやっている話ですから、もう少したやすく当たりそうなものなのに当たらないというか、自分自身でしている話ですから、それが正確に計上されないというのは非常におかしい話で、このことはまさに経済財政諮問会議と今度は「財政」という字も入ってくるわけですから、もっと深刻に考えていい話ではないかと思うので、少し具体的な例に過ぎますから、このこと自体をここに書き込むのは無理かもしれませんけれども、もう少し抽象度を高めて、そういうことも大事であるということをぜひ入れていただきたいと思うわけです。

〔 部会長 〕 それでは、最初の別紙2との関係だけを事務局から、あるいは他の点でも結構ですから、ご説明してください。

〔 事務局 〕 今、ご指摘のございました、別紙2と本体の関係ですが、別紙2は、経済審議会がこれまで担ってきた機能、役割で、いろいろな困難に直面して、それを解決していく上でどういう対応が必要かという観点からまとめたものでございます。かなり率直に反省をし、どうすればいいかというふうな形でまとめてございます。1つは、経済審議会自体はこれでなくなるわけですから、これが必ずしも経済財政諮問会議を中心とした新しい体制にそのままの形で横滑りさせればいいというものではないものもこの中には結構入っていると認識しています。ただし、そうは言っても、経済審議会が直面した困難というものを整理してどういうふうにすればいいだろうかということをまとめておくことで、次の体制の方々が何かの際に参考になるのではないかということで、こういう形で別紙でまとめさせていただきました。

 この中で本体に上げて論じて自然なものについては、この別紙2に基づきながら次の新しい体制への期待ということで述べてございます。そういう形で、仕分けをさせていただいて、本文の中でも、あくまでもこの別紙2は参考だという位置づけで述べてございます。

 それから、課題対応型ビジョンで各省協議するのかしないのか、ただの提案ということなのかということですが、ここで書いておりますのは、例としてITということを考えた場合に、これはもちろん政府の方針として出すわけでございますから、経済財政諮問会議自体は調査審議機関で直ちに決定ということではございませんけれども、仮に政府としてITに対してどう対応するのかということを個別の政策まで政府の方針をビジョンというような形でまとめる際には、当然に私どもとしては各省との話し合いの下で最終的には政府としてこれでやるという形でまとまる、そういう課題対応型のビジョンということを考えて、ここでは書かれております。もちろん、これから経済財政諮問会議を具体にどう運営していくかという話は、ここで私が云々するわけではございませんが、ここで書いておりますのは、各省とお話をして、その方向でやっていく、具体の話として実際にやっていくというものをビジョンとしてまとめるというつもりで書いてございます。

 ただし、おっしゃったように、これまでの経済審議会の反省でもあるわけでございますが、関係者全員の合意が取れないとまとまらないという中で、例えば経済計画の中でも、方針だけはわりと立派なものができたけれども、具体の政策になかなかつながってこなかった、これも反省をしておりますが、そういう問題はこれからも、もちろん直面していくのだろうと思います。それを解決する手だてとしていろいろな形があると思いますけれども、1つは、例えば経済審議会の例で言えば政策提言という形で、必ずしも各省との、いわば合意という状況ではない形で、経済審議会の提言として出したものがございます。その場合には、100%実現できるわけではありませんが、例えば5割とかという実現率になるかもしれませんけれども、それは新しい方向で新しいことができる、例えば6分野の建議というものはそういったものとして位置づけられると思いますので、それは別紙2で述べておりますけれども、それはいろいろなやり方があるだろうと考えてはおります。それはニュアンスとして出しているつもりではございます。

〔 D委員 〕 私は個人的には、後者の方がいいと思います。政策提言型で、それに説得力のあるものであれば、それを公表して、それでその説得力と、それから先ほどの総理等のリーダーシップでそれを遂行していく方に持っていくという方がいいと思います。

 各省協議を始めると、しかも課題対応型について協議をすると、同じことをなぞることになって、どちらかというと各省の方が先に出すわけです。それを企画庁がなぞるということになるケースが間々見られたものですから、そうならないことを願うということであります。

〔 部会長 〕 ほかの問題についてもご説明しなければいけない点があるかと思いますが、とりあえずご質問等を先にお願いいたします。

〔 E委員 〕 大きく分けて2点申し上げます。

 1つは、市場中心で、民間活力をもっと活用していく問題、政府対市場の関係ではなくて、そちらを中心に考えるべきだというお話のときに考えたのですが、第3次行革審、これが政府の行革審の最後だったのですが、平成5年(1993年)に最終答申を出したときに既に、官から民へという強烈なメッセージを出したはずなのです。ですから、1990年代からそういう方向には進んでいた。ところが、それ振り返ったときの反省が私は2点あると思うのですが、1つは、そう言っておきながら規制緩和その他が肝心なところであまり進まなかったのではないかという反省。もう一つ、今度は逆なのですけれども、官から民へと言った手前、政府として何かもっと発言してもいいときに、民間主導型の時代なのだからそういうことを言うのはいらざるおせっかいだということで遠慮した点がなかったかどうかという反省。この両面の反省があるような気がいたします。

 もう一点は情報の問題ですけれども、先ほどの11ページのところでも、この反省の中で「国際化、情報化が進む中で云々」で、「これに加えて、政府や企業の情報開示が不十分であったため云々」というのですけれども、政府がそのとききちんとした情報を持っていて、その開示が遅れたのかどうか。情報のキャッチの点で足らざる点がなかったかどうかという反省がやはりあるのではないか。

 その点を考えますと、一番最後の締め括りの世界に対する情報発信のところに、「受信」を入れてもいいのではないかという感じがいたします。

〔 F委員 〕 先ほどお話のあったビジョンの問題ですが、この報告書の中では個別政策課題に対応するビジョンと、経済社会全体についての包括的ビジョンと、2つ単純に論理的にこうなると書いているわけですけれども、誰がこのビジョンを作るのかということにも関係してくると思うのです。恐らく、経済財政諮問会議の方ではこれについて経済審議会の延長のような機能を持たせるとすれば、包括的ビジョンというのは経済財政諮問会議で作っていただくということになるだろうと思うのです。ただ、個別の課題になりますと、各省庁でやる場合と、あるいはIT戦略会議みたいに私的に総理なりがおつくりになってやるのと、いろいろのものが出てくると思います。この2つが矛盾なしにやれるならいいのですけれども、どうも各省庁間のビジョンというのは往々にして矛盾したり、利害が対立したりするのがございます。それから、総理がつくられる私的懇談会で作られても、これを正規の機関とどういうように調整するのか、そういう問題もあろうかと思います。それで、ここでもし書かれるとすれば、基本的にあまり個別の課題について並列的に書くのではなしに、全体的なものを、将来ビジョン等を経済財政諮問会議に期待するという意味で非常に強く書かれる。もし個別のビジョン、政策課題に対応するものを書く必要があるとすれば、それは全体の包括ビジョンに矛盾なくできるものという点で、少し書き分けられた方がいいのではないかという感じがいたします。

 もう一点は、先ほどお話がありましたが、経済財政諮問会議というのは民間人が4人と伺っております。ここに出てくる方というのは、限られた分野の方しか出て来ないので、今の経済審議会的に各界の方々の意見が考えられる、あるいはそれらを調整していく、そのためには専門調査会というのが必要になろうかと思いますので、専門調査会を重視するような言葉をどこかに強く書かれた方がいいのではないかという感じがいたします。

 それから、言葉の問題ですけれども、特命担当大臣等と書いてありますが、置かれない場合もあるということを想定しているならば、「特命担当大臣」としないで、関係大臣とか、幅広く所管大臣とかにされた方がいいのではないかという感じがいたします。

〔 G委員 〕 私も、大体大変よくおまとめいただいたという印象をもっております。ただ、先ほどおもしろい議論があったので、少し私も乗らさせていただきたいと思いまして、発言をお許しいただければと思っております。

 先ほどのご指摘どおり、冷戦が終わって90年代というのは、市場がまさに支配したと言うと言い過ぎですけれども、市場の時代にどんどん変わったということは誰も否めない事実だろうと思います。しからば、政府の役割とはどうなるのだろうというのは基本的な問題なわけです。その議論をしだすと、多分キリがないし、NPOなども含めた全体のガバナンスの問題等、すべて議論をしないと議論し尽くせないだろうと思うのです。

 今回のこの報告書は、経済審議会の今までの業績と、足りなかった点というのをまず整理して、それで多分、次世代になる経済財政諮問会議に何を期待するか、こういう意味で期待という言葉をお使いになっているのだろうと思うのです。全体のトーンが経済審議会のしてきたことを整理し、そこで、どういうところが足りなかったかということを言って、いわゆるよかった点を今度の新しい組織で引き継いでいただきたいというふうに書いているわけで、恐らく、先ほどの大注文を全部引き受けると、これを全部書き替えなければならなくなるのではないかと思うのです。

 私は、この文章も、それなりに役立つと思っているものですから、例えば13ページの3の2)の1)のところに極めて簡単に、「IT革命とグローバル化の一層の進展」という言い方をしたわけですが、この中に、恐らく「市場・民間云々」といったそういうものが入っているだろうと思うのです。それを受けて、これは経済審議会について言っているわけですが、経済審議会は本当に90年代はそれをきちんと受け止めて成功していたのかどうか。多分、成功しなかったからこういうふうになっただろうと思うので、そういうのを受けて少しこのへんを先ほどの委員が提案された大問題、それに少し耐えられるようにされたらいかがかということを考えました。

〔 H委員 〕 第2章で、新しい経済財政諮問会議への期待を述べられておりまして、その中で冒頭に、21世紀初頭以降に想定される多くの重要課題の解決という問題提起がありまして、具体的には、1の1)のところで「構造改革問題をはじめとする重要政策課題」ということで、21世紀初頭に向けての課題の洗い出しがありますが、財政再建から高コスト構造等に至る問題提起、私の見たところ、いずれも極めて国内的な視野といいますか、日本国として確かにこういうことが大変問題だとは思うのですが、先ほどの市場の問題なども関連いたしますけれども、私は、特に90年代の後半以降、我が国の政策の進め方を非常に困難にしている大きな要素は、国際的な動向といいますか、国際的な動きと国内の政策課題とのミスマッチといいますかアンマッチといいますか、なかなか整合性がとれない、今回の環境問題の国際会議などは非常に典型的だと思いますけれども、そういうことを考えますと、21世紀初頭に想定される問題の多くは、実は国内問題と同時に大きな国際的なうねりがあって、それと国内の課題との整合性をどうしていくかというのは非常に大きいと思うのです。そういう意味で言いますと、この重要課題の問題提起の中に、グローバリゼーションといいますか、一言で言えばそういうことになってしまいますが、そういった問題指摘をしておく必要がないかと思います。

 そういう意味では、先ほどある委員が言われた、一番最後のパラグラフに世界に対する情報発信で、「これは情報の受発信ではないか」とおっしゃったのはまさにそういうことではないかという気がいたします。

〔 部会長 〕 それでは、今まで大変貴重なご意見をたくさんいただいたと思うのですが、恐らく、あるものは字句的に多少取り入れさせていただくということで何とかなるだろうと期待をいたしておりますが、同時に、事務局の方でこれまで大変苦労してまとめてこられて、今まで出たご意見でここのところはというような点があればこの機会に簡単に、取り入れにくいところがあれば特にはっきりおっしゃっていただいた方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

〔 事務局 〕 まず、「市場、民間、競争」という話は十分我々も認識しておりまして、今までの経済審議会の計画なり報告の中で、特に最近の報告の中でまさにこれが重要だということを強調しておりました。今、他の委員からありましたご示唆も踏まえながら、どういう形で取り入れられるか検討してみたいと思います。

 次に、総理のリーダーシップというのは期待として強調したいというところなのですが、おっしゃったような予算の単年度制を直していくというような具体のいわば政策の中身に入ることは今回の総括部会の課題ではなく、むしろ、これからの政策形成とか、経済政策運営の進め方についての期待ということでまとめさせていただきたいと思っておりまして、具体のいわば政策提言的な中身の話に踏み込むのであれば、また問題設定の方からし直してということになりますので、今回の報告書の性格から、これまでのいろいろなことのやり方等の反省とこれからのやり方についての期待ということでまとめさせていただきたいと思っております。具体の個別のものはこの中で盛り込むのはなかなか難しいと感じております。

 情報の共有は従来全く問題がなかったということは、もちろんございませんので、それが受け取り手として、そんなにうまくいかないのではないのかということであれば、少しニュアンスを出したいと思います。

 これからの政策で、経済政策だけでなくて多面的な、もっとトータルの政策の中での経済政策という位置づけにしていかなければいけないというお話は、ものの言い方としてそういうことになるのかもしれませんけれども、この次の経済財政諮問会議は、まず経済財政政策を取り扱うわけです。私どもも経済を論ずるに際してもっと広いいろいろなことがこれからは重要なのだというご意見もありまして、18ページの上のところでその趣旨を入れさせていただいております。若干工夫してみたいとは思いますが、そこら辺のところはあまり強調しにくいと感じております。

 それから、政府、要するに官と官の情報公開、情報の開示というご指摘がございましたけれども、これはそれぞれの部局で必要な情報についてはいただけるように話がずいぶん進んできているのだと思います。私も、見通し改訂に当たってのIg(公的固定資本形成)の減少ということについて詳しく承知はしておりませんけれども、地方の単独事業のところが非常に難しかったのだというふうに聞いております。今の地方の状況の中で、実際の地方の公共投資の特に単独の部分で見通しが狂ったというところが大きかったと聞いておりますけれども、必要な情報はもっとお互いに開示しあうことが必要だという認識はございます。

 情報の開示で政府が情報を持っていたのかどうかというご指摘で、確かに特にバブル崩壊の初期あたりでそういう面もあったのかなということで、別紙の方には、制度的な制約もあってというようなただし書きは入れているのですが、ご趣旨は踏まえておきたいと思います。

 包括ビジョンと個別ビジョンで誰が作るのかというご意見がありました。個別ビジョンは、経済財政諮問会議ではなくて、各省ということも多くなるのではないかというご指摘がございましたけれども、17ページの個別ビジョンを書いているところの一番最後のパラグラフで、「こうした分野横断的、省庁横断的な取組が必要な重要政策課題に関する課題対応型ビジョン」ということで、今度の新しい中央省庁体制で、個別の省庁が取り組めるものについてはもちろん個別のそれぞれ所管省庁がやっていくことになると思いますけれども、ITの事例を見てもわかりますように、1つの省庁だけではなかなか取組が難しく、分野横断的な取組が必要というものについては、内閣というような形で取り組んでいく、その際の1つの取り組み方としては、経済財政諮問会議というものがその場になりうるというふうに考えています。必ずしもそれはITのように関係大臣等から構成される本部というようなことが排除されるということではないと思いますが、経済財政諮問会議を通じてそういうことがなされても、それは当然にしかるべきものではないかというふうに考えています。ただ、もちろん個別の省庁単位ですむことは個別の省庁でおやりになるだろうということで、「省庁横断的な取組が必要」とここではさせていただいております。

 特命担当大臣と関係大臣の件で、ここは「特命担当大臣等」で、もちろん特命担当大臣だけではなく、関係大臣も含めているわけでございますが、関係大臣としますと、前回に委員の方から、「新しい体制の中で総理だけでなく、特命担当大臣の役割も重要である」というご指摘もあって、ただ特命担当大臣だけでもないということで「等」を入れさせていただいて表現をしております。できれば、この形で維持させていただければと感じております。

〔 部会長 〕 私も伺っておりまして、各委員から大変貴重なご意見をたくさんいただいたと思います。最初の委員のご意見は、私も気がつかなかったというか、言われてみると、そうなっているのかというやや驚きの念を持ちました。恐らく、無意識のうちにグローバリゼーションというときにこういうことを考えていたというのが実態だと思いますので、市場主義に賛成するしないにかかわらず、そういう役割に大きな客観的な変化があったということは確かな事実ですから、その辺は少し考えさせていただきたいと思っております。

 それから、アカウンタビリティのお話がありました。それも、どういう形かわかりませんが、お気持ちは非常によくわかりますので、考えさせてはいただきたいと思います。

 リーダーシップの点については、個別の単年度主義とかそういうことになるとどうかと思いますが、総理大臣一人ではなくて、それを支えるような、これは先ほどの関係大臣あるいは特命担当大臣もそうですが、そういう仕組みも含めてリーダーシップを発揮しやすい形に経済財政諮問会議が運営されていくことを期待する、というような形の収め方ができないだろうかと、とりあえず今のところは考えさせていただきました。

 情報の共有は、情報共有の「努力」という趣旨であるとご理解いただいて、これまでの経済審議会にも若干の敬意を表しておきたいというふうに思っております。

 課題対応型ビジョンと包括ビジョンについてもいろいろお話がありましたが、これはいろいろな形で課題対応型は処理できることでありまして、専管事項は当然にその大臣がいるわけですが、例えば社会保障についても大蔵省が入っていないとどれだけそのビジョンに信頼が置けるかというような問題もあって、必要に応じてこれは別の関係大臣会議が行われたり、経済財政諮問会議に上がったりするのだろうと思いますので、そういう場合にはという形になると思います。

 そのほか、アカウンタビリティとか情報公開にも関連して、経済財政諮問会議で、例えば専門家を呼んで議論したようなものは内容が公表される、それが影響力を持つ、そういうルートもあるだろう、いろいろな形が予想されるのではないか、それぞれ必要に応じて使い分けていただければいいのではないか、というふうに私個人は思っておりますので、もう一度文章その他もみてまいりたいと思います。

 情報が果たして政府にもあったのかどうかということは、これも政府のどこにあったのかというのが問題で、知っている人はいたけれども、上へは上がっていなかったということも恐らくあっただろう。銀行などでも、支店長の段階で不良債権がわかっていても頭取が知らなかったということもあったという話はよく聞きます。しかし、いずれにしても情報公開を進めていけば、政府の中の風通しもよくなってくるはずであるという面もあるだろうと思っておりますので、書き方についてはさらにいろいろ検討させていただきたいと思いますが、うまい書きどころがありましたら収めさせていただくということでやらせていただければと考えております。

〔 I委員 〕 総理大臣が信任されたのに株価が下がったり円が安くなったりするというのは、何となく今の日本を象徴している感じがしています。国民全体に閉塞感があって、何となく先行きに展望が見えないというか、夢とか、そういうのが見えないというのがすごく大きいと思うのです。そういう中で省庁が再編されて、それで経済財政諮問会議というものが、ある意味で言うと一種「旗振り」の中心になっていくと思うのです。そういった時というのは、もう少し国民の心の琴線に触れるようなスローガンというか、ビジョンというか、そういうものが今は必要であると思います。

 確かに、構造改革とか、財政改革とか、グローバル化とかいろいろなことが出ているのだけれども、そういう言葉を聞いた途端に、構造改革と言うと、一方で国民は失業というようなことを頭に浮かべるわけです。あるいは財政改革と言うと、景気はどうなるのかな、グローバル化と言うと、自分の文化だとかライフスタイルとかいうものは一体どうなるのかとか、ここ10年間ぐらい言われてきた言葉というのは正しいとは思うけれども、受け手の側、国民の側からすると、何か生活にリアリティをその言葉から感じないのです。だから、もう少し国民の生活実感というか、生活にリアリティのあるような、そういう新しいスローガンというか、そういうことが新しく省庁が再編されて、なおかつ求心力を持っていくという、そういうことになっていくと思うのです。

 これからは賃金もそんなには上がらないし、年金だとかいろいろなところもそんなには増えないということになると、ここ10年間ぐらいで、年収が例えば600万とか700万ぐらいだと、まあ安心して居心地のいい社会ができるという想定の中で、では年収600万か700万で一体どういうふうにすれば居心地のいい社会ができるのかという、逆の方法論みたいなものを考えてみて、そのためにはこの規制を改革するとこんなふうになります、あるいは、こういうふうにシステムを変えると、600万か700万でも大丈夫ですよというような方法論ということも考えていく必要があるのではないかと思います。

 我々はいつも、GNPが2%伸びますとか3%伸びますとか、成長するからあなた方も大丈夫ですよ、そういうものの言い方をし、その過程の中で構造改革とか財政改革をやっても、一応ミスマッチはあるけれども、何とか新しい産業が増えるから大丈夫ですよと言うけれども、それでは国民はなかなかリアリティを持てないのではないかと思うのです。そこのところに何となく国民的なエネルギーをわき立たせるためには、むしろ逆の方法論、国民の側は今は 600万か700万の年収が10年たって倍になるとは誰も思っていないと思うのです。逆に言えば、600万か700万で本当に生活できるのかという不安感がある。それでも十分に豊かな生活ができるというシステムの作り方、そこを邪魔しているのは何なのかとか、そういう発想で物事を考えていくというのが大事なのではないでしょうか。

 アメリカなどは、400万、500万ぐらいの年収である種の非常に豊かな生活をしているわけです。それは構造問題とか、規制とか、いろいろな障害を取り除くことによってできるのです。そういうビジョンを見せていくことが、僕はリアリティを感ずるのではないのかと思います。

 もう一点は、国際化、グローバル化、IT化というのがすごく話題になっているのだけれども、ここに対しても何となくそうだなと思いつつも、不安感もみんな持っているわけです。この意味をもう少し考えてみる必要があります。先ほど環境の話とかいろいろなことが出ていましたけれども、21世紀のインターネットのシステムとか、環境のシステムとか、クローン人間とか、ゲノムとか、遺伝子とかいろいろなことをやっているけれども、ほとんど、この10年ぐらいは多分決まらないのではないかと思うのです。今の各国の政治状況を見ていると、みんな内向きになっていて、国際社会でコンセンサスが得られるということはなかなかないのではないでしょうか。そうだとすると、日本はこういうふうに考えているという、そういう1つの情報発信というか、日本の考え方というものを打ち出していくことが大事ではないかと思います。

 もう一つは、各省庁も、省庁再編になるから、自分なりのビジョンをみんな出そうとしているわけです。そうすると、僕などが総合的にあっちこっち見ていると、重なるところもあるし、その中には縄張り争い的と言うとおかしいけれども、自分たちがこれをやるのだとかいうのがあるわけです。そういう省庁間の争いに対して経済財政諮問会議なり新しいところがどれだけガバナビリティを持ってやっていけるのかというところは、今後すごく大きな問題になってくるのではないか。それはITだけではなくて、教育だって、介護だって、ありとあらゆる問題、すべて各省庁が全部絡まってきているわけです。そこら辺の統合性というのですか、ガバナビリティとかリーダーシップというか、そういうことをどれだけ打ち出せるか。それが国民の琴線に触れるようなスローガンとして集約されたときに、恐らくこの経済財政諮問会議というものは求心力を持つし、国民がそれをバックアップしていくというふうになるのではないか、というふうに何となく感じました。

〔 部会長 〕 これも貴重なご意見で、次の計画というか、全体の包括ビジョンを作るときには非常に参考になるご意見を今言っていただいて、そこまでできるのなら、次の大きな展望ビジョンがほとんどできているのではないかという印象さえ受けたわけですが、そこまで、この総括部会が次の経済財政諮問会議に内容的なことまで申し上げるべきかどうかというのはちょっと別問題として、省庁体制再編で機構を移すときは1つのチャンスである。したがって、それなりの期待も集まっているということをしっかり考えてほしいということは、ぜひご趣旨を踏まえたいと思います。

 いずれにしましても、大変貴重なご意見だと思いますので、私、もう一度読ませていただいて、入れられるものであればどこかに入れられるか少し検討させていただきたいと思っております。

 一応ご意見をいただいたわけでございますけれども、事務局も大変ご努力されて、とにかくここまでおまとめいただき、私としては事務局の努力に大変感謝もしているわけであります。一応、経済審議会の総会に提出する報告書につきましては、あとは部会長の手元で若干の修正が行えるようなら行うということで一任させていただくことにさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 なお、この資料の公表につきましては、経済審議会の本会議が終了いたしました後、豊田会長と私から記者発表させていただく、こういう段取りになっておりますので、そのときまでのお取り扱いは抑えていただくということで、18日に記者会見をして発表する予定になっていることを申し上げたいと思います。

 それでは、最後に中名生事務次官からご挨拶をいただきたいと存じます。

〔 事務次官 〕 堺屋大臣は法案審議で国会に出席いたしておりますので、私から代わってお礼のご挨拶を申し上げさせていただきます。

 委員の皆様におかれましては、本年9月以降、2カ月余という短期間に、大変熱心にご審議をいただきまして、報告書を取りまとめていただきましたことに、心から厚く御礼申し上げます。

 現在、我が国は、規格大量生産型の経済社会体制から、多様な知恵の時代にふさわしい経済社会への大きな変革期にございます。

 このような時代において、国民の多様化する価値観を踏まえ、また、専門的知識も十分に活用した明確なビジョンの下に、21世紀初頭において想定される多くの重要課題への対応を効果的に進め、我が国経済社会の新しい発展を実現していくことが求められています。

 来年1月6日に発足する新しい中央省庁体制では、このような認識の下に、内閣総理大臣のリーダーシップが経済財政政策運営に十全に発揮されることを助けるために、経済財政諮問会議が設置され、内閣府がその事務局機能を担うこととなりました。

 総括部会におかれましては、ほぼ半世紀にわたる我が国の中長期の経済運営の中核的存在として活動してこられた経済審議会がこれまで果たしてこられた機能と役割を評価するとともに、新しい中央省庁体制における経済政策運営への期待について、まさに精力的にご検討いただいたところでございます。

 今お取りまとめいただきましたこの報告書は、今後、経済財政諮問会議等を通じて新しい時代にふさわしい政策運営を行っていく際の、貴重な拠り所になるものと確信しております。

 最後になりましたけれども、総括部会の取りまとめにご尽力されました香西部会長はじめ、総括部会の委員の皆様に、改めて厚く御礼申し上げて、私のご挨拶とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。それでは、これを持ちまして総括部会の審議を終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。

-以上-

(連絡先)
経済企画庁 総合計画局 産業班
Tel 03-3581-0977