第5回世界における知的活動拠点研究会議事概要

1.日時:

平成12年5月17日(水) 10:00~12:00

2.場所:

経済企画庁官房特別会議室(729号室)

3.出席者:

伊藤元重座長、植田憲一、北原保之、椎野孝雄、杉山知之、林紘一郎、

グレン・S・フクシマの各委員

牛嶋総合計画局長、永谷審議官、塚田審議官、藤塚計画課長、林部計画官他

4.議題:「世界における知的活動拠点研究会中間とりまとめと今後の予定について」

5.審議内容

 事務局から、世界における知的活動拠点研究会 中間とりまとめと今後の予定について説明後、討議を行った。

  • マスメディアが情報発信に果たすべき役割についてはもう少し踏み込むべき。また、日本のジャーナリストは個人として発信・交流する必要がある。
  • 一方で、マスメディアだけでなく多様な「個」がメディアとして世界的に大きな影響を与える時代になってきている。
  • そのような中でマスメディアは、メディアのプロとしてアマチュアをリードすべきということではないか。
  • 日本の情報を如何に世界に発信するかという視点から日本のマスメディアが議論されているのに対し、世界のマスメディアは自国ではなく世界を相手にしている。
  • マスメディアのマインドが変わらないといけない。活躍の舞台を世界に広げておかないと、日本の中だけではそのマインドはできない。
  • 日本語によるアジア圏向けの衛星放送が文化侵略に繋がるという理由で、わざと利用範囲を絞っているというような状況は変えていきたい。
  • 独創性や起業家精神を有する人的資源育成のための教育は、大学生になってからでは遅く、小中高から始めることが重要。
  • 表現能力を高めたり、外に情報発信する際のコミュニケーション能力を高めるための教育が弱いので、小中学生の頃からそういった教育をすべき。
  • 教育には3つのレベルがある。1つ目は人の言ったことを理解しているかどうか。2つ目は文章を書いてそれをプレゼンテーションできるかどうか。3つ目は相手の言ったことに対し反論してディスカッションできるかどうか。今の小中高の教育は1つ目のレベルにあまりにもウェイトが置かれている。
  • 独創性やアイデンティティをどうやって醸成するかについては、いくつかの例がないとわかりにくい。例えばアメリカの物理学会では、20世紀を代表する100人の物理学者のプロフィールをCD-ROMで出し、顔の見える学問を追及している。このような小さな工夫が必要。
  • ここ数年で、小中学校ではビデオ機器などを導入して発表についての教育に力を入れているが、指導者が模範回答的な表現方法を子供に勧めている場合が多く、子供なりのクリエイティビティを認めていくという指導者が少ない。
  • 教育の中で教員の在り方は極めて重要であり、大学における教育学部の在り方などについて検討すべき。
  • 日本を知的活動拠点として強化するためには人材育成が重要。日本の大学では、学問的な理論や方法論や分析能力など、学問として評価できるレベルの知識と、実社会に役立つ知識を両立することが重要。
  • 日本の特殊性を発信するだけでなく、日本の経験や文化が他国のそれとどういう関係があるのかという関連性や普遍性を発信すべき。
  • 社会に役立つ知識の供給と世界レベルで通用する高い学問レベルの維持は、いずれも大学にとって重要な課題であり、それらが混在することにより、様々なネットワークが形成されていくことが重要。
  • クリエイティビティとハードサイエンスとの関係はそう遠くない。アートのセンスがある子も物理的な原理を覚える必要がある。
  • 今小学生の数学のレベルは非常に後退しているので、数学はきちんと教えるべき。勉強のための勉強として子供が感じるような教え方になっていることがむしろ問題。
  • 学校のマネージメントはアメリカの制度を参考にプロに任せるべき。
  • 大学の法学部を卒業して直ちにロースクールに入る前に、他分野の知識の習得や経験を積むのが望ましい。これは医者の医学部卒業から国家試験までについても当てはまる。
  • 現在の社会においては、特許分野におけるエンジニアの活躍のように、学際活動を進める必要性が高まっている。
  • 現在起きている変化をそれに携わる人が教えるために、教育のアウトソーシングを活用することは有効。ただし、初等教育から高等教育までを通じて、それに偏重しすぎることは危険。次の時代を作る土台として普遍的なテーマは不可欠であり、教育の場ではその重要性を認識すべき。
  • 日本が将来に渡って世界で尊敬されるためには、普遍的で質の高い原理を生み出し、それを世界に発信していく必要がある。
  • 「ビジネスモデル特許の積極的な申請」というような記述が必要。特許の弊害としての指摘は、特許の権利保護期間の短縮等によって解決できる。
  • ビジネスモデル特許で保護する範囲は難しい問題。権利保護による効果についても、メリット・デメリットがあるため、積極的に評価することは困難。
  • 特許で保護の対象とする範囲は特許審査の問題。従来は「審査が甘い」との指摘もあったが、現在は改善され適切に審査されている。したがって、積極的に申請していくことが必要。
  • ビジネスモデル特許は「ビジネス上の経済的な権利関係」という側面の他に、「普遍性を持つものとして相手に認めさせる方法・分析の訓練」という側面もある。
  • 「多様な知恵の社会」では、「価値観の違う人とのコミュニケーション」が重要になるということである。したがって、普遍性を持つもの等を通じて行う方法論や訓練が重要になる。
  • ソフトウェアは著作権で保護することになっており、特許に比べると事情は複雑。知的財産権全体をカバーするため、「著作権」を補論として取り上げるべき。
  • 「ジャパン・イメージ」という言葉は、「意図的に作られた固定的な日本のイメージ」という誤解を生む懸念があり、表現に工夫が必要。
  • 「相手の関心事は何か」という視点が必要であって、イメージの押し付けには留意が必要。
  • 国際競争力のあるコンテンツを生み出し得ると期待される分野の例としては、応用だけでなく基礎的な部分でも日本が世界レベルのものを生み出すということを明確にする観点から、「純粋科学」を挙げるべき。
  • インターネットの活用と新たなビジネスについては、現在の情報技術革新やオープン・ネットワークの特性が実社会に及ぼす影響について分かり易く示すべき。
  • アメリカにおいては、インターネットを活用した「教育の情報化」が急成長している。日本の魅力を世界に発信する上でインターネットの活用の仕方というテーマも重要。

6.今後のスケジュール:

 議論の終了後、中間とりまとめについては、座長一任ということで各委員とも了承。

なお、本議事概要は、速報のため事務局の責任において作成したものであり、事後修正の可能性があります。

(連絡先)経済企画庁 総合計画局 国際経済班

Tel 03-3581-0464