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第4回国際マクロ経済問題研究会

議事録

時:平成10年11月27日
所:経済企画庁官房特別会議室
経済企画庁


第四回「国際マクロ経済問題研究会」会合議事次第

平成10年11月27日(金)14:00~15:30
経済企画庁特別会議室(436号室)

  • 開会
  • 議題1:委員報告 「東アジア通貨危機とその後-地域的危機管理の提案-」
  • 議題2:委員報告 「ユーロが国際通貨システムと金融市場に与える影響」
  • 閉会

(資料)

  • 資料1 A委員報告資料
  • 資料2 B委員報告資料
  • 別紙1 第3回マクロ経済問題研究会での報告に対する質問への回答(C委員作成)
  • 別紙2 B委員報告のポイント(事務局作成)

今後の検討スケジュールについて

  • 第5回 12月14日(月)10:30~12:00 経済企画庁官房特別会議室(729号室)
  • 資本移動規制について
  • 中間とりまとめ(審議経過報告)案について

国際マクロ経済問題研究会 委員名簿

  • 座長  近藤 剛   伊藤忠商事(株)常務取締役
  • 小島 明   (株)日本経済新聞社取締役論説主幹
  • 中山 真一  (株)富士通総研経済研究所主席研究員
  • 高阪 章   大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
  • 黒柳 雅明  日本輸出入銀行海外投資研究所主任研究員
  • 岡田  靖  クレディスイス・ファーストボストン証券東京支店経済調査部長
  • 奥田 英信  一橋大学大学院経済学研究科助教授
  • 石本 聡   伊藤忠商事(株)政治経済研究所主任研究員
  • 小川 英治  一橋大学商学部助教授
  • 大坪  滋  名古屋大学大学院国際開発研究科助教授

(敬称略)


〔座長〕どうも今日は皆様方、第4回の国際マクロ経済問題研究会にご多用のところおいでいただきまして、ありがとうございます。局長以下、多少遅れて来られるということでございますが、時間が参りましたので、始めさせていただきます。それではまず冒頭に、本日の研究会で議論する内容につきまして、事務局からご説明していただきます。

〔事務局〕本日は、お2人の委員の方の報告と、それに関します質疑を予定しております。

 第1の議題はA委員から「東アジア通貨危機とその後―地域的危機管理の提案―」と題してご報告いただきます。

 それから、第2の議題といたしまして、B委員から「国際的通貨体制の展望―ユーロが国際通貨システムと国際金融市場に与える影響―」と題して報告していただきます。

 配付資料でございますけれども、資料1がA委員のレジュメと図表、参考資料、資料2がB委員の資料となっております。

 また、別紙1につきまして、C委員の前回のご報告に関します議論で、時間切れとなりました論点について、委員ご自身から書面にてご回答をいただいております。

 別紙2は、B委員の報告を事務局で便宜的にまとめた論点整理となっております。

〔座長〕ありがとうございました。それでは、早速でございますが、A委員、よろしくお願いいたします。それぞれのご報告は20分程度ということになっているようでございますので、よろしくお願いいたします。

〔A委員〕立って、OHPをお見せしながらお話ししようと思います。

 私に与えられた時間は20分ということですので、できるだけ要領よく、地域的な通貨基金、あるいは通貨安定化基金等の必要性に結びつくような話をやってみたいと思います。

 ご承知のように、為替レートの動きを見ますと、これは東南アジアの為替レートの動きで、98年に入って名目の対ドルレートというのは、ある程度安定してきているというのが読み取れます。基本的には、対ドルレートのインドネシアがこのグラフの最終点を見る限りでは8割切り下がっていまして、それから韓国、タイ、マレーシアあたりはだいたい4割切り下がっているというのが見られますが、98年に入ってある程度の安定を見ている。

 それから、同じように株価の動きを見ておきますと、タイが一番早く96年ぐらいから下がってきて、それからあとは通貨危機が起こってから連れ立って株価が下落しているということがお分かりになるかと思います。

 特徴的なのは、ASEANとNIESで非常によく似たような時系列のパターンをとっていること、それから、例えば、ロシアの株価の動きを見ますとぜんぜん違う動き方をしていまして、同じ様なことは、通貨に関して言うと、多少この辺でコンテージョンは見られますけれども、基本的には東アジアにかなりリージョナルに固まっているということが分かります。

 これは、幾つか今までの資料でも紹介されているわけですが、これはIMFの9月時点での5月時点の成長予測からの改定ですが、例えば、アジアNIESもそうですが、ASEAN4では-8%から-3%ぐらいの下方修正というわけでありまして、下方修正の度合いはどんどん高まっている。つまり、予想以上に成長のポテンシャルが悪くなっているということです。

 これは四半期毎に見た前年度同期比のマクロの数字ですが、例えば、タイのケースは、時期が97年第1四半期から2、3、4、それから98年の1、2と来るわけですけれども、アウトプットのグロスがマイナスなのはもちろんですし、それからインポートはだいたいタイのケースだと4割ぐらい前年からドル建てでは下がっている。

 それから、輸出の方はおもしろいのですが、ボリュームで見ると十何%とかなり高い伸びを示していますが、ドル建てでは1年前と比べるとマイナスになっている。それで結果として、トレード・バランスはみんな良くなっている。これはタイのケースだけ見ているわけですが、ASEANのどの国を見ても、みんなボリュームはプラスだけど、ドル建てでは輸出は減っている。

 ここで言えることは、まず現状の為替は一応安定、それから成長のポテンシャルは予想以上に悪くなっている。それから対外均衡は回復している、輸出はドル建てが伸び悩んでいるがボリュームでは伸びている、こういう構図が見えるわけであります。

 ですから、一言でまとめてしまうと、対外均衡の回復は見かけ上は達成されてきているということだと思います。

 問題なのは、こういう問題や窮状から抜け出すためにはどういう診断ができるのかということだと思うわけです。今までは通貨危機がなぜ新しいのかという議論が結構されているのですが、これは私の基本的な理解として、今回の通貨危機の新しさというのは、通貨危機の経済学(カレンシー・アタック・エコノミクス)というものがありまして、それでファースト・ジェネレーションモデル、セカンド・ジェネレーションモデルというものがある。大きく、両者の違いというのは、前者は基本的にはファンダメンタルズの問題があって、それで危機が起こる。後者は、ファンダメンタルズが問題かどうかは別にして、予想が変わったために起こる。予想が変わったために、それが自己実現的に通貨危機を起こす。そういうモデルというか、考え方、物の見方に対応する形で後者の方が進んだというのが、今回の通貨危機の新しさではないかと思っています。

 と言いますのは、ファンダメンタルズの問題というのは、それ程深刻ではないと見られるからであります。どうしてタイから通貨危機が起こって、それから東南アジアに広がっていったかというのを見ると、基本線としては、90年代に入ってからの資本ローンの拡大というのが助走としてあるわけです。

 このグラフは、ワールド・バンクのデータで、僕はいつも使うんですけれども、これはアジア太平洋地域に入り込んでいった70年から97年までの資本の流れです。まず、量的には、90年代に入っていかに巨額の資本がこの地域に入り込んだかということです。それから、グラフの構成がカテゴリーごとにラテンアメリカとはかなり違うんですけど、これが直接投資、これが長期のローン、それからボンドとエクイティ、それから短期のローン、こういう構成になっています。

 これには、中国も入っていますので、90年代に入っても、直接投資が非常に潤沢に流れ込んでいるという図です。実は、直接投資の流れを見ると、地域的にユニフォームに入っているわけではないんですね。ですから、ある地域は直接投資がしぼんでローンがわっと増える、特に短期のローンがわっと増える。例えば、それは、タイのケースであります。

 ついでにお見せしますと、タイのケースではこういう感じになっています。短期のローンが90年代の前半のところでものすごく大きくなっているのが分かります。

 例えば、メキシコと東アジアではマクロのファンダメンタルズが違ったというサックスたちの研究の結果がありますけども、ここが危機の度合いの高さを表す数字です。メキシコが一番危機の度合いが高いわけでありますが、そのファンダメンタルズとの関係を見るときに、為替レートのオーバー・バリエーションがどれぐらいあったか、それから貸出分がどれぐらいあったか、それから外貨準備が十分にあったか、こういう幾つかのカテゴリーで見ると、東アジアは割とヘルシーであります。同じ様に見ますと、これは経常収支のGDP比、それから短期借入の比率ですが、ラテンアメリカと比べても、タイは対外バランスと短期借入という面では際立って悪いということは言えそうなんですが、ただ、インフレーションであるとか、財政赤字であるとか、それからデッドサービス・レシオであるとか、そういうもので見ると余り問題はなさそうだとも言える。そういう意味で、マクロのファンダメンタルズと直接係わりがあったかどうかというのは、非常に否定的だろうという気がいたします。

 タイの最大の問題は、基本的には、3つ同時に達成できない政策目標を達成しようとしたこと。為替の安定、資本移動の自由、それから金融政策の自立性。この3つはどれか捨てなきゃいけない。3つのうちのどれか1つは目標として捨てなきゃいけないわけですが、全部それを達成しようとした。

 結果としてやったことというのは、為替の安定をドル建てで実現しようとしたわけです。これは名目の対ドルレートで、こっち側が外貨準備の大きさですけれども、このグラフを見ますと、90年から98年の第2クォーターまでは、為替の名目での安定を図るために、外貨準備を増やす、ドルを外為市場でずっと買い続けていったということが分かるわけであります。この背後には、何にもしなければ、つまり、ドルをぜんぜん買わなければバーツはもっと切り上がっていたというわけであります。バーツを切り上げさせないために、ずっとドルを買い続けてきて、このプロセスでは、もし外貨準備について、そのまま不胎化をやらなければ、マネーサプライが増えてしまうという格好なんですが、ベースマネーをものすごく抑え込んでいるわけです。ベースマネーが増えないようにいろんな手段を採りましたけれども、マネーサプライの伸びはそんなに伸びてないです。

 ただ、マネーサプライに入らない金融機関だとか、あるいは、ノンバンクの借入が非常に大きいわけであります。ここに付けてあるグラフは、この棒グラフが名目のGDPで、それから、この太い折れ線がバンク・クレジットの増加分のGDP比ですが、こっちの細い折れ線、ここにだいたい並行して動いているのがありますけれども、これがM2の伸び率です。

 問題はだから、ここの黒い折れ線と細い折れ線の間に、ギャップがかなり大きいということで、このことを私は、メモランダムに貨幣供給と信用拡大の分裂と書きましたけれども、クレジットのコントロールがちゃんとできてない、こういう状況がタイにあったわけであります。このことが不良債権化を生むという話になったわけですが、この2つのポイントが重要だろうと思います。まず通貨のオーバー・バリュエーションがあったかどうかということですが、それはそれ程、深刻ではなかったというのが私の解釈です。

 このグラフで色をつけてあるのが、実質実効為替レートで、これがタイですけれども、95年4月に円高ドル安が極限にまでいって、そのときから見ると97年7月までの間に、だいたい15%ぐらい切り上がっている。実は、長期的に見ると、このときがボトムですので、実質実効為替レートみたいな一種の競争力の指標として見ますと、競争力が猛烈に弱くなって、それでタイのバーツが悪くなったということではないのではないかと思います。

 同じ様なことが、IMFのキャピタルマーケットのリポートにも出ていますが、これが実質実効為替レートの危機前後の80年代のデッド・クライシス、それからメキシコのクライシスとアジアのクライシス、この間にどれぐらい実質実効為替レートが切り上がったか、オーバー・バリュエーションになったかという数字を見ているんです。ご覧になると分かりますけど、例えば、メキシコの90年から94年ぐらいにかけての実質実効レートの切り上がり方というのは4割ぐらい。タイのケースを見ますと、95年から10%ちょっと超えたぐらいでありますので、極端な実質実効為替レートのオーバー・バリュエーションがあって、切り下げはもう必至であるというような状況にはなかったと思います。

 ですから、こういう為替レートのオーバー・バリュエーション自体が対外不均衡の大きさを説明しているということは言えないのではないか。むしろ、よく言われるのは、メキシコはオーバー・コンサンプション、東南アジアはオーバー・インベンスメントと言われるわけですが、90年代にオーバー・コンサンプションを起こしているのは、東南アジアも同じだと思います。と言いますのは、基本的に条件は同じでありまして、かなり資本自由化が進んでいて、それからコンシューマー・ローンが発達したのがこの時期であります。

 その意味で、これは太平洋地域の国内貯蓄率の動きを示したものですが、この黒の丸印でプロットしてあるのがASEANの国内貯蓄率、それからこのバツ印がアジアNIESの貯蓄率ですが、これで見ると、一見、アジアNIESがこの辺で飽和してしまって、貯蓄率が少し下がってきているというものに対して、ASEANの方がキャッチアップしている、そういう構図に見えます。しかし、それは実はミスリーディングでありまして、中国は参考のためにあるのですが、プライベート、民間貯蓄だけに限って見ると、ASEAN各国のプライベートの貯蓄率はそんなに上がっていない。特に家計貯蓄率に至っては、90年代は下がっているんです。もちろん、家計貯蓄率で言いましても、分母は可処分所得ではなくてGDPでありますけれども、GDPとの比率で見て家計貯蓄というのは下がってきている。明らかに、東南アジアにおいてもオーバー・コンサンプション、消費ブームがあったと思います。

 問題は、こういう状況でブームがあって、バブル経済になって、資産価格がインフレーョンを起こし、不良資産が発生して、それで不良金融機関をつぶして、それで引き締めをやったわけですが、その結果として、クレジットの収縮というのが起こってきている。

 確かに、クレジットの収縮、これは初回の研究会でしょうか、事務局からの資料の中にも出されたグラフ、議論であるわけですが、94年のメキシコの信用収縮に比べると小さいというような議論がされているわけです。これは信用の伸び率だけを見てそういう議論をしているわけでございまして、これは短期の金利ですけど、だいたいクライシスの後でみんな引き締めをやるから、信用全体の金利がわっと上がるわけですね。

 例えば、IMFの高官は、金利を上げているから為替がこれ以上下がらなかったんだ、あるいは、金利を上げなかったら為替はもっと下がっただろうという解釈で、金融引き締め政策を正当化したわけであります。しかし、問題は金融仲介の大きさが、ぜんぜんラテンアメリカとは比べ物にならないぐらい東アジア、東南アジアの方が大きいということであります。

 例えば、これはM2とGDPの比率ですが、タイで73%、それから韓国が79.4%ですから約80%、割と金融部門の役割の遅れているのは、インドネシアで43%であります。それをアルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコと比べますと、サイズが倍ぐらい違う。もちろん、時系列的に見ると、こっちは非常に停滞的であるけれども、こっちは非常に拡大的であるということが分かります。

 ですから、金融仲介システムが、かなり高い貯蓄率をうまく投資に結びつけてきたということは否定できないし、最近のバブルに至っては、ろくなところに仲介しなかったということが、マージナルには言えると思います。でも、長期で見ると金融仲介分がかなり大きな役割を果たしてきたというのも事実だろうと思います。

 ですから、逆に、そういうところで信用収縮が起こったら、どれぐらいひどいことになるのか、実態経済にひどい影響を与えるかというのは明らかだと思います。

 そこで次は、この問題に対して、どういう対応の仕方があるかということなわけですが、2つの問題があると思います。1つは、あくまでこの危機の問題というのは、金に始まった問題で、それは国内資本市場と国際資本市場の両方の問題だと思います。その意味では解決の1つの重要な柱は流動性の供給で、これは国内でもそうだし、それから国際市場でもそうです。流動性の供給がない限り問題解決しないというわけでありまして、東南アジアのような開放小国にあっては、国内流動性だけを潤沢に供給するのみでは問題は解決しないわけです。

 それは日本でも流動性を供給すれば解決するのかというと、そう簡単ではないわけであります。金融仲介の機能を回復させるために国内の流動性を拡大すること、それと共に外貨の流動性というもう1本の柱で、東南アジアの場合は日本以上に支えてやらないと為替の暴落は目に見えている。

 ですから、この2つの流動性供給の問題を解決しなきゃいけない。それと同時に、こういう第二世代型の通貨危機、通貨投機が起こるというのは、基本的に国際資本市場に内在する問題であって、これを取り除くことは容易ではないと思います。

 つまり、口の悪い人は、ブーム・アンド・バストというのは、「ディーラーの世代が変われば前にやったことは忘れる」というような話をするわけです。言わば国際資本市場の固有の欠陥であって、ブーム・アンド・バスト、あるいはハーディングと言われるような集団型のパニックに陥る行動です。

 これはもうトランスペアレンシィを高めても、あるいはディスクロージャーを進めても残存する問題だと思いますし、それから、いわゆる格付け機関が、常に後追いになってしまうというのも致し方ない問題であります。

 つまり、投資家が他の投資家がどう動くかということを考えつつ行動する以上、常に遅れてしまう、常にハーディングが起こってからレーティングを変えるということにならざるを得ない、これは基本的に免れることができない問題だと思います。ですから、それを前提にして、セーフティ・ネットをどう創り上げるかということを考えるべきだと思います。

 そう考えるときに、2つの事実を最後に指摘しておきたいと思います。1つは、投資家の行動の中にはかなりリージョナルなバイアスがある。つまり、国際分散投資の議論をするときには、ホーム・バイアスという言葉があるわけですが、ホーム・バイアスというよりは、リージョン・バイアスということがある。さっきの株価の動きだとか、為替の動きだとかを見ましても、明らかにアジア・リージョン、あるいは、ラテンアメリカ・リージョン、あるアジアの1つの国が売られたら、周辺のアジアの国が売られるという形でのリージョナルなバイアスが投資家の行動に見られる。それは必ずしも機関投資家だけではなくて、銀行だってそうだということであります。

 それからもう1つは、恐らく国際的なセーフティ・ネットを考えるときに、我々は、世界銀行は持ってますけど、世界中央銀行を持ってない。世界中央銀行を持っていないから、通貨供給、外貨建ての流動性供給の担い手はいないわけですし、国内資本市場の中のような最後の貸し手を持っていないですね。それは10年やそこらでは持てそうにないと思うわけであります。そうであるとすれば、その中で各国が、あるいは、各国の意見を代表しているマルチラテラル・レスティチューションというものが、モラルハザードの問題をどう理解するかということにかかっているわけですが、それにはかなりアシメトリーが見られるわけであります。

 アメリカは、やはり有り体に言って、ラテンアメリカに対して非常にシンパシティックでありますけれども、アジアに対しては割とアパシティックだと思います。日本はどちらかというと、やはりアジアにシンパシティックだと思います。それはポリティカル・ディスタンスと言うべきか、カルチュラル・ディスタンスと言うべきか、それは定義の問題だと思いますけれども、モラルハザードがあるから、リージョナルなマネタリー・ファンドを創るのはけしからんというような話と、時間が経って学習効果があったから立場が変わったという優しい見方もあると思います。

 それよりも、例えば、これは聞きかじった話ですが、ビジネスウィークで政治改革の度合いのランキングみたいなのがあって、それを見るとタイが非常によくやっている。一番だめなのはマレーシア。タイはAランクかA-、マレーシアはFランクだという話があります。政治改革一つとっても、アセスメントの基準がどうも違うんじゃないか。マレーシアがいいと言っているわけではないんですが、アセスメントというのは、やはり、正しい政策選択をするメカニズムになっているかどうかということも一つの基準になると思うけれども、そうじゃなくて、民主化の度合いだとか、人権擁護の度合いだとか、繰り返し的な手垢のついたような手順でやるというのも一つのカルチュアルな側面、あるいは、もうちょっと易しく言うと、リージョナル・バイアスというのが政策当局側にあるかなと思うわけであります。

 その善し悪しが問題ではなくて、基本的にそういう期待の問題が民間部門にもあり、民間部門にも一種のバイアスみたいなのがあって、それから政策当局側にも一種のバイアスみたいなものがある。そういうものがある以上、リージョナルな対応の仕方というものを考えていかないといけないし、考えていくことは十分意味がある。それはグローバルな対応の仕方、例えば、グローバルなフィナンシャル・アーキテクチャーをちゃんとしなきゃいけないという議論と俯瞰的になり得る問題ではないかなと思います。

 どうもありがとうございました。

〔座長〕どうもA委員、ありがとうございました。それでは、A委員の報告に関連いたしまして、ご議論を賜りたいと思います。あと15分ぐらいございますので、何かコメント、ご質問ございますでしょうか。D委員。

〔D委員〕最後、お時間がなくて詳しい説明を聞けなかったんですけど、リージョナルなセーフティ・ネットといったものの必要性は、今一つよく分からないところがありまして、インターナショナルに十分な資金が供給できるのであれば、流動性の危機に対して補える。だから、特に、同じ性格のものがなくてもいいんじゃないか。

 今回の東アジアの場合について言えば、世銀だとか、アジア開銀などは、もう少し外貨を使って公共事業的なことをやって、景気の収縮を少し支援する、和らげる、そういう意味での議論が必要だと思うんですけれども、流動性だけの供給のためにアジア版、世界版を創るというのは、いかがなものかと思うんですが。

〔座長〕ちょっと簡単にお答えいただいて、それで他の方に移ります。今のご説明の続きということで、ご説明をお願いします。

〔A委員〕どういう回復のシナリオがあるかというと、この時期には直接投資が割と潤沢に継続して流れ込んでいて、それが外需主導型の成長の梃子になり得るというのが1つと、それから国内の財政金融の拡大、そういう国内の対応の仕方があると思うんです。国際的な対応の仕方としては2つあって、1つは過去のデッドをどう再構築するか、それからもう1つは、今おっしゃったように、国際協力の枠組みでいかに流動性、あるいは産業資金を供給していくかということだろうと思うんですね。

 そのときに、結局、万遍なくリーダーシップをとる国があればいいけれども、もしある程度、それぞれが距離感を持っているとすれば、例えば、日本はアジアのことについてもう少しリーダーシップをとって、公的支援の枠組みをつくる上でイニシアチブをとってもいいのではないかというような気がしますし、それからコミットメントの仕方が、例えば、銀行ローンのナショナリティ・コンポジションを見ても、基本的に、日本は非常にプレゼンスが大きい。それからヨーロッパもかなり大きいわけですが、アメリカは小さいんですね。

 そういうのを見ても、プライオリティが高いのはどちらかというのは非常に判然としていると思いますし、それからコミットメントが大きいということは、インフォメーションをかなり持っている。

 それは、例えば、日本の公的部門がどのぐらいインフォメーションを蓄積したかというのは分からないのですが、民間部門は少なくともかなりインフォメーションを持っている。そういう意味では、スーパービジョンだとか、それから政策対応だとか、ポリシー・ダイアログだとか、そういうことをやるインセンティブは多分、世界中にユニフォームにあるというよりは、こういう推移があって当然だと思うんですね。

 ですから、グラウンド・ストーリーとして言えば、流動性の供給がコアだと私は思います。けれども、それだけではなくて、いかに産業資金を今まで通り供給するか。全く逆になったわけですから。例えば、300億ドル、400億ドルのプラスに入ったのが、200億ドルぐらいのマイナスで出てしまうという状況になっていています。そういう問題を解決するのは、やはり関心を持っているところがイニシアチブをとることが必要だし、それから、これだけグローバルな資本市場に対するコミットメントが強くなってしまって、これを逆戻りさせることは非常に難しいと思いますし、逆戻りさせる必要もないと思うわけであります。これは非常に貴重なオポチュニティであるわけですから。

 そうだとすると、前向きに対処して、国際資本市場がそういう根本的な欠陥を抱えているということを素直に認める。素直に認める以上、それに対する対応策として、関心を持っているところが、継続的にベースを持ったスーパービジョンのサブグループを持っているということは、決してグローバルな対応と矛盾するものではない。むしろ、補完する役割はこれから必要なのではないかと思います。

 IMF体制は、もちろん建前としてはグローバルでありますが、中には、こういう推移があると思います。例えば、ロシアの危機なんていうのは、IMFのモラルハザードの典型みたいな議論じゃないかとも私は思ってます。そういう意味では、グローバルですべて解決すればそれに越したことはないわけだけれども、実際にはホーム・バイアスもあるし、リージョナル・バイアスもある。それからリージョナルな関心というのは、これは明らかに、どこはどこのバックヤードというのがあると思いますので、そういう現実を前にしたときには、十分現実的な受け皿ではないかなと思っています。

〔座長〕ありがとうございました。

 それでは、続いてコメント、ご質問を承って、そして最後にまた、A委員にコメントを簡単にしていただくようにいたしましょう。それではB委員、お願いします。

〔B委員〕今の議論に関連して、コメントさせていただきたいんですけれども、もし通貨投機、第二世代モデルで危機が起こっているということになりますと、これをどういうふうに防ぐかということについては、無制限に外貨を供給するシステムを創っていくことで、投機家に無駄な投機アタックを諦めさせるということが必要だと思うんですね。

 そうした時に、ではIMFが無制限な外貨を供給する国際機関かというと、IMFは拠出型ですから、みんなでお金を集めて貸す、保険会社のようなものなんですね。ですから、そういうものが無制限に外貨を供給する主体になるかというと、それは無理ではないか。

 では、先程、A委員もおっしゃいましたが、世界中央銀行を創るかというとそれも随分先だということ、やはり地域的にアジアについては日本が中心になって、そういう外貨を無制限に供給するところが必要になってくるんじゃないのかなという議論かと思います。

 そのときに、外貨については、日本がドルを供給するわけにいかないですから、どうしたらいいのか。それで、円の国際化という議論が出てくるのかと思います。

 ですから、A委員にお聞きしたいのは、通貨危機の第二モデルで、私は無制限に外貨を供給する主体を置いておけば、それで随分無駄な投機行為というのはなくなってくるのではないか、無駄なというのは、ファンダメンタルズに関係のないところに投機行為がなくなってくるのではないかなと思うんですけれども、それについていかがか、ご意見を伺いたいと思います。

〔座長〕ありがとうございます。それではE委員、お願いします。

〔E委員〕もう皆さんがコメントされていることと同じですが、昨年からアジアの危機が起こって、ロシアの問題があって、ブラジルの危機が起こった。ブラジルの危機のときのアメリカの対応を見ると、これは明らかに、アメリカがラテンアメリカのいわゆる最後の貸し手になるんだということですね。もう完全にアメリカの主導でプログラムを作ってまとめさせた。

 それを考えると、ロシアについてはやはり、ヨーロッパが主導して行う。アジアは宮沢構想にあるように、最終的には、日本が最後の貸し手と言っていいのかどうかわからないですけれども、そういう役割をせざるを得ない。結局、現実はそういうふうに動いてきてしまっているわけなので、私もA委員のおっしゃっていたようなことは、一番現実的な対応なのかなと思います。

 また、モラルハザードとの関係が非常に難しくて、例えば、公的機関がお金をタイに貸す場合、それは民間銀行をルールアウトする結果になってしまうんですね。

 それがいいのかどうかというのは難しい議論で、仮にIMFの救済がなかったとした場合に、民間銀行がロスを出すことになりますが、結果としては、経済全体のロスは最小限に留まったという見方もある。

 それがよく分からなくて、これが恐らく、A委員がおっしゃっていた貸し手側のモラルハザードです。これをどうやって防いでいくか。借り手側のモラルハザードは防げるんです。もうひどい目に遭ってますので。その貸し手側のモラルハザードが最大の問題で、IMFはそれができないですね。これはよく言われている議論ですけれども、貸してる方にコンディション・アイテムをつけますので。

 ですから、恐らくアメリカも金を出し、日本もアジアに金を出していかなきゃいけないんですけれども、今後は貸し手側のモラルハザードというのはどうやって防いでいくかというのが大事だと思います。これは結論がないと思います。

〔座長〕大変重要なご指摘いただきました。あとよろしゅうございましょうか。 F委員。

〔F委員〕ちょっと遅れまして聞き逃してしまったのですが、私はA委員に一つお伺いしたかったのですけれども、ご論文の中でも、アジアの奇跡をもたらしたファンダメンタルズはどうなっているかということを少しお書きになっていらしゃる。私はファンダメンタルズ、ファンダメンタルズとずっと言われてきて、いわゆる構造調整が入って、途上国というのはファンダメンタルズを正すために苦しみの中を生き抜いてきたという側面があるわけで、インドネシアに至っては、もう何十年という形で優等生と言われながら、ファンダメンタルズに取り組んできた、銀行改革も10年以上やっていた。だけど、蓋を開けてみると、こういう形でヒットされてしまって、さらに新たなファンダメンタルズが欠けているという要求を受けているわけですね。

 ここにもお書きになっていますけれども、制度インフラが国際化に追いついていない、キャッチアップしていないということです。しかし、言ってしまえば、途上国というのは、先進国に絶えずキャッチアップしなくちゃいけない立場にあって、現行水準に達したとしても、そのときはさらに新しいファイナンシャル・ツールやデリバティブができて、さらにヘッジファンドが非常に高度化していて、それに対応しきれないだとか、絶えず追いつかない状態で、なおかつ成長していかなくちゃいけないということがあると私は考えている。その辺を少し加味して、ファンダメンタルズというのをどう捕えたらいいのか。

 特に、インドネシアとか、タイなどは、従来型の財政の問題だとか、インフレだとか、そういうことと違って、どういうファンダメンタルズが今重要なことか。

 翻って言いますと、途上国にできることは何なのかということなんですけれども、どういうファンダメンタルズを重要視していくべきなのか、少し中長期的な利用になるんですが、それについて少しお考えをお伺いできればと思います。

〔座長〕ありがとうございました。残念ながらちょっと時間が残り少なくなってしまいましたので、どうでしょう、数分でA委員、申しわけございませんが、最後のコメントをお願いいたします。

〔A委員〕いろいろコメントをいただきましてありがとうございます。

 まず、地域的な通貨基金を創るということの難しさというのは、みんな、だいたい分かっているわけであります。1つは、B委員がおっしゃった投機に対抗し得るような、つまり、最後の貸し手というのは無理だと思うんですが、結局、見せ金程度のことしかできないというのが現実的な理解で、誰もそれを否定しないと思うんですね。無制限に供給するというわけにいかない。

 ですから、その意味では、限定的にプリコーショナリーな役割しか果たし得ないと思っております。しかも、通貨基金を創って、事務局をどこかに置いて、各国から何人か人材を出していけば、それでちゃんと機能するかというと、そうじゃなくて、むしろ、一番難しい問題は、E委員の言われたスーパービジョンを創ること、特に日本がやってないのにそんなことできるのかと言われるとつらいわけですね。これもIMFと同じ様に、そういうスーパービジョンの問題は、我々にとっても学習過程であり、試行錯誤であるわけですけれども、これをお互いにもっと監視し合おうよというピュアー・モニタリングというシステムを、どこまでがっちりしたものに仕上げていくことができるかということにかかっていると思うんですね。

 だから、流動性があればいいという問題ではなくて、それをどう使うかということに関して、ルールとシステムを創り上げていかないといけない。これは全く新しいチャレンジだと思うんです。そこに非常に難しい問題があるということを、皆さんのコメントにさらにリコメントしたいと思うんですね。

 それから、E委員のおっしゃった取りはぐれの問題というのは、正に取りはぐれると自国の金融システムが、つまり、貸し手の方、貸し手国の方の金融システムがおかしくなるという心配があったから、アメリカは80年代の時にものすごくIMFの尻を叩いて、救済の努力をしたわけです。

 僕はアメリカが偉いと思うことは、徹底して国内銀行に融資してやるんです。日本は国内銀行に徹底してやらないで、何かドルが下落したら国内銀行どころじゃなくなると先に思っちゃって、ばかばか金融拡大してバブルになっちゃったというのが現実だったと思うんですけれども、相変わらずそういうことをやっている。

 今回のIMF型の処方せんの問題も、IMFは対外銀行を回復したらそれで終わりです。彼らの業務はそれで終わりなんです。でも、各国もそうだし、それからグローバルに考えても、あるいはアグリゲートで考えても、各国が国内銀行をちゃんと回復しないと対外銀行を回復できない。特に、こういうハーディングみたいなことが起こっているときには、学級閉鎖の状況に今あるわけですね。

 学級閉鎖の状況にあるときには、1人1人が体質改善したってだめなんです。システムとして改善するためには、やっぱり各国が、自国の国内をまず建て直すということがコンフィデンスの回復に最も役に立つわけで、ファンダメンタルズが解決しないとコンフィデンスが回復しないわけじゃないと思います。

 そこで今、F委員の言われたファンダメンタルズの話になるわけですが、恐らく東アジアのファンダメンタルズというのは、マクロ安定化政策を割とちゃんとやっていて、それからあとは、人材の育成だとか、貯蓄だとかは、他の途上国にないようないいパフォーマンスを示していたということが、一つのファンダメンタルズでしょうし、それは一種の結果として、そういう中間目標的なものが達成されてきたと思うわけですけれども、そういう意思決定をさせるような政治システムというのが、どうにかこうにか持っていた。

 例えば、タイの政治システムがなぜAランクかというと、僕は、東南アジアの中では割といいんじゃないかと思うんです。それは、システムとしてチェック・アンド・バランスしているからいいという側面があるからです。

 だから、インドネシアのケースでは、そういうシステムが今度は、ぐちゃぐちゃになっているんですね。金融システムは、もともとフラジャイルだったのが背伸びして一生懸命自由化してやってきて、それでぐしゃっといって、それで政治のシステムが今、完全に壊れている。だから、直接投資が減っているのはインドネシアだけですね。これはかなり深刻だと思いますね。

 インドネシアの国立博物館あたりに行くと、「インドネシアは一つ」というのをずっと流しているんですね。もともと、それぐらい言わないと一つにならないところだったわけです。だから今、政治システムがバラバラになりかかっていて、非常に危ない状況だと思いますけれども、それも一つのファンダメンタルズですよね。そういう政治のシステムが一応、機能していて、大まかに言って、比較的正しい意思決定がされる構造があるということです。

 ですから、インドネシアを除くとタイも、それから韓国もある程度チェック・アンド・バランスは効いていると思います。例えば、個別的な政党が正しいことをしているかとか、日本が融資したやつが正しく使われているかとか。また、連立内閣がごそっと入れ替わった時に、先の公共事業がキャンセルされるということはこれからもあると思いますけど、そういうファンダメンタルズがまだ今のところ崩れていないところは、まだ十分やっていける、キャッチアップをずっとし続けなくてはいけないという話がありましたけれども、中ではやはりディスタンスを小さくしてきている、まだ小さくするポテンシャルを十分持っているという考え方をする根拠であります。

 以上です。

〔座長〕ありがとうございました。それでは、時間の関係ございますので、先に進ませていただきます。それではB委員、だいたい20分程度でお願いいたします。

〔B委員〕それでは、私の方から報告させていただきます。

 恐らく本当は、円の国際化についてお話しさせていただくということかと思うんですが、予めお送りしたペーパーのテーマは「ユーロの国際通貨システムと国際金融市場への影響」ということで、送らさせていただいております。

 このユーロの問題を考えることは、円の国際化と対応して考えることができるのではないかということで、このペーパーを送らせていただきました。

 皆様のお手元の資料2と別紙2というのがあると思うんですが、別紙2の方を見ていただいて、ポイントをお話しさせていただきたいと思います。

 それで、まずここで国際通貨、あるいは基軸通貨の問題については、基本的には、図で表しているような考え方でおります。

 ここに交換手段としての機能と価値貯蔵手段としての機能とが書いてありますが、これは基本的には、国内の貨幣の理論と同じ様に、国際貨幣、国際通貨の問題も交換手段としての機能および価値貯蔵手段としての機能という2つが主になるだろうと私は考えています。この他に表示単位としての機能というのもありますが、それは余り重要でなくて、むしろこの2つだろうということです。

 簡単に言うと、交換手段としての機能というのは、物を買う時にお金が必要、あるいは国際貿易する時にドルが必要だということですね。それから価値貯蔵手段というのは、自分の資産をドル建ての資産で取って置くこと、あるいはそれをドルの貨幣で取って置くこと、価値を貯蔵するという時の機能です。

 交換手段としての機能があるということは、これは自分が労働を提供し、貨幣を手にし、貨幣から物を買うということのタイムラグをうまく作り出すということで、交換がスムーズに行われるということであります。その裏腹で、タイムラグができるので、貨幣を持つことによる価値の貯蔵ということが、逆に、重要になってきます。すなわち、交換手段としての機能、交換をスムーズにするということは、売りと買いを労働サービスの売りと商品の買いというものに分離して交換経済がうまくいくということなんですが、その裏腹で貨幣を持った瞬間にその価値が下がっていくと、これは自分の所得が減っていくということであって非常に問題となります。ですから、交換手段としての機能と価値貯蔵手段としての機能とは、ちょうど裏腹の関係になってきます。

 それでは、世界中の人達がこちらを重視して持っているのか、あるいはこちらを重視して持っているのかということを実証的に分析したものをまず紹介させていただいて、それに基づいてユーロの話、それから円の国際化の話をさせていただきたいと思います。

 これからお話しする交換手段としての機能というのは、コスト・ベネフィット分析でベネフィットに当たるものになります。すなわち、貨幣を持っていることによって、交換が簡単になるというベネフィットがあるということです。それに対して、もし持っている通貨の価値がどんどん下がっていくということになると、価値が下がるということはコストだという考え方で、これをどういうふうに評価するか、経済主体は最適な保有比率を決めているという考え方をとっている。その下で、経済学のツールで考えていきます。

 それで、ちょっとテクニカルになるんですけれども、人々はコブ・ダグラス型の効用関数を持っているということにして、ここで効用関数を特定化して実証していくということです。そのときに貨幣、ここではドル、円、マルクという国際通貨を考えますが、ドルを持つとここにガンマという値を書いていますが、そのガンマだけ効用に貢献するというモデルを作って、このガンマを計測しようということを考えていきます。これは先程の図式でいきますと、今、我々が目に見えるものとして、ドルの価値がどれだけ下がるかということは、データとして手に入るわけです。それから、実際ドルをどれだけの保有比率で持っているかというデータも手に入ります。

 ですから、こういう目に見えるデータを利用して、ここの便益を経済主体はどう評価しているのか、このどう評価するかというところは、先程の効用関数のパラメータになりますが、そこを実証分析しようということです。その実証分析した後に、ドルのインフレ率とかが変化したら、どのように我々はドルを保有するだろうかというシミュレーションをするやり方で分析をしております。

 その分析の結果が資料の表にありまして、先程のガンマという値、これがゼロと1の間を採る値になります。ゼロと1の間で、1に近ければ近い程、ドル残高を持つということを高く評価しているということになります。実際、分析してみますと、99%の信頼区間でだいたい0.7の値になっております。

 この0.7の値はどういうことを意味するのかをグラフにしたのが、図の1とか、あるいは図の2です。例えば、図の1、これはWPIのインフレ率でドルの価値が下がっていくということで考えたものなんですが、だいたい先程のパラメータが0.69か0.75という幅であるということで、先程の効用関数のところに当てはめまして、ドルのシェアとインフレ率、インフレ率というのはドルの価値がどれだけ下がるかという値ですが、それをグラフ化したものがここです。

 実際のデータというのは、この中を動いているわけです。こういうふうに各年月で動いているところを計算して0.69とか0.何という値が出ているわけで、それを今度はシミュレーションでこういうグラフを作ったということです。

 例えば、これを見ていただくと、アメリカで5%ぐらいのインフレですとだいたい7割ぐらいのドルのシェアが計算できる。それから、アメリカが10%のインフレを起こせば、そのシェアは6割ぐらいだということです。

 これは初めに言いませんでしたが、そのドルのシェアが半分を切るというのは、円とドルとマルクの3つの通貨に対するドルのシェアを計算しています。この半分を切るというような状況はどのぐらいのインフレ率かというと、10何%ぐらいのインフレ率をアメリカが引き起こせば、この場合にはドルのシェアを半分に落とすということです。

 それでは、実際にアメリカが10何%インフレを起こすかというと、これは現実的には起こしそうにないわけですね。起こせない理由としては、彼らは通貨発行利益をとる時に、最大に採ろうということを考えれば、インフレを高くすると、こういうふうにシェアが下がってきますから、それで余り、インフレを高くしないとか、あるいは国内の問題でインフレを高くしないということがあるわけです。ですから、現実問題として、だいたいこの辺のところで動いていくということです。ですから、通貨としてのドルの価値が下がったとしても、それ程シェアは落ちないということが言えると思います。それが報告のポイントの初めに書いているところになります。要するに、インフレを非常に高くしない限りは、ドルが使い続けられるという「ドルの慣性」が働いているということになります。

 では、ドルの慣性がどうして働くかと言うと、ガリバー型国際通貨体制、国際通貨体制において非常にドルのシェアが大きいということ、これはガリバーになっているわけです。そうすると、どういう特徴を持つかと言いますと、一番初めに説明いたしましたこの図を見ますと、交換手段としての機能と、価値貯蔵手段としての機能、この2つを考えて我々は通貨を選ぶ。その結果としてドルを保有しているということです。

 では、ドルの通貨というのはどうだったかというと、どんどん価値は減価してきているわけですね。時によっては上がったり下がったりしますけれども、1973年のフロート制に移行してからは、当時の1ドル308円から現在の1ドル120円というところまでトレンドでどんどん下がってきているわけです。そういうどんどん下がっている中で、我々はドルを保有するということは、コストをかけながら、このベネフィットを享受している、その結果ドルを選んでいるということになるわけです。

 そうすると、実はドルにどうしてこういうベネフィットがあるのかということが問題になります。それがガリバー型というところになるんですけれども。では、そもそも貨幣が交換手段としての機能をどうして持つかというと、これはみんなが使うから交換し易いということであります。貨幣論の言葉で一般受容性が高い、一般受容性という言葉で言いますけれども、一般受容性が高ければ高いほど、そのものが貨幣として利用されるということになります。

 これは、別にネットワーク外部性という言葉で言われますけれども、例えば、他の例でいきますと、コンピューターのOSでは今、Windowsが主流ですけれども、私は数少ないマックOS派なんですが、マックOS派がなかなか日の目を見ないというのは、それはみんながWindowsを使っているから、Windowsに載っているソフトでいろいろファイル交換すると非常に便利だけどもマックOSだと、例えば、ワードなんかは非常に低いバージョンになるように使いにくいということがあるわけですね。

 ですから、みんなが同じものを使えば非常に便利になる。便利だからみんながそれを使うということで、ネットワーク外部性というのが働いてきます。同じことが通貨の話でもありまして、みんながドルを使って交換すれば、受け取った先で、そのドルをまた違う人に払って他の物を買うということができるということになります。

 ですから、この便益、利便性というのは、ネットワーク外部性、あるいはガリバーで非常に大きなシェアを持っているということが非常に重要になってきます。それがこれからお話しするユーロとの関係で基本的な考え方になります。すなわち、これからユーロができると、どれ程交換手段としてみんなが利用するようになるのかということ、あるいは、ここがアジアで円にどれ程足りないのかということになってきます。

 そこで、いろいろ図があるんですけれども、まずこれは日米欧の貿易の輸出と輸入を合計した相手国シェアを表しております。この一番下が日本です。それから真ん中がアメリカで、ここの黒いところがEUです。この1月1日から11カ国がユーロ参加国ですけれども、ここはEU15カ国で合計して計算しております。

 これで見ますと、当然、EU、EFTA、欧州、あるいはアフリカあたりは、EUとの貿易が非常に高い。また、貿易比率が高い。すなわち、これはEUと取引する比率が非常に高いわけですから、そうすると必然的に、アフリカだったらアフリカの通貨かEUユーロかということになるので、恐らくアフリカの通貨ではなくて、ユーロになってくるということでしょう。他の欧州というのは東ヨーロッパなどですが、この辺でもEUの貿易が高いわけですから、この辺はユーロが支配的になるだろうということが考えられます。

 それに対して、例えば、カナダとかラテンアメリカ、この辺はアメリカの貿易が非常に高いので、ここではユーロのシェアはあまり大きくないだろうということです。では、ここで問題なのは、アジアはどうかと言いますと、アジアについては、この研究会で出た資料でもあったと思いますけれども、日本との貿易、それからアメリカとの貿易、それからEUとの貿易、だいたい同じような比率になっております。

 ですから、そういう意味でユーロに関して言えば、どれ程アジアに進入してくるか、ユーロがアジアで使われるかは分かりません。ただ、中国でユーロを外貨準備として考えていくということが表明されたり、あるいは、ヨーロッパの研究者の中ではアジアの中でもユーロが使われるだろうという強気の読みをしている、そういうペーパーを書いている人もおります。

 ですから、必ずしもこれを見て、ユーロはだめだということは言えないですね。日本とかアメリカと同じようなシェアを持っていますから、もしかすると、アジアでもユーロが使われる可能性があるかもしれないということになります。

 その大きな理由は、やはり、ヨーロッパが非常に大きな貿易のシェアを持っていて、ユーロを使い始めるだろうということ、つまり、先程言いましたネットワーク外部性が他の地域に波及するのではないかということであります。

 これが貿易面から見たものですが、あともう1つ、ペーパーにあるものは金融面から見たもので、これは日本の生命保険会社がどういうポートフォリオを組んでいるかというものを表したものです。

 こちらの上にある図6は、米ドルとか、カナダドルとか、オーストラリアドルなどの実際にどういう通貨別のポートフォリオを組んでいるかという動きになっています。この中で米ドルを取り出して、これをポートフォリオ理論の理論値でどれほどの値になるかということから計算して、実際の値が理論値からどれ程離れているか、あるいは一緒なのかということを分析したのが図7になります。

 これは、ニーマリアンスの有効フロンティア上の理論値で、有効フロンティアに乗っている米ドルの比率というのは、この幅の中で動くように理論値は計算されます。これと比較して実際の値は、この5割ぐらい、5割を超える、あるいは最近では6割、7割ということで、非常に高くなっております。

 この非常に高くなっている理由というのが、実は、先程考えたネットワーク外部性が金融市場にも現れていて、先程、ホーム・バイアスとか、リージョン・バイアスという話がありましたけれども、実は、国際金融市場でドル・バイアスというものが発生しているのではないか。

 すなわち、貿易面など、ネットワーク外部性でみんなドルを使う。その影響で金融取引もドル建てが多くなってくる。ドル建てが多くなってくると、市場の厚みが出てきますので、そこで発行するときに取引できるものを考えようということになると、ドル建てで、債券を発行したり、あるいは、取引するときにドル建ての債券を買うということになってくると思います。

 ですから、ここの差というのは、金融市場の言葉で言えば、市場の厚みの効果が出ている、あるいは、この全体の話でいけば、通貨のドルのネットワーク外部性が金融市場にまで及んでいるのではないかということです。

 では、今度は金融市場でユーロの比率がどうなるかということでは、図8に、ユーロ11カ国とユーロ15カ国で区別していますが、これは国際債の通貨別の構成比になっています。それでEU11カ国が、これです。これに英ポンドを入れたものが、これだけの幅になります。

 これを見ていただくと、EU11カ国、あるいは英ポンドを加えたものと、それから米ドルのシェアをただ単に足し合わせたものですが、そこの段階で同じような比率になっているという結果が得られています。

 ここで先程の話に戻すと、米ドルはネットワーク外部性が働いてこれだけ高くなっているということですから、もし、EU11カ国、またイギリスも含めてここでユーロになって、そしてこれだけのシェアが出てきたときに、ここにネットワーク外部性がユーロに働いてくることになると、これよりも大きくなるかもしれないということです。

 今、ただ単に足し合わせただけでこれだけですから、これよりは多くなるかもしれないということが、ここで言えるかと思います。そういう意味で、国際金融市場においてもユーロが登場するということは、相当インパクトがあることではないかということです。

 では、それでは円についてなんですけれども、先程の貿易面で見ましても、円が使われているというのは、日本の比率が高いところですね。相手国として日本の貿易比率が高いのはアジアです。ただ、もし、EUとアメリカと日本で考えると、アジアでも3分の1しかないという問題があります。

 ただ、この3分の1しかない比率の中でも、円の比率はどうかというと、相当低くなっているわけです。ですから、円の比率を高めるというときには、通貨バスケットを考える。アジア危機はドル・ペッグが通貨バスケット、バスケット・ペッグであれば、もしかしたら防げたかもしれないということからすれば、こういう国々で、少なくともこのぐらいの比率では円を使えるようにしたいというニーズはあるだろうと言えるかもしれない。ただ、先程言ったように、ユーロがヨーロッパの中で非常に大きくなっても、ここからネットワーク外部性で他の地域に及んでいくという動きは、これだけでは相当難しいだろうと、円についても難しいだろうというふうに考えられます。

 伊藤隆敏先生が「円の国際化」ということで税金を下げろとか、いろんなことをおっしゃってはいますけれども、それだけで円の国際化が進むかどうかということは難しいのではないのかな。今回、このようにユーロが国際通貨として発展する可能性がある中で、もしユーロがドルに匹敵する国際通貨になれなかったとしたら、これは将来、円の国際化は難しいだろうなというふうに考えられます。

 ですから、もし円の国際化を考えるのであれば、根本的に何かを考えなければいけないのではないかということです。先程、A委員の議論で、アジア諸国でのバスケット・ペッグの中に円の比率を高めるということに、外貨準備に円を持たなきゃいけないということがセットになってくるんです。

 その時に、円でアタックを受けたときに、それを防ぐために円の供給をしてやるというようなシステムを地域的にワンセットで考えれば、アジアで円が使われてくるということも起こるかと思いますけれども、そういうことをしないで、ただ単に円の国際化というのでは難しいのではないのかなと思います。

 以上が私からの報告です。

〔座長〕どうもありがとうございました。それでは早速議論に移りたいと思います。それではまずA委員、お願いします。

〔A委員〕大変刺激を受けて、おもしろいご報告をありがとうございました。

 2つコメントしたいんです。1つは、最初に交換手段としての意味と価値貯蔵手段としての意味とおっしゃったんですが、国際通貨として持たれるかどうかの基準は2つあると思うんです。それは価値の安定ということと、それから流動性ということと、この2つのどっちが強いかということじゃないか、そういうふうにまとめてもいいんじゃないかという気がします。

 今、ネットワーク外部性だとか、一般受容性だとかおっしゃったことも含めて、流動性というのは、単に他の通貨に簡単に変えられるという意味での流動性という狭い意味じゃなくて、一般受容性まで含めた、クワーティ、イナーシャというか、みんなが使っているからスタンダードになっちゃうという、そういう議論も含めた流動性という意味です。その点では、円もユーロもちょっと苦しいかなというところがあると思うんです。あとは価値の安定。安定というのは、さっき、コストとおっしゃったんですけれども、それはコストかベネフィットかどっちか分からないと思うんですね。上がればベネフィットだし、下がればコストということだろうと思うんです。

 そうすると、結局、経済のパフォーマンスをどう認識されるかということに係わってきて、フローのパフォーマンスとストックのパフォーマンスの2つがあると思うんです。ドルの唯一の弱みは、要するに、債権国日本と債務国米国という構図が当分変わりそうにないというところであって、円が生きる道はそこしかないと思うんです。

 つまり、一般受容性というものは所与の条件ですから、これは全体にしてあとどれだけ巻き返せるか。別に、勝ち負けの話じゃないので、グローバルにいいのが一番いいわけですけれども、もしあり得るシナリオとしてはそこのところだと思うんですね。

 そのためには、今、フローで何となくみんなかなり下を向いちゃっているわけですけれども、成長のポテンシャルを高める、それから、国際貿易において日本が外国から非常にたくさん物を買う市場になっていく、この2つのフローで元気になるということです。それからやっぱりサステナブル・ビリティの問題というのがありますから、ストックの面で債権国の立場から転げ落ちるようなことがあると、これはもちろんストックの意味でもドルに太刀打ちできないという話になっちゃうわけです。ですから国際通貨足り得るかどうかということは、価値の安定ということが非常に輝きを増してくるということによって、広義の流動性の問題を解決できるのか。狭義の流動性の問題は解決できると思うんです。税制の問題だとか、そういう取引コストを制度的な面からディレギュレーションで小さくしていくということは可能だと思うんですが、一般受容性の方はなかなか難しい。

 ですから、そういう意味で言うと、ヨーロッパの統合というのは、基本的にはバラバラでやっていたのではアジアにも負けるし、アメリカにも負けるし、日本にも負けるしというところがもともと発想の原点だと思うんです。しかし、さあ統合して本当にそのフローで成長できるのかなというのはよく分からないと思います。それから、今は一種、ユーフォリアがあって、ユーロが国際通貨になるぞと言ってますけど、もちろん、ストックの面でも非常に大きな債権国であるわけではない。ちょっと冷静になって考えてみると、そんなに可能性があるのかなという気がします。

〔座長〕はい、D委員。

〔D委員〕3年間の過渡期については、後でご質問したいんですが、ユーロが使われるようになってくると、その分ドルの需要が減るわけですから、ユーロ対ドルの為替レートが変わってくるんじゃないか。それから、ある程度大きな強い通貨が2つ、つまり、準基軸通貨が2つあったときには、2つの通貨の間で、その他の通貨の為替が非常に不安定になってくるんじゃないかなという気がするんですが、その点をどう考えたらいいのか。

 ガリバーの方がある意味では安定を図るのが易しいんじゃないか、2党政治になったときに、どっちについて動くのかという話です。

 それともう1つは、過渡期は通貨としては存在しないわけですから、バスケットがユーロの通貨価値になるんだと思うんですが、そうするとユーロを過渡期で使っていると、その決済というのは一体どうなるのか。企業がやる分にはいいと思うんですけれども、会社の間でその最後の決済が一体どうなるのか、そこの過渡期が非常に難しいのではなかろうかと思うんですが、そこを教えていただければ幸いです。

〔座長〕はい、ありがとうございました。他に何かございますか。それではB委員、5分ぐらいでお願いします。

〔B委員〕一応ここでお答えしておきます。

 私が先程分析したものは、ドルの交換手段と価値貯蔵手段、どっちが重要かということを考えているわけです。その時に当然、相手と言うか、ライバルになる通貨として、円とかマルクというものを比べてドルの交換手段、ドルの価値の貯蔵手段ということを考えています。

 ですから、まず、交換手段か価値貯蔵手段かということでは、一応分析の上では分析対象にしたつもりでありまして、簡単にというか、直観的にお話しさせていただければ、ドルがこんなに下がってきているのに、あるいは、逆に円、マルクの価値がどんどん上がってきたのに、どうして円、マルクを使わないでドルを使っているのか。ブレトンウッズ体制の時は、ドルが金、ローカルカレンシーを結ぶ通貨でしたから、ドルを使わなきゃいけないということがありましたが、73年以降、そのブレトンウッズ体制が崩壊してからは、ドルを使いたくなければ使わなくてもよかった。それでも、みんなドルを使ってきたということは、やはり、価値貯蔵手段としての円、マルクではなくて、交換手段が優位なドルを使ってくるということをみんなが選択してきたのではないかということを分析したつもりです。

 ですから、その上に則って、いろいろな議論をさせていただいております。

 それからD委員から、まずユーロとドルのレートがどうなるか、あるいは、むしろ、ユーロが出てこない方が安定しているのではないかということですが、ユーロを発行するECB(ヨーロッパ中央銀行)の政策目標は、インフレを抑える、通貨価値の安定ということを言っています。

 それが守られるという前提で話をさせていただきますが、その通貨価値を安定するということで価値の減価が少ないユーロというものが、すなわち、価値貯蔵手段として優れたものが交換手段を持ってくる。それが国際通貨システムに出てくれば、対抗するドルとしては、今まででしたら交換手段だけでドルの地位を保つわけですが、やはり価値貯蔵を考えたものにならないと、ドルが地位を保てないだろうということになると思います。そういう意味では、ユーロが出てくることによって、ドルの今までの垂れ流しというのは抑えられてくるのではないかなと考えられます。それは長期的な話であって、ただ恐らくD委員が指摘されるのは、例えば景気循環の過程でユーロからドルにシフトしたり、ドルから円にシフトするということが起こってくるのではないかということだと思うんですが、それは恐らくそうだと思います。

〔D委員〕多分、その他の国々がどちらを選ぶかということによって、両方の通貨の為替が乱高下するのではないかなと思うんです。

〔B委員〕ただ、私が考えているのは、価値の安定したユーロがドル並みの交換手段を持って出てくれば、ドルも大きなインフレが起こせなくなってくる。そうすると、ユーロもドルも価値の安定した通貨になって存在して、ユーロとドルとのシフトというのは、起きてこないと思います。ただ、短期的に起きてくるというのは考えられると思います。

〔D委員〕ユーロが使われるようになれば、ユーロ圏としては、垂れ流しをしないと使われないんじゃないか。ドルもそうですよね。アメリカが経常収支赤字で垂れ流しているから、世の中が回っているので、ユーロも使われるようになったら、やっぱり垂れ流しをしないとまずいんじゃないか。

〔B委員〕そうなんですが、まずECBの政策目標の一番は通貨価値の安定、そこが本当にいくかどうかというのは重要な問題、前提ですけれども、そこの前提でいけば、ユーロの価値というものは安定したものになるだろうということですね。

〔D委員〕ECBの目的自体は、インフレ目標だけで、そのために金利を管理するということですけれども、そういう意味では、本当にそれで大丈夫かというのがよく分からないです。

〔B委員〕そうですね。EUの中で問題になるのは、EUが最適通貨圏かどうかという問題があると思いますね。それで、特に、EUの中で景気のいい国と悪い国があったときに、今のECBのスタンスは景気が悪い国に対して通貨を大量に発行するということはやらないということを言っているわけです。

 だけど、それが本当にうまくいくかどうかというのは分からない話で、そのときの全体の労働移動が十分にあるというのが前提で、景気の悪い国の労働者はいい方に移るということがあれば、ECBのやることは可能だと思うんです。しかし、それが本当にその通りいくかどうかというのは、今後の問題だと思いますね。ですから、そういう意味ではユーロ自体が今後うまくいくかどうかというのはそこにかかってくると、私も思っています。

〔座長〕ありがとうございました。

 まだいろいろとご意見もあろうかと思いますけれども、時間が参りましたので、今日はこの辺で終わりたいと思います。さらにコメント等ございましたら、事務局までいつものようにご連絡いただきたいと思います。

 最後に、次回のスケジュールにつきまして、事務局からご説明をお願いします。

〔事務局〕次回、第5回の研究会は、12月14日午前10半から12時、この庁舎の 729号室において開催いたしますので、よろしくお願いします。

 中身につきましては、年内最後ということで、資本移動の規制等について若干ご議論いただいた後に、第5回目ということで、年内の締めということで、中間取りまとめ案につき検討していただく予定になっております。

〔座長〕ありがとうございました。

-以上-

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