第1回経済審議会総括部会議事概要

1.日時:

平成12年9月25日(月)10:00~12:00

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436号室)

3.出席者:

香西泰部会長、清家篤部会長代理、荒木襄、伊藤進一郎、岩田一政、浦田秀次郎、角道謙一、木村陽子、嶌信彦、高橋進、長岡實、畠山襄、グレン・フクシマ、福武總一郎、森尾稔、森地茂の各委員

堺屋経済企画庁長官、小野総括政務次官、中名生事務次官、坂官房長、牛嶋総合計画局長、永谷総合計画局審議官、塚田総合計画局審議官、仁坂企画課長、藤塚計画課長、前川計画企画官 他

4.議題:

  • 議事の公開について
  • 今後の検討テーマとスケジュールについて
  • 経済審議会が果たしてきた機能と役割等について(フリーディスカッション)

5.議事内容:

(1)議事の公開について

会議は非公開、議事概要、議事録、配布資料は公開とすることが決定された。

(2)今後の検討テーマとスケジュールについて

事務局から総括部会の今後の検討テーマとスケジュールについて説明があった。総括部会報告とりまとめは11月下旬に行う予定。

(3)経済審議会が果たしてきた機能と役割等について(フリーディスカッション)

事務局から、経済審議会が果たしてきた機能と役割等についての論点の説明があった後、フリーディスカッションを行った。委員からの主な発言は以下のとおり。

  • 今後は経済事情が複雑化し定量的な予測が難しいこともあり、経済計画は「展望」型へ移行し、「計画」という性格は薄れていくだろう。
  • 今までの経済計画については、各省調整が必要なため、経済審議会のオリジナルな意見は通りにくかった。今後もそうであろうが、それを通すためにも、経済財政諮問会議でも、最新の情報を用いて、経済理論や計量モデル等による理論的分析に基づき整合性のある展望を示すべき。
  • 政策提言については、いくつかの例外を除き、成功していない。それは各省協議の段階で調整されてしまうから。「6分野の経済構造改革」のような方式を採り、明らかにおかしい既得権益について臆せず指摘すべき。
  • 経済審議会の特徴は経済理論と定量分析に基づいて展望を行ってきたこと。これにより想定から外れた場合でもその原因をトレースすることができる。アカウンタビリティを高めるためにもこの点を強調すべき。
  • ロジカルな議論をすべきということと、各方面での合意形成とのバランスを取るのは難しい。但し、経済審議会では前者を重視すべきであり、合意形成・目標設定は「政治」の役割。
  • 政府が市場経済でどういう役割を果たしていくべきか、という視点が基本的には重要。
  • アメリカでもカウンシル型の政策形成はあり、民間のシンクタンクが各種の政策提言を行い、政府がそれを政策に採り入れるなど、民間の知恵の競争の原理を活用している。日本は役所間の競争であり、それはある時期までは有効に機能したが、80年代後半、90年代は機能していない。その原因の究明が不足している。
  • 今後は内閣のリーダーシップと議会による民主的決定が重要であり、役所レベルの調整は最小限にすべき。
  • 経済計画の初期から中期はキャッチアップの時代であり、経済計画の目標はすなわち欧米の生活水準であることを国民は「感性」でイメージできた。しかし最近の失われた10年では、キャッチアップ後の「展望」に「感性」が不足しており、国民にとってリアリティーがない。
  • 感性的要素を採り入れた経済学的ロジックを用い、国民の生活水準にマッチしたイメージをまず描き、その際に障害になるものは何かを考えるべき。
  • 経済計画策定時における各省調整は、善意に解釈すれば、限られた資源を経済成長にどう活用するかという点で、うまく機能したのではないか。
  • 最近の経済計画では、日本経済が成長経済から成熟経済へ移行したという認識が我々にも欠如していた。
  • 経済財政諮問会議において、各省意見は吸い上げるべきであるが、結論は政治的判断によるべき。
  • 日本より早く成熟型経済に移行している国の個人消費の内容を分析し、日本人が同様の消費を行う際の障害を分析すべき。
  • 経済審議会の比較優位は、きちんとした経済分析を行ってきたこと。そうすれば、それが実際と乖離してもその理由が分かる。
  • 経済学での技術進歩を分析にどう活用するかがポイントであり、できるだけ新しいデータを使って、一般の人にも分かるような形で示すべき。
  • 世界銀行の「東アジアの奇跡」では、日本の審議会制度を評価しているが、私は懐疑的。経済計画で示された細かい経済指標は、予算編成にどう反映されたのか、企業は経済計画の数値を各社の投資計画等にどう反映させていたのか等につき分析すべき。また、IMF、OECDといった国際機関の議論の中での評価はどうだったのか。
  • 将来展望に当たっては、価値観が多様化している点に注意し、むしろ複数のシナリオや政策メニューを示すべき。
  • 経済計画は、50~70年代には政府主導、生産者重視により、日本経済の復興に寄与したのに対し、80年代以降は、国民の願望を反映させることに役割を変えてきた。
  • 日本国外では、日本の審議会制度にポジティブな評価もあったが、その機能が変化した80年代に入り、その提言がどれだけ政策に反映されているかが分からなくなった。
  • 世界における日本の役割を重視しているにもかかわらず、80年代から貿易に関する具体的な数値指標がなくなっていることは不思議。
  • 経済計画の反省点として4点。①経済計画の評価として「客観的」な検討とされているが本当に客観的なのか。②審議への参画者は本当に多様であったのか。欧米の基準では本当に多様ならば少数意見や反対意見があるはずであり全会一致とはなりにくい。③グローバルな視点は十分であったか。④経済計画で提示した政策の実施状況を検証したか。
  • 経済財政諮問会議に期待することとして4点。①市場機能を重視すること。②消費者、生活者の視点を反映すること。③世界における日本の役割を常に念頭に置くこと。④事後評価の重視。
  • 財界、企業は経済計画の数値指標を重視している。民間シンクタンクの予測のベースも経済計画の数値である。従って計画数値をきちんと決め、それらに基づいて調整が行われるべき。
  • ボーダーレスエコノミー時代、IT時代の中で、経済財政諮問会議は審議内容を国民各層に明確に伝え、下支えを得ることが重要。「奥の院」に入ってしまってはいけない。
  • 経済計画策定時の科学的検討・分析を重視するなら、経済計画の評価についても科学的にするべき。そのためには、評価軸をハッキリさせるべきであり、例えば、時代認識の是非、提案した政策の妥当性、政策の達成度等である。
  • 経済計画が検討の対象としなかったから、間違ったことの分析も重要。例えば、地域経済、都市、環境など。
  • 将来展望については、国家として20年先の展望を持つことは重要であるが、20年毎ではなく2,3年置きに見なおすことも一案。
  • 政策提言は、その時代に重要なことが提言されているが、そのフォローアップが欠けている。その提言を実行レベルへどう結び付けるかが課題。
  • 中期までの経済計画は、日本は中央官庁主導でうまく機能した。しかしそれ以降は、どういう国柄を目指すのか等が不明確で、特に地方に聞こえてこない。
  • 今後は展望型になるのだろうが、基本的なフレームワークをしっかり作るべき。データ分析等の定量面を強化すべき。
  • 経済審議会は、委員間のコンセンサスではなく、各省庁間でのコンセンサスに配慮し過ぎたのではないか。
  • 精緻な経済分析は民間シンクタンクにもできる。経済財政諮問会議は、政策実現への執着心を持つことが必要。
  • 経済審議会は、行政に対し第三者機関として提言してきた。その提言を予算化法制化する上で、他省庁との調整は必要であり、今後も必要。但し、調整の仕方が問題。
  • 経済財政諮問会議は、その構成員が民間と閣僚等合わせて10名程度であることから、外部の意見をどう汲み上げるかが重要。
  • 90年前後のバブル、97年の橋本内閣の6大改革等に際し、経済審議会はなぜ経済計画の見直しを積極的にやらなかったのかを検討すべき。
  • 政策提言は重要。「6分野の経済構造改革」のように、審議会委員と各省庁とがオープンに議論するという方法はユニークであり、今後もこういう形式をリファインしてはどうか。

6.今後のスケジュール:

次回の総括部会(第2回)は10月10日(火)16:00~18:00に開催する予定。
なお、本議事概要は、速報のため事務局の責任において作成したものであり、事後修正の可能性があります。

(連絡先)
経済企画庁 総合計画局 国際経済班
Tel  03-3581-0464