内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  経済財政政策  >  研究会の議事録  >  第4回人口減少下の経済に関する研究会

第4回人口減少下の経済に関する研究会

議事録

平成12年4月19日(水)10:00~12:00
経済企画庁総合計画局会議室(732号室)
経済企画庁

第4回人口減少下の経済に関する研究会議事次第

平成12年4月19日(水)10:00~12:00
経済企画庁総合計画局会議室(732号室)

  1. 開会
  2. 検討事項等について
    • 歴史からみた人口減少の経済社会への影響
    • 人口減少下における資源の活用と生産性の向上
  3. 自由討議
  4. 今後のスケジュール
  5. 閉会

(資料)

  • 資料1   「人口減少下の経済に関する研究会」委員名簿
  • 資料2   「歴史からみた人口減少の経済社会への影響」について
  • 資料3-1 人口減少下における資源の活用と生産性の向上 論点
  • 資料3-2 人口減少下における資源の活用と生産性の向上 参考資料
  • 資料3-3 ORANI-Gモデルについて
  • 資料3-4 一般均衡モデルによるシミュレーション結果
  • 資料4   今後のスケジュールについて(案)
  • 参考資料1 前回研究会(平成12年3月15日)における論点メモ
  • 参考資料2 前回研究会(平成12年3月15日)議事録

「人口減少下の経済に関する研究会」委員名簿

  • 石原 和幸  日本航空株式会社 貨物事業企画部 企画マーケティング室 課長補佐
  • 石原 誠一郎 SAPジャパン株式会社 ディレクター エグゼクティブセールス
  • 井出 一仁  株式会社日経BP 日経コミュニケーション編集長
  • 岩田 彰一郎 アスクル株式会社 代表取締役社長
  • 北之口 好文 ヤマト運輸株式会社 システム改善本部 情報システム部長
  • 國領 二郎  慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 助教授
  • 花輪 順一  日本郵船株式会社 物流グループ 物流統括チーム 課長代理
  • 藤田 周三  株式会社ローソン 情報システム室 副室長
  • 前田 正明  NTT移動通信網株式会社 モバイルコンピューティングビジネス部 新ビジネス担当部長

(五十音順 敬称略)


〔 座長 〕 ただいまから、第4回の人口減少下の経済に関する研究会を開催させていただきます。

 本日は、委員の皆様方には、ご多用のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。

 本日の検討事項は、2つございます。1つ目は、歴史から見た人口減少の経済社会への影響について。2つ目は、人口減少下における資源の活用と生産性の向上についてでございます。

 [歴史からみた人口減少の経済社会への影響]

 それでは、1つ目の検討事項である、歴史から見た人口減少の経済社会への影響について、この調査を担当されたニッセイ基礎研究所からご説明をお願いします。

〔 研究員 〕  私どもが承りました調査の趣旨は、過去の人口減少事例において人口減少が経済社会にどのような影響を与えたのかであります。特に人口減少下で社会全体として経済成長を果たすことができたのか、それともできなかったのか。事例によって違いが現れたとしたら、それはどういった条件によるものなのかということを、実証的に明らかにするということです。

 早速、内容方の説明をいたします。

 まず、1ページ目ですが、この辺は釈迦に説法という部分もあろうかと思いますが、どのようにして事例を選択したかについて、簡単にご説明申し上げます。はじめに、コンセンサスになっている部分ですが、世界全体の人口の増加率という観点からいきますと、1750年頃が節目になっております。それまでの西暦元年から1750年頃までの人口増加率は、年当たり0.1%に満たなかったようです。それが18世紀以降、急速に増加率が高まります。ここに掲げてあるものは国連の表ですが、他の研究者の結果でも大体似たような内容になっております。

 この1750年頃というのは、人口増加率という点でも節目なのですが、ちょうどこの頃から近代的な人口統計が始まった時期でもあり、それからほかの経済統計もそのあとから順に整理され始めるという時期です。そしてもう1つ言うならば、イギリスで産業革命と呼ばれる工業化が起きた節目の時期であります。これ角度を変えて言いますと、要は1750年頃までは、世界の人口は増加をしたり、減少をしたり、停滞したりして、そういうふうに見れば変動的なものでした。ですから、後の人口減少事例というのは、これ以前のところから抽出している形になります。

 それから、近代的な統計もこの時期には完備されていなかったので、実際、統計の信頼性というようなことも考えながら、公的には存在しない統計を断片的に利用しながら考える必要があります。

 それから、工業化の前の時代でありますから、技術進歩が継続的に起こって生活水準が向上していったということは、これ以前の時期においてはなかなか考えられない。つまり技術進歩が起きたとしても、それは断続的なものであったというふうに考えるのが自然ではないかということです。

 それを簡単な言葉で言いましたら、マルサスが考えたような経済と人口の関係が成立したのが近世以前であったといえます。生産要素として労働と土地を考えますと、耕地の拡大が一巡してしまうと、あとは限界生産力が逓減する力というのが非常にはっきりと現れますので、1人当たりで見た生産というのは増えなくて、それに規制されるような形で人口の水準が決まってしまうというような世界です。

 2ページ目をご覧ください。もっともそういうような見方に対して違う見方というものもありまして、内生的な成長論の立場から、近世以前の社会でも技術進歩は継続的に起こっていて、それが特に既存の知識をうまく利用する形で人口水準に比例するような形で発展を遂げてきたという解釈もあります。

 その場合は、経済全体で生産が増えるのですけれども、それが1人当たりの生産と言いますか、一人当たりの生活水準の向上にあてられるのではなくて、人口増加を支える力にまわってしまうというような仮定を置いているわけです。そのことで世界の人口史を説明できるという事例研究もあるのですが、いろいろ仮定に問題があります。今後の日本経済を考える上では非常に有意義な点が含まれていると思うのですが、過去の事例を考えるという点では、そうした仮定は適切ではないという5つの理由を挙げています。

 3ページ目の方に移らせていただきます。そういった基本的な認識のもとで、幾つか事例を選びまして調査を実施いたしました。ここに掲げてある表以外の人口減少事例はもちろんあるのですが、経済・社会の客観的な資料ないし統計が十分にはありませんでしたので、省かせていただきました。データが比較的得られたものの中で例えば古代の代表としては漢の時代の中国、それから中世の代表として14世紀のヨーロッパ、それから近世、産業革命に前後する時期ということで江戸時代の日本と、19世紀のアイルランド。それから、第2次世界大戦後ということで1980年以降のハンガリー。さらに、一国レベルということではなくて、一国内の地域レベルになりますけれども、戦後の日本の都道府県、これらを取り出してみました。

 このうちハンガリーと日本の都道府県に関しては、公式な国民所得統計ないし県民経済計算統計が存在しますので、客観的な事実として経済成長したかどうか、はっきり言えます。それから、上に掲げてある部分というのは公式統計が存在しない時代ですので、これは既存の研究とか文献をもとに総合的に判定しました。プラスになっているところは成長率がプラスであるということです。

 細かい内容は個別に後でご説明いたします。この表のレベルで一応整理いたしますと、もともとの調査の主旨というのは、人口減少下で経済成長を果たしたのか、果たさなかったのかということが最大のテーマでありましたので、それに即して整理をした結果、経済成長をするための条件ということで3つに分けて考えました。

 社会全体の成長率というのは、1人当たりの成長率と人口増加率で分解できますし、それから1人当たりの成長率というのは、1人当たりの資本、ないしは1人当たりの土地の部分と、それから全要素生産性、技術進歩の部分に分けて考えることができると思いますので、次のような定義が可能だと思います。

 まず、工業化が起こる前の社会の場合には、人口が減少すると自然的に1人当たりの土地所有は増えますので、その部分で人口減少によって社会全体の成長率が下がるという部分を緩和できるという効果があります。したがって、全要素生産性の上昇率がなければ社会全体でも成長を果たす事はできないのですが、労働分配率に人口減少率をかけた部分を上回れば、一応社会全体としての成長を果たす事ができる。具体的には江戸時代の日本、それから19世紀のアイルランドがそれに該当します。

 次に、既に工業化したあとで考えますと、これは定常状態から非常に乖離して、経済的に資本蓄積が可能かどうかというところで大きく分かれます。仮にまだ定常状態から非常に距離がある場合というのは、1人当たりの資本を増やしていくという効果と、全要素生産性が上がる効果が人口減少率を上回ればいいという事だと思います。これは1980年以降のハンガリー、それから戦後日本の過疎地域のような場合に当てはまります。

 3つ目は、もうかなり定常状態に近い場合で、人口減少下で経済成長を果たすためには全要素生産性の上昇率が人口減少率を上回るという事が必要になると思います。これは多分、今後の日本にあてはまるという事だろうと思います。

 今、申し上げたような個々の事例研究の概略でございましたけれども、4ページ目に、ペストがはやった時期のヨーロッパで何が起こったかというのを簡単にデータとともに説明してあります。14世紀、15世紀のヨーロッパに関しては、人口を研究する立場、それから経済史を研究する立場から、ほぼコンセンサスが得られておりまして、人口が減少した結果、労働の相対的な価値が高まって実質賃金額が上昇した。それから、それによって農民の地位が向上したというようなことも言われます。

 ネガティブな側面としては、これはダグラス・ノースなどが指摘することですけれども、市場の規模が縮小したことによって、それまであった、取引きを効率化させようとする動きが阻害され、ハンザ同盟のような守旧派が力を盛り返したことも指摘されています。

 実際にどうだったのかというところを数字面で見ると、その時期は人口数が実際どうであったかというのは定かでない部分もありますが、大体ペストによって3分の1くらい人口が減少しているというのが一般的な説ではないかと思います。実質賃金の方は非常に乱暴に言って2倍ぐらいに上がっています。片や30%の、片や2倍ですから、もし、労働の分配率が変わらなければ、全体として生産が増えてしまった事になるのですが、実際には分配率は変化しているということだろうと思います。

 個別の荘園の事例を見ますと、確かに賃金が上がる一方、地代は下がっています。しかし、全体としての収入と言いますか販売額のようなものは減っています。個別の荘園ではなくて、経済全体ではどうだったのかというのは、生産数量というものがないものですから、与えられた賃金データ、それから地代、それから人口といったものから、生産関数を推定するような枠組みで目途をつけますと、やはり全体としては生産量が減っているというような結果になりました。

 それから、次は江戸時代、1730年から1800年くらいに人口減少が起こっている。結果的に言いますと、ちょうどこの頃から農業技術面での品種改良や肥料のやり方の改善といった動きが起こりまして、飢饉による影響を乗り越える形で1人当たりの生産も増大しましたが、社会全体の生産も増大しました。

 6ページ目をご覧下さい。これは人口減少が起きるまでの動きがどうだったのかというものを、縦軸に1人当たりの生産、それから横軸に1人当たりの土地をとって表しています。面白い事に1600年から1730年くらいまでは、1人当たりで見ると右上から左下への動きがあります。これは言ってみれば土地が余り変わらない中で人口が増え、1人当たりの土地面積が減り、結果1人当たりの生産が減ったというようなメカニズムでとらえる事ができるかと思います。1730年から1750年くらいにかけては、逆に右上の方向に行く動きがありまして、1人当たりの耕地が増加したから、1人当たりの生産が増えたのだというふうに解釈できます。

 最後に1872年くらいまでの動きですけれども、これはほとんど1人当たりの土地面積が変化しない中で、1人当たりの生産が増えている。上方へのシフトですか、もうこれは技術進歩以外には考えられません。

 次にアイルランドの資料です。7ページ、8ページ、9ページになります。アイルランドの場合、1840年代に農業飢饉が起こりまして、それによる直接の餓死者もあるのですが、以後海外、特にアメリカへの移民が非常に増加し約100年にわたって人口減少が続きました。そのあたりで起こった現象は基本的にはペスト流行後のヨーロッパと同じような現象です。労働が相対的に希少になって実質賃金が上がって、地代が下がるという事がやはりあります。

 もう1つ重要な事は、産業面でそれまで穀物生産主体の農業から牧畜主体の農業へと変わったという事が見られます。これは8ページ目にありますけれども、穀物生産がどちらかと言うと労働集約的でありましたので、人口減少後、土地が相対的に豊富になって、それから労働が相対的に稀少になったことによって、より労働力を必要としない牧畜へ産業シフトとしたというふうに理解されます。なお、賃金の方はこの表に掲げてありますように上昇しています。

 先ほど申し上げた農業部門内での産業構造転換をあと押しする動きとして、土地法の改革といったものが挙げられます。最終目的と言うのは借地農を自作農に変えるという事であったようですが、その過程で適正な地代の形成を生むというような事がありまして、結果として地代が下落しています。

 それから、もう1つ、小作上の権利を自由に行使できるというような事で、結果として農家1軒当たりの農地規模が徐々に増えていったということがあります。農家1軒当たりで見ると持っている土地の量が増えていますので、それだけ生産が上がったというような現象です。

 9ページ目の方は、それを基本的にデータで追ったものなのですが、穀物部門というのはほとんど生産量が減少していますけれども、家畜の方は増えています。価格の方も畜産物の方の価格が相対的に上がっていきましたので、名目金額で見ますと人口減少にかかわらず、畜産物の増加によってトータルとして生産額が増えたというようなことが観察されます。

 それから、10ページ目はハンガリーの事例で、これは端的に言って定常状態から非常に離れた状況にあったので、そのあと1人当たりの資本ストックが増えていって、高い成長率が実現したというふうに解釈するのが一番自然だと思います。

 ハンガリーの前までのご説明で申し上げた事例というのは、全て人口減少と言っても、どちらかと言うと出生率が低下したのではなく外生的に死亡率が上昇してしまったことによるケースです。ハンガリーの場合は主として出生率が下がった事によって人口減少が起きました。それから海外へ人口が流出したわけではないけれども人口が減少したという事で、今後の日本という点では1つの見本になるのかと思います。

 決定的に違うのは、やはり1970年代初頭、あるいは80年代初頭のハンガリーというのは、まだまだ資本蓄積という点で十分ではなくて、仮に生産性の上昇が余りなかったとしても、1人当たりの資本が増えていく事によって経済成長が可能であった。そこが、今置かれている日本とは大きく違う点ではないかと思います。

 似たような事例が、日本の都道府県においても見られます。11ページ目になります。表の方は地域レベルで成長会計を実施した結果なのですが、特にここに掲げてあります1980年以降の期間で、実際に就業者数が減った事例があったか、なかったかという事で見ますと、80年から85年にかけて、四国地方で就業者数が減っている事が挙げられます。この時の経済成長率がどうであったかと言うと、それが何によって支えられているかと言うと、TFP、全要素生産性の上昇ではなくて資本ストックの上昇によって、この時は支えられている。

 一般に人口減少が起きたときに地域レベルで見て、それを相殺するようなほかの力が働いたのかどうかというのを見たのが12ページになります。先ほどの全要素生産性と労働力人口の関係で言うと、国際クロスセクションデータでは労働力人口が減ったときに、労働節約的なインセンティブが働いて、全要素生産性が高まるというような事も指摘されるわけですけれども、地域データ見る限りはそういう関係は見られないという事が言えます。

 それから、人口が減ったときに、労働力率が上がるような動きがあるかどうかというのを一般的データで見たものが、さらにその下になりますけれども、そういう傾向も特段過去においては見られないようです。

 ざっと早足で説明させていただきましたけれども、13ページ目、最後にまとめをさせていただきますと、経済成長と人口減少という事に限って意味合いを考えますと、まず14世紀のヨーロッパや19世紀のアイルランドにみられますけれども、人口減少が起こったからと言って必ずしも悲観的になる必要はないと言えます。それは労働が相対的に稀少になるわけですから、実質賃金が上がって生活水準が向上するということに由来しています。ただ、市場のメカニズムに任せておけばそうなるか、何もいらないかと言うと決してそういう事ではなくて、アイルランドの場合には、土地法の改革によって農業の効率化と土地の集積を促進したというような事実があります。ですから、一般論としては生産要素をより有効に活用するようなインセンティブを与えるということが必要だと思いますし、それから高付加価値産業へのシフトが柔軟に行われるような環境整備をしていくということも必要だと思います。

 それから、今まで経済全体での成長を1人当たりの成長と、それから人口の問題に分けて考えて、独立であるというような前提で話をさせていただきましたけれども、必ずしもそうではなくて、人口水準そのものが知識ストックの蓄積につながっていて、いわゆる規模効果が働くという立場もございます。その人口減少に伴う負の規模効果というものも重視するならば、全要素生産性が低下するということになってしまいますので、規模効果で1人当たりの経済成長が減殺される可能性はあると思うのです。

 逆に先ほどちょっと申しましたように、労働力人口の減少によって労働節約的な技術進歩が誘発されるという可能性がありまして、理論的にも実証的にも両方の可能性はありますけれども、一概にどちらだということは言えないと思います。非常に月並みな言い方になりますけれども、生産性向上に向けた取り組みというのは必要だということはいえると思います。

 つたない説明になりましたけれども、私どもの調査結果で得られたものをご紹介いたしました。

〔 座長 〕 ありがとうございました。

 外国の経験と日本の経験を踏まえて、非常に適確な研究を紹介していただきましてありがとうございました。

 では、ただいまの説明に対しましてご意見やご質問、皆様あると思いますので……。

 どうぞ。

〔 委員 〕 1つだけ質問をしたいのですけどいいですか。人口減少というのも原因が違うと効果はそれぞれ違うような気がするのですね。この外国の例を見る限り、日本の都道府県の方はちょっとわからないのですけど、日本の場合は少子化というか、人口減少と高齢化と同時進行しているわけですよね。そういう例というのは外国ではないのですか。私の記憶だとスウェーデンとかで、ある時期高齢化が非常に進んで同時に人口も減少した時期というのがあったのではないかというふうに思うのですが、そういう例はないのでしょうか。

〔 研究員 〕 数字で見る限りスウェーデンではなくて、むしろハンガリーが今おっしゃった事例に該当します。

〔 委員 〕 年齢も高齢化しているのですか。

〔 研究員 〕 ハンガリーの場合はしています。ただ、ハンガリーの場合は、実際死亡率も若干上がっています。それは世代全体が高年齢の方にシフトしていって、ですから結果として平均的な死亡率が上昇したということではなくて、特定の年齢階層で死亡率の上昇というのが見られる。乳幼児とか小さい子供の死亡率は改善していますし、それから高齢者の死亡率も改善しているのですが、どちらかと言うと壮年層の死亡率が若干上がっている。それから男女で言うと男性の方の寿命がちょっと縮まっているというようなことがございます。それはハンガリーだけではなくて旧東欧の国では最近見られる現象というふうに言えると思います。

〔 委員 〕 それは人口流出ではなくてですか?

〔 研究員 〕 人口流出ではないです。ハンガリーの場合も改革に伴う混乱の時には海外へ人口流出が起こったのですが、基本的な要因は出生率の低下によって起きています。それ以外の外国の事例というのは、ほとんど飢饉であるとか災害であるとか疫病の流行によって突然死亡率が上がってしまったというケースだけだと思います。

〔 委員 〕 でも、今のハンガリーの話だと人口が若年化するのではないですか。死亡率が低下し、子どもと高齢者の寿命が伸びて、壮年層が死んだ場合。日本の歴史を考えると、1930年代は出生率・死亡率が下がったのですけど、乳児死亡が改善されたから、そのときに明らかに人口は若年化に貢献しています。死亡率の変化は全年齢に関係しますが、出生率の低下は一番下の裾野を削りますので、このどちらの構造をとるか、どちらが原因かというのは非常に重要になると思うのです。

〔 研究員 〕 どちらか原因かというのは出生率の低下の方……

〔 委員 〕 いや、分析と経済発展の段階によって、その貢献度は大きく変わるのです。人口高齢化への影響は、だんだん出生率の力が弱くなってきて、死亡率の構造が非常に強くなるのが世界的な傾向になってくるのですけど、このハンガリーの場合はどうなっているのでしょうか。1980年というのはもうかなり近代化されていますので。今、日本の場合を見ると、死亡率と少子化とか五分五分なのですが。

〔 研究員 〕 五分五分ですね。

〔 委員 〕 これから次第に出生率の低下よりも死亡率の低下の方が高齢化に貢献していくわけです。先進国は大体そういう共通な傾向にあるのです。そうすると、歴史を振り返ってみて、どの段階で、委員がおっしゃられたように、どちらが主に人口増減への影響を与えたか。出生率、死亡率がどういうふうに変わったかによって高齢化に影響が出るのか、または若年化に効くのかというのが非常に大きく関ってくると思うのです。

〔 研究員 〕 ちょっと十分に理解できてないのですが。

〔 委員 〕 要するに、出生率低下は人口の一番下を削りますよね。一方死亡率低下というのは全年齢にいきますよね。ですから、死亡率も乳児死亡率が下がるのか、中年が下がるのか、高齢者が下がるかによって人口のピラミッドの形が大きく変わるわけです。だから、死亡率の低下するメカニズムがどういうふうに変化するか。これは経済発展とも非常に関係があるのですけど、これによって高齢化に対するインパクトが大きく変わってくるのです。

〔 研究員 〕 そういう意味では、ハンガリーの場合は乳幼児死亡率というのは下がってきますから、こられからは少しよくなると言いますか。

〔 委員 〕 だから、それが下がった場合には若年化してしまうわけですね。死なないから。

〔 総合計画局長 〕 若干の生態は10ページに示しています。

〔 座長 〕 10ページの一番上の表を見ていただいたら、それぞれの項目、今、委員が言われたのが出ていますよね。

〔 委員 〕 10ページですか、これきちんと年齢別にしないとよくわからないと思いますが。

〔 研究員 〕 ハンガリーの場合は確かに、どの変化が大きいのかと言うと、過去50年ぐらいを見たときに、乳幼児死亡の低下というのは顕著に見られます。それでもほかの国と比べるとまだ高い数字になりますから、可能性としてまだ下げられるという可能性があると思いますので、そういう意味では今後安定的にといいますか、高齢化が止まる可能性があると思います。ただし、今現在で言うと高齢化は進行しています。少なくとも、ハンガリーのペースはそういうような言い回しにしています。

〔 委員 〕 ハンガリーの例ですけど、これはハンガリー特有なのか、それとも東ヨーロッパでほぼ同じようなものと考えるのか。

〔 研究員 〕 ブルガリアなどでも、90年代に入ってから似たような現象と言いますか、海外へ人口が流出している部分もあるのですけれども、実際に死亡率の方が出生率より高いという自然減の要因によって人口減少が起きているというのがあって。それからロシアについても当てはまります。

 それがハンガリーの場合、1980年からずっと続いているのですけれども、90年という節目になるような年以降に起こっているのは、混乱に伴う現象なのか、それとももうちょっと継続的なものなのか、見極めがつかなかったものですから、あえて挙げなかったのですけれども。ほかの国々に比べて死亡率がやや高いというところはハンガリーと全く同じですから、今後もその傾向が続く可能性は高いと思います。

〔 委員 〕 3ページで質問したいのですけど、人口減少下で経済が成長する条件ということで、①で「労働分配率×人口減少率」となっているのですけど、②と③で、これは単なる人口減少率ということで、労働分配率が入ってないのは何か理由があるのですか。

〔 研究員 〕 一人当たりの土地が増えていくふうに仮定を置いていますので。元の式を消してしまったのであれなのですが、②、③というのは土地ではなくて1人当たりの資本と考えるのです。一方、①の方は1人当たりの土地で考えていますので、土地が不変だと人口が減少すると、その分だけ1人当たりの土地は増えます。それで、1人当たりの土地が増えたことによって土地分配率分だけは人口減をカバーできるので、ここに労働分配率が残っているのですが。

〔 委員 〕 わからないですけど、そういうことなのですか。どっちにしても、要するに、生産額の中に土地を入れて、土地と建物と。

〔 研究員 〕 ①番は、土地と労働だけしか考えてないです。

〔 委員 〕 資本も成長してないというふうなことじゃないんですか。資本がないというのは。

〔 研究員 〕 資本は近代以前の社会では固定資本はないということで。

〔 座長 〕 ①は生産関数の要素が、土地と労働だけなんではないの。それで②と③はそうじゃなくて、土地が消えて資本と労働が入って。

〔 委員 〕 一般的には全部入っていって……

〔 座長 〕 3つ入れるモデルを言っているわけですか。

〔 委員 〕 一般的にはそうなのではないかと。それでどっちにした方がいいか。昔から土地は全部不変ですから。細かい話はいいのいですけれども。①のケースを考えてみると2ページの(1)と(3)と何か非対称的な感じがします。ゼロでないわけですから(1)になってしまうというのは何か仮定に依存しているみたいな形がしますけれども。

 ついでに、最後のところのインプリケーションですけど、これは要するにTFPが上がれば、確かに問題ないと思うのですが、アイルランドの例だと、人口が減少した場合に、土地や労働や資本を有効に活用するインセンティブを高める政策の重要性を指摘していますが、とにかくこうした生産要素を有効に活用する政策は人口の増減とは無関係に必要になります。それが人口減少下で特に必要だということはないと、確かにそうした形で技術進歩が達成されるとなれば意味がわかるのですけど、それだけだとインプリケーションとしてはもう少し何か足りないと思います。

〔 研究員 〕 そうですね。別にそれは人口減少があるかないかにかかわらず、生産要素を有効に使うという取り組みが必要だ、望ましいところだと思いますので、おっしゃるとおりだと思います。申しわけありません。

〔 座長 〕 委員のご質問は、マーケットに任せるのではなくて政策的にTFPを上げるようなことを具体的に言わないといけないと。

〔 委員 〕 そうではなくて、人口が大きく減少したときに、とりわけ市場メカニズムを活用することのメリットが大きくなるということが言えれば、人口が大きく変化するときに、こういう政策は重要だということは言えると思うのですけど、市場メカニズムを活用することのメリットが、人口の増減とは無関係にある以上、それは当然やるべきことですから、特に関係は余り強く出てこないのではないかと思います。人口減少しているときに、こういう政策というのは非常にメリットが大きいのだということが言えればいいと思いますけど。

〔 座長 〕 ほかの方何か。人口はやはり専門家の方のご意見を伺わないと。

〔 委員 〕 まず最初の1ページ目のところですけど、これ国土庁の委託で前に同じようなことをやったことがあるのですけども、このとき我々の答えは人口増加の転換点は1750年ではなくて1650年です。農業基盤がある程度整備された大体17世紀ぐらいから、産業革命の前から人口が増え始めていることは事実なのです。ですから、余り産業革命にこだわる必要はないと思うのです。

 ただ、この3ページ目の定常状態である・なしに分けるよりも、最近の世銀で我々のグループが調査をやっているのですが、特にウィリアムズとヒギンズの例などを見ると、東アジアを見ている場合でも、人口が高齢化していく段階、出生率・人口が減り始める段階で、定常状態の結果と途中の移行期間の結果が全く違ってくるわけです。ですから、こういうある一面だけとらえるよりも、このグループがやっているようなシミュレーションみたいな形でずっと追いかけないといけないと思います。

 3月20日の「21世紀の経済社会研究プロジェクト」賢人会議で堺屋長官がスピーチの中で高齢者の個人資産についておっしゃっていますが、同じことをアメリカの人口学者も言っています。日本でも全国消費実態調査を見ると、個人資産は確かに年齢とともに増えます。だから高齢化していくと、社会全体の資産はかなり大きくなると思います。どのデータから引用したのかは知りませんがアメリカの学者が出したもので3月下旬の世銀の会議でアメリカと東アジアのデータについて、同じことが出てきました。

 人口減少した結果だけ見ないで、途中でどう変化するかというところに非常に大きな問題がある。この世銀のやっているモデルの狙いというのは面白いなと思って、認識を改めて帰ってきたのです。ですから、結果だけではなくて途中の変化のところ重要と考えて、むしろ経過に大きな着目をして、そこに世銀のモデルは活路を見出そうとしている。

 このニッセイさんのおやりになった研究は、途中で膨らんだアセットをうまく生産に結びつけて使えるかどうかが、要するに生産性の向上をどの辺計るかというところが、その辺にリンクされているんのではないかなと思うのですけれども。

 ですから、定常状態の始めと終わりで見ると、たしかに貯蓄率は最後の方がちょっと高いのですけど、両方ともそれほど変わらない。しかし途中で非常に大きな変化があるというところに非常に注目すべきではないかなと思います。

〔 研究員 〕 私どもの方での課題というのは、過去の事例から……

〔 委員 〕 それともう1つ、政府がいろいろな審議会で日本の出生率が下がっている現状はローマ帝国の末期の状態に似ていると言うのです。データが無いのに、この言葉がいろいろなところで出されています。本当にそうなのかどうかなというのが歴史人口学の視点から見て非常に関心がありますので、そのことについて何かありますか。

〔 研究員 〕 大臣もスピーチでおっしゃっていたことですけれども、データがあればもうちょっと歯切れよくいろいろな事が言えるのですが。

〔 座長 〕 結論はどうなのですか、ローマ帝国の末期というのは。

〔 委員 〕 だから、データがないから、幾らでも反論できるのですよね。

〔 研究員 〕 ほとんどもうデータがないのですよ。

〔 委員 〕 もう10年ぐらいこの例が言われていますよね、ローマ帝国の末期だというのが。

〔 座長 〕 言われていることは、心配しなくてもいいということですか。

〔 委員 〕 いえ、ローマ帝国の末期のように出生率が上がらないと、人口を増やさないと日本の社会も崩壊するという論法です。

〔 座長 〕 なるほど、そちらの方ですね。

〔 委員 〕 東大名誉教授の木村尚三郎さんかな最初に言い出したのは。

〔 研究員 〕 それと、その調査の主眼をどこに置いているかということに関しては、もともとの指示が、人口減少をどちらかと言うと所与として、それが経済や社会にどのような影響を与えたのか。しかも、今、最終的に経済成長を果たしたのかどうかということだったものですから、まず事実関係を把握するところから始めたのです。残念ながら、GDPはおろか生産にしても農業にしてもそうなんですけど、ほとんどは経済全体に関する統計が過去にない。例外的に19世紀半ばのアイルランドだけは、継続的に統計的にとられているのがあって、それで比較的細かく調べられたのですけれども、それ以外はほとんど断片的なものしか残ってないのです。あとはどちらかと言うと解釈の問題と言う部分は多分にあります。

〔 座長 〕 そのアイルランドに関係して言えば、その日本の少子高齢化で、ある一派のグループは外国人を入れろという意見が結構あるわけですね。そうすると、アイルランドは人をアメリカに送ったわけですよね。

〔 研究員 〕 そうです。

〔 座長 〕 ではアメリカは外国から人を吸収して、経済成長率なりTFPにどういう影響があったか。これは日本で外国人を入れるべきか、入れないべきかの参考になると思います。そこで、アメリカのケースはアイルランドからたくさん移民をとったのだけど、どうだったのかというのは、少しおたくの委託とは離れるのだけど、どうなのでしょうか。

〔 委員 〕 ありますよね。イースタリンという経済学者が言っているロングスイングの。移民というのはプラスです。

〔 座長 〕 プラスですか。となると、アイルランドもアメリカもハッピーだったと。

〔 委員 〕 もう、これは1960年代ぐらいから言われているのですが、 100年間ぐらいの期間をとってずっとプラスでした。

〔 座長 〕 アメリカも人を入れてプラスなら、これはパレート最適ですね。

〔 研究員 〕 アイルランドからアメリカに渡った人たちは、どちらかと言うと非熟練労働者で、人的資本みたいなことで言うと、非常に技量の高い人が行った場合とそうでなかった場合とはっきり違いが出ると思います。この調査は参考なのですけど。実際にはアイルランドの場合は非熟練労働者が行っています。

〔 座長 〕 ではアメリカもその成長に貢献しているというのは言うことないですね。非熟練が行っても。

〔 委員 〕 問題は、経済学のロングスイングの関係から見ていけばプラスになっているけど、社会学者に言わせると、ファーストウェーブとセカンドウェーブとアメリカには移民があって、ファーストウェーブはアイリッシュですね。アイルランド。セカンドウェーブというのは南ヨーロッパから来た主にイタリア系ですね。イタリア系の中からマフィアが出て、やはり社会的な摩擦がいろいろ生じたということがあります。

〔 座長 〕 マイナスになったと。

〔 委員 〕 マイナスの面もあったと思いますね。だから、どういうふうに分析するかだと思います。

〔 座長 〕 それはまさに日本人の中に外国人を入れると社会摩擦が起きて困るという見方になる。

〔 委員 〕 そう見るグループもあります。

〔 座長 〕 日本の移民問題を考える上で、セカンドウェーブのケースの方は使えますね。

〔 研究員 〕 それに関連してなんですが、アイルランドからの移民なのですが、近くのイギリスではなくて、圧倒的にアメリカに渡っているのです。イギリスに対しては季節労働という形で行っている人たちもかなりいるのですけれども、純粋な移住と言いますか、移民で言うと、圧倒的にアメリカのシェアになっている。飢饉が起きた当時というのは、生産水準と言いますか、1人当たりのGDPの水準で言うと、まだイギリスはアメリカに追い抜かれてない時期で、世界のトップでした。そこで本来ならばイギリスに移ってもいいはずなのですけれども、実際には余りそうではなかったようです。

 日本のアイルランド研究というのはナショナリズムの研究とか、それから政治史の研究に偏っていて、経済史的な研究というのはマルクスの世界観に基づくような研究しか余りないのですけれども、そういう方々のものを見ると、アイルランドの人がイギリスに行った場合で言えば、非常に不当な扱いを受けたというようなことがよく指摘されます。

〔 座長 〕 宗教の問題なのかあるでしょうからね。

〔 研究員 〕 宗教の問題はもちろんです。それから、アシュトンとか有名な過去の経済学者でも、アイルランドの人たちに対してかなり差別的な表現が見られますから、実際行った先々でも移民した側にとっての調整コストというか、社会に適応するコストというのは、アメリカに行った場合よりもイギリスに行った場合の方が高かったという可能性は十分にあると思います。ですから、日本が移民を受け入れるという場合に、移民というのはやはり内生変数ですから、日本の所得水準が高いだけではなくて、すんなりと受け入れてもらえるような魅力的な社会かどうかということにも関わるようになると思います。

〔 委員 〕 1つよろしいですか。要するに、これを比較してまとめてみると、いろいろ減ったことの原因はいろいろで人口が減ったのだけど、結果的には技術進歩である程度相殺したとか、あるいは資本ストックで人口の減った分を補ったと。

 それから、3番目はやはり特化と言うのか、国際分業と言うか、比較優位のあるところに何か産業構造の変化を進めたと。そういうふうにやったら、結果的には1人当たりのGDPというようなもので見る限りは、みんな全体として上がりましたと。だから困ったことはありませんというのが何か結論のような気がするのですね。

 それで、アイルランドの先ほどの例だと、これは相対的に資本が豊かな国から貧しいところにリアロケーションあれば、三角形の分だけよくなるというようなことが同時に成り立ったのではないですか。アメリカは絶対的に土地が豊富にあって、労働力が絶対的になくて、相対的には人が豊かなアイルランドからアメリカに移ったので、同時に両方ともよくなった。本当は貿易が完全に自由にできればそういうこともできるのでしょうけど、貿易が自由でなかったとすればそういうことが起こったのではないかという気がするのです。

 ですから、やはり日本の場合は、知識の話、知識ストックに対する規模の効果とかというのが最後に出ているのですけど、つまりこれは技術の面だと思いますが、人の数で言えばたしかに減っていくのですけど、それをどのくらい質の向上みたいなことで補えるのかというのは1つあると思うのです。

 それからもう1つは、何遍もこれは言っているのですけど、例えば国際的なR&D投資とか、これ必ずしもマーケットだけでできるかどうか。もちろんマーケットでもできるのではないか、実際にもそういうふうにやっているのではないかと思いますけど、民間でもやるし、政府のものでもやると。つまり知識ストックと言うときに、つまり国内に別に固定してあるものではないですね、知識ストックというのは。全世界にあると考えるべきで、それをどのくらいうまく組織化するかという方、つまり国際的なスピルオーバーをどのくらい利用・活用するかというようなことではないかと思うのです。それと、日本がそういう中でどういうところにうまく特化していくかということが、うまくできるかどうかというところが鍵なのではないかという気がするのです。

 財政の問題というのは、主として人口構成の変化で、財政負担の世代間の平等、不平等と言うか、そこが既存のシステムではどうもうまくいかないから、もう少し直しましょうという話があると思うのですけど。だけど、経済の成長率、あるいは成長のフルーツというのですか、そういうものを維持するということは、この例を見る限りは、全体としては大体問題がなかったということなのではないかという印象なのですか。

〔 委員 〕 逆に言うと、問題のあった人にあるですか。

〔 研究員 〕 たまたま選んだ中で、実質賃金なり1人の当たりの生産に関しては、我々が調べた中では、中国の事例を除きましてプラスになっている。社会全体では、資本ストックの増加を補っています。これは実際統計がないので、そういうふうに解釈すると整合的に理解できるということです。ハンガリーの場合、そうです。それから、アイルランドの場合には、もともと比較優位がかなり歪められたような状況にあったのが、より高付加価値の産業に収まり。そこの中でうまく対応できたと思います。生産性が実際に向上したような形になって、ある程度の期間をならしてみると、経済成長していたというのが大半のケースなのです。

 ただ、ペストが流行したときのヨーロッパ、これはもうデータがないのですけれども、かなり乱暴な形で、価格面のデータからCESの生産関数というのを計測して、それで生産量を推計したら、そこはやはり若干のマイナスになりました。

〔 座長 〕 まだ、意見はあろうかと思いますが、次の課題もございますので、第1番目はこれで終わります。

 [人口減少下における資源の活用と生産性の向上

 2番目の検討事項であります「人口減少下における資源の活用と生産性の向上」につきまして、事務局からご説明いただきたいと思います。

 それでは、事務局お願いします。

〔 事務局 〕 お手元の資料番号で、3-1から3-4と書いているものでございます。

 まず、3-1の方の論点ということで、簡単にどのようなことをご議論いただくかということが書いてあります。

 まず、1番目として、人口減少下における労働力制約という、これは次に数字をお示しいたしますが、労働力人口は概ね2005年ぐらいをピークに減少し始めるという予測が数字になっています。そういった中で、労働力人口は減るわけですが、もう一方で人口高齢化も寄与しまして、資本ストックの方は増加していくと。先ほど先生の方からもいただいたと思います。資本ストックは増えていくわけですが、それによって1人当たりの資本装備率が高まって、労働力人口1人当たりの生産は高まるということになります。

 しかしながら、人口全体に占める非労働力の割合が高まります。それが高まることによる総人口1人当たりで、生産あるいは消費可能額がどうなるかということで見ますと、やはりマイナスになるのではないかと。これも次に数字を示してあります。

 そういったことになりますと、これは先ほど委員からありましたように、生産性の向上という話、あるいはそういった市場機能を活用したこととか、人口そのものとどう関係あるのかという話があるのですが、さすがに生活水準をこれまでよりも引き下げるということにもし抵抗感があるということであれば、生産性の向上を図って、資源の有効な活用を図って生産性向上を確保していくという必要があるのではないかということが2番目です。

 具体的に4つぐらい書いておりますが、高齢者も含めてせっかく金融資産が豊富となっていくときに、それを有効に活用できなければ意味がないということであります。90年代の日本などを見ますと、資本の収益率が非常に下がって、なかなかうまくいっていない、過剰資本とまで言われるような状態がありまして、なかなかという状態が続いていくのでは意味がないということです。

 それから2番目に、そういった高齢者を中心とした巨大な購買力が消費になって出てくる可能性があるわけですが、そういったときに消費者ニーズを充足できるような、ハッピーになれるような、ウェルフェアを高められるような仕組みを考えていく必要があるのではないかということです。

 それから、(2)といたしまして、労働力が数としては減っていくということになりますので、質的な向上の方を図っていく必要があるというのが全体的な問題として言えるわけですが、個々人にとっても、みずからの能力を高めていくということを努力してやっていく人に対しては、それがプラスになるような方向に、そういう仕組みにしていくべきではないかと。それで、企業の方がだんだん個人のそういう能力開発からは手を引くという方向にあるとすれば、新しい課題がいろいろ出てくるのではないかということです。

 それから、(3)として、生産性向上を経済全体として図っていくというときに、特にさっきのアメリカの例もございますけれども、IT技術、IT革命と言われるものへの期待が高まっていると。そういったものを十分発揮していくためにはどうすればいいのかという問題があるわけでございます。さらに、ITというのは経済成長率を維持する、高めるといったことだけではなくて、人々の選択肢を広げる、あるいは生活の利便の向上に資するという面でも、今後、高齢社会に貢献できるのではないかということです。

 それから、(4)に、日本がこれから本格的な高齢社会を迎えるということなわけですが、同時に、これまで日本はもう欧米へのキャッチアップを終わってしまって、成熟社会になって、なかなか成長の余地がないといった時期が重なっていると見られておりまして、そういったことが漠然とした将来への不安のようなものをさらに強めているといったことがあるようにも見えますが、実際にまだまだ日本の中に、生産性向上の余地があるものもいろいろあるのではないかといった話です。

 以上、その4点いずれにしましても、いろいろな改革のようなものを進めて、生産性向上、経済の成長を維持していくことがやはり人口高齢化の中では必要なのではないかと思っています。

 次に、資料に基づきましてご説明いたします。

 主に資料の3-2を最初にご覧いただきまして、労働力が減って資本が増えるという話を申し上げましたが、ちょっと先に資料3-2の13ページをご覧いただきたいと思います。

 先ほども先生から年齢別の資産額というお話がありましたが、13ページの下の参考と書いているところに、これは全国消費実態調査で年齢別に見た金融資産額であります。60歳、70歳になりますと 1,800万円ぐらいあったということで、これはあくまでも平均で、裕福な人が平均を押し上げている面もありますけれども、こういった姿ということでございます。

 上に方に数字がございますが、年齢別の資産額の分布といいますか、年齢別パターンが維持された場合、人口の年齢構成の変化だけでどれだけ金融資産が増えていくかということを出したものでございます。Bと書いている右側の方でごらんいただきますと、これは2005年を 100としておりますが、2000年94.8に対しまして2005年 100、そして2020年 109.2ということであります。ちょうど先ほど申し上げました2005年に労働力人口がピークを迎えまして、その後減少していく中で、1人当たりの金融資産額は2010年に9%増しぐらいに、人口の要因だけでなるということでございます。これは人口一人当たりですので、もしこれを仮に労働者一人当たりというふうに考えますと、もう少し多くなると、労働力の方が減っていきますので多くなるということで、これは先ほど申し上げました。労働力は減っていくけれども、1人当たりの資本装備率はかなり高まっていくということでございます。

 そこで、実際に労働力が減って資本ストックが相対的に増えた姿というのは経済でどうなっているかというのをあるモデルで見たものがございまして、それが資料の3-4であります。

 1ページに一般均衡モデルによるシミュレーション結果とありますが、これはORANI-G型日本モデルと書いておりますが、これは資料3-3にその説明がございます。

 それはいわゆる応用一般均衡モデルというふうに言われているものでありまして、経済学のテキストで言えば、ミクロ経済学の消費者の均衡と生産者の均衡、消費者が効用を最大化して、企業が利潤を最大化して、両者が生産物市場や生産要素市場で出会って市場の均衡が成立すると。そういった典型的なミクロ経済学の世界をモデルにしたものでございまして、これは産業連関表の90分類で作成したモデルでございます。この種のモデルとしては産業モデルは細かくなっておりまして、運輸と通信も分かれていると、そういったようなメリットもあるわけでございます。

 これはいわゆる比較静学でモデル分析をするというものでございますが、静学と言いましても、資本ストックは動くということでシミュレーションをしております。もともとは、沿革的に言いますと、貿易の分析、貿易自由化などの分析を行うGTAPモデルというのがありまして、それをオーストラリアの人が改良してつくったという沿革を持っています。規制緩和ですとか税制改革の効果分析あるいは環境の分析などにも使われております。

 資料の3-1の1ページでございますが、時間の都合もありますので、結論的なことを申し上げますと、雇用が10%減ると。2005年から2020年に大体自然体ケースですと10%ぐらい減るということでありまして、それを与えて、そのときに資本労働比率が 8.9%ほど上がるという想定をしまして、これは資本が絶対量で2%減ると、こういう姿であります。これをモデルの中でこの条件を与えて計算いたしますと、実質GDPは 6.7%減になると。結果的に労働の方が減っておりますので、一番下にありますように、労働生産性でいきますと 3.6%増になるということであります。

 今回、この種のモデルを使った理由というのは、90部門の産業分類がありますので、いろいろ労働力あるいは生産要素の移動によっていろいろな調整が行われて、成長率の低下、GDPの低下を補える部分がどの程度あるのか見たいということもありましてやってみたものでありますが、その結果、GDPに隣に書いておりまして、労働集約部門が縮んで相対的に資本集約的なものが拡大すると。そういったことによる効果というのは0.54%出ております。必ずしも大きいものではないということであります。

 その下にありますように、実質賃金が上がって、資本収益率が下がる、当然のことでありますが、その結果、部門間の生産要素の移動が起こるということでありますが、それほど大きなものではなかったということであります。これは非常に大きくGDPが維持されるということであればかなりのものであるわけですが、必ずしも大きくなかったということでございます。

 そこで、前後して恐縮ですが、資料の3-2の5ページに戻っていただきまして、今モデルでGDPを測ったことの意味合いというのをちょっと考えてみたいと思います。

 一番上の四角に書いておりますように、2005年にピークに2020年までに労働投入量は10%減ると。一方で資本労働比率は下がると。したがって、その下にありますように、労働力1人当たりの生産というのは 3.6%上昇するということでございます。GDP全体では 6.8%の減少になる。その間に総人口、人口全体では 2.8%減少して、結局、人口1人当たりのGDPは 4.1%の減少になるということでございます。

 これも含めて、もう少しウェルフェアという観点から見たのが6ページ。前回行いましたのと同じように、子供、高齢者、それから実際に勤労者が資本装備を維持する、そういった3つの費用というものを考えて、結果的には2005年から2020年にかけまして、これらの費用の合計というのは 2.1%上がるということでございます。結果として生産からそういった費用を引いた消費可能額で見ますと、1人当たりで 7.2%減少ということになります。これはあくまでも人口だけの影響を見たものでありますが、先ほども申し上げましたように、こういった減少、全く技術進歩がないような世界ではこういった減少が起きてしまうと、生活水準を下げなきゃいかんということになってしまいますので、生産性の向上のようなものが必要だろうということでございます。

 紹介いたしますと、例えば8ページですが、現在資本が豊富になる、あるいは金融資産が豊富になるというふうに言っておりますけれども、どういったものが伸びているかというときに、資本ストックは結構伸びていることは伸びているわけであります。社会資本とか一般政府の資本などはかなり伸びも高いということがあるわけであります。

 それから12ページですが、高齢者の金融資産が増えたときにできるだけ有効なものにそれを向けたいと。それが収益を産むので貯蓄している人にとってはハッピーでありますが、例えばアメリカなどにはベンチャーにも年金基金が向かうようなことが既に起こっているということであります。

 それから、参考までにご紹介しておきますと、14ページ。これは金融資産に占める年齢別のシェア、世代別のシェアを出しております。これは先ほどと同じように、人口だけでどう変わっていくかというのを求めてみますと、上の2つの帯のところですが、60代以上はもう既に半分ぐらいを2000年で占めておりまして、2015年になりますと、合計の7割ぐらいが60歳以上の人が占めるということになります。これは金融資産で見るとそうなっているのですが、負債を除いた純金融資産のようなもので見ますと、さらに1割ぐらい、60歳以上の人が8割近くを占めるということになるわけでございます。そういったものがもし消費に向かえば、かなりシルバーマーケットというのは相当のものになるということかと思います。

 それから、19ページ以降に人的資源ということで、生産性向上ということで人的資源の向上ということもいろいろ必要であろうということで、幾つかの資料を載せておりますが、大学院に期待が高まっていることと、あるいは22ページ以降で、費用の問題というのはやはり強く意識されているということが出てまいります。あるいは時間という点でもいろいろ出てくる、時間が足りない、あるいは費用負担が重いと。こういったことがいろいろ自己啓発という観点では出てきているわけでございます。

 それから25ページ以降、これはIT技術に関連したIT関連のページがありますが、26ページ、これは現況はこうなっているということですが、下の方の図でご覧いただきますと、情報化関連の資本ストックのシェアが高まってきている、この数年間で持ち上がってきているということであります。

 今回、実は、先ほど申し上げました一般均衡モデルでITの部門の経済への効果というものを出しております。モデルの方で、シミュレーションの資料3-4でいきますと2ページであります。

 ここではケース1とケース2、ケース3と3つのケースでありまして、ケース3はケース1とケース2の両方を合計したものであります。ケース1というのはIT機器製造部門の生産性が上昇した場合にどうなるか。それから、ケース2は最近出てきております電子商取引が拡大して、それによってさまざまなコストの削減が実現される相当のことが起こるとどうなるかということであります。

 まず、ケース1ですが、これは通信機器等の、あるいはコンピューター関係の部門の生産性向上というのがかなりあるというふうに言われておりまして、それはいろいろな価格の低下あるいは性能のアップということで現れているわけでありますが、資料3-2の方の28ページに一番上ですが、労働生産性の加速とITの寄与という表があります。

 一番上の表にロバート・ゴードンの昨年の論文にあるわけですが、90年代の後半に入って、アメリカの労働生産性の上昇が以前より高まっていると。これは景気循環の影響などを除いても高まっているというふうに言っておりまして、その理由というのが、2番目に書いております耐久財製造業の労働生産性の上昇が影響していると。IT機器メーカーの労働生産性の上昇。ほとんどこれに尽きるということを言っております。どのぐらいその寄与が高まっているか、加速しているかというと、大体労働生産性の上昇が3%強ぐらい高まっておると。これがアメリカ全体の労働生産性の上昇に寄与しているということであります。実は同じようなことは日本でも若干観察されまして、IT機器製造部門の生産性が高まっている、あるいは価格の低下ということで現れている。90年代後半に入ってIT機器の価格の低下ぶりが速まっている。これは計測の問題もいろいろあるかと思いますが、そういったことが見られるということであります。

 ここではまず最初にケース1として、したがいまして、成長率のトレンドをIT機器メーカーの生産性上昇が高めている、あるいは今後もそれが高めるということを想定したシミュレーションであります。これは先ほど言いましたように、ゴードンの研究で、3%ぐらい年率で高まるというのを与えております。年率ですと3%で、全要素生産性については2%上昇して、それを5年間で大体10%ぐらい高めるということであります。これにIT関連機器のウエートをかけますと、この表の一番左上にありますように、GDPに対するインパクトで言いますと0.74ぐらいになるいうことであります。これをIT関連機器の全要素生産性のプラスというインパクトとして先ほどのモデルに入れて、その波及を計算いたしますと、実質GDPを 2.2%大きくするという結果になるわけであります。これは最初の前提が5年間、趨勢が高まるということでありますので、年にしますと0.44%ぐらいGDPのプラスになるという計算になります。

 この波及、なぜこういうふうに生産性のインパクトを与えるとさらに大きくなるかということでありますが、1つは当然ながら当該部門の資本の収益性が高まりますので、当該部門で設備投資が増えて資本ストックが大きくなって、経済がその分拡大するということがあります。それからIT機器関連部門、生産性が上がりますと価格が下がると。これは一番下の表に書いておりますが、IT機器製造部門の変化ということで、各部門とも一番右側にあるように生産価格が大幅に下がるということであります。

 これは、購入する側からとりまして非常にコストダウンになるわけでありまして、その分だけ設備投資など、この部門に投入する設備投資を行って、ある意味で労働から代替するという面もありますが、それによって他の部門に波及していくということでございます。その他にも、設備という形でなくても中間投入という形でも、いろいろ入るということで他の部門にプラスに波及していって、設備投資などを促して経済が拡大していくということであります。アメリカのジョルゲンソンとスティロという人が、定量的にいろいろ求めておりまして、労働を代替する効果というのが非常に大きいというようなことを言っております。

 ただ、ここで1つ前提がありまして、ここでのシミュレーションでは資本収益率は少なくとも大きくは上がらないということを前提にしております。この下の方に資本収益率がありますが、これはゼロで抑えているということで、ある意味でグローバルな世界では、自分のところでいろいろな魅力が高まると言うか、投資機会が高まれば、日本では豊富な資本が外に出ないということかもしれませんが、例えば今のアメリカのように自らのところで貯蓄が余りない、貯蓄率は高くはないけれども外からどんどん入ってきて投資が行われているといったようなことをイメージされると思います。そういった状況になれば、経済というのは波及効果が大きいということかと思います。以上がIT機器です。

 次に、Eコマース、ケース2ですが、これは資料3-2の27ページになります。上から2番目の真ん中の表でありまして、アンダーセンに委託しまして通産省が行った調査で、2003年までのEコマースの電子商取引の規模の予測であります。

 アメリカに比べると日本はまだまだ小さいわけでありますが、それでもなおかつ2003年には企業間、いわゆるB2Bの電子商取引の規模が、年間68兆円になるというふうに予測されているわけであります。これは比較的高めの予測ではあるといわれたのですが、その後、出されてきているアメリカの方の予測などでも若干上方修正されているものが多くて、昨今では必ずしも非常に際立った高めの予測ではなくなってきたという状況がございます。

 ここでは、私どもシミュレーションの前提として、この日本の数値を用いまして、60兆円ぐらい5年間で電子商取引が増えるということを前提にしております。それがマクロ経済にどれだけ影響を与えるのかということで、考え方としてはその電子商取引によってコストダウン等のある意味の生産性向上があって、それが経済の中にまた波及していくというロジックで考えています。

 どれだけのコストダウンがあるのかと。これは実はまだデータ的にしっかりととれたものはないわけでありますが、1つの例として、同じ27ページの一番下ですが、アメリカで実証研究をやった例があります。 Brynjolfsson という人とSmithという人が 8,500のオブザベーションで、本とCDが既存の本屋などで売られているものに比べてどれだけ価格が下がっているかというのを調べましたところ、若干ばらつきがあるのですが9%から16%ぐらい下がっているというのが観測されたということであります。

 これはいろいろな調査によってまちまちで、逆に上っているという調査もかつてはあったようでありますが、最近はだんだん下がっているという調査の方が増えてまいりまして、ここではこのうちやや控えめに、9%から16%のうち、いちばん小さい9%を当てはめています。60兆円で9%となると大体6兆円ぐらい規模としてコストダウンがあったということで、それを生産性の向上というふうに見ますと、大体GDP比で 1.2%ぐらい生産性の向上があったということになります。

 これを5年間で実現するわけですが、これもまた5年間の数字だというふうに考えまして、年間ベースで見ると0.24%ぐらいのインパクトがあるというふうにして当てはめますと、GDPは5年間で 3.6%、年間ですと大体 0.7%ぐらい上がるということになるわけであります。

 最後に、ケース3として、この2つを足し合わせたもので見ますと、GDPは6%ぐらい拡大すると。これを5年間だというふうに考えますと、年間で1%強ということでございます。以上がITです。

 最後に、若干生産性向上ということで普段言われているものをご紹介いたしますと、この資料3-2でいきますと30ページであります。

 これは、以前、総合計画局でも規制緩和の関係でいろいろ勉強いたしまして、報告などを出したことがあるのですが、そのときに使われたものを延長していますけれども。日本というのは、まだまだ生産性の向上の余地があるのではないかということで、いろいろな構造改革を進めれば可能性はあるというようなことでシミュレーションで行われているものであります。この30ページの表は、日米の生産性格差でアメリカを 100としたときに日本が幾らであるかという、これは1つの研究事例であります。このデータを若干アップデートいたしまして、その差が縮まるということを織り込んで、どの程度、最終的にGDPが増えるかということを出したのが、このシミュレーションの方の3ページであります。

 これは、あくまでも仮置きでありますが、アメリカとの生産性のギャップが1割縮まるというふうにしますと、日本のGDPに対して 3.3%ぐらい生産性が上がるという値になるわけです。アメリカとの差が30数%ぐらいあるということなわけですが、 3.3%の生産性上昇ショックを与えると。

 これが、当初与えた生産性、技術進歩の向上が波及しまして二次的なアップ、先ほどと同じようなメカニズムで及びまして、長期的にはGDPは11.6%ぐらいの拡大があります。つまり最初に技術進歩で出てきた 3.3%が資本形成などで拡大しまして二次的なアップが出てくるということであります。

 そのGDPの隣の方に、実際に低い生産性の部門で、生産性アップがショックを与えた部門と、そうでない部門とを分けて書いてありますが、それぞれ13.2%、 8.7%ということで、その他部門、もともとインパクトは与えていない部門もかなりのアップになっています。つまり低生産性部門の効率化の恩恵が、ほかの部門にも及ぶということです。いわゆる中間投入の形であったり、あるいは設備の形であったりしますが、他の部門も恩恵を受けるということです。

 これは、またあくまでも日本全体として魅力が高まって、海外に資本が出ていかないといったことを前提にした上でのものでありますので、こういった生産性の向上努力のようなもので波及も含めれば、かなりの期待ができるのではないかということでございます。 以上、私からの説明でございます。

〔 座長 〕 ありがとうございました。

 ただいまの事務局のご説明に対して、ご質問やご意見はございますか。

〔 委員 〕 まず、質問させていただきたいのですが、このモデルでは貯蓄とか資本蓄積とか、そういうのをどういうふうに扱われているのかお聞きしたいのです。先ほどのシミュレーション結果のご説明で、5ページ目のところに数字が並んでいるうち、資本ストックは2%しか2005年から2020年にかけて減少しないということですが、高齢化が進むと、普通のライフサイクル仮説を想定すると、資本ストックも落ちていくといったシナリオが描けると思うのですが、そのあたりはどう検討なさっているのかということです。

 仮に、もしライフサイクル仮説等も考慮に入れて検討したということであれば、私は今日お見せいただいた数字というのは非常に楽観的というか、余り政策的に心配しなくてもいいのではないかという数字になっていると思います。先ほどのニッセイ基礎研さんのお話でも、昔の人間はきちんと人口の減少を相殺するようなことをやってきたのだというお話があったので、それとの整合的な感じがするのですけれども。

 例えば、この5ページ目の数字を見ますと一番下のところに、1人当たりのGDPが2005年から2020年にかけて4.1%減少ですが、4%ぐらい我慢しようかというふうに思いますし、あるいは次のページの消費も 7.2%の減少にとどまるということなので、これぐらいだったら許容範囲かなという気がするのです。

 仮に、それではだめで、今の生活水準を維持しましょうということであったとしても、 4.1を年率にさっき計算してみたのですけれども 0.3%ぐらいなのです。ですから、政策的に生産性を上げるということは当然必要なのですけれども、それも毎年 0.3%ぐらいGDPを上げるというふうなものであればいい。それは非常に大変であるという解釈もあるかもしれませんけれども、これはやってやれないことはないのではないかという気がいたします。

 もう少し欲張りな人がいて、1人当たりのGDPではなくてGDP全体の 6.8%の減少、これを食い止めようというふうに言う人も出てくると思います。それももっともな意見なのですけれども、 6.8%も結構射程範囲に入っていまして、これも計算すると年率で 0.5%ぐらいの政策努力を行えば、2005年の生産活動水準を維持することができるということになりますと、余り深刻にならなくていいんではないかなという気がします。

 資料3-1で、生産性の必要という観点で幾つか項目を並べていらっしゃいますけれども、この中の(1)の2つ、それから(3)は大体市場メカニズムに任せておいたらきちんとやれることです。それから、(2)と(4)は政策的に手当てが必要な部分だと思うのですけれども、民間と政府それぞれがんばれば、少子化の経済的なインパクトというのはかなりの程度吸収できるのではないかなという気がします。

 といった話をするためには、話の前提としまして、どういうふうな形で資本蓄積が組み込まれているのかというのをチェックしないといけないと思いましたので、質問させていただきました。

〔 事務局 〕 今おっしゃった点は、4ページをご覧いただいて、ここでは単純にOLGモデルによる推定値と下に、注がありますが、右側の図で資本労働比率 108.9というのが2020年。この 108.9%をシミュレーションの中に入れて出しているということであります。

 これ実はどう見るかというのはいろいろありまして、海外に資本は逃げていかないといいますか、余りあふれていかないということがまず前提になっていると。ただ、この場合に、また国内で高齢者がどの程度貯蓄を取り崩すようになるのか、財産を残すのかということがまた問題になりまして、例えば15ページ、純金融資産で見ますと、Aで見て、就業者当たりについてはもうちょっと上がるのですが、2005年で 100が2020年、Aでは 111.8、Bでは 112.8、就業者にするともう少し上がるのですね。就業者人口はもっと減っていきますので。

 ですから、家計からあふれ出て企業の設備などに向けられる資金はもうちょっと増えやすくなる。ただし、海外に行くかもしれない。それで 8.9ぐらいを限度として10を超えるというのはちょっと難しいだろうということでうたっています。ただ、委員がおっしゃった点は、非常に楽観的であるという面はまた否定できなくて、年金の問題というのはここでは一応捨象しておりまして、もし年金がうまくいかなくてどんどん年金基金が落ちていくということになれば、これよりも少ないということになります。そういった意味では、きょうは余り年金の話を直接テーマにしていなかったので気づいておりませんが、年金制度の方がうまくいかなければ、資本が減るか、あるいは若い人の負担が高まるというどちらかになってしまうということであります。

〔 座長 〕 いかがですか。

〔 委員 〕 全く同じ質問をしようと思ったので、重複しているのですけど。要するに資本ストックが2%減るということは、裏側から言いますと、資本が減価している分の方が、新規の投資よりも大きくなっていくと。わずかでもありながらですけれども。そうすると、資本ストックの構成というのは年齢構成がどんどん高くなるといいますか、それはですから資本ストックの方は質的な劣化というような問題が起こって、そういう効果はどういうふうに考えるのかなというのが1つです。

 それから、やはり貯蓄率がこの裏側で、こういう想定をKLレイシオの方から自動的に資本ストックの方が出てくるという計算をしたんだと思いますけど、貯蓄率の方が果たしてどういう動きになっているかというのは、やはりチェックする必要があるのではないかと思うのですね。それがどのぐらいの現象なのかということです。もしかすると、余り減少しないのかなという気もしますが、人口の増加率は大幅に下がりますので、そこをコンシステンシーのチェックみたいなのが必要なのではないかと。

 それから、技術進歩の率を、やはりこの場合には全部ゼロと置いて計算しているわけですね。基層のベースを。それが何か基準ケースなのかなというのがちょっとよくわからないのですね。こういうのを外に出したときに、普通の人は技術進歩率ゼロなんていうことを仮定していますなんていうのは読まないから、GDPは4%、1人当たり減って、少子化の方も7%減るというと、先生みたいのだとこれなら大丈夫と思うかもしれないですが、一般の人はこれから日本はどんどん貧しくなるんだなというふうに受け取るのではないかというふうに思うのですね。

 ですから、ある程度の全要素生産性の伸びがどのぐらいあったとした場合には、どうだという情報は出しておくべきなのではないかと思うのです。出せばそこそこというか、おっしゃったように、もしかするとマージナルには少しブラスかもしれないということなのではないかと思うのですね。

〔 委員 〕 大体、今までのTFPの平均が1%とか2%で、それを想定をしたらおつりが来るというシナリオだと思います。

〔 事務局 〕 90年代は 0.5ぐらいですので、そのままいってしまったら。

〔 委員 〕 大体とんとんか、少しおつりが。それでもマージナルに出すかという。

〔 事務局 〕 まあ、90年代以上はアップしないといけないということになると思います。

〔 座長 〕 ほかの方は何かご質問。じゃあ、どうぞ。

〔 委員 〕 今のでちょっと確認したいのですけど、要するにこの一般均衡モデルというのはスタッティックなモデルで異時点間の貯蓄消費の配分は外生的な値ということですか。

〔 事務局 〕 外生的です。

〔 委員 〕 その前提としての資本ストックが 2.0というのが背後にあるのは、別のモデルの要するに世代重複モデルということであって、基本的には別のモデルであるということですね。

〔 事務局 〕 別のモデルです。

〔 委員 〕 人口だけ変えたという……。

〔 事務局 〕 人口だけ変えたという。人口だけの変化でどうなっているかというのを一応想定していると。

〔 委員 〕 これ前に消費実態調査、94年、同じデータソースで、さっき委員がおっしゃられたのを我々ペーパーでやったことがあるのですけど、貯蓄はほとんど変わりません。2025年までプロジェクトをやりますけど、ほとんど変わっていません。ほんのわずかだけしか。

〔 事務局 〕 今回もちょっと試してみたのですよ。高齢者もほとんど同じ貯蓄率なので単純にやると余り変わらないと。だから貯蓄を取り崩す方向に変わるということにすれば変わっていくわけですけども、それは今のものをそのまま伸ばすと変わらないということになっています。

〔 委員 〕 この資料の中で一番大切なのは、資産全体の数字はいいのですが、資産の8割が高齢者のところにいってしまうというようなシミュレーションになってくると、やはりディストリビューション自身に、不公平感といったものが出てくるのではないかなという感じがするのですけども。

〔 事務局 〕 年齢的にもそうですけど、同じ高齢者の中でもディストリビューションはものすごく差が出てきます。

〔 委員 〕 すごくいろいろな問題がそこから生じる可能性があると思うのです。〔 座長 〕 高齢者だけが豊になって……。

〔 委員 〕 高齢者の中でまたすごい差が出てくるという。

〔 座長 〕 若年層が不満を持つ可能性はありますよね。

〔 委員 〕 それが年金や何かで問題で、フィードバックしてくる可能も考えないと。

〔 委員 〕 2020年を超えたところでは、どういう感じなのですか、大体の傾向として。それまでの消費額とかGDP1人当たりで見ると、もっと減少になる……。

〔 事務局 〕 かなり横ばいに近くなる面があります。一番大きな変化は、2010年代の前半に団塊の世代が引退すると想定される時期に、労働力の面でかなり大きな変化がありまして、それから貯蓄でも2010年代後半ぐらいまでですが、2020年代に入ると一旦動きが鈍化しまして、もっと先までいきますと2040年ぐらいになると、団塊ジュニアでかなりまたいろいろなものが出てくるというのが、私どもでやっている先の方のおおまかな動きなのです。

〔 委員 〕 とりあえず、人口学的にいうとベビーブームは山びこ現象で、一番初めが一番大きいわけだから、だから2010年代の頭を超えられるのか超えられないかがポイントになると思うのですよ。この有効労働雇用量というのは時間の変化が入っているのですか、労働時間数に。数だけではなくて労働時間数。

〔 事務局 〕 これは時間を入れております。年率 0.7%減というのは、労働者数の減少分で0.45%と労働時間の短縮で0.25%ぐらいの感じで。

〔 委員 〕 あと今のに関係あるのですけど、高齢者の雇用、大学でも定年制を延ばそうかなどといろいろ言っているのだけど、蓮実総長は21世紀の大学で60歳定年制などとやっていたら世界に取り残されてしまうとか、アメリカのように定年制を全廃すべきだというご意見を個人的にはお持ちのようなのですが。

 そういう意味でのインプットと言うか、労働時間と言うのか、ですから60歳定年制とかあるいは65歳までというような射程にだんだん入ってくるのかもしれませんけど、そこは役所もみんな同じだと思いますが、今のまま(60歳定年制)でやっていたらやはり労働量のマイナス10%がそのままきてしまうと大きな問題があるのではないですかね。

 だから、もちろんそこの高齢者の情報化も大事なのですが、高齢者が生きがいを見いだすには、もちろんボランティア活動とか何かそういうのがあると思いますけど、社会に参加するというのはあると思いますが、そこの方が何か大事なような。女性ももちろんそうなんですけれども、高齢者でもっと働きたい人は70でも80でも働いてくださいという。逆に言えば絞り取るということになるのかもしれませんが、そういう仕組みを何かするという。

〔 総合計画局長 〕 労働力率を上げていることによって……

〔 事務局 〕 年齢別には上がっているのですけども、高齢化で引退する人がどんどん増えてくるので、トータルは労働力としては下がってくるという。これは大体多くの予測を幾つか見た中で、標準的な部分はここでは一応想定して与えています。

〔 委員 〕 やはり定年制みたいなのは全部撤廃して、だけどパート雇用と言うとあれですけど、今の雇用形態自体も見直すというようなところに、やり方がいろいろあるのではないかという気がするのですが。

〔 座長 〕 別の研究会で、たしか…。

〔 総合計画局長 〕 年齢差別禁止というのをやっています。それも現実が結局、今もうほとんど 100%近い企業で、中小含めて定年制が60歳であり、それが現実でしかも政府が旗振ってやっている状況で、突然というのもちょっと現実には無理があるかなと。最終的に年齢差別禁止という状況を目指すとしてどういう問題があるのか、どういう問題があるのか、ちょっとそんな感じで、突然というのはちょっと……。

 あと今ちょっとお話がありましたけど、一番まずいのは雇用保障と定年延長という組み合わせが一番まずくて、アメリカの大学も権利を与えてしまって、その教授がいつまで経ってもやめないという状況が一番まずいのですね。雇用保障と定年延長といいますか……

〔 座長 〕 この間も週刊誌にも書かれたじゃないですか。65歳に延長したら、これで日本の研究は終わりだっとかって。アメリカの大学も深刻みたいですよ。年齢差別やるともう教えもまずい、リサーチもやらない、年寄りがうろうろというような、面と向かい合ってもだめだというのがあるので、貴重ですね。

〔 委員 〕 ITのご報告では、ITが今後の日本経済に、TFPと全体的に押し上げるという意味で、たしかにTFPを押し上げるというのは、いろいろな事例で非常に興味深かったのですが。

 1つちょっと日米の生産格差というところでシミュレートされているのですが、これはちょっとご質問させていただきたいのですが、各産業の分類の比率が一定というもとでやられているのですか。資料3-4の3ページの1・前提というところがありまして、生産性が1割縮小した場合で、これは例えばこういうふうに生産性が低いところを、リストラとか、生産性を上げるというような方向でいくのも1つだと思うんですが、思い切って特化すると言うか、例えば日本ですと、そういう今後現状維持で固定したままどうなるかという分析も非常に重要なんですが、今後ITがさらに威力、効力を発揮するという予測のもとで、それプラス、今後日本が国際的な地位を占めていく中でさらに伸ばしていけばいいということも検証されるのはいかがでしょうか。例えば、これを見ると機械とか、そういうところがさらに伸びていった場合の効果というものも一緒に検証されると、さらに意義深いシミュレーション結果が得られるのではないかと思います。

〔 事務局 〕 たしかに日本の高度成長時代も、生産性の高い部門に人が流れることによって全体が高まっていったという。

〔 委員 〕 そうです。そういう効果で。これは固定されてやられているのですか。

〔 事務局 〕 ここでは固定でして、もともとの考え方が、仮に外国で低いところがあれば、いろいろなキャッチアップ効果みたいなものを工夫すればできるのではないかという観点から、このシミュレーションをやっております。

〔 座長 〕 私も1点ありまして、資料3-1で、資源の有効活用と生産性向上の必要性というのがあって、この(2)で人的資本形成、これはやはり非常に重要な問題でして、ここにも書かれていますように、日本は企業に頼っていたのですよ。R&Dにしろ、人的投資にしろ。ここに書かれていますように、企業はもうそういう能力はないわけで、それから一体だれが人的投資の負担をするのかというのが大きな問題になると思うのです。公共部門なのか、個人に期待するのか。この資料を見ると個人はやはり負担能力がないという意味で、やはり答えが大きいので、ではそれを代わりにだれがやろうかというのが、私は今後、日本の経済成長ないしは少子高齢化に備えてだれがやるのかというのが大きな問題だと個人的には思います。

〔 委員 〕 前から関心があったのですけど、一度やってみたいなと思ったのですけど、今おっしゃられたところで、全体的に見ると日本の人的資源の減っている人員で、どんどん拡散が大きくなっているわけですね。大学院に行く人がどんどん増えたりして。だから、そうなってくると将来的にちょっとその格差にもつながってくるだろうし、ひどくなってくる。

 逆にそうすると労働政策として、そういう人たちが、若い人が入ってきたときに、R&D的な、または知識集約型産業にどのくらい人が行くかとか、さっき言ったようにいろいろなセクターごとに見ていますから、労働力の流れを若い人がと言った場合、それから1ついろいろなシミュレーションが考えられると思うのですけど、若い人は40歳までそういう産業にいて、40歳になったら定年というか1回を職を変えるというような、そういうほかのセクターに流すというような形のシミュレーションをかけたときに、日本の労働力の生産性がどのくら維持できるか。要するにも数は決まっているわけですね。労働力の時間数や何かでトータルではわかっているので、その中でどういうふうに労働力をアロケートしていくかという。要するにさっきではないけど、70になってもやるのは大学の先生ぐらいで、要するにそういう70の人がノーベル賞を取るような研究できないわけでしょう。要するに年齢で40ぐらいまでの人たちが、やはりそういうR&D的な限られた能力、知識、技術進歩を図るような産業に流していった場合と、そうでない場合に、オプショナルに皆さん好きなようにやっていった場合には、どうしても何か違った産業に行く可能性がある。

 だから、いろいろなシミュレーションで人為的かもしれないけれど、いわゆる労働力のソーシャルエンジニアリング的な発想法でシミュレーションをかけてみたら、どのくらい将来成長率が変わっていくのかなと思っているのですけれども、これはやってみるにあたいするんじゃないかと思っているのですけど。

〔 総合計画局長 〕 若い人の知的生産能力が高くて、歳とともに落ちていくという。

〔 委員 〕 いや、ある適性があるわけですよね。やはり生産性と言うか、発明能力とか発想能力。だから老人でもできるようなというのは、例えばこういう手作業でできるような産業、こういったのをいろいろ産業ごとに分けてみて、それに割り振っていったら、結構面白い結果になるような気がするのですけど。

〔 座長 〕 委員。

〔 委員 〕 ここ10年ぐらいの労働市場を見ていると、若年の雇用機会が非常に悪くなっているのですね。そして中高年は、リストラと言われている割には、40歳代、50歳代以上では勤続年数はむしろ伸びていることをデータは示しています。もっとも90年代の終わりになってくると若干の低下はみられますが。つまり、この10年で若年層がいい仕事に入れない状況がより顕著になってきていると思うのです。最近は3年以内に大卒の3人に1人が初職を辞めると言われています。経済環境の変化とともに、同じ企業にずっと勤め続けると予想しない者が増えてきていますが、それにもかかわらず、昔と同様に、就職にあたっては、初職で「企業」の就職試験を受けるかどうかの選択はできても「仕事内容」を選べないのですね。しかもやっと企業に採用されるような就職状況であって、「仕事内容」は選択できない。ずっとその企業で勤められ続けると思えなくなっているのにもかかわらず。それが離職の増加につながってくるような気がするのです。生涯現役というのもとても大事ですが、若い人たちがいい仕事につけず、結局フリーターになったり、それから非正規のような形にいったりするのは、非常にこの10年で増えたと思うのです。

 だから、人的資本形成を、特に若い人に焦点を当てて考えていくかというのは、ここではIT産業を、今後の成長率のため重要な位置づけに置いているわけですけれども、そのITを考える上でも重要だろうと思います。

〔 座長 〕 おっしゃるとおりですね。若年の労働者に関しては2つ見方があって、若者が怠惰になったという説と、いやそうではないと働き口がないのだという説と2つあって、非常に多様相ですよね。あなたはむしろもう若い人に働き口がないという説だよね。

〔 委員 〕 意識変化もあると思うのですが、同時に教育や社会も、「自分で仕事を選びないさい」、「自己投資の時代だとよ」、と言っている割には初職の仕事内容を選べない状況があると思います。就職とは、とにかくエントリーシートに記入し、面接を受け、最終的に決まったある企業に行くということであって、その先はその企業での就業を継続するか、やめるかしかない。仕事は選びにくい。中途採用が増えていると新聞で言われますが、ステップアップ型の中途採用はいまだに少なく、内部労働市場が浅いところでの中途採用が増えていると考えます。仕事を選んで、仕事をし、そのキャリアを背景に、いい仕事に中途採用で就き、また仕事を選んで次のステップアップ転職をする、という状況にまでは結局まだいってないわけですね。

〔 総合計画局長 〕 新しい職業でいいところが選べないのは、先ほどおっしゃった中高年の勤続時期が伸びていることに関係していると。

〔 座長 〕 中高年が占めていて、若い人が入る余地がないという。

〔 委員 〕 その雇用慣行と労使関係などが改まっていないのだろうと思うのです。今までの仕組みが。

〔 座長 〕 そこが重大な問題なのです。労働組合が。

 では、もう時間が来ましたので、きょうはこのくらいにしまして、次の日程を太田さんの方からお願いします。

〔 事務局 〕 資料4ですが、次回5月10日ということで、人口減少と日本経済ということでご議論いただきたいということでございます。

 場所については、後日ご連絡を申し上げます。

〔 座長 〕 では、第4回の研究会はこれでお開きにしたいと思います。

長い間、本当にありがとうございました。

- 了 -

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)