第3回経済審議会政策推進部会

時: 平成 12年 4月 4日
所: 経済企画庁特別会議室(436)
経済企画庁


経済審議会政策推進部会(第3回)議事次第

平成12年4月4日(火)15:00~17:45
経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 関係省庁からのヒアリング
    • 1)情報化について
      • 郵政省
      • 通商産業省
    • 2)世界への情報発信について
      • 郵政省
      • 文部省
    • 3)創業・起業について
      • 通商産業省
  3. 閉会

(配布資料)

                                
  • 資料1.経済審議会政策推進部会委員名簿
  • 資料2.関係省庁ヒアリング説明者
  • 資料3.郵政省資料
  • 資料4.通商産業省資料(情報化について)
  • 資料5.文部省資料
  • 資料6.通商産業省資料(創業・起業について)
  • 資料7.経済審議会政策推進部会の予定
  • 資料8.経済審議会政策推進部会政策小委員会について

経済審議会政策推進部会委員名簿

部会長
水口 弘一   (株)野村総合研究所顧問
部会長代理
香西 泰   (社)日本経済研究センター会長
安土 敏   サミット(株)代表取締役社長
荒木 襄   日本損害保険協会専務理事
伊藤 進一郎   住友電工(株)代表取締役副社長
植田 和弘   京都大学大学院経済学研究科教授
江口 克彦   (株)PHP総合研究所取締役副社長
大田 弘子   政策研究大学院大学助教授
角道 謙一   農林中央金庫理事長
木村 陽子   奈良女子大学生活環境学部助教授
嶌  信彦   ジャーナリスト
清家 篤   慶応義塾大学商学部教授
高橋 貞巳   (株)三菱総合研究所代表取締役会長
高橋 進   (財)建設経済研究所理事長
田中 明彦   東京大学東洋文化研究所教授
畠山 襄   日本貿易振興会理事長
濱田 康行   北海道大学経済学部教授
原   早苗   消費科学連合会事務局次長
ロバート・アラン・フェルドマン  モルガン・スタンレーディーンウィッター証券チーフエコノミスト
星野 進保   総合研究開発機構特別研究員
村井 純   慶応義塾大学環境情報学部教授
村田 良平   (株)三和銀行特別顧問
森尾 稔   ソニー(株)代表取締役副社長
森地 茂   東京大学大学院工学系研究科教授
八代 尚宏   上智大学国際関係研究所教授
八城 政基   日本長期信用銀行代表取締役社長
山口 光秀   東京証券取引所理事長
鷲尾 悦也   日本労働組合総連合会会長


〔 部会長 〕 まだ数名の方がお揃いではありませんけれども、定刻になりましたので、ただいまから第3回政策推進部会を開催させていただきます。

本日は、委員の皆様方におかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは早速、本日の議題に入らせていただきます。本日は前回に引き続きまして、主要テーマに関する施策について、関係省庁からヒアリングを行いたいと思います。第1に、情報化について郵政省と通産省から、第2に、世界への情報発信について郵政省と文部省から、第3に、創業・起業について通産省から、それぞれヒアリングをしたいと存じます。各テーマ毎に各省庁から続けて説明をしていただき、その後、委員の皆様方から、ご質問、ご意見をお伺いしたいと存じます。

それではまず、情報化について郵政省と通産省からご説明をしていただきたいと思います。最初に郵政省からご説明いただきたいと思いますが、インターネット等の情報発信基盤は、次のテーマであります世界への情報発信にも密接に関連しますので、世界への情報発信に係る内容もあわせてご説明をお願いしたいと思います。それでは、通信政策局審議官、放送行政局総務課長、よろしくお願いいたします。

〔 郵政省 〕 お手元に資料を2つお届けしてございます。第1が「21世紀に向けた情報通信政策の展開」、第2が「21世紀の情報通信ビジョン」でございます。この「情報通信ビジョン」につきましては、「IT JAPAN for ALL」というサブタイトルを付けてございますが、つい先月末の電気通信審議会からの答申を頂戴したばかりの資料でございます。ただ、部数が多々ございますので、そのエッセンスを限られた時間の中でご紹介できればと考えております。

まず、資料1「21世紀に向けた情報通信政策の展開」の目次をご覧いただきたいと思いますが、「社会経済システム改革の原動力としての情報通信」で、今までどうだったかということを振り返っていただきます。それから、「情報通信の高度化に向けた総合的な政策対応」はどのようなことをしているか。資料2「21世紀の情報通信ビジョン」で、これからどのようなことに取り組むべきかという課題について整理した、ということでご理解を頂戴したいと思います。

画面の方もあわせてご覧いただきたいと思いますが、資料1のカラーのバージョンでございます。

I.「経済を牽引する情報通信産業」ですが、1.「新規参入の動向」について【電気通信事業者数の推移】と【放送事業者数の推移】について述べております。電気通信事業者については、13年間で約31倍の数になっております。

2.「情報通信産業の現状」、現状については、市場規模が伸びております。「企業増加率・廃業率」、電気通信分野については企業の増加率が高く、逆に廃業率が少ないということがうかがえると思います。

II.「急拡大する情報通信ニーズ」、【インターネットホスト数】について急激に増えている。各国のホスト数は、2000年1月の数字ではアメリカと比べるとまだ少ないわけですけれども、ヨーロッパ等の主要国と比べては絶対数としては多い。【移動体通信加入数】は、5年で20倍以上、【ケーブルテレビ加入数】についても伸びてきている、こういう数字でございます。

III.「情報通信による米国経済の再生」ですが、アメリカ商務省が一昨年4月に「The Emerging Digital Economy」というレポートを出しております。その中で「実質経済成長の4分の1以上を担う」、「インフレ率を1%引き下げ」た、抑制したということでございます。大統領の今年1月27日の教書の中でも、「『ニューエコノミー』の定着に向けた包括政策を提示」ということで、米国の例を紹介してございます。

7ページです。「情報通信の高度化に向けた総合的な政策対応」ということで、I「情報通信基盤の整備」、II「競争政策の推進」、III「情報通信利用の高度化」、その中には「電子政府の構築」等も含まれますが、最近、バリアフリーの懇談会等も開催しまして、どうすればバリアフリーの情報通信技術が利用できるかということで何度も検討しております。大きな柱としては、IV「地域の情報化の推進」、V「創造的な研究開発の強化」、VI「情報通信利用環境の整備」、VII「放送サービスの高度化」等が課題でございます。

11ページをご覧いただきたいと思います。「インターネットの高度化」について、時系列でどういう考え方を持っているかを書いてございます。「現行のインターネット」、「次世代インターネット」、「情報家電」、「スーパーインターネット」。「次世代」というと10年後かと思いがちですが、近々の話でございまして、ネクストジェネレーションのインターネットというのは、来年、再来年という中でどう実現していくかという課題ですし、情報家電については、2003年、2005年。その後の2010年あたりがスーパーインターネット、こういうコンセプトになっております。米国のNGI計画も、ここに書いてありますように、政府が毎年1億ドルを投じて次世代インターネットの開発を推進していることを紹介いたしました。

次に17ページですが、その間の資料については細かいところを書いておりますが、時間の都合で省略させていただきます。17ページ、「情報通信ニュービジネスの支援」、新規事業創出のベンチャー企業の支援を強化するということでございます。エンジェル税制、テレコム・ベンチャー投資事業組合による出資、パソコン減税の創設もいたしました。

19ページですが、「テレワーク・情報バリアフリーの実現」。SOHO(Small OfficeHome Office) ということで、通勤負担の軽減、労働生産性の向上、育児・介護と仕事の両立、地域や女性の就業機会の拡大、交通代替による地球温暖化防止等々がございまして、SOHOの機運も高まっております。例えば、“SOHO”という月刊誌が出て広く読まれるような状況にも立ち至っていると存じます。

「高齢者・障害者の情報バリアフリーの実現」については、特段力を入れているところもございまして、ご案内のとおり、高齢化が進みまして2015年には4人に1人が65歳以上の高齢者になるというこの国の現状を踏まえてどう対処しようかということで、広域介護支援システム、次世代訪問介護支援システム等、諸々考えているところでございます。

22ページ、IV「地域の情報化の推進」については、大きな期待が寄せられてございます。「地域公共ネットワークの整備促進」あるいは「広域的な情報通信ネットワークの整備の促進」という課題でとらえております。ここには書いてございませんが、最近、郵政省は72億円の補正予算をもちまして、地域インターネット促進事業、1市町村当たり5,000 万円、ソフト部分で1,500万円あたりのプロジェクトを開始いたしましたところ、わずか数日の間に、各市町村から大きな反響があり、問い合わせが殺到したところです。それぐらい関心が高いものがございます。

24ページ、V「大規模プロジェクトの推進」ですが、社会のニーズに応え、大規模プロジェクトを、産学官の研究開発力を結集して推進したいと考えております。次世代の超高速ネットワークプロジェクト、環境保全プロジェクト、モバイル通信プロジェクト、宇宙開拓プロジェクト、ヒューマンコミュニケーションプロジェクトでございます。

次に、研究開発体制の整備ですが、ギガビットネットワークを現在、北は北海道から南は沖縄まで。つい最近までメガという言葉でしたが、最近1ギガヘルツのコンピュータが売り出されて話題になっていますけれども、ギガ、テラ、ペタですか、そういう大容量化になっていまして、北海道から沖縄まで今、研究開発用のギガビットネットワークを建設し、それを広く開放しまして、ネットワーク技術、アプリケーション技術や研究技術の研究開発を支援、産学官連携を強化することとしております。共同利用型研究開発施設もあわせ整備していまして、京都府、岡山県、つくば、けいはんな、北九州、あるいは沖縄の方までいろいろできております。

次に26ページ、VI「情報通信利用環境の整備」ということで、影の部分への対応、いいところがあれば悪いところがある。不正アクセス、個人情報保護、違法・有害情報に対処するということでございます。ファイアーウォール、防火壁とでもいいますか、コンピュータの不正アクセスを防止するところを設ける。プライバシーの問題、または銃、麻薬、猥褻情報、そして個人情報の漏洩の問題等々に対処しなければなりません。

28ページに参考資料を付けておりますが、「諸外国の学校インターネットの接続計画」ということで、2000年に米国とフランス、2001年に日本とドイツ、2002年にイギリスということで全学校のインターネット接続を目指しております。学校の割合は、99年度3月現在の数字で、これより相当上がっているものと思いますけれども、日本が平均で35.6%、米国の場合にはほぼ9割。98年度現在で全教室の51%が接続されたという、ちょっと古い数字でございます。

最後に、資料2で「21世紀の情報通信ビジョン──IT JAPAN for ALL──」ということで要約版を提出させていただきましたが、その中のエッセンスだけを画面でご覧いただきたいと思います。「5つの潮流」「2つの課題」「3つの原則」ということで政策の基本方向を述べております。

「5つの潮流」については、1番目は、「高速」「常時接続」「低廉・定額」のネットワークを作っていく必要がある。この流れを一層加速推進するため制度面・技術面・財政面から総合的に支援。2番目は、「通信・放送の融合化」ですが、融合事例に対する現行制度の適切な対応、現行法制度に対する評価・検討の場の設置、技術的環境の整備の推進。3番目は、「加速するネットワークとユーザ・ニーズの高度化」ということで、情報通信産業のイニシアティブの確保、新たなサービス・機器市場におけるこの国のイニシアティブの確保。4番目は、「ボーダレス化」ですが、ネットワーク上で「顔」を持つ日本の実現、国の「魅力」を高めるための情報発信の充実、「情報通信ハブ化」の推進。5番目は、「情報通信の担い手の多様化」で、先ほど申し上げましたSOHO、NPO、ボランティアの活動支援、地域のコミュニティにおける情報通信の高度化を図る必要があるということでございます。

課題として2つ挙げてございます。1番目の課題は、「デジタル情報格差(Digital Divide)」でございます。デジタル技術が進歩するにつれて格差が生じる。国の内外を問わず、世界中の全ての人々が生活のあらゆる場面でITの恩恵を享受し得る社会の実現。私、個人は、先週、ニューオーリンズに行って中南米の関係者と話しておりましたが、デジタル・ディバイドではなくて、まだアクセス・ディバイドの問題もあるのではないか、こういうご指摘もございました。

「2番目の課題」は、「脆弱性(Vulnerability)」でございます。多様な情報通信システムに対する依存が進む社会の脆弱性を克服する施策を、官民の一層強力な連携で推進しなければならないということでございます。

「3つの原則」を掲げまして、「情報収集・公開による的確な動向把握・情報提供」、「適切な方向性の提示」、「スピードを持った政策資源の集中投入」が必要ということでございます。

以上、簡単ではございますが、限られた時間ですので、また後で質問等をお受けいたしたいと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。続きまして、総務課長、よろしくお願いいたします。

〔 郵政省 〕 放送の関係につきまして、5分ほど時間を頂戴しまして、補足をさせていただきたいと思います。

放送のデジタル化についてご説明させていただきたいのですが、放送のデジタル化といいますのは、要するに、放送番組、テレビの番組の制作あるいは伝送をデジタル化する。つまり、コンピュータ処理可能な形で行うものでございます。これは経済審議会の昨年の答申でも1つの課題として言及されておりますが、これをなぜ経済発展との関係あるいは情報産業化との関係で議論するのかということを、2つばかりご説明させていただきたいと思います。

1つは、現在、特にパソコンについてのアメリカの覇権と申しますか、通産省の資料にもあるかもわかりませんが、基本的なソフトはマイクロソフトのウィンドウズ、ハードウエア的にはインテル、そういったところが、結局、アメリカが覇権を握っている。そういう中で、これから先の情報化を考えるとき、日本型の情報化というルートは何があるのか。最近、注目されているのが携帯あるいはモバイル、これはNTTドコモのiモードというものが注目されているわけですが、もう一つ、テレビというものが新たな情報化のプラットホームになるのではないかということが言われております。

テレビというのは、日本のメーカーさんが大変頑張っている世界でして、こういうものを中心とした、いわゆるデジタル家電が最近、新聞を賑わしていますけれども、あるメーカーによれば、ここ10年間で60兆円の市場投資効果がある。その起爆剤となるものが放送のデジタル化であるのではないかということです。

もう一点は、今ご覧になっている画面の真ん中辺の○に「多様なデジタル情報がメディアにかかわらず流通」とありますけれども、いろいろなソフトはアメリカの場合はハリウッドが中心ですけれども、日本の場合はテレビ、テレビ文化といいますか、そういうものが大きな位置を占めている。テレビというものがデジタル化されることによって、あらゆるソフト、コンテンツの流通がデジタル形式で行われる。それが例えばインターネットであったり、CDーROMとかDVDーROMみたいなパッケージ系のメディア。放送もいろいろなソフトがコンピュータ処理可能なことにより使い回しができる。そういうようなことの大きな起爆剤が放送のデジタル化ではないかということであります。

「放送のデジタル化のメリット」を書いてございますが、左上にありますように「高品質な映像・音声サービス」、従来の放送の周波数帯域の中で1チャネル分でハイビジョンという非常に高性能な画像が得られる。あるいは、右側にありますように、同じ精度のテレビであれば3チャネル分、あるいはそれ以上取れる。それから、何と言っても重要なのは、左側の真ん中にありますように、データ放送。つまり、放送のデジタル化というのは番組がコンピュータ処理可能になるということですので、ユーザーがテレビの番組を好きなように編集・切り貼りできる。あるいは、右下にありますように、通信網、基本的にはインターネットになりますが、そういったこととさまざまな組合せ利用が可能になります。こういうことで、世界各国ではデータ化を既に開始しております。アメリカあるいはイギリスにおいては2年前、1998年の秋から既に開始しております。

そういう意味で、私ども郵政省といたしましては、日本の放送全てをデジタル化したいという目標を掲げていまして、既にCS、ケーブルテレビについてはデジタル化が開始されていますが、特に上から2番目のBS衛星放送に関していいますと、今年の12月1日から、NHKを含めまして7チャネル、ハイビジョンで、衛星からデジタル放送が行われます。そして、最後に残るところの地上、皆様方がご覧になっている普通のテレビですけれども、これを2003年から、これから10年がかりで、全てデジタル化するというプランを掲げて今、準備を進めているところでございます。

若干、その部分について困難なところというのを申し上げますと、日本の場合は、アメリカ、イギリス、その他の全世界と違いまして、大変に周波数が混んでいます。今、テレビ用の周波数は全て使っています。したがいまして、デジタル放送をこの中に開始するためには、市街地の区画整理みたいな作業がどうしても必要でございます。例えば、東京でデジタル放送を発信させるためには、多摩と八王子の方のアナログのチャネルを変えていただかなければいけない。そのような、いわば区画整理の事前作業の大変な作業がありますので、その辺の作業をいかに進めるか現在、放送事業者の方とご相談している。あるいは、これから先、衛星や地上波、いろいろな放送、メディアがデジタル化されますので、それをお客様が1つのテレビでご覧になれるように、その技術の標準化・共通化を進めております。

もう一つ、後ほどの文部省さんのご説明と関係します、番組の世界への情報発信ということでありますと、現在、NHKを中心として放送事業者も大変努力されています。「NHKワールドTV」「NHKワールドプレミアム」のカバーエリアと書いてありますが、昨年から全世界でNHKは24時間、二カ国語で日本の番組を放送していただいております。こういったご努力を今後とも更に多国語化、あるいは番組内容の充実ということで進めていきたいと考えております。

はしょりましたが、以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。続きまして、通産省からご説明をしていただきたいと思います。機械情報産業局次長、よろしくお願いいたします。

〔 通産省 〕 お手元の資料4のペーパーでお配りしている資料でございます。1枚目に、「何がIT社会の急速な発展をもたらしているか」。右上にプロセッサの価格、処理能力が書いてありますけれども、過去15年で1億倍超の処理能力のプロセッサが開発され、かつその価格は急激に下がっています。この能力、そしてネットワークの電送能力の拡大、これをどのように使っていくかというのが、このIT情報化社会の起爆力になっているわけでございます。

次のページに移ります。コンピュータのパワーの利用、あるいは通信能力の拡大の利用に関しまして、80年代中頃までは、日本もその投資も進めていましたし、製造プロセスを中心に情報能力を相当活用してきたわけですが、下に書いてありますように、80年代中頃から90年代後半にかけて、パソコンをインターネットで結ぶ、この分野が非常に大きな意味を持ち始めたときに、上の表にありますような日米間の投資の格差が開いたというのが現状でございます。

3ページに移ります。その情報化の最先端にあります、いわゆる電子商取引の現状が書いてございます。その左側に日本の1998年の数字がございます。日本の 650億円に対して、アメリカが約2兆強の現状になっている。2003年に向かって、日本がそれが3兆円に伸びていくと一挙に伸びますけれども、アメリカもさらに大きく伸びていっている。企業間取引、「BtoB」と呼んでおりますけれども、9兆円弱。それに対して、アメリカは20兆円弱でございます。この日本の9兆円弱というのは、必ずしもインターネットベースといいますよりも、従来の専用線のものも入っている数字になっていますので、かなりビハインドになっているというのがこの数字でございます。

これはどういうビジネスの形態で出てきているかというのが次のページにございます。2番目にあります「アマゾンドットコム」、これは非常に有名ですが、世界中の書籍を24時間販売しているという新しいビジネス、モデルをスタートさせたわけです。そのほかに、「フォード」「デルコンピュータ」というのは、企業間の取引のインターネット上での展開をしたわけです。現在は、オークションの「イーベイ」というのが今最も話題を呼んでいるわけです。

次のページは、日本でも同じようなものがそれなりに出てきているということです。

さらに6ページを開いていただきますと、消費者向け取引の日米の現状あるいは将来像についてでございます。この中でやや注目に値するのは、アメリカの場合、現在、自動車が相当大きなウェイトを占めているに対しまして、日本の98年の段階では大したことないのですが、これが今から急速に、おそらく自動車が立ち上がってくることになろうかと思います。

それから、企業間取引の方でみますと、一番大きく気がつきますのは、日本とアメリカの差で申しますと、電力・ガスのところ、あるいは化学製品のところが、現在の日本とアメリカを比べて、電力の卸・小売りの自由化が進んで、それをネット上取引しているという形態が出ていますアメリカの場合がかなり進んできているという状態でございます。

これらのビジネスがどういう形で企業活動に影響を与えてきたかということですけれども、最初に申し上げましたように、製造プロセスのところのコンピュータライゼーションが進んだわけですが、それが次第に調達に広がり、そしてサプライ系マネジメントとか、さらに販売プロセス、このあたりに広がってきたのがアマゾンドットコムなり、オートバイテルなどであります。

この段階で、むしろ個人個人の消費者に合わせた商品を揃えてそれを販売する、あるいはそれをベースに新たに開発を行っていく、こういう形で企業活動が変わってきたわけでございます。それが自動車業界なりにどういう影響を与えたかというのが9ページにございます。

10ページは、これの雇用に対する影響ということでまとめたものでございます。「情報化進展による総雇用創出」と書いてありますが、この中に情報通信産業、その情報ITを活用する形でのサービス業による創出がありますが、それに加えて、その電子商取引にネガティブに影響を受ける雇用と、それから電子商取引による創出というのがございます。これは一番客観的な例で申しますと、80年代の後半から90年代にかけて、アメリカの金融界の中で起こったような、例えば、金融セクター全体での雇用数は増えたのですけれども、他方で、従来の銀行の後ろでいろいろ、バックオフィスとしていろいろ事務をやっていた人たちはいなくなって、そのかわりに個人のファイナンスアドバイザー、あるいは企業での金融借入に関するアドバイスという投資顧問なり、インベストメントバンクなり、そういうサポートのところに急激に雇用がシフトしたということがあります。それらも含めてこういう姿になろうかということでございます。

ということで、電子商取引というのが今大きく経済のシステムを変えつつあるわけですが、それに関する政策課題として、大きく3つのカテゴリーに分けられるかと思います。1つは、民事契約法の関係、これが従来の法律が電子商取引上でマッチするように直していくという作業がございます。それの延長線上として、消費者保護、これについては契約法上の特別の措置がされているようですけれども、それについて見直していく、あるいは昨今の問題のように、新たに消費者保護という観点から考えるべき分野がある。それから、特に電子商取引の場合で、かつ最終プロダクトを音楽であるとか映像であるとかという形でネット上で出ていくもの。そういうものが中心になってまいりますと、それに伴って、知的財産法上の保護、あるいは不正競争防止法上の対策というものが必要になってくるという、知的財産権の整理の分野がございます。それから、やや行政的な分野として、関税あるいは消費税の賦課の問題、個人情報の保護、あるいはセキュリティ対策という問題がございます。

これらについて順次簡単に申し上げますと、民事なり契約法の分野で現在、署名と同じ効力を署名に持たせることが必要だということで、世界各国で法制化が行われてきております。これは国によりましては、契約の形式要件としては署名が必要だということからスタートしている国ですとか、日本のように、民事訴訟法上の署名を与えるという形で対応している国とか、法律的な効果が違うものですから、一方で国際的な調和を考えながら、各々の国内的に署名と同じような法律効果を与えていくということで、現在、郵政省、法務省と3省庁で共同して国会に提案すべく調整中でございます。

そのほかに、ライセンス契約なり、ソフトなり、映像なりでは、返品困難性に伴う問題に対する対応。あるいは、ウェブサイトを立ち上げた瞬間に、世界の誰が買うかもしれないし、誰かが買った以上あらゆる消費者の見地で裁判が起こされるかもしれないという現在の準拠法の体系について、これをどのように直していく必要があるかという問題がございます。

2番目のカテゴリーとして、ドメインネームの管理というのがございます。これは次の知的制限にもつながっていくわけですけれども、従来、アメリカが加わっていましたドメインのネーム、これをICANNという国際的なオーガニゼーション(村井委員がそこの理事をされております。)に移ったわけですが、それをしっかりとしたものに立ち上げていくこと。それから、ドメインの名前が商標等と混同をもたらすケース、これにどのように対処していくかということです。

それから、知財法関係。これは先ほど申し上げましたような、全てネットワークで配られるようなもの、これを正当な利用者しか見られないようにしていくことが必要ですけれども、今度は、それを破るようなもの、これを禁止していく、あるいは民事的に対応していくというのがございます。そのほか、デジタルコンテンツの流通のルール、あるいはデータベースの保護。最近では、ビジネス特許、これについてアメリカで相当頻繁にその特許が認められてきていますビジネス特許に対応して、日本、ヨーロッパあわせて国際的な対応が必要になってきております。

それから、消費者保護。これは現在の各消費者保護法で書面の交付が必要となっているものをどのように対応していくかという問題がございます。

それから、税・関税の問題。これはWTOで議論されております。

それから、プライバシーの保護。これについてヨーロッパが個別のプライバシーの情報を集める場合に全て登録を求めるというアプローチをしておりまして、それと同等の保護をするところでないと、ヨーロッパの個人情報を出せないことがあり得るという法制にしているものですから、それと基本的にはビジネスの自主規制に任せるべきだというアメリカとの間での調整、あるいは国際的な問題としてございました。これは大体6月末をメドに収束しております。日本も、原則アメリカと同様、自主規制のアプローチをしながら、同時に、非常な違法行為ですとか、これの自主規制をきちっと守られるようなメカニズムですとか、そういうことを中心に現在、内閣でその基本法あるいは個別法の検討をされているところでございます。

それから、セキュリティ対策。この情報セキュリティ対策は電子商取引上の基本でございます。それらについて、必ずしも、情報機器あるいは情報システムの運用管理で十分なものができているわけではない。他方で、セキュリティ政策の基本にあります暗号の問題、これはむしろ暗号を自由に使わせることが、暗号の商用利用を自由にするということが電子商取引の基本である一方、その政策的な観点から言えば、それについて何らかのコントロールが必要ではないかという議論がされております。

電子商取引というのは非常に国際的な広がりをもっているものですから、APECですとか、民間のビジネスと政府の合同会合でありますGBDe、OECDあるいはWTO、その他、今回のサミットでも議論になりますし、WIPO、G8リヨングループ等々で広く議論されております。

次のページは、GBDeで昨年9月にやりましたときの概要、その結果でございます。

次のページは、今申し上げましたような多くのイシューについて、これだけ多くの国際的なフォーラムで議論がされてきているということでございます。

そのほかに、電子政府。これは2003年までに、政府への認可申請なり認可プロセスを電子化していくということで、特に電子証明、政府認証基盤。それにあわせて、今申し上げましたセキュリティ技術の開発等々の課題を対応していく必要がございます。

これについては、技術あるいはファイアー・ウォールで全てが解決されるわけではない、総合的な対策が必要だということで、次のページに、その全体の制度概要、技術開発と分けて書いてございます。

あと、先ほど申し上げました個人情報保護に関する現在の我が国の対応。

それから、米・EU間の協議というものを24ページにまとめてございます。

最後に、電子署名・認証に関する法制度について、先ほど申し上げたとおりでございます。

27ページに、将来ということで、今後の情報化を考えましたときに、先ほど来話が出ています従来の携帯、カーナビ、あるいはゲームで見られるような動画処理という技術をテコに、現在の日本のこれらの技術を活用しながら次の情報化のステップが進められるのではないかということで、ミレニアム・プロジェクトの中でも教育の情報化、電子政府の実現にあわせまして、郵政省と一緒に「IT21」という形で次世代の情報化の基盤技術を進めていきたいという取組みを行ったところでございます。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。ただいまご説明のありました情報化について、ご質問、ご意見があればお伺いしたいと思います。なお、時間の関係もございますので、委員の方から続けてご質問、ご意見を伺いまして、それに対する各省庁からのコメントは、最後にまとめてお願いしたいと思います。

それでは、ご質問、ご意見がございましたらどうぞ。

〔 A委員 〕 ITの研究者、技術者というものは、徹底的にアメリカと日本では数が少ない、一桁ぐらい違うのではないかと言われております。アメリカの場合は、インドとか、中国とか、どんどんそういう人を輸入しながらうまく使っている。日本の場合は必ずしも、そういうことが使えていない。

日本プロパーでそういった研究段階、システムの構築段階、あるいは運用・保守段階、各レベルでの日本での技術者の不足、これをどのようにして補足し、充実していくのか。そういう人材の育成について、あるいは輸入といいますか、そういったものの層の厚さをどのようにして日本の場合は構築していくのか、その辺をお伺いしたいと思います。

〔 B委員 〕 大変詳細な資料をご用意いただきましてありがとうございました。

郵政省、通産省、それぞれ共通した質問を2点申し上げたいと思います。

第1点は、情報技術をどのように経済の面あるいは社会生活の面で活用していくかというのは大変重要な問題でありますが、いずれにしても大変変化の速い分野でありますので、ただいまご説明いただきました、あるいはこの資料の中に盛り込まれました数多くの施策あるいは政策の中で、緊急性という観点から優先度が特に高いと思われるのはどういうものかということを、1つあるいは2つ程度でお話しいただきたい。

第2点は、情報技術を活用したビジネスプロセスの革新でありますとか、新しいビジネスの創出ということが大変重要な課題かと思います。そのためには、どうしても民間の活力といいますか、新しい参入、新しい投資というものが盛んに行われることが必要ですけれども、そのための条件として何らかの規制緩和といいますか、過去いろいろ行われている規制について「こういうものは緩和すべきだ」という点がございましたら、これも特に重要なものを1つ、2つご指摘いただきたい。

以上であります。

〔 C委員 〕 消費者の立場ということになるのですけれども、現在、経済企画庁からの調査事業ということで進めていることですが、インターネットを利用した個人間取引について調査をしております。 1,500人の方を対象にやっていまして、大変興味深いのが、こういったインターネットを利用した個人間取引というのを、条件が整備されればやってみたいと思う方が過半数を超えているということで、かなりの伸びが期待される。そのときに、3 点、気になる点があります。

1つは、このようにして個人が市場に出てくるということになると、既存の物流がすごく変化をしていくのではないかという意見がありまして、それほど大きな広がりは見せないというようにも思うのですけれども、そのあたりの物流の変化のようなものがどのように見込まれているか。先ほど、民間活力という話も出ましたけれども、オークションの形式だと「民間の活力」という形で入ってはきているのですけれども、その辺の物流の変化のようなものを、通産省あたりではどう見込んでいらっしゃるのか。

2つ目は、個人情報保護というのがインターネット取引では大変懸念されていまして、それについては検討課題のところに挙げられていたので、そのとおりだと思います。

3点目は、消費者が微妙な感想を持っておりまして、個人間取引なのだから、最終的には個人の責任であろうということですが、ただ、特に国際的な場に消費者が裸で出て行くことになるわけで、消費者保護の面が見えない。でも、個人が出ていくということであれば、民法の適用のようなところは最低のルールとしてはあるのかもしれないですけれども、そういった個人が裸で市場に出て行くようなときの最低限の法整備。個人情報保護とはまた別に、そういった意見もありまして、こういったことが消費者保護は一応項目としては挙がってはいましたけれども、まだ肉付けが足らないような感じもしておりまして、あそこに挙げられた項目以外にどのようなことをお考えかということをお聞きしたいと思います。

〔 D委員 〕 2点です。1点目は、郵政省のご説明に関して、放送がデジタル化するということの中で、結局、通信と放送の融合ということをご説明いただいたと思うのですが、具体的には、現在の政策としては、今のご説明もお2人の方に別々に説明をしていただいたということで、従来は分かれていたわけです。これが今後デジタル情報の基盤として、他の社会と利用者の視点からは、共通の基盤として考えられていくのではないかと思いますけれども、そうなったときに政策上の融合というか、共通の基盤ということはどうやって実現をしていくのかということです。

もう一点は、ご説明は全てドメスティックの非常に具体性のある説明です。ところが、デジタル空間というのはグローバルな空間です。経済審議会ですから、経済がどうなっていくかということは、グローバルなマーケットに対してどういう戦略を私たちは持てるのかというところがとても大切だと思うのですけれども、そういった意味で、グローバルな、私が期待しているのは、かなりアグレッシブな面の戦略です。いろいろプロテクティブな面の戦略というのもあると思いますけれども、今のC委員のお話も含めて、アグレッシブな面の戦略というのはどのようにお考えかということです。

〔 E委員 〕 先ほど来、不正アクセスの防止、セキュリティというご説明がありましたが、私、国際政治の論文等を最近読みますと、かなりしばしばサイバーテロリズムとか、サイバーウォーということが論じられ始めています。郵政省、通産省のどちらでも結構ですけれども、それはどういう事態と想定しておられるのか。それから、日本政府として、これは安全保障に係わる話ですから、どのような体制でこれに臨もうとしておられるのか、ごく手短かで結構ですからご説明してください。

〔 F委員 〕 郵政省の方にお聞きしたいのです。ここにいろいろな見通しがあるのですが、これはどういう価格をベースにしておられるか。つまり、通信事業の価格弾力性です。今NTTの接続料の引き下げ問題がありますけれども、仮に、例えば米国のような引き下げが行われたとした場合の違いといいますか。そういう何らかの価格の前提がなければ、こういう見通しはできないのではないかと思いますが、そういうことについてお聞きしたいと思います。

〔 G委員 〕 今、NTTの話が出ましたけれども、常時接続料が高いのは、下げられないのは、NTTの収益に影響するからだと新聞には書いてあるわけです。どうして、日本は高くて、アメリカは安いのか。NTTの収支とかいう次元の話ではなくて、どうして日本は高いのかということについて教えていただければと思います。

〔 H委員 〕 D先生、Gさんの今の話と関係するのですけれども、国際的にはIT革命で、第3次産業革命みたいなもので、これに勝たないと多分だめでしょう、というのが総論だろうと思うのです。

多分、個別的にいうと、弱い企業も助けなければいけないし、ライフスタイルとか、文化とか、そういうものも守らなければいけない。そういうことが恐らく、国際的にもみんな狭間にあるのだろうと思うのです。

そういう前提の中で、例えば国際競争に勝つためには、さっき言ったようにインフラを揃えなければいけないという意味では、例えば、接続料の問題で安くしなければ、なかなかこのスピードに追いついていけないわけです。そういう問題、NTTとの話がないだけに、各論部分と総論部分との問題点をどういうふうにしているのかということ。

それから、国際的にみると、アメリカとEUというのは別の流れを汲みながら国際覇権を争っていると思うのですが、では、日本は日本だけでやろうとするのか、もうちょっと日本とアジアというところを組みながら何か新しいポイントを考えていこうとするのか、国際戦略というのですか、その辺をお聞きしたいと思います。

〔 I委員 〕 私は、情報通信ニュービジネスの支援としていろいろな税制とか支援措置がありますけれども、これが起業のときにどれぐらい効果があったのかということが第1点です。

第2点目は、郵便局におけるワンストップ行政サービスの展開等がありますけれども、これまで言われていることは、端末をある箇所に置いたとしても、それほど利用度が少なくて、むしろ個々人に端末を持たせる方がずっと有効だということが言われていますけれども、個々人が端末を持つことについて、価格とか使いやすさということ、これは民間の企業がすることだと思いますけれども、郵政省としても何か考えておられるのかどうかということです。

〔 J委員 〕 電子商取引についてですけれども、先々回もちょっと申し上げましたけれども、暗号技術の強化は非常に大切だというのは、ご説明のとおりだと思いますけれども、絶対に破られない暗号というのは多分世の中にはなくて、私は、公的機関としてその暗号がどの程度の強度を持つかという評価をする機関を、ぜひ公的機関として作られることを申し上げたい。

もう一つは、電子商取引のような場合に、暗号が破られてある損害が発生した場合に、誰がどの程度の賠償責任までを負うのかというガイドラインのようなもの、もし政府としてお考えがあれば、そういうことがあらかじめ明らかになっている方が、例えば、それに対する損害保険をどうするかというような議論も加速されるのではないかと思うので、その辺のお考えはどうかということをご質問したいのです。

〔 部会長 〕 合計10名の委員の方から、本質的、かなり広範なご質問がございましたので、両省側で要領よくまとめて率直なご意見をお願いしたいと思います。

〔 郵政省 〕 ご質問の軽重とは関係なく、私は放送行政局の課長でございますので、放送行政からご説明させていただきますと、D先生のおっしゃったご意見というのは、通信と放送の融合に対して、行政としてあるいは制度的にどういう対応をするのかというご質問だと思います。

個別の話を置きますと、要するに、1つの伝送路、あるいはメディアを通じて、通信であろうが、放送であろうがいろいろな情報が流れるということは必然的な傾向だと思います。私どもとしては、少なくとも、その制度があることによって本来民間の方がやりたいことができないということだけはないように、制度の見直しというのは常にやっていきたいと思っておりますし、これまでもやってきたつもりであります。

ただ、法制として1つになるかといいますと、放送の規制といいますのは、いわゆるコンテンツ、ソフト、つまり言論・報道みたいなものに対してどういうふうに行政が関与するかということからの観点がありますし、通信というのは、通信の秘密をどうやって確保するのか、安全をどうやって確保するのかという観点が違いますので、その観点を1つの法律体系にすることは相当程度難しいのではないかと思います。

外国の法制も、実を言うと、すべてアメリカも、イギリスもそうなっているのですけれども、少なくとも、何か制度があることによって民間の方がやりたいことができないということだけはないように、ということでやっているつもりであります。

それから、担当ではないのですけれども、お二方から接続料の問題のご指摘がございまして、何で高いのかということですが、基本的に、最近の数字を私は詳細に掴んでおりませんけれども、例えばNTTの経費の40~50%ぐらいは人件費です。ですから、公共料金のいわゆる内外価格差というものをみるときに、職員の給料、使っている不動産、そういった日本でビジネスをやっていることの制約というのはNTTといえども逃れられるわけではないという事情がございます。ただ、だからといって、このままでいいという意識は私どもはございません。基本的に接続料、ローカル網のコストは下げなければいけないと思っています。いろいろな議論がございますが、基本的には競争を促進することを通じて、つまり、ローカル部門にいろいろな電波とか、先ほどちょっと申し上げましたテレビもインターネットの配信というものも、通信事業の競争相手になるわけで、そういったメディア間をまたいだ競争を今後とも一層促進していきたいというのが、私どもの基本的な考え方でございます。

〔 郵政省 〕 技術開発の関係がございます。質問がいずれも大変難しい質問ばかりですのでお答えできない部分も多々あると思いますが。

例えば、ただいま、情報通信産業技術戦略ということで、通産省、郵政省あわせて、京都大学の長尾先生を座長として会合が開かれていることも承知しております。

情報通信分野は、非常に早く動いております。ドッグイヤーといわれていたのがキャットイヤーということですが、そういったスピードの中でも、例えばネットワーク関連技術とか、コンピュータ関連の技術とか、ヒューマンインターフェースの技術とか、共通な基盤研究の分野とか、あるいはネットワーク技術の中でもルーターの技術とか、日本で強い弱いがありますけれども、それを世界の研究者が魅力をもってこの日本でも、情報通信の環境を生かして作る場所というのをどうつくっていくかということは課題だと思います。

一例を挙げますと、京都に、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)という研究機関がございます。電気通信ということで、10年ぐらいたちましたでしょうか、世界のトップクラスに数えられる研究機関でございます。そこに行きますと、海外からの研究者が来られて和気あいあいと切磋琢磨している姿があるわけでございます。ボストンの郊外のリンカーン研究所ですとかアメリカの有数な研究所と同じような雰囲気、環境等の整備が強く求められているなと思うわけでございます。

サイバーウォーの関係、これも感想の域を出ないのですが、「21世紀のビジョン」をとりまとめる中で、私どもは資料編というのを作りました。その資料編の冒頭に、アメリカが航空宇宙部の中に、サイバーテロに対し軍備面からも備えた例を記述してございます。そういう意味で、今回、いろいろなホームページのハッカーの問題がございましたが、その辺については急速に対応せざるを得ないものと考えておりますが、ただ、国会の政治の方の分野でも考えていただいていますし、私どもなりに考えなければならないと考えております。

ワンストップ行政の点のご質問がございました。ワンストップ行政につきましては、今全国いろいろなところで実験を行っております。私、去年まで沖縄におりましたが、沖縄の八重山地域という与那国島を含めたところでワンストップの実験を行っております。そこでの実験開始に私が立会いまして一番うれしいことは、おじいさんが来られまして「これは使い勝手が悪いと思ったら、使い勝手がよかった」とおっしゃっていただきました。データベース化が日本の市町村は遅れているために、まだ満足な実験の内容ではございませんが、今ある既存の技術を使いまして、ある一箇所に行けば用が足りる。その島の場合ですと、船に乗って行くというような環境、これはどなたからかご指摘のあった、消費者といいますか、そこを重視する政策にもつながっていこうかと思います。

情報通信技術という分野は、本質的に格差を生み出す可能性が強いということが感じられてなりません。私、説明のときに、デジタル・ディバイドということが世界的には課題であるが、なおアクセス・ディバイドがある、こう申し上げましたが、それをどうするかということは大きな課題でございます。

幸いにしまして、日本は早期に全国的な通信網も完成していますが、なお、デジタル化へ移行するに当たりまして、一部の層だけが取り残されるという政策をとるべきなのかそうではないのか、ということはあってはならないと考えております。絶えず、ユニバーサルな原則を、表面に出すかどうかは別としまして、競争体制がまた一方で大事ですけれども、そこをどう確保するかということは重要だと考えております。

しかし、情報通信技術の進展によりまして、今までは、過疎地域あるいは離島、離れた所といわれたところが距離を克服することによってメジャーなところに変質する可能性もございます。あるいは、雇用が大都市から地方に移転できるという実例も多々生まれています。そういう意味では、グローバルな中でも同じことが起こり、可能性も開けようかと思います。そういう意味で、アグレッシブなところを考えるべきではないかと思います。

思いますに、1960年代初頭に人工衛星の通信が大陸間、太平洋の間でも行われるようになりまして、極東の島国であった、商社の方からカタカナで通信文を書いた、あるいは電話が全く使えなかった時代が、あっと言う間にこの数十年の歴史の中で変わって、ある種の経済大国として日本が変容したわけでございます。こうした競争条理の中で立ち遅れるべきではないと考えますが、それがまた別の影の部分を、ハッカーのように、サイバーテロのようにございますので、そこは対処しなければいけないものと考えております。

そこで利用をしている方々、国民、あるいは世界的な中での動きでございますので、日本だけが、ということはあり得ないわけでして、ある分野では遅れ、ある分野では進みというところでの協力といいますか、多国間での協力、あるいは国ベースだけではなくて、個人の間での協力ということが非常に多層的に積み上がっているのではないかと思います。

〔 通産省 〕 時間の関係もございますので、できるだけ簡単にお答えいたします。

人材の問題につきましては、80年代以来、量的な不足がくるということで、われわれもずいぶん量的なカバーをするための専門学校群の支援等々をやってまいりました。また、その当時も情報技術者の中国あるいはインドからの移入に対して、法務省とも話をしながら、あるいは労働省とも話をしながら、できるだけそういうことがスムーズに行えるようにやってまいりました。

ただ、最近になって1つ感じておりますのは、量的な不足もさることながら、特にアメリカなりと比べましたときに、非常に高度な質を持った頭脳、これの絶対量が不足をしているというところが実は大きな問題でございます。これにつきましては、大学の学部の創設、それの定員の柔軟性等々の問題については、文部省ともいろいろとお話をしていく必要がありますけれども、同時に産業の方で、そういう質の高い労働者といいましょうか、頭脳を、そういうものとして処遇をして受け入れられるような、そういう体制を作っていく。10年前には、例えばプログラマーの「使い捨て」というようなことが言われていたわけですけれども、そういうことのないような産業の体制を作っていくこともまた必要な側面だと思っております。

緊急性、優先度は、あらゆるものが緊急だと言いたいところですけれども、電子商取引というのが今後、社会全体・経済構造全体を変えていく上で大きなものでございますので、それのルール整備を至急やっていかないといけないと思っております。

あわせまして、これはどこの国も必ずしも完成しているところではございませんけれども、本格的な電子政府というのを、日本が先頭に立ってやっていきたい。そのことによって、質のいい需要をつくり出していって、そこに競争的な産業が出ていくということも含めまして、波及効果は大きいと思っております。

民間活力の関係の規制緩和、その規制緩和が重要だということは、例えば、80年代の日本で、従来競争的な製造業が半導体技術を使いこなしながら情報化を進めていったとか、90年代で規制緩和をされたアメリカの金融業がアメリカのソフトあるいはネットワーク技術を使いこなしながら情報化を進めていったという意味でも、非常に大きな全体的な課題だと思っております。あえて申しますと、そのインパクトの大きさからいえば、マーケットのファンクションを司るという意味で、情報通信、流通、金融、労働、そういう主要なところがより自由になっていくことが重要だと思っております。

3番目に、個人間取引の関連で物流の変化についてご質問がございました。これにつきまして、基本的にはより合理的なものが生き残っていくという意味では、基本的には歓迎すべき流れだろうと思います。日本の場合には宅急便というのがございますし、そういった意味でかなり自由にやれる部分もございました。ただ、これが世界も含めた物流ということがどういうふうに変わっていくか、あるいはその価値というのが、物に付帯されないで、その価値としてネット上で配信されていく。そういうことも含めて考えますと、まだまだ考えていかなければいけないことはあると思っております。

消費者保護の問題、これはまず、どこの国の法律が適用されるべきか。いわゆるドットビジネスの事業者からしますと、突然、世界中の消費者保護法規を知らないとビジネスができないと言われても、これは困る。他方で、消費者の方からみて、当然、自分の権利が守られていると思ったものが守られていないという状態、これも困る。そういった意味で、OECDのような場でのある種の実態的な軌範の整合化、それからハーグ条約で議論されていますような、何法が適用されるかという法制度の問題、そういう問題がございます。ただ、我々として一番大事なことといいますと、力を入れていきたいと思っていますのは、オールタナティブ・ディスピュート・リゾルーションと申しましょうか、裁判外のディスピュートを早期に実質的に解決していくメカニズム、そういったものがいろいろなところでネット関係で出てきております。そういうものが整備されていくことが実質的にその法が守られていく、あるスピードでそのディスピュート(Dispute)がセトル(Settle)されていくというようなことを通じて、それと、いわゆる自主規制のようなものとが組み合わさりながら1つのルールができていくということかと思っております。

それから、国際的な日本の情報産業というもの、あるいは日本の競争力というものについてどう考えていくかということでございますけれども、基本的には、先ほど触れましたけれども、一方では、ある種コアになる技術の開発、あるいはそれの標準化というプロセスと、それを自由に使いこなす厳しい消費者、厳しいカスタマー、あるいは競争環境というものが、現実にはその産業を育てていくことにつながっているのではないかと思っております。そういった意味で、郵政省と一緒に進めております“IT21”ですとか、そういう技術開発のプロジェクト、それと規制緩和ということが総体として日本の情報関係の産業競争力を強くしていくのではないだろうかと思っております。例えば、携帯にまつわる分野、あるいはゲームに見られるような動画処理の技術というもの、それを自由な競争環境の中で厳しい目で使われていく、そういうことが1つのポイントと思っております。

それから、サイバーテロにつきましては、先日のハッカーの事件もございましたし、政府で防衛庁、警察庁も含めまして、セキュリティ関係の会合を設けながら現在、詰めております。ただ、セキュリティの問題といいますのは、逆に、完全に安全だということもございませんし、かつある1つの手段だけでそれが防げるということでもないと思っております。そういった意味で、全体的な技術の面、警備的な面、あるいは自主的なといいますか、ユーザーあるいは個々のサイトでのプロテクション、そういう面を複合した全体としてのセキュリティのポリシーというものを政府全体として立てていく。どこかに入られてしまうと、必ずほかにも入れるわけですから、そのときに、こういう言い方をするとやや語弊がありますけれども、今のホームページではまだいいのですけれども、もし電子政府が本格化したときに、そのアプリケーションなり、そのアプリケーションに対して、ハッキングが自由にかけられるようになりますと大問題になりますので、そういった意味でも、さらにそれを超えて国際的なセキュリティという観点でも、我々としてはある意味で最大の技術的な問題だと、政策的な問題だと思っております。

それから、通信につきましては、我々の立場からいえば、できるだけ自由に、できるだけ安く使えるようにしていただく。そのため、競争環境を作りながら、いろいろなラインなり、無線なり、CATVなり、そういうものがどんどん競争をしながら、より自由な安い環境をつくっていく、そのように持っていっていただくことを我々としては希望しているところでございます。

それから、欧米の主導権とアジアという問題がございます。アジアにつきましては、APECという場を通しまして、あるいはその他の場のいろいろな話を通しまして、アジアの中での1つのまとまり、例えば、標準化をめぐりまして、デファクトの戦略を取っていますアメリカから見ると、ヨーロッパがまとまってISOなりで標準のプロモーティングをしているということが1つの、アメリカからみると、やりにくい点となってくるわけですけれども、そういう意味で、われわれとしてアジアという観点からどういう形でまとまれるか。ただ、ヨーロッパと違って、アジアの各国にはバラツキがございます。そういう意味で、まずお互いの認識を揃えていくというプロセスからスタートしてございますけれども、ただ、この分野は、誰かがおっしゃっていましたように非常に早いですので、そういった意味で、我々としてもそういうプロセスを通じながら、相当早いスピードでアジアの1つのまとまりというものが出てくるのではないかと思っております。

それから、暗号の強度評価。これは全くそのとおりで、暗号の強度を評価していく。暗号について、絶対に破られないという暗号はないわけですが、どのぐらいの強度かということについて、それに対して評価をする標準化を進めていく、というプロセスもスタートしております。そういう意味で、暗号技術自身の開発、暗号の強度の評価技術の開発、あるいは暗号自身あるいは暗号の強度評価についてのISOなりを通しての標準化を進める。そういったプロセスが現在、進行しているところでございます。

一部抜けたところがあろうかと思いますけれども、時間の関係ではしょってご説明いたしました。

〔 郵政省 〕 資料2の最後のページが多少ご参考になろうかと思います。ITの問題といいますのは、従来の工業化社会を前提としての組織とはちょっと違うのではないか。ある識者によれば、デジタルというのはアナログの世界と違うのではないかと、こういうことでございますけれども、それをどうしたら、見直してリソースを集中化して再配分を大胆に実施できるか、こういうことにもなろうかと思います。

例えば、先ほどの冒頭では、次世代インターネット、情報家電、スーパーインターネット、こういう流れをお示ししましたが、この国の中で何が得意だったのだろうかと。ビジョンを作る中で、ものづくりとか、そういうことを忘れてはいけませんよというご意見を多々いただいたのですけれども、そういう中で情報家電等をどう伸ばしていくか。成功モデルを作るにあたりましても、温故知新ではありませんけれども、何が得意なのか、何がいいのかと、そういうのをどう伸ばすかというところがポイントになろうかと思いますし、人材の問題につきましても、トップクラスの研究者はもとよりですが、学校インターネット等の予算をどう確保するのかという細かい問題から、担い手の多様化でSOHO、NPO、女性の方々、高齢者のバリアフリーの機械をどう作っていくのか、操作しやすいためにどういうOSがいいのか、こういう細かい対応が大事かと思います。

価格の問題につきまして、いろいろ問題があることにつきましてはご高尚のとおりで、一概に申し上げられませんが、大量生産に至った中で低廉化していくというのは当然の帰結ですので、数をどう増やすかというところもあろうかと思います。私が申し上げたいのは、情報通信関係の技術というのは、日本の中でも産業・経済の牽引力になっているという事実は申し上げたいと思います。そういう意味で、これをさらに伸ばして日本型のITの成功モデルをどう作っていくかというところで頭を悩ましているわけでございます。

例えば、iモード、これはNTTドコモの会社のものですが、あっと言う間に 500万台を突破いたしました。携帯電話の数が、固定の黒電話のこの3月末では5000万台という数字を超えたはずでございます。これは逆に言いますと、普通世帯普及率からしましても、アメリカを携帯電話では抜いているわけですから、日本のモデル、皮肉な言い方をする方は、日本の家が狭いから流行ったのではないか、と言われる方もおられるわけです。この現状の中で、そうしたものをやって、それが世界に合うかどうか。

1つ例を申し上げましょう。中南米のある電気通信事業者の方は、私にこう言いました。日本では携帯電話があるが、銀行の口座を持ってない人が多いので、中南米ではプリペードカードを差し込む携帯電話でないと売れないのだ、こういうご指摘もございました。

それぞれの環境の中でやりたいと思いますが、特段申し上げたいのは、日本というこの国の中で成功モデルを作って、それが世界に本当に通用するのか、あるいは通用しなければ、過去に工業製品をいろいろと土地の環境に合わせたように、タイでは緑色の車が好まれるかもしれない、ということでの対応が図っていくことが重要ではないかと考えております。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。大分時間を超過いたしましたけれども、委員の皆様のご意見あるいはご質問には、あるいは十分でなかったところもあったかもしれませんけれども、非常に広範なご説明をありがとうございました。今後のこの部会の審議に十分生かしていきたいと考えております。通産省の機械情報産業局次長、本日はどうもありがとうございました。

続きまして、世界への情報発信にテーマを移したいと思います。まず文部省から人材育成、大学の国際化、国際学術交流等についてご説明をいただき、その後、先ほどの郵政省のご説明も含めまして質疑応答を行いたいと思います。それでは、文部省の初等中等教育局審議官、学術国際局審議官、よろしくお願いいたします。

〔 文部省 〕 「世界への情報発信について」ということで、文部省からは、今部会長の方からお話がありましたように、大学の国際化、あるいは研究開発環境の整備等についてご説明するとともに、世界に通用する人材の育成ということにつきましては初等中等教育局の方からご説明を申し上げたいと思います。

最初に、特に大学の部分でございますけれども、大学の教育・研究活動を通じた国際貢献が重要であると考えております。それで最近では、例えば、平成10年10月には大学審議会から「21世紀の大学像と今後の改革方策ー競争的環境の中で個性が輝く大学ー」という答申が出ております。それから、昨年6月には「知的存在感のある国を目指して」という答申が出ておりまして、文部省として大学・学術の面でいろいろな改革を行っているわけですけれども、この2つの大きな答申を踏まえていろいろな施策をやっております。

この土曜日、日曜日には、G8の教育大臣会議をホストしまして、G8の間での教育面での国際協力・協調について議論もいたしましたし、途上国に対してどういうことができるかということも議論したわけでございますけれども、このようなことを通じまして今後、日本がどういうように発信できるかということについての取っかかりにもしていきたいと考えております。

前置きはこのくらいにいたしまして、資料に基づいてご説明を申し上げます。最初に、外国人研究者の受入れについてということでございます。お手元の資料5でございます。これは学術の面で申し上げますと、学術というのは本来国境を超えているものでございます。したがいまして、研究者の国際交流というものは学術水準の向上にとって不可欠と認識しております。この観点から文部省及び日本学術振興会のさまざまな事業等の施策の充実に努めているところでございます。現在、平成10年度においては、お手元の資料にありますように、2万1,170人の研究者の受入れを行っています。

1ページめくりますと、アジアが一番多くて43.2%、ヨーロッパが28.1%。それから、国で申し上げますと、中国が非常に多くて21.3%、アメリカが17.1%、韓国が 8.5%と続いております。

外国人研究者につきましていろいろな方策がございますけれども、先ほど申し上げましたように、文部省、日本学術振興会によるフェローシップの事業とか、外国人研究者の任用及び雇用による受入れということもございます。それから、来た外国の方にとっての宿舎の整備ということもございます。こういう今後の課題でありますけれども、外国の研究者の方々に日本に来ていただくということについては、このような受入れの施策を充実するのは当然でございますけれども、何と言っても日本の学術研究の水準を高くしなければいけない。魅力のある、充実した大学等の研究環境の整備充実を図ることが必要であるということで、先ほど申し上げました、昨年の審議会の答申にもそのことについていろいろと触れてあるところでございます。

引き続きまして、留学生のことについてご説明を申し上げます。ここにいらっしゃる委員の皆様はご案内のように、文部省は留学生受入れ10万人計画というのを進めております。留学生は、「未来からの大使」と言われていますように、日本の国際親善とか、あるいは日本の大学においていろいろ勉強してもらう。国に帰って、その国にいろいろ役立っていただくという観点から、われわれは10万人計画ということで、そのいろいろな施策の充実に努めているところでございます。

資料の5ページをご覧いただきますと、10万人計画は最初ずっと増えてきたわけですけれども、94年あたりから数字がやや横這いになっておりました。しかし、99年、昨年では前年度比約8.7%ということで、大幅に増加しております。いろいろな要因が考えられると思いますけれども、初閣議における小渕総理の、質量ともに留学生施策を充実しなければいけないとか、各大学等における国際化の進展、留学生受入れ体制の整備充実、意識の改革、入国・在留手続きの改善が行われたということ等の理由によるものと思っております。

6ページですけれども、国費が15.7%、私費が81.5%ということで、特に留学生としては中国、韓国が大変多い状況でございます。

留学生における課題、どういうことをやらなければいけないかということですが、何はともあれ、まず最初に、非常に生活費の高い我が国へ東南アジアあるいは中国から来られるということで、経済的な支援がまず1つ大事である。それから、英語によるプログラムの拡充や、アジアのリーダー養成を目的とした新たなプログラムの開発、日本語のハンディの克服というところがございます。

日本としては、国費留学生が現在約 9,000人ということで、かなり国費で留学生を受け入れているという、非常にユニークな状況ではないかと思いますけれども、その次に、私費留学生に対する支援もございます。そのために現在、約4万 5,000人の私費留学生の4分の1に対して奨学金を出しております。それから、留学生宿舎の整備ですけれども、現在、大学附属の留学生宿舎をはじめ留学生のための宿舎の整備が喫緊の課題になっております。経済界の方にも大変お世話になっているところでございますけれども、このような政策を一層充実する必要があると思っております。

何はともあれ、日本語のハンディの克服で、日本語教育体制の充実、英語による教育体制の充実、これは英語による特別コースをもう組んでいまして、31の国立大学の大学院で設置ずみでございます。

それから、長い期間来るのではなくて、短期留学プログラムも大事であるということで、大学短期交流を結んでいるようなところから、1年間の短期留学プログラムで受け入れる、あるいは派遣するということもやっております。

それから、試験の問題、試験を受けやすくするということもございます。

さらには、大学の質的充実が重要であるということでございます。

その次のアイテムですが、「国際共同研究について」に移らせていただきます。国際共同研究ですけれども、学術の面で、先ほど申し上げましたように学術というのは人類の福祉の向上に役立つ、学術は非常に普遍的なものであるということで、いろいろとそのために国際的な協同研究というのがあるわけですし、ますますいろいろとやらなければいけないというところでございます。

そもそも、学術のサイエンスの方ですと、研究者同士がまずは研究を一緒にやろうということが大事なわけで、そのためのスキームとして科学研究費とか、学術振興会のいろいろな予算というのを整備しているわけでございます。そのほか、政府間協定に基づく国際共同研究、日米とか、日仏とかいろいろなところと政府間協定に基づいた上での国際共同研究が行われています。それから、多数国間でも、例えばユネスコ等の提唱によるプログラムに対する国際共同研究もございます。それから、国際的な研究計画、ビッグサイエンスというようなこともありますけれども、これに対する国際共同研究というので、例えば欧州原子核研究機構(CERN)の素粒子物理国際共同研究というのに約 138億円、財政的に措置しまして、こういうところと国際共同研究を行っているということがございます。

引き続きまして、大学の組織運営の活性化についてでございます。日本の国際的な発信をするためには、何はともあれ、我が国の大学が世界に対してグローバルスタンダードといいますか、非常に光った大学にならなければいけないということが大前提としてございます。それで文部省としても、最近10年余り、大学審議会答申を踏まえまして大学改革を進めているところでございます。大学教育研究の高度化、個性化、活性化などを目指して、大学設置基準の大綱化、大学の自主性・自立性を高める方向で関係制度の見直し・弾力化を行っております。

また、この制度改革に伴いまして、関係者に教育改革の意識が浸透してくるということで、各大学でカリキュラムの見直し、あるいは自己点検評価の実施、大学院の拡充などが進んできているところでございます。

現在、我が国の高等教育に対する支出は、他の先進国と比較しましても、国内総生産GDPや、大学教育に対する公財政支出の割合が低いということがありまして、大学改革を推進するための基盤を確立するためには、公的支出を先進国諸国並みに近づけていくことが非常に重要であると思っております。

それから現在、国立大学においては施設の老朽化、狭隘化ということがございまして、これへの対策が喫緊の課題でございます。

以上の話を踏まえまして、「大学の組織運営の活性化」でございますけれども、ここにありますように4点、大学の組織運営の活性化を積極的に推進しています。第1に「国立大学の責任ある組織運営体制の確立」、第2に「社会に開かれた国立大学」、第3に「多元的な評価システムの確立」、第4に「大学教員の任期制の導入」ということで大学の組織運営の活性化に努めているところでございます。

現在、国立大学の独立行政法人化という問題がございます。平成11年4月に「中央省庁等改革の推進に関する方針」について閣議決定がございまして、「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成15年までに結論を得る」。文部省としては、昨年9月に国立大学長等に対する説明をいたしまして、ここに掲げているような方向を説明、公表したわけですけれども、現在の状況は、資料の13ページの下に書いてありますように、「国立大学協会をはじめ関係者の意見を聴きながら検討を進め、できるだけ早期に基本的な方向の結論を得る予定( 制度の詳細については、さらに時間をかけた検討が必要)」ということでございます。

最後になりますけれども、産学協力の推進についてでございます。現在、大学と企業との連携協力が大学の社会貢献を進める上でも、学術研究の進展の上でも非常に重要であると認識しております。そのために文部省としてもいろいろな施策を講じておりまして、国立大学における企業等との共同研究などのさまざまな制度の整備・改善を進めておりますし、その拠点としての共同研究センターの整備を行ってきております。さらに、平成10年度には、大学からは、例のTLO法の制定ということもやっております。それから、国立大学の敷地に企業等が共同研究施設を整備しやすくする研究交流促進法の一部改正を行ってございます。

その実績でございますけれども、10年前との比較ですが、共同研究ですと 4.4倍、受託研究の受入れ額が 9.2倍に、寄附講座・寄附専門部門が 6.6倍に増えておりまして、飛躍的に産学連携の実績が上がってきてございますけれども、なお一層いろいろなことをやらなければいけないということでございます。

TLOにつきましては現在、全国で10機関を承認してございます。

それから、今国会では産業技術強化法案が出ておりまして、国公立大学の受託研究に係わる資金の受入れ等の円滑化、これは複数年度契約を可能にするとか、教員の民間企業の役員兼業、TLOの国立大学施設の無償使用、特許料の軽減などを盛り込んでおります。文部省としては、一層諸制度の改善充実、予算の充実に努めてまいりたいと考えております。

以上でございます。

〔 文部省 〕 引き続きまして、私、文部省の官房審議官で初等中等教育局を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、3点に絞って資料をご用意して、簡潔にご説明をさせていただきたいと思っております。いわゆる独創性を重視する教育環境をいかに整備していくかという観点から、これからの小学校教育、中学校教育、高等学校教育のあり方ということで「教育課程の改善の主なポイント」。それから、そのこととも関連して、今後の情報化に対応する教育をどのように進めていくのか。さらには、国際化への対応の中で外国語に関する教育をどのように進めていくのか。この3点に絞った資料をご用意いたしました。

16ページにございます「教育課程の改善の主なポイント」をご用意しましたのは、平成14年度には完全学校週5日制に移っていくわけです。そのことも考慮しながら、これからの学校教育のあり方の大きな1つの鍵になります学習指導要領、教育内容を全国的な大綱的基準として定めておりますが、これが大きく変わります。そのことを中心にご説明申し上げます。<改善の基本的な視点>の中で「『ゆとり』の中で『特色ある教育』を展開し、子どもたちに『生きる力』をはぐくむ」と、「生きる力」というのをキーワードで今回立ててございます。それは、子どもたちの今の状況を見ますと、大変大きく時代が変化する中、いかに主体的に子どもたちが力を身に付けていくのか。さらには、今の子どもたちの置かれている育成環境、育っていく環境をみますと、3世代同居といった昔のような状況はもうございません。核家族化、少子化でございます。さらに、子どもたちの今住む状況というのは、自然というものがどんどん少なくなって、都市化の中で子どもたちは育っていく。今の育成環境の中で子どもたちの問題点もかなりあるわけでございます。それを踏まえて、子どもたちに「生きる力」をもう一度きちんと身につくような教育というものを考え直そうとしたわけでございます。

すなわち、「生きる力」というのは2つございまして、自分で課題を見つけ、自ら学び自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力、こういったことをもう一ぺん言わざるを得ない状況に今きております。

もう一つは、自らを律しつつ他人と協調し、他人を思いやる心や、感動する心など、豊かな人間性とたくましく生きるための健康と体力、ここも非常に大切でございます。

「生きる力」をキーワードとして、これからの学校教育を大きく変えていこうとしたわけでございます。

そういう目でご覧いただきますと、点線で囲んでいる中の2番と3番が大変重要になってくるわけでして、「多くの知識を教え込む教育を転換し、子供たちが自ら学び自ら考える力を育成」しようというのが1つの方向でございます。もう一つは、「ゆとりある教育を展開し、基礎・基本の確実な定着と個性を生かす教育の充実」ということでございます。

完全学校週5日制のこともございますので、教育内容をかなり厳選いたしました。いわば基礎・基本にできるだけ徹底する。基礎・基本は確実に身に付けさせるように、これは繰り返してでも教え込んでいく。しかし、それ以上のことは、それぞれの子どもたちのいろいろな力を、個性を大切にし、それを伸ばしていこう、こういう発想でございます。

そういう具体的な内容として、下の方にございます「教育内容の厳選」がございます。それから、縦割りの教科だけではなかなかうまくいかない面がありますので、「総合的な学習の時間」というものを新たに設けることといたしました。いわば横断的、総合的な学習ができるような時間枠を新たに作っていったわけでございます。さらに、「選択学習の幅の拡大」と申しますのは、基礎・基本に徹底しますので、中学校、高等学校になりますとできるだけ必修教科を絞り込んだ上で、さらに選択教科をできるだけ増やしていこう。それによって子供たちの多様な能力を伸ばしていこうという発想でございます。後ほどまたご説明いたしますが、5番は外国語教育、6番は情報化の話でございます。一方、4番の「道徳教育」にありますように、基本的なしつけなり、基本的な生活習慣、態度というものが大変重要になってきている。そういう目で学校教育も見直していくこと、これは学校教育だけではなかなかできません。家庭教育、地域社会を含めたトータルな取組みが必要だろうと思っております。そういう目で今、学校教育を変えていこうと思います。また、今は学習指導要領の問題を申し上げましたけれども、これを実現するためには、いわば教育の具体的な指導方法も重要になってまいります。かつてのような黒板を背にした一斉指導中心主義から、できるだけ多様な教育に転換することも重要であります。そういう意味で子どもたちの指導方法を変えていこうとしております。これが「教育課程の改善の主なポイント」でございます。

18ページにいきまして、情報教育でございます。情報教育を充実する観点から、それぞれの発達段階に応じて情報教育の充実を図っていこうということで、発想としては、「基本的な考え方」にありますように、「すべての児童生徒に、情報及び情報手段を適切に選択・活用できる能力(情報活用能力)を育成する」、これを小学校、中学校、高校とそれぞれの発達段階に応じて適切に対応してまいりたいと思っております。このことは、もう一つ隠れております、情報社会に必要なルールやマナーをあわせてきちんと子どもたちに身につくように進めたいと思っております。そういう意味で、真ん中にありますように、「教育内容の充実」を図ったわけでございます。中学校においては情報に関する内容は、今までは選択でございましたが、それを必修にいたします。高等学校においては、普通科に新たに情報という教科を設け、それを必修化いたします。それから、「具体的な施策」にありますように、教育用コンピュータについては、既に平成11年度、特別教室に1人当たり1台(小学校は2人当たり)の整備を図ったわけですけれども、12年度以降17年度までに、18ページの右下にありますように相当な数の整備を図っていこうとしております。特に、特別教室だけではなくて、普通教室にもコンピュータを入れていこうという計画を立てて、実行しようとしております。

19ページにございますように、インターネットの重要性が非常に高まっております。「平成13年度までにすべての学校をインターネットに接続」するように郵政省とも協力しながら今進めているところでございます。

さらに、このためには「教員の指導力の向上」が必要ですので、13年度までには、全教員がコンピュータを当然に操作できる、半数はコンピュータを用いて指導ができる、こういう計画を立てて今研修に取り組んでいるところでございます。その他さまざまな施策を今講じようとしております。

最後、21ページにとびまして、国際化への対応、外国語教育でございます。外国語教育の重要性もございますので、今回の学習指導要領の改訂において、コミュニケーション能力をさらに徹底したわけでございます。特に、外国語は今まで、建前としては選択だったわけですが、必修という形にいたしました。それから、小学校でも外国語に触れうるシステムを導入しようということで、これは教科にするかは、専門家の間でも議論がございました。が、一教科としてではなくて、「総合的な学習の時間」で触れうるような施策を講じていくということに、学習指導要領ではしたわけでございます。

さらに、語学学習を推し進めるためには、JETプログラムといって、アメリカ等々からネイティブスピーカーを招く授業を行っています。各学校等にそれを配置しているわけですが、今 5,800名が来ていますが、そのうち 5,200名が外国語指導で来ておりますけれども、そういうものをさらに増やしていこうと思っております。

それから、実際に担当する英語担当教員の指導力の向上、これも積極的に図ってまいりたいと思っております。

22ページにございますように、「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会の設置」、これだけツールは揃っているのですけれども、実際に何が本当に問題なのか、学校現場でいろいろやっていてもなかなか進まない面がございます。もう一度見直そうということで、懇談会を設けて、いろいろ幅の広い人たちに入っていただいて、指導方法の改善をもう一度具体的にやっていこうと思っております。

それから、先ほど申し上げました「小学校から始める英会話学習の支援」も、これからやっていこうということでございます。

大変はしょった説明で恐縮でございますけれども、以上3点に絞ってご説明申し上げました。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。ただいまのご説明のありました世界への情報発信について、ご質問、ご意見があればお伺いして、まとめてコメントをしていただきたいと思います。

〔 E委員 〕 外国語教育と書いてありますが、実質的には英語だけという感じがするわけですけれども、JETでフランスやドイツから来る人は、そういう言葉を教えるのでしょうが、英語以外の語学についての文部省のご方針はどうでしょうか。

〔 D委員 〕 担当省庁的には文化庁かもしれないですけれども。今、外国語をどうするかということは大変ご説明いただいたと思うのですけれども、日本語が世界に対してどのように使われていくかということを、これも戦略的に正しく考えていく必要があるのではないかと思うのです。これはまさに、情報発信という言葉でご説明いただきましたけれども、情報を伝えていくという中で、今のインターネットは英語だと言われますけれども、言葉に対する世界のリスペクトだとか、そこに引きずってくる文化とか、そういう状況がそういう形の努力の中で大分変わってくるという予想も立ちますので、だとすれば、これは大変重要な課題ではないかと思いますけれども、これはどのようにお考えでしょうか。

〔 C委員 〕 子どもが2人いて今度、中学校と高校に入るのです。先ほどの説明の中で情報というのを教育課程の中に入れていくということで、小学校が1人に1台、高校でも情報という教科を入れるということですが、子どもたちの様子を見ていると、ものすごく早く操作に慣れています。コンピュータクラブにも入っていたので、それは遊びだったのですが、そういう下地があったからかと思うのですけれども、すぐに操作を覚えている。それから、パソコンを持っている家庭が多くなっているので、家庭で覚えてくる子たちもいます。下の子などを見ていると、小学校6年のときに、少しずつ情報の授業が始まっていて、本人が今やっていることは、ジャイアンツの情報をインターネットで接続をしてどんどん取り込んでいっていて、「授業中にそんなことをしていていいの」とかいう話をしていますが、小学校、中学校、高校とどういうような流れで情報という教育をやっていこうとなさっているのか、もう少し聞かせていただけたらと思います。

〔 K委員 〕 資料の15ページの産学連携のところですけれども、TLOというのが今話題になっていて、ここの表にも北海道大学を挙げていただいていますけれども、私は、これの設立準備室長をやらされて大変な苦労をしたのです。それで、今は10校あるのですけれども、全部がどうかは知りませんけれども、現在のTLOは、補助金と、どこかの出向者と、学内のボランティアと、この3つの要素で何とか立っているという状況だと私は思っています。

海外をいろいろ調査しますと、特許事業というものだけ、技術移転ということだけではなかなかTLOというのは生きていけないということが大体明らかになってきている。今後、せっかくできたTLOがどうやって生きていくのかということを考えなければいけない。もちろん、それは我々の課題でもあるのですけれども、ボクシングでいえば、15ラウンドはとてももたなくて、「TLOが途中でTKOになる」、これは東大のある先生がいつもおっしゃっていることですが。それで例えば、せめて5ラウンドまでは何とか立てるように、もう少し支援が得られないものかと思っています。

補助金に関しても、実はあと4年ぐらいで補助金が切れるとか、出向者というのは大体2年ベースですから、2年たったら帰っちゃう。それから、学内ボランティアというのも、いつまでもそれを期待できるかわからないので、何とかTKOにならないような措置を考えていただけているのだろうか、そのあたりをお聞きしたいと思います。

〔 L委員 〕 私も、C委員と同じような疑問があるのですけれども、コンピュータ教育ということについて、これはもちろんやらないよりやった方がいいと思いますし、端末等を整備することは非常に必要だと思いますが、ただでさえ週休2日制で授業時間が減っていくときに、時間のトレードオフがあるわけですから、こういうものを必修化すれば基本科目の教育時間が減ったりするわけです、数学とか、国語とか、英語とか。そこまでコンピュータ教育というのに時間を、特にトレードオフの関係があるときに、費やす必要があるかというのは非常に大きな疑問があります。

1つは、私自身の経験からいっても、20年ぐらい前に計量経済学を始めたときに、フォートラン77だとか、基本的なプログラミング技術を勉強するためにものすごい時間を使いましたけれども、今は全くそんなものは何の役にも立たないというか、もちろん記念碑的な役には立ちますけれども、「昔、そういうことをやったな」という話です。さっきから話が出ていますけれども、ドッグイヤーとか、ウェブイヤーという形で、特に情報通信関係の技術が日進月歩で進歩するときに、非常に貴重な義務教育という段階で、コンピュータ教育のために、時間が無尽蔵にあれば別ですけれども、時間が減っていく中でそういうものに時間を使うというのはどんなものか。あるいは、そういうことについてどのような議論があったのか伺いたいと思います。

もう一つは、どっちにしても、コンピュータのソフトとかハードというのは、子どもが使いこなせなければ売れませんから、市場のメカニズムによって、必ず子どもが使いこなせるような技術、あるいはソフトやハードのメーカーがそういうものの教育サービスを提供するはずなので、市場が自動的にやるようなものについて、わざわざ税金と貴重な子どもの時間を使って教育する必要があるのかどうか、ということについても疑問があります。それについてお答えをいただければと思います。

〔 M委員 〕 2点お伺いしたいのです。1つは、文部省が盛んにおっしゃる「ゆとり」という言葉の意味が私はよくわからないのですけれども、ゆとりというのはどう定義しておられるか。ゆとりというのは何なのかということです、どう定義しておられるのか。

もう一点は、中国からの留学生が非常に多いのですが、帰った後、ちょっと話を聞いてみたりしますと、よく出てくるのが3点あります。1つは、日本のどういうことが必要かと聞きますと、留学してから1、2年ぐらいたったときのフォローがほしい。2つは、帰ってから、もう少しフォロー体制があるといい。3つは、日本のいろいろな文献の翻訳がほしいというのがあります。特に中国の留学生に限らず、今、日本の制度にいろいろ関心があるのですけれども、勉強する本がない、翻訳されたものが非常に少ないというのがあります。特にお聞きしたいのは、日本の文献の翻訳、特に中国ですとか、これから関係が深くなるところへの翻訳みたいなものは、補助とか何かあるのかどうか、そこを教えてください。

〔 N委員 〕 私も、1点は、今言われたことで、「ゆとり」ということはいろいろ誤解といいますか、本当の意味はどうかということが問題だということを申し上げたい。

もう一つは、これは今でなくていいのですけれども、最初の方にありました外国人研究者の受入れ、あるいは留学生の受入れ、これは日本における数字はあるのですけれども、ほかの先進国諸国、アメリカなりではどういう状況かということも、1つの比較として考える場合に大事かと思います。

〔 O委員 〕 私、経験の中で感じることですが、誤解を恐れない言い方をしますと、学者の方が現場を知らないということによって、日本の国の教育の問題と、さらには、恐らく海外へ情報を発信するときの基本的なアイデアが出にくいという問題があるのではないかという気がするのです。

例えば、この話はちょっとびっくりされるかもしれませんが、今、Eコマースのものの受渡し場所にはコンビニがいいという話が、ごく常識の話として出ているわけですが、これは私の実体験からいうと、ほとんど不可能です。なぜかというと、コンビニはコンビニの商品を売るためにあり、コンビニの従業員はコンビニの商品を売るために存在しているわけですから、そこにEコマースの商品がどっと流れてくると、絶対に販売することは不可能です。

この話は単なる例ですが、現場にいて商品を売るというのは実際にどういうことか、あるいは物をつくるというのはどういうことか、物を運ぶというのはどういうことか、物を分類したり、整理したり、取り出したりするということがどういうことか、というのが現場にいる人にはわかっていて、それを離れた学問の世界にいたり、あるいは研究の世界にいる人にはほとんどわかっていない。そして、情報を発信したり教えている方は、現場を知らない方が圧倒的に多いという問題に、私は、この数十年、何でこんなことになっちゃっているのだろうかと感ずるわけです。

日本が強かったのは現場であって、特にトヨタの生産方式、その他諸々過去の日本を成長させてきたものは、現場と密着した知識というものがあったわけですが、それが非常に少なくなっているという感じを受けます。その原因が何かわからないのですが、恐らく、学校教育や学者の方のキャリア・ディベロップメント、例えば、物を売ったり・つくったり・運んだりするということがどういう意味かを知らない方が、経済や経営について発言せざるを得ないという状況にあると思うので、そのあたりは、教育問題としても情報発信の非常に重要な問題と思いますが、そのあたりについてはいかがでございましょうか。

〔 部会長 〕 私の不手際で、この会議は5時までとなっておりますけれども、もう一つテーマが残っておりますので、お約束のある方は仕方がありませんけれども、できれば時間を延長して議論を続けていきたいと思います。

それでは、今のご質問に対して、文部省サイドあるいは郵政省からも何かご意見があれば、どうぞお願いします。

〔 文部省 〕 それでは、説明順に学際局の方からご説明申し上げます。

最初の日本語が世界にどのように使われているか、それに対してどのようなことをやっているかということでございます。現在、国内の日本語教育施設、これは大学等もございますけれども、その質的向上、あるいは日本語教員の養成も行っていますし、外国人に対する日本語能力試験の国内外での実施ということもやっていまして、その教育内容の充実に努めているところでございます。

それから、海外でどうなっているかということでございます。これはご案内のように、海外でやる日本語教育につきましては国際交流基金がやっております。その国際交流基金と連携をしながら、文部省としても日本語教育をやっております。特に最近では、マルチメディアによる日本語学習の支援の検討ということを行っております。

2つ目のTLOについてでございます。TLOを立ち上げられたということで、私どもよりももっと詳しくご存じかもしれません。今、ちょどう立ち上がったところで、まさに揺り籠にいるようなものでございまして、これからどういうように実際に使えるもの、実際に強化していったらいいかということについては、10カ所あるところですし、先ほど来のお話も聞きながら、通産省ともご相談をしながら、何とかこれをいいものに育てていきたいと思っておりますので、またいろいろ教えていただければと思います。

留学生の数でございます。今、研究者の数はすぐには持っていないのですけれども、日本の高等教育における留学生の数が全体で 1.5%でございます。アメリカは、全体の高等教育の 5.9%、イギリスは16.7%、ドイツは 8.6%、フランスは 8.0%、日本はこの先進国諸国と比べても留学生の比率が少ないということで、我々は一層この充実を図っていかなければならないということでございます。研究者につきましては、今ちょっとデータを持っておりませんから、失礼いたします。

最後の、研究者が現場を知らないというキャリアパスをどうするかということでございます。現在、高等教育におきましては、学生がインターンシップで企業の現場を勉強するとかいうこともございます。それから、任期付きの採用をもっと導入することなどにより、民間と大学の交流がもっとスムーズにいくようにしたらいい。特に、産学協力を通じますと、産業の現場がわからないと新しいシーズも出てこないということがありますので、先ほどのTLOとかも活用しながら、これはもっともっとやっていかないといけないと思っております。

〔 文部省 〕 初等中等教育局担当でございますが、ご質問に端的にお答えさせていただきます。

1つは、英語以外はどうであろうかということでございます。英語が国際語になっているものですから英語を中心にしているわけですけれども、今、私ども、英語だけではなくて、これは第2外国語になりますけれども、英語以外もできるだけ、それぞれ学校が特徴に応じて考えていただくようにというお願いもしておりますし、現に第2外国語として今既に高校で中国語が372校、フランス語が206校、韓国が131校、ドイツ語が109校等々、今徐々に増えつつございます。先ほどの資料でも、24ページをご覧いただきますと、JETの方でも、フランスとかドイツといったところから来ていただいている。そういう状況は徐々にですけれども、増えつつあるという状況でございます。

情報教育に関連して、果たして必要なのかどうかというご議論でございました。私ども、いろいろな議論を重ねながら、相当前からこの問題に取り組んでまいりまして、昭和60年前後からの問題でございます。その頃からいろいろな角度で発達段階も考えながら検討した結果、小学校段階では慣れ親しむというところから出発した方がいいだろう。中学校ぐらいになると、かなり基礎的なことを身に付ける時期に入るだろう。高校に行って、さらに大きくいろいろ発展していけばいいのだろう。こういう基本的な発想から取り組んできたわけです。前々から選択でずっとやってきて、その結果・成果の上に立って今回、必修化したわけです。

必修といっても、中学校でも1年間980時間のうちの35時間。高校でいいますと2単位というように、いわば本当のミニマムだけを身に付けるということです。これは何も細かいところを身に付けるということではなくて、これから情報化社会に生きる基本的なもの。すなわち、情報化社会のルールとかマナー、いわば光と影の部分、両方を子どもたちはこの基礎的なところだけは身に付けた方がいいだろうと思っております。

さらに伸びる子どもたちは、高校では選択科目という形でもっとやっていけばいいのだろう、かように思っております。

ですから、私ども、今回の学習指導要領の改訂の中では、教育内容として圧縮する部分と、どうしてもミニマムだけを身に付ける部分と、もう一ぺん全体を見直そうとしたわけでございます。この授業時数についてはなおいろいろな議論があることは承知しておりますけれども、かなりいろいろな角度から検討した結果、今申し上げたようなことになったわけでございます。

それから、「ゆとりとはそもそもなんぞや」という大変根源的なご質問をいただきました。難しいところですけれども、今の子どもたちの状況はよく「3つの間がない」と言われます。時間の「間」、子どもたちは時間をスケジュール管理されて、自分自身で自由にできる時間を失ってきているのではなかろうか。あるいは、自由に遊ぶ子どもたちの仲間がだんだん少なくなってきているのではなかろうか。あるいは、子どもたちが自由に遊べる空間自身が大変少なくなってきているのではないか、こう言われております。子どもたちは、次々と新しい知識、次にあれを覚えろ次にこれを覚えろと追い込まれている状況が、残念ながらございます。いろいろな調査の中で、子どもたち自身のストレスというものが相当出てきております。いわば時間的なゆとり、精神的なゆとり、もう一度学校教育の中に取り込む必要がある。こういう認識の下で「ゆとり」という言葉を使っているわけでございます。

〔 郵政省 〕 D先生のおっしゃった、日本語を世界にどう伝えるかということで参考までに申し上げますと、私、先ほど説明しましたNHKのワールドTV、24時間全世界へ、あの中で日本語講座を放映していまして、英語、中国語、ハングル語、ポルトガル語、4カ国語で日本語の勉強を、意欲のある外国の方には、できるというようなことをやっております。

もう一つだけ、L先生のおっしゃった、情報教育が必要かということに関して言いますと、先ほどちょっと話に出ました、要するに情報化の優先的な施策は何かということですが、私ども、昨年、アジア、ヨーロッパ、アメリカのいわゆる国の情報化施策を調べましたけれども、共通して言われていますのは、1つは、通産省のおっしゃった電子政府、D先生のおっしゃった基盤的技術、もう一つは、教育の情報化ということでございまして、特にアジア、例えばシンガポールなどでは小学校4年生以上はメールアドレスを必ず持たせる、2002年以降は、そういうような相当意図的なことも、インテンショナルな政策も、韓国も実を言うと同様ですが、やっております。具体的にどういうことをというのは、これは文部省さんのお考えになることですけれども、そういうことは非常に大事ではないかと私どもは考えております。

〔 文部省 〕 先ほどN委員の方から、研究者の受入状況がございました。留学生については、ユネスコの統計がございます。研究者については、データは世界的にございません。OECDなどにおいて、研究交流に関するスタディなどが現状ということでございます。以上ございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。まだいろいろご質問、ご意見もあろうかと思いますが、次のテーマに移りたいと思います。郵政省の放送行政局総務課長、文部省の初等中等教育局審議官、学術国際局審議官、本日はご多忙のところをありがとうございました。

それでは続きまして、時間が超過しておりますけれども、創業・起業について通産省からご説明をいただきたいと思います。中小企業庁の計画部長、よろしくお願いいたします。

〔 通産省 〕 それでは、資料を参照しながらご説明申し上げたいと思います。創業・ベンチャー対策についての背景でございますけれども、最近における我が国産業競争力の弱体化と、その背景にあります企業活動の効率化の低下ですとか、生産性の伸びの低下に対して、その解消のためには経営資源の選択と集中を進めることが必要であるわけですが、その移行を摩擦が少なく円滑に進めるため、過剰な設備とか過剰な雇用をより生産性の高い分野にシフトさせることが可能になるように、新しい雇用を創造する新しい産業分野ですとか産業活動をつくり出すことが必要なわけですけれども、その一方で、我が国の現状をみますと、お配りしてございます資料の1ページを見ていただきますと、新規開業率が昨今は非常に低下してきています。20年前を見てみますと、27万社強が開業していまして、開業率は6%弱ですけれども、最近の資料を見てみますと14万社強で、開業率は 2.7%ということで、非常に下がってきていること。さらに問題なのは、この右の方に廃業率の数字を出していますけれども、開業率よりも廃業率の方が高くなってきている。開廃業率の逆転現象というものが起きているわけでございます。

さらに、開業について、2ページ目をお開きいただきますと、各国の開業率を見てみますと、日本は非常に低い開業の状況にあることはこれからもわかるわけでございます。

次に、開業の意味というものを3ページに若干お示ししてありますが、開業というものは我々の経済活動において新陳代謝を促し、活力の維持というものに非常に重要な意味を持っている。雇用の問題、付加価値の問題、こういうことを考えましても非常に重要になってくるわけでございます。

次の4ページ目に、最近における雇用がどういう規模の企業によって創出されているかというグラフをお示ししておりますけれども、最近、平成3年~平成8年までの雇用創出を見てみますと、大企業の方ではむしろマイナスになっております。それに比べまして、規模の小さい企業が雇用を創出しているということで、雇用面からも中小規模の企業の開業というのが重要な役割を果たしていると言えるのではないかということでございます。

このような観点から、私どもは、中小企業施策の中におきましても、創業、創造的革新的な事業活動というものを施策の対象として正面からとらえて、それを支援していくことが必要ではないかということで、いわゆる「創業・ベンチャー支援対策」というものを実施してきております。

そうした場合に、創業とか創造的、革新的な事業活動を考えるときにどういう問題があるのかということについて、5ページ、6ページ、7ページにお示ししてございますけれども、1つは、資金調達の問題、税制面の問題、融資枠の拡大といった、資金面の問題が挙げられるかと思います。2つ目としては、例えばパートナー、相談者とか、そういった機関がないとか、人材の流動性がないとか、そういったいわゆる経営面でのソフト面の問題。3つ目としては、6ページ目の「米国と比較したベンチャー活動における問題点」というところにもありますように、敗者の復活できる社会的風土がないとか、起業家精神が低く大企業志向が強いとか、サラリーマン志向が強いとか、創業への社会的評価が高くない。7ページ目に、これは国際的起業家調査で、各国における起業家への尊敬度という調査結果がございますけれども、これで「あなたの社会では事業を起こすことは立派なこととされていますか?」を見てみますと、日本は非常に低いという調査結果等が出ているわけでございます。このようなことから、創業・ベンチャー支援を考える場合には、資金面の問題、経営資源に関わるソフト的な経営資源の支援の問題、それから社会的意識とか風土の問題、この辺が主要な課題になってくるということが言えようかと思います。

こういった創業・ベンチャーに対する支援ということについて、各国がどういうことをやっているかということについて、9ページ以降に資料がございます。アメリカにおきましては、いろいろなコンサルタント的な機能ですとか、非常にリスクのあるようなお金を供給する中小企業投資会社、このような仕組みが従来からされております。また、そういうことから、10ページにありますように、アメリカの開業率は非常に高い水準を維持してきております。それから、ドイツにおきましても、11ページにありますとおり、最近、創業助成に関して非常に積極的に取り組むようになってきている。その結果として、昨今においては創業数が倍増しているという結果も出てきております。それから、最近よく取り上げられていますベンチャーが非常に輩出してきているというイスラエルですけれども、イスラエルにおきましてもYOZMAというリスクマネーを供給するようなファンドを形成していまして、こういうことが創業・ベンチャーの輩出に役立っている。こういう諸外国の例もあるわけでございます。

そのようなことを踏まえまして、私どもとしましても、創業とかベンチャーを支援するための施策を、昨年の臨時国会、これはいわゆる中小企業国会ということでも言われている国会だったわけですけれども、そこでは創業・ベンチャー支援を拡充する、制度的にも、予算的にも拡充するということが1つのポイントでございました。

それから、平成12年度の予算におきましても、こういった関連の施策については充実を図っております。その辺のことについて若干、13ページ以下に私どもが実施しています施策についてまとめておりますけれども、13ページの表に基づいて幾つかご説明を申し上げたいと思います。

先ほどもご説明申し上げましたとおり、創業ですとか、創造的ベンチャー活動というものは、実績がないということから信用力がないとか担保力がないことが問題になるわけです。そうなりますと、間接金融の世界には限界があるということで、リスクマネーを直接金融でどうやって供給していくかということが1つのポイントになってくるわけでございます。そのような観点から、1つは、ベンチャー・ビジネスに投資を行うような、中小企業投資事業有限責任組合という制度が民法の特例ということでできております。これはアメリカなどにおけるリミテッドパートナーシップに相当するような我が国の制度となっているわけですが、そういったベンチャーファンドに対して呼び水として中小企業総合事業団ですとか産業基盤整備基金、こういったところからある一定 のポーションを出資するという制度を作っています。それから、リスクマネーの供給ということでは、無担保のワラント債を引き受けてやるという制度も創設しています。それから、中小企業の発行いたします私募債に対して、これは保証がないとなかなか引き受けにくいということから、信用保証協会から90%の信用保証を供与するような制度も創設しております。それから、よくベンチャーに対する資金供給ソースとして個人投資家、いわゆるエンジェルというものがアメリカなどにおいては非常に重要な資金ソースになっていると言われているわけですけれども、そのような人たちが資金供給をしやすいように、エンジェル税制といったような形で、我が国におきましても、例えば創業から10年までの会社に対して、そういうお金を供給した場合にはなにがしかの税制上の対象にしてやるとか、今年度からは、公開後1年以内に売却をした場合の売却益について利益を4分の1に圧縮するというような優遇税制を導入しまして、このような形で直接金融面での優遇措置を導入しております。

間接金融につきましても、例えば、ここにありますような、中小公庫が、女性起業家ですとか高齢者起業家、この辺がこれからの創業とかベンチャーの担い手として、従来経済活動に参入してなかった層として、介護ビジネスとか福祉といったようなところにはこういう方たちの活躍する場が出てくるだろうということから、こういう方に対しては、例えば担保の徴求につきましても、ある一定程度までは倍ぐらいの担保をみてあげる、そのような形で間接金融をしやすくしてあげるという対策も講じております。

それから、組織面だけではなくて、人材とか、情報とか、技術といったソフト面での支援もあわせて重要になってくるわけで、そのための問題としての技術開発について、創業とかベンチャーを立ち上げるための技術開発に対して、優先的にそういう技術開発についての補助金とかが流れていくような、日本版SBIR制度というような制度も導入されています。それから、こういう場合には、いろいろな企業を立ち上げるところから、研究開発、実用化、さらにはマーケティング、人材の確保、いろいろな面でのコンサルタント的な機能が必要になってくるわけで、従来から、私どもはいろいろな形でそういう産業活動を支援するような組織とか仕組みは作ってきているわけですけれども、従来よく言われていますのは、必ずしも、そういうものが有機的に連携されていない、本当に必要な人たちにそういうものが供給されていないというようなご指摘もいろいろ受けているものですから、経営支援体制の整備というところで、全国のそういう経営支援を期待できるような、そういう組織をネットワーク化しまして、そういうものを私どもは「三層構造」と行っておりますけれども、全国の 300カ所ぐらいに整備して、これは大体広域行政圏を想定しています。そういうところで、ワンストップサービスが可能になるような体制を整備をする。その上に、都道府県レベルでのそういうものを束ねるような組織を作り、さらに全国8カ所ぐらいに、そことまたネットワークでつながるような拠点を作り、全国的にそういうものがデータベースを含めて情報が共有できるような体制を整備するということも考えております。

3点目の問題としまして、こういう起業家を育てるような国民意識ですとか風土を育てる必要があるということ。これは教育から、いろいろな意味での意識改革が必要になってくるわけで、私どもとしてもいろいろなセミナーをやったり、大学に出向いて行ってそういう講座を支援したり、教材を作るのを支援したり、いろいろな施策を実施しているわけですけれども、国民運動を喚起するということから創業・ベンチャー国民フォーラムというものを立ち上げております。これは江崎玲於奈先生に会長をお願いいたしまして、実際に起業した起業家の方とかベンチャー・キャピタリスト、教育関係者、学識経験者、マスコミといった、非常に多様な層の方々にお集まりいただきまして、3月17日に立ち上げております。これは地方でいろいろなシンポシウムですとかセミナーを開催しながら、あわせて表彰事業ですとか、いろいろな提言事業、こういうものを広く地方を巻き込みながら全国に展開することによって、こういう分野での国民意思、風土というものを変えていくような運動にしていきたいと思っているわけでございます。このような分野は、文部省、労働省とも連携しながら、こういう国民運動を盛り上げていきたいと思っているところでございます。

若干時間を超過いたしましたけれども、以上ご説明させていただきました。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。ただいまご説明のありました創業・起業について、ご質問、ご意見がありましたらどうぞ。

〔 H委員 〕 1つだけ意見として、創業・ベンチャーということを書いているのですけれども、僕は、地方などを取材していると、中小企業とか伝統産業の中に、日本的にすごい優れた企業だとか、あるいは世界的にみても優れた企業はたくさんあるわけです。そういうものを育成していくことがもっとある意味で重要ではないか。

そういうところが、例えば情報技術と製造技術をうまく結び付けて、それを世界に発信することによって世界的に飛躍する企業というのを、私は、ずいぶん実例として見ているわけです。

今、創業・起業というところばかりにウェイトを置いているのだけれども、例えば、日本の染色とか織りとか、そういったものもコンピュータ技術を使うことによって、今まで10色ぐらいしか出せなかったのが十数万色も出して、それが着物だけではなくて、今度は自動車の内装にまで使えるとか、そういう企業はたくさんあるのです。

そういうところのネットワーク化とか、あるいは情報技術の発信の仕方とか、そういったところをもっとやっていくことも、創業・起業よりもある意味ではもっと重要ではないかと。つまり、下請けを脱して世界へ出ていく企業というのは、実は潜在力がいっぱいあるのだということを、ぜひ注目してほしいと思います。

〔 I委員 〕 3点ほど申し上げます。第1点は、先ほど質問したのと同じです。エンジェル税制とか特別貸付、こういったものが創業するときにどの程度本当に役に立っているのかということです。

第2点は、関西地区でも、どうすれば起業家が増えるかという研究会のようなものがあるのですが、そこで1つ問題になったのは、こういった支援の必要性について地域のバラツキが大きいのではないか。例えば、マーケティングをして、この製品が本当に世の中に受け入れられるのかということを調査したいときにでも、東京ではマーケティングの会社は非常に揃っておりますけれども、関西の方では、あまりないのではないかという話で、地域的なきめ細かな支援措置が必要ではないか。これは質問でなく、コメントです。

第3点は、介護ビジネスの話などをしますと、企業の方にしましても、主婦層にしましても非常に関心が高いですけれども、1つ思うのは、どういったところに行けば自分たちが必要な情報とか、こういう助成金が受けられるのかということの情報自体をあまり握っておられないということです。もう少し公告・PRが必要ではないかという声もあります。コメントです。

〔 K委員 〕 質問させてください。7ページの「起業家への尊敬度」というグラフがあって、これはすごい露骨な結果が出ていると思うのですけれども、一体誰を調査しているのでしょうか。この下のGEMというのを私は知らないのですけれども、いくら何でも日本で起業家がこんなに尊敬されていないわけはないだろう。このソースを教えてください。

それと、6ページで第1ー7ー7図、ベンチャー企業が困っているのは資金と経営力という話が出てきているのですが、第1ー7ー7図の真ん中ぐらいに「ベンチャー商品に対する評価が低い」とあります。私などが聞き取り調査をやってみると、お金がなくて経営力もなくて頑張ってつくったのだけれども、買ってくれない。特に官庁が買ってくれないという話はいっぱいあるわけです。それを克服するというか、それへの対応として、日本版SBIRという制度ができたというふうに私は聞いているのですが、SBIRの説明のところを今度見ますと、18ページに、「平成11年2月からスタート、本年度」云々と書いてあって、「本年度」というのがこの2000年度なのか、99年度なのかよくわかりませんけれども、参加したのは5省庁しかない。アメリカなどの例を見ますと、ペンタゴンとNASAが結構中小企業に発注しているし、研究発注しているのです。日本はなぜそういうことにならないのか、というのが私にはちょっとわからないのです。そこら辺を教えてください。

〔 F委員 〕 中小企業庁の範囲だとこういうことだと思うのですが、広く見ると、資金の不足だけではなくて、労働の不足、特にホワイトカラー経営層の不足ですね。そういうのを大企業が抱え込んでいて、なかなかそういう人たちが企業を起こせないという機会費用の高さ、こういうものが大事ではないかと思うのです。

例えば、6ページのアンケート表などを見ても、そういうものが本当にないのか、それとも質問項目自体を中小企業庁の方で考えておられないのか、その辺について、人材の不足ということをぜひお聞きしたいと思います。

起業家を養成するためには、一方の供給源がブロックされている。例えば、労働省が大企業への雇用調整助成金で過剰な労働者を抱え込ませている。そういうような一方の政府の政策があると、いくらこういう起業家の方の支援をしても、供給自体が少ないわけですから、起こってこない。そういう政策の全体としての整合性、そういう点についてコメントがあればお聞きしたいと思います。

〔 O委員 〕 今の話とつながる、私も非常に重要なことが抜けているのではないかと思うのですが、起業しようと思いますと、会社に勤めている、つまりサラリーマンか、それに近い人、あるいは官庁でもいいですが、そういう人が起業をするか、学生とか全く関係のない人が起業するかの2つになるのですが、特別なものを除いては、企業に勤めていた人間が起業するということが非常に多いと思います。

ところが、過去から現在まで日本においては、企業の中で何かを発明して、例えば、どこかの企業に勤めて販売促進の担当の人が、販売促進に関わる非常にすばらしいビジネスモデルを考えたとして、そのことを実際に出したら、全部企業にその利益が吸収されてしまう。つまり、企業の発明になってしまう。

では、それを企業から取り出して、全く海のものとも山のものともつかないうちに自分て試すかというと、これはそういうわけにいかない。現場の中での実践反復を繰り返して、これはフィージブルだということがわかって起業になるわけです。つまり、全てのアイデアの報酬が会社に吸収されて、特別何とか報奨金で10万円ぐらいのことをもらって誤魔化されてしまうという会社と個人の関係がある限りは、企業に勤めているサラリーマンは、事業の可能性の吟味もできないし、創業資金を自らの工夫によってため込むこともできない。したがって、日本では創業が行われない。これは会社と個人の関係から必然的に出てくる結果だと思うのです。

したがって、その辺を、例えば会社と個人とを律するいろいろな法がある。うっかりやりますと、日本では、就業規則で、ほかの仕事をやったといって罰せられたりするわけです。したがって、会社と個人とをつなぐ、例えば雇用委任請負、こういう法的な民法の考えているような典型契約の部分や、さらには会社の中に勤めて自分の業務に関連することで発明や発見をしたときに、その報酬が個人にも十分に与えられるような、そういうことを整備しないとサラリーマンは会社に釘付けになって抜け出せないようにできているのです。そのあたりについてまず配慮をしないと、今のお話にあったように、そもそも出ていくものがない。

非常に低い創業率にはそういうものが非常に関連していると思うのです。

〔 部会長 〕 計画部長、お願いします。

〔 通産省 〕 すべてについてお答えできるかどうか自信がございませんけれども。

まず、H先生がおっしゃった、今地域に、それなりの技術とか技能を持っているような会社もあってというお話でございますけれども、私どもは、それは非常に重要だと思っておりまして、従来からそういうものを中心にして中小企業施策はやられてきたわけです。

先ほどお話し申し上げた、いろいろな支援のネットワークを作って、的確に情報が供給できるようにしたいと申し上げましたけれども、その中に、既存の小規模企業者というのはかなり入ってくると思っております。 300カ所などに来る人たちというのは、そういう人がほとんどだと思っていますし、その辺は従来のような、例えば多角的な事業を支援するとか、技術開発を支援するとか、マーケティングを支援するとか、そういうことで十分対応できると思っております。

それから、エンジェルとか創業貸付の効果という話がございましたけれども、創業貸付についてはかなり利用されている方が増えてきていると思います。ただ、こういう形で施策が強化されましたのはここ1、2年ですので、まだ必ずしも十分に浸透したとは言えないかもしれませんけれども、徐々に効果は出てきておりますし、利用数もずいぶん出てきております。

それから、地域のバラツキですとか情報がないというお話でございましたけれども、その辺、私どもはいろいろな方からご指摘を受けておりまして、実は今年の1月~3月まで、先ほどもお話ししたように、昨年の臨時国会でいろいろな中小企業関係の施策がずいぶん拡充したり制度が変わったりしたものですから、全国60カ所ぐらいで説明会を開きまして、この数字だけを言ってもあれかもしれませんけれども、16、17万人の方を対象にして施策の説明会、50万部パンフレットを配ったりという努力をしております。

それから、情報については、先ほどのネットワークを使っていただくことによって、関西で例えばマーケティングでこういう分野でいい人がいないかというようなことがあれば、それは全国でつなぐことを考えておりますので、東京でそれに適したようなマーケティングの人がいれば、そういう方とつなげることは可能になると思います。また、例えば技術開発についても、自分の専門的な技術開発を支援してくれるような大学の先生はどこにいるのかというような相談があれば、それをつなぐような制度に、私どもとしてはぜひしたいと思っていますので、これがネットワーク化できてワンストップサービスができるようになれば、今のご懸念のようなことは大分解消されるのではないかと期待しております。

それから、SBIR5省庁云々というお話でございましたけれども、これはまだ始まってから1年ちょっとでございまして、私どもとしては、これは対象の省庁を増やす努力をしております。5省庁と書いてありますけれども、これは関連する特殊法人もございまして、例えば、科技庁の特殊法人ですとか、私どものNEDOですとか、農水省の生物系の研究開発するような、そういったところも入っておりますので、実際には5本ということではなくて、本数にすれば十何本の補助金とか委託金が対象になってきております。それから、私どもとしては、毎年度、これをできるだけ拡大するように各省庁さんにはお願いしていますし、伸ばしていきたいと思っております。

それから、人材の供給源の問題でございますけれども、これは本当におっしゃるとおり、私どもとしても非常に重要な問題だと思っておりまして、特に日本の場合に問題なのは、経営面での人材ですとか技術面での人材というものを的確に確保できない。しかも、いわゆるベンチャー・キャピタリストというものが、そういう人たちを連れてくるハンズオンでの支援体制がなかなかできていないところが問題だと認識をしておりまして、そういうことは、これから、ハンズオンで支援できるようなベンチャー・キャピタリストを育てていきたいと思っております。

それから、人材の流動化という面につきましては、これは労働省ともいろいろ私どももお話しさせていただいていますけれども、昨今においては、大企業から退職をしたような方も増えてきておりますので、そういう方については、例えば、地方においてそのような方を1カ月とか2カ月、地場の企業に対してコンサルタント的機能をやる場合には、ある程度の人件費を補助するという制度も立ち上げたりしてきております。そのようなことを続けることによって少しずつそういう意味でのモビリティが進んでいくのかなと思っております。

それから、先ほどの就業規則云々というお話でございますけれども、労使間でどういう形で取り決めるかというところが基本ではないかと、私はそういうふうに思っておりまして、その中で、例えば一律に自由度をこういう形ですべきだとかいつのを法律などで政府が決めるということにはなじまないのではないか、という気がしております。

私どもで今努力しておりますのは、例えば、特許につきまして、国立の大学の先生が職務発明した場合のいろいろな利用の問題とか、そういうことはまさに国の制度上の問題ですので、この辺は文部省といろいろ話をしながら、できるだけそれが活用できるような、しかも、成果がその発明した人に帰ってくるような制度づくりというのはしておりますけれども、民間企業の中で、その配分ですとか、どの程度の利転用するかというのは、それは全体の労使間のお話し合いの中で決めていくべき話ではないかという感じがしております。

〔 O委員 〕 企業が、自分の従業員が発明したものを、その報酬が企業に今現在帰属しているものを、何らかの社会的な規制を伴わずに従業員に帰属させるように、企業の側から変えるはずがないのです。従業員の側からは、それはなかなか難しい。特に、労働組合は日本の場合はあまり強くありませんから。

したがって、なじむとか、なじまないとかでなく、現実の問題として、企業の中で個人が自らの工夫によって発明したものがある程度個人に帰属するように、社会的な運動としてでもやっていかないと、まずそういうことはほとんど不可能、現実に不可能ではないでしょうか。

ですから、それは個人の問題だといってほっておかれたのでは、そういう問題はなくならないと思います。

〔 通産省 〕 個人の問題というか、むしろ労使の問題だというふうに私は思いますけれども、そもそも就業規則とか、それぞれ企業の中では職務発明規則があるはずなのです。

〔 O委員 〕 それが、問題。

〔 通産省 〕 それは多分、企業によって違うと思うのです。非常に先進的なことを考えておられるような企業は、発明した人にある程度そのリターンが行くような発明規則というのを作ることは、私は、それは自由で認められていると思いますから。

〔 O委員 〕 そういう人がどんどん会社を辞めたら困りますから、企業側からは出ないです。

〔 部会長 〕 その問題は1つのご意見として、今後この部会でもやっていきたいと思います。

これは、私も、労使協定だけではできない問題、組合員ではない社員もいくらもいるわけですから、そういう問題はあると思います。

ほかにもまだいろいろご意見等があろうかと思いますが、時間も大幅に超過いたしましたので、本日の審議につきましてはここまでとさせていただきたいと思います。通産省中小企業庁の計画部長、どうもありがとうございました。

また、これ以上いろいろご意見がございましたら、どうぞ事務局までご連絡をいただきたいと思います。

最後になりますが、次回以降の日程及び前回の部会で設置を決定いたしました「政策小委員会」関係につきまして事務局から説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 時間も大分過ぎておりますので、簡単にご説明させていただきます。

資料7と資料8でございますが、資料7「経済審議会政策推進部会の予定」ということで、今回が第3回、次回の第4回は4月24日、関係省庁からのヒアリング。第5回は5月18日、報告書骨子について、今後の方向性についてご審議いただければと思います。第6回の5月24日、第7回の5月25日は連日で大変恐縮ですけれども、計画局の研究会の中間的な報告をさせていただきたいと思います。また同時に、報告書素案についてもご審議いただければと思います。第8回、まだ日程は未定でございますけれども、6月下旬に報告書のとりまとめをお願いしたいと思っております。

資料8「経済審議会政策推進部会政策小委員会について」ですが、前回部会で設置をお決めいただいた政策小委員会の関係でございますけれども、まず委員の構成ですが、委員長が水口委員、委員長代理が香西委員、委員として植田委員、木村委員、清家委員、村井委員でございます。それから、必要に応じて政策推進部会委員以外の有識者にも、テーマに応じてご参加いただくことを考えております。

スケジュールは前回申し上げましたが、4月中旬から5月中旬まで、5回程度を予定しております。

検討内容につきましては、IT革命の推進等、「あるべき姿」の実現に向けた当面の重要な政策課題について、調査審議を行うということでございます。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、本日の審議はここまでとさせていただきます。大幅に時間を超過させていただきまして、長時間のご審議、本当にありがとうございました。また、次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。

── 以上 ──