第3回物流・情報通信ベストプラクティス研究会

議事録

時:平成12年3月16日(木)10:00~12:00
所:経済企画庁長官官房会議室(708号室)
経済企画庁

議事次第

  1. 開会
  2. ベストプラクティスに向けた戦略について
  3. 自由討議
  4. 閉会

(資料)

  • 資料1  物流・情報通信ベストプラクティス研究会委員名簿
  • 資料2  物流・情報通信ベストプラクティスに向けた戦略

委員名簿

  • 石原 和幸  日本航空株式会社 貨物事業企画部 企画マーケティング室 課長補佐
  • 石原 誠一郎 SAPジャパン株式会社 ディレクター エグゼクティブセールス
  • 井出 一仁  株式会社日経BP 日経コミュニケーション編集長
  • 岩田 彰一郎 アスクル株式会社 代表取締役社長
  • 北之口 好文 ヤマト運輸株式会社 システム改善本部 情報システム部長
  • 國領 二郎  慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 助教授
  • 花輪 順一  日本郵船株式会社 物流グループ 物流統括チーム 課長代理
  • 藤田 周三  株式会社ローソン 情報システム室 副室長
  • 前田 正明  NTT移動通信網株式会社 モバイルコンピューティングビジネス部 新ビジネス担当部長

(五十音順 敬称略)

出席者

(委員)石原和幸委員、石原誠一郎委員、井出一仁委員、岩田委員、國領二郎委員、花輪順一委員、藤田周三委員、前田正明委員
(事務局)牛嶋総合計画局長、永谷審議官、塚田審議官、藤塚計画課長、税所計画官


(事務局) お手元の資料を確認させていただきます。物流・情報通信ベストプラクティス研究会の議事次第のほか、座席表と資料1、資料2です。では、國領座長に議事の進行をよろしくお願いします。

(座長) おはようございます。まず事務局から、これまでに出された議論を踏まえて作成していただきました「物流・情報通信ベストプラクティスに向けた戦略」をご報告いただいて、それに基づいて議論するということにさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、事務局の方からお願いします。

(事務局) 本日は本題のベストプラクティスのご議論をお願いしたい。前回出されたご意見を踏まえて、ボトルネックを幅広く取り上げるとともに、極力その解決の方法といったものを探ってみたい。

 「多様なニーズに応え得るインフラ」はソフトインフラの制度面も含めたものだが、「我が国の優位的経営資源」は、例えばモバイルだとか情報家電あるいはコンビニエンスストアに見られるようなものであり、「我が国の優位的経営資源の活用による情報通信の最速化」と、「バックエンドとしての物流のスピード化によってもたらされる、活力ある日本の再生のため、欧米をしのぐ世界最先端のネットワーク取引環境の整備」でイメージが1つ作れると事務局では考えている。

 ネットワーク取引に関して、世界最先端の事業環境を実現していこうと考えている。そのためには取引スピードなど最先端のネットワーク取引が有すべきビジネス特性を明らかにして、検討していくことが必要だろう。

 世界最先端の事業環境の実現によって、ネットワーク取引に関するさまざまな経営資源が世界中から我が国に集まり、我が国が活力ある企業活動の場となって、欧米をしのぐ「活き活きした日本」を世界中にアピールしていくことが可能になるのではないか。

 世界最先端のネットワーク取引が有するビジネス特性を考えると、まず、企業活動にかかわる特性を提示できる。

  1. 取引スピードの最速化が言えるのではないかと思う。あるいは、業務のペーパーレス化やシームレス化。それから、音楽配信等に見られるようなデジタルコンテンツ化、ETC等のノンストップ化で取引スピードの最速化が求められる。
  2. 「世界規模での取引」とは、自動車や家電等の部品調達にかかわるグローバルネットワーク、あるいは、国際間輸送で物流管理を効率化するサプライチェーンマネジメントの話。
  3. 状況変化への迅速な対応が特性として言えると思う。これは、ネットワークを通じた購入者ニーズの迅速な吸い上げ、あるいはデファクトスタンダードへの期待である。
  4. 最高の競争力を実現することが可能ではないか。これはバーチャルカンパニーに見られるような、各企業が得意とする分野への経営資源の集中による最高の競争力の実現といったことができるのではないか。
  5. 注文生産・直接取引による取引コストの削減といったことが可能となる。
  6. 「新たな市場の開拓」では、オークションに見られる新たなビジネスモデル。それから、コンビニエンスストア等新たなプラットホームを拠点とするサービスの提供。
  7. 「最新のアプリケーションの活用」では、最新のASPを活用できる。

 こういったことが企業活動面から見たときのビジネス特性と思われる。

 一方、購入者行動の立場から見ると、

  1. 「広がる選択の多様性」ということで、オンライン直販で製品仕様の選択の幅の拡大だとか、あるいは24時間購入できる可能性がある。
  2. 「利便性の大幅な向上」では、購入者が希望する場所あるいは時間帯での商品の受け取りが可能である。また、決済手段の多様化という特性がある。
  3. 「高まる個々のニーズの充足」では、個々の指定する仕様に基づく注文発注。あるいは、検索サービスで納期時期を確認する。あるいは、個々の嗜好を反映した電子メール等による製品案内。

 このようなビジネス特性を最大限発揮させていくための方策が2番目です。これがベストプラクティスにかかわってくる。

 この方策の1番目は、(1)の核となります情報通信ネットワークの問題です。

  1. 情報通信の最速化といったことが方策の1番目としてやっていかなければいけないと思う。これは常時接続の推進、ケーブルテレビの活用、モバイルを含めたデータ伝送に適したネットワークの構築、あるいはデジタルコンテンツ化や情報通信ノード等の技術開発の促進といったことで通信速度そのものの最速化を図っていければと思う。
  2. 通信コストの低廉化の問題です。コストのレベルを上回る選択多様性、利便性を購入者に与えていくといった観点も必要と思っている。
  3. 利便性の向上も図っていかなければならない。これは電波割当の問題等々によるモバイル等移動体通信の普及・活用といったこと。それから、検索機能の充実・簡便化が必要になろうと思う。
  4. 外延の拡大では、情報家電等なじみやすいインターフェイスの実現によって、インターネットといったものを日常化していく必要性が求められる。それから、購入者にとって利便性の高いコンビニエンスストアのネットワーク拠点化といったことが必要になると思う。

 (2)では周辺部分、特に物流などを中心にした動きです。

  1. スピードの向上は周辺環境の面でも大事です。まず物流のスピード化では、幹線道路の整備、あるいは港湾等の国際物流拠点の整備・活用による物流の円滑化が求められると思う。ETCを始めとする道路交通システムの高度情報化、あるいはGISなどの多用な技術の導入でスピード化を図っていく必要があろうと思う。それから、港湾EDIとITSの連携による港湾物流の効率化で、港湾における効率化の問題も必要。それから、コンビニエンスストアの配送面でのプラットホーム化も必要。
    それから、取引手続きの問題です。ペーパーレス化、シームレス化でスピードを上げていかなければいけないわけです。電子運送状の採用等物流EDIの利用拡大。あるいは、グローバル化を支える通関手続のEDI化の推進で、取引手続きの面でもスピードアップを図っていく必要があろう。
  2. 安全性の強化。セキュリティーの確保、特に公的部門については電子政府の実現の前提となりますので、早急かつ強力に推進する必要があろう。電子決済における電子認証の問題、あるいはプライバシー保護の問題があります。電子商取引を行う際、店舗の格付制度のような安心できる取引相手を選択する仕組みをつくっていく必要がある。産学官の協力による恒常的な安全性強化の取り組み。ユーザーによる自衛策と併せて、それを支援する被害者救済システムの充実も忘れてはならない。
  3. 商慣行の改善と標準化。情報の共有化・標準化を通じて、例えば物流拠点の整備だとか、共同配送のような適切な対応が可能となる物流システムを構築していく必要がある。物流コスト算定活用マニュアルや物流合理化ガイドラインによって、物流コストに関する価格メカニズムといったものを有効に機能する環境をつくっていく必要がある。トップ以下全員が情報通信に習熟することの重要性の認識が必要だと思う。デファクトスタンダード等標準化に対する民間主導の取組みへの期待も大事であると思う。

 経済社会システムに対する我々のやるべきことをまとめたのが(3)です。

 1 ビジネス主体の育成という観点で、創業・起業・ベンチャーの促進を図っていく必要がある。具体的には、資本市場の整備、ベンチャーキャピタルの育成。大学とビジネスの相互交流の活発化が必要である。ビジネスモデルの転換のような企業の経営革新では、会社の分割・合併等に関する制度の整備だとか、企業自らの革新への努力といったことが期待される。

 「2 雇用・労働システム」では、人材育成、職業訓練の問題。労働市場の機能強化が必要。

 「3 教育システム」では、グローバルリテラシー、英語だとか、インターネットの習得が必要だろう。個性、多様性、創造性を今後は重視していく必要がある。

 3番目に、本研究会における今後の検討方針を記述している。今後、「2」の方策のうち、(1)及び(2)に主眼を置いて検討をしていきたい。ベストプラクティスを追究するに当たって、(3)の経済社会システムも非常に重要な要素だと認識しているが、情報通信ネットワーク本体、周辺環境、これらの前提とも言える経済社会システム全体の問題でもあるし、また、今回の研究会の焦点をぜひ絞っていきたい観点からも、できれば(1)及び(2)に主眼を置いて検討を進めていきたい。

(委員) どうもありがとうございました。

 以下、自由に討論ということですが、資料2の方策のところの(1)と(2)あたりについてご議論をするということでよろしいか。

(事務局) できればその点でお話いただきたいが、別の意見もあると思うので出してください。

(委員) それでは、具体的な方策として、こういう方策のリストで良いのかというところが一番大きいですね。余りそれにとらわれなくても結構です。自由に議論をしてみたい。

(委員) 本当に前回までの議論がよくまとまって、要素としてはこれで良いと思う。大きな方向としてグローバルの流れは必要だと思うが、1つの提言の例として、例えば「日本はこうやってインターネット立国になっていく、日本の企業も、海外の企業も日本でビジネスを行うベストプラクティスを提案する、その魅力をどうつくるか」ということがある。要素はこれでそこそこ良いと思う。アクション的な魅力をどうつくるか、どういうふうな提言としていくのかがこれから議論する課題だと思う。圧倒的に日本がすごいと思う魅力は、この中で何なのかをもう少し議論していく方がよいと思う。

 長期的な拠点として前回にも話が出た「楽市楽座」のように拠点機能が全部集中した具体的な形と、短期的なイベントというのは違うと思うから、具体的につくるものは、地域によって拠点形成のプロセスが変わるのかどうか、日本全体でやるのか、あるエリアに集中してやるのか、そのエリアにどういうモノをもたらすのかという議論も必要になると思う。

(委員) メリハリをつけた方が良いのか、万遍なくやった方が良いのかという議論に決着がつかないまま前回は終わっていた。

(委員) みんなが議論した、これは全部必要だろうということは入っている。どこを特筆すべきかということだと思う。

(委員) 前回の議論で出てきたが、ネットワーク取引の定義というのはどういうものか。前回の議事録を見ると、「バックエンドも含めた電子商取引」と出ており、ネットワーク取引を最大限発揮させるということだろうが、ネットワーク取引の定義は、この研究会で定まったものがあるのか。

(委員)今のところはっきりしていない。はっきりさせた方が良いか。

(委員) はっきりさせた方が良い。一般的には大体3つぐらいにカテゴライズされる。1つ目は、情報を交換する、取引相手との商談をやっているフェーズ。2つ目は、実際に物が動いて製造が行われて、デリバリーが行われるフェーズ。3つ目は、その結果をどうやって決済するかというお金の支払のフェーズ。いずれも「電子商取引」と言ったり、「ネット取引」とか言っている。第一フェーズは最近流行しているところ。本当は第二フェーズまでいかないとだめ。需要予測から始まり、在庫チェック、物の作成、デリバリーして、検収されてマーケットに提供される。ここまでが重要だと思う。第3フェーズは後始末。お金をきちんと回収する。この3つのどれをもってネット取引と言うが、第二フェーズがすごく重要。第一フェーズはベンチャーでも出来るが、第二フェーズはなかなか難しい。第三フェーズは既存の金融機関やクレジット会社が行っている。第一フェーズと第三フェーズは出来ているが、第二フェーズがうまくいかない。

 いろいろなアイデアは出るが、実際は進まない。世の中で様々な標準化をやっているうちに、TCP/IPでアメリカのデファクトスタンダードが出現する。同じように日本でも団体、協会が標準化について良いことを唱えているが、実際に企業は導入しない。なぜか。阻害要因がある。阻害要因はどこにあるかというと、まずマネジメントにある。トップマネジメントに問題がある。2番目には社内にある。今までのやり方で良いという意識がある。せっかく情報システム部門がつくり上げたモノを各部門が今更変えたくないという意識が強いからなかなか進まない。

 中小企業では、それをやろうとする人がいない、お金がかかる阻害要因があって、理想はあるがなかなか進まない。それをどうやってブレイクさせるかということが非常に重要と思う。理想の阻害要因を排除するには物すごく時間と手間がかかるが、このような阻害要因の排除をスピードアップしないと競争力の強化にはつながらない。

(委員) 今の定義の話で、この研究会では1番目の商談引き合いのレベルの話もあるが、取引をリコメンデーションしていくレベルが大事である。定義の問題を議論するとき、何かを除外し絞った方が良い場合に、定義の問題を議論をするのが良いと思うが、この辺は何かご意見はありますか。

(委員) 例えば消費者と企業との情報のインターフェースだけでなく、情報と実際のモノの動きをどのようにやっていくかという文脈で、ネットワーク取引に焦点を当てて考えていくことは良い思う。

 例えばネット取引の周辺環境整備では、この中で何がボトルネックになって、まず解決しなければいけない問題は何か、何にプライオリティをおいて考えていくかを定めた上で議論するのが良いと思う。

(委員) プライオリティーとは。

(委員)この①スピードの向上、②安定性、③商慣行の改善と標準化といった中から選ぶと、やはり商慣行の改善と標準化になる。ただ、これが一番難しい問題だとは思う。

(委員) 実感として事業をやって行く中で、そこがボトルネックになっているという感じか。

(委員) 例えば、いろいろな雑誌や業界誌を見ると、メーカーから消費者までの仲介業者の数は、海外に比べて日本は2つ、3つ多いとのこと。そういったことが商慣習としてあるのではないか。先日日経ビジネスにサプライチェーンマネージメントに対して商慣習がボトルネックになっているいう記事を読んだ。こういったことが避けて通ることができないのではないか。

(委員) 流通構造に手をつけずに物流と情報のネットワークだけを考えても、効果は薄いのではないかという感じか。

(委員)商慣習の問題は根が深いから、根本的に直らないのではないか。プラットホームやバックボーンだけを用意しても、物流自体の流れが大きく変わらないとコストが下がらない。コストが下がるということは、既存の事業者からそのプロヒットを取り上げることになるから、事業者がその職を失う。そういう問題が必ず生じる。構造改革の戦いだと思う。

(委員) インターネット取引が主流になりつつあるが、まだまだ日本では取引相手の囲い込みがあり、自由にいろいろな人といろいろな付き合いをすることが出来難く仕向けている感じがする。だから、取引相手を囲ってその中でビジネスをしている形態が多い。企業が取引相手を選ぶのではなく、もっと幅広く競争相手も含めて協力し合えるようにしないと、今の時代ではうまくいかないのではないか。

(委員) 囲い込みを助長してしまうような構造的な要因があるのか。

(委員) これには企業の方針があると思う。

(委員) 例えば、ビッグ3のフォードやGMなどが、各々取引相手の囲い込みをやろうとしたが上手くいかなかったので、ビッグ3を始めダイムラークライスラーを入れて一緒に協力してやることになった。部品納入業者にとってみれば各々の囲い込み戦略は困る。それぞれのインターフェースを用意するのが困難である。このインターフェースを一緒にしてくれよという意見が強かった。

(委員) ANXの話ですか。

(委員) ANXはどちらかというとインフラです。ANXがありながらどうしてビッグ3やダイムラークライスラーが協力することができたのか。クローズドのインフラに過ぎなかった。そのコストが高過ぎるので止めた。そこでフォードやGMが自前のシステムでやると言い始めた。ところが、そんなことをしないで一緒にやろうということになってまた1つになった。要するに、最初の発想は囲い込みです。自分のところの取引をうまくやることしか考えていない。他は知らない。それでは困るのでまた一緒になる。日本の現状は強い囲い込みです。自分のグループでやろうとしている。

 銀行合併も含めて、系列や旧財閥というのはだんだん無くなってきているわけで、取引においてもやはりメインのお客さんは当然あるが、それ以外のところまで拡大をしようとすれば、オープンな取引関係にしないとなかなか難しい。そのオープンな取引関係をどうやってつくるかということが、日本人は得意ではない。それが古い習慣であり、系列であり、囲い込みという思考になる。オープンにするということは、弱者と強者がはっきりするということでもある。強い人はどんどん勝つし、弱い人はオープンなマーケットから排除される。したがって、これを避けると囲い込みになる。

(委員) 囲い込みの問題は確かにあるが、一方で希望が持てるのは、日本国内だと、例えば航空大手3社の方で対代理店のネットワークを共通化しようとしている。システム的なところも含めてかなり具体的な詰めを行っている。そうせざるを得ないのは、国際競争力や経営効率的な面が相当大きいと思う。そういう意味で、ビッグ3でも自動車業界でいろいろな部分で国際競争力の中にさらされた場合の経営効率化に、企業が取り組む必要があったのだと思う。経営陣にも、当然情報ネットワーク面や物流面における効率化の意識があり、相当強力に投資するマインドがあると思うので、時間はかかるが悲観はしていない。

(委員) 当然空輸の移動時間そのものは変えられないが、物流の中で地上における物流の部分の時間をどう縮めるか、その際にやはり在庫から生産なり注文、いろいろな発注をネット上で一括して管理すれば当然スピーディーになると思う。

(委員) 個々のシステムは割合悪くないが、日本のシステムは全部ばらばらになっていて、つなぎ目のところで非効率になっている。これは実感としてそう思うか。

(委員) 日本を例にとっていくと、空港へのアクセスが良くない。関空であれば橋を渡らなければいけないし、風が一定以上吹くと、封鎖になっている。そんなところでどうやって物流をやるのだという声がある。成田では、相変わらず検問をやっている。淡々と時間を使っている。オランダのスキポールの空港では、全然検問がなく自由に誰でも入っていける。アメリカの首都のインターナショナル空港であっても全く何の検問もなしにそのままストレートにタクシーで入れる。日本はいろいろなところで、確かに10分、20分で入れるが、時間を使わせるようになっている。

 道路を整備すれば物流が円滑になるということだが、例えばロンドンでは整備率が99%となっているけれども、空港の観点からいくと、ヒースローの空港の荷物を受け取る場所では、ものすごいトラックの列ができている。トラックの運転手はそこで2時間も3時間も待たされる。道路を整備して空港までの時間が例えば1時間縮まっても、物を受け取る所で2時間も3時間も待たされれば、整備率が99%といっても意味がない。飛行機が空を飛んでいる間に、「あなたの貨物はこの飛行機に乗っていて、ヒースロー到着まであと何時間」という情報がトラックのシステムに行けば、トラックの運転手はそれに合わせて空港に行けば良い。このように一元管理するシステムがあれば、コスト的には多分かかるが、少なくともサービスは向上すると思う。

(委員) 今の話はシームレス化で、ここに謳われている。志としてそういう部分は入っている。しかし、ハードウエアの整備率とか料金の水準ではなく、何か違う計り方をしないと現実が見えてこないという指摘だとすると、これは結構重大です。

(委員) インフラは必要でしょう。それを利用する仕方が問題で、利用を効率良くする方法が情報システムなのでしょう。そういう意味では、まだ日本は「ハードが問題だ」とか言っている段階なので、それができていない。インフラ整備をなくしては次に進めないと言えるのか、逆にインフラ整備がなくても情報システムだけが向上すればうまくいくのか。

(事務局) ハードは、例えば成田に追加的に急に整備できるわけではないから、今の成田の物理的な能力をいかに最大限にいかしていくかというのがまずは必要。それから環状道路は昔から必要だと言っているが、今だ問題になっていてなかなかできない。急にこの1、2年でハード整備が進展するかというと、政府は一生懸命やると言っているが、やはり時間がかかる話である。今の道路事情を前提にしていかに効率よくやれるのかという視点が重要。ハード面でやらなければいけないことはわかっているが、それをやれないという事情がある。そちらの事情もなかなか急には片付かないというところがある。ヒースローの話は良くわかるが、成田や関空について何か改善できることがあるのかどうか、将来改善していくものを提案できれば良いと思う。

(委員) 日本人は工夫するのが好きです。例えばトラックで引き取りに来たとき、列にならないように待機トラックの待避場所をつくって、ポケベルによる呼び出しシステムでトラック運転手を呼び出して取りに行くようにしている。、現状での知恵は絞って工夫してやっているが、絶対量とキャパシティの開きがあるので、時期によっては工夫しきれないときがある。

(委員) 今の話を聞くとトラヒック理論みたいな感じがする。パケットシステムのトラヒック論で、エンドエンドのソリューションを出すとき、オーバーオールで見て、トラックが止まるなどのリダンダンスを最小にするようにシステムをチューンする。飛行機の着くのが遅れるならば、逆にトラックで行くのを遅くして、最終的にエンドエンドがその範囲内で収まれば良いという発想です。ところが今はヒースローの話のように、2時間前から待っていて、そこにはエネルギーロスがある。そこら辺を詰めていき、ある意味ではインテリジェンスの高い物流のシステムと全体で言えればと思う。それはリアルなネットワークですね。

(委員) 積載効率が下がっていることは問題でしょうか。実感としてそうなのか。それがどのくらい大きな問題なのか。

(委員) 小型貨物の積載率が下がるということは、空車がいっぱい走っているという意味なのでしょうか。私もこの意味がよくわからない。

(委員) 早く着く、オンタイムで着けることを目的とするから、積載率が下がっても、そうせざるを得ないのかもしれない。

(委員) トラックを空でもいいから走らせろという。だから、トータルシステムとして、そこにリダンダンシーを持たせることがトータルシステムとしてよくなるならば、別にそれはそれで良いという発想はできなくはない。

(委員) カスタマーサティスファクション(CS)という意味で、空でもいいから走らせるという意味でしょうか。

(委員) ジャストオンタイムで要求されるから、常に空車を待機する。それか、既に積んで引渡時間まで待っている。後者の場合、積載率が低いのでしょうか。空車率が増えているということは悪いことですか。きっと台数が増えているのでしょう。台数が増えているから台数分の積載トン数、分子と分母で見ると、分母の方がより一層増えているということか。

(委員) ラスト数キロメートルのところのバケット化が余りうまくいっていない、詰まっていないのでしょう。メインのバックボーンは結構きれいに入って、飛行機とか船に乗るところはきれいに詰まっているが、ラストのところ、加入者へ行くところのバケットがうまく詰まっていないから、結果として積載率が下がるということでしょう。

(委員) この現象は実感として我々にもある。毎日配送を行っているが、休みの後、月曜日には注文が多い。土日で売上が上がるからです。木曜日、金曜日に売上が少ない日があったりしますが、配送ダイヤが決まっており、どこの店に何時にトラックが行くかが決まっている。ダイヤが決まっているからトラックを走らせるわけです。ところが物量がどれだけかあるかないかというのは日によって変わる。配送効率を上げるために配送ダイヤを毎日変えたい。しかしお店からは困ると言われる。何時という時間に決まって来てほしい。結局このアンバランスです。

(委員) カスタマーサティスファクションを追いかけていくと、波の振幅が大きくなるのでしょうか。

(委員) インターネット接続にしても、ある時間帯になるとピークが来るわけです。そのために設備をつくっている。バンキングのオンラインもそうです。レスポンスタイム、ほとんど1時間か年に何回しかないトラフィックのために設備を整える。ほかの時間帯は空いているにもかかわらず。24時間バンキングなんかをやったら全くトランザクションがないにもかかわらず、稼動させることになる。結局ピーク時の取引というのはオンライン取引の一番の問題点です。同じことが物流の世界でもあるのでしょう。

(委員) 仮説としてそうなのか、EDIが入ってきたときにビッグピーク特性が大問題になった。

(委員) それが実はビジネスチャンスになる。両立をいかにするかということに価値がある。我々は「山崩し」と言っている。今まで全国翌日配送を行っていたときは、山は1回だった。当日配送をすることによってお客様に対するサービスは、スピードの点で圧倒的に早くなり、同時に山崩しができた。11時までにご注文いただいたものは、夕方5時までに届ける。その後のものは翌日の午前中までにということで、トラックの積載効率は逆に倍になった。1回朝積んで出て行くトラックも小さいので2回出て行けば良い。山の大きさは、曜日によって異なる。したがって、自分の専用のトラックは最低のところまでを用意し、変動分のところは外の物流業者や、エリアのミックスの組み合わせで対処する。知恵でトータルコストをいかに下げるか。

(委員) 山を崩すことで新たな需要を喚起できるのか。

(委員) 1日2回の配送にすることで、新たな需要をつくることができるし、ピークの波の振幅も小さくなる。

(委員) 新たな需要をつくるということが重要だ。

(委員) 従来間に合わないから他の販売店に買いに行っていた者が、注文してから配達までの時間が短くなり夕方まで待てばいい。また新たな需要が入ってくる。ビジネスとは価値創造だから、今までなかったことをやるということが一番おもしろいと思う。

(委員) 問題があるときにはビジネスチャンスが伴うのか。

(委員) 出来なかったことをやることにビジネスが生まれてくるから、ビジネスサイドからいけば、チャンスがあると言える。

(委員) 銀行のATMの時間延長をやる理由は、サービスの向上だけでなく、ピークの分散がある。

(委員) 株の取引もコストが10分の1になれば、お客様はインターネットに流れていくわけです。そういうふうにお客様は経済理論で動く。ネット社会の構造が、コストを抑えて、従来あったものの価値が無くなってきて、大構造変革が起こる。産業構造が変わって、従来の役者が変わっていくということに対してどういうふうに対処をしていくのか。自由な競争ともう一度活力を与えるような制度があればと思う。戦後50年の体制も含めて、それ以前の体制が変わってしまうだろう。そういう破壊なわけです。それは国民のための、消費者のための破壊でないといけないと思います。

 そういう基本をどう考えるか。我々は「社会最適」と呼んでいるが、再構築をする上で社会不適を起こした者は淘汰されていく。

 それともうひとつ言いたいのは、「スピード」だ。社会のインフラとして、長期的に勝つための方法というのはこの資料にあると思う。物流のインフラは、国が長期的に勝つための方法だと思う。一方で短期的に起こっている劇的な変化に対してどう健全な方向に誘導するか。たぶんそれは決めてからやると言ったのでは間に合わない変化だと思う。だから従来の考え方ではこの変化に対応できない。そこのでやり方を変えなければいけない。

 中長期的なインフラの整備と短期的な変化への対応をどこかでドッキングして日本を強くする。ただ、そのストーリーが難しい。

(委員) ドッキングさせるタイミング、サイクルの違いがこの研究会の初めからの問題です。

(委員) スピードという観点をどう入れるか。スピードにどう国が対応していくか、企業が対応していくか。ひずみが起こるから、そのひずみをどう吸収するかが国のプログラムだと思う。ベストプラクティスが実現したときに従来の体制の破壊が加速されるということが当然起こってくるわけだから、その心構えを最初にしておかないといけない。

(委員) 商慣行の改善と標準化という項目が一番問題で、流通構造改革抜きにインフラの話だけをしても意味がない。創造的破壊に対応するためのガッツがこっちにあるかという話でしょう。

 それから物すごく短期の動きの話と、長期的にインフラの整備をしていくサイクルの決定的な違いをどうするか。

(委員) 世の中に刺激を与えるには、何か世の中を変えるものがある。それをきちんと伸ばしていけば、一番の阻害要因である社内システムや経営者が変化してくる。もし国の政策としてやるとすれば、変化を起こす種を助けて伸ばしてやれば世の中は変わる。そのかわり、必ずひずみが起こる。必ず失業者の問題が起こる。

(委員) イノベーターのような方が企業でどのくらい実験させてあげられる環境があるかなんです。それが「楽市楽座」とおっしゃっている意味なのでしょう。

(委員) 戦後普及していく中で、最初は公設市場があって、そのうちに商店が出て、商売を起こしていきます。同様に電子公設市場的にみんながネットワークなどのインフラを使って、価値を創造していける場が存在し、そこで認証や暗号等を行うことで商売ができる。そういう人たちが参加していくマーケットプレイスや国がつくっていくマーケットプレイスも出てくるでしょう。独自理論でやっていくというのもあるでしょう。そのようなみんながビジネスを始めて元気になる受け皿も必要だと思う。

(委員) 拠点主義をとった方がいいのか、つまり、どこかに集中的に投資をするのがいいのか。

(委員) 電子公設市場はネット上に存在するから、物理的なものはないと思う。

(委員) そこにいくといろいろな規制が外れているのでしょうか。

(委員) 物理的なものはないが、新たなルールや、ポリスも必要ですし、ネット上もやはり規制があった方が良い。

(委員) 公設的に「公」がやると、必ず「やみ市」というのが出てくる。しかも、「やみ」の方が元気である。

(委員) さっきの取引相手の囲い込みの話とか、共通プラットホームの話という観点から、これはどうですか。

(委員) 「囲い込み」というのは本当に可能なのかなと思う。囲い込んでもそこに価値がなくて登録してあるだけでは何も意味がないから、お客さんは一番価値のあるものに流れていく。そこに価値があったらとどまる、価値がなければ離れる。それが自由にできる時代になる。それが本来だ。

(委員) そうすると、先ほどの楽観論のように、そこは特に余り考えなくても大丈夫だということですか。

(委員) ただ、必ず廃却側との戦いがありますから、楽観論だけではだめだと思う。あるシェアを収めてしまえば、結局みんながそこに従っていく。その企業が健全かどうかというのは、国際社会がきちんとウォッチしていく必要がある。それがきちんと機能していけば、どれだけシェアを持っていたとしても、もしそれが間違っていればみんなが離れて行く。

 国の規制を含めて、マーケットプレイスとか巨大な市場というのが出て来ると思う。囲い込まれて行く。それが独禁法ではないが本当に健全な形で機能しているかは、通常の社会と同じだと思う。

(事務局) 共通のプラットホームをつくる課題が出てきたときに、従来の独禁法の考え方によって、そういうものに対する障害になるというのが現実にあるのでしょうか。例えば各銀行で何か共通の部分でやろうとすると、常に独禁法の影がかかる。今みたいに共通のプラットホームを使わなければいけないという課題がかなり頻繁に起きてくると、その部分を産業としてどうやって規制するか、業務としてどうやって規制していくか、その部分を企業の入口でどういうふうに処理するかは相当大きな問題になると思う。

 逆に、共通のプラットホームを既発で作成した部分に他の主体を入れないと、極めて脅威な寡占になるか独占を形成する手段になり得るため、法制上の大問題だと思う。そのようなことが現実にビジネスを行う上で壁になっていることがあるか。それがネックで、独禁法のためプラットホームをつくりにくいようなことがあるか。

(委員) 今は大型化にどんどんなっている。企業が合併しても、最近は独禁法上の問題とは言わなくなりました。

(事務局) 持ち株会社になってからスタンスが変わったように思う。

(委員) OSでは、ウインドウズの一方でLINUXが出現して、また戦いが始まっているからおもしろいが、ブラウザでは、インターネットエクスプローラーが8割ですから、マーケットが違う。これは共通のプラットホームとして非常に便利であって、両存されると困るが、一方で一企業が独占するのも困る。それがプラットホームの問題です。

(事務局) もちろん競争を阻害してはいけないが、ある種の共通のものが必要だということがはっきりしてきた場合には、誰でも使えることを前提に何か法的な関与によって競争を阻害することを考えないといけないか。

 情報通信は、みんなが使う道路に対して通行料をとらないのと同じ側面がある。社会を結び付けるためのネットワークを促進しなければいけないならば、相当公的な関与が必要になるかもしれない。

 インターネット社会の射程範囲を相当射程範囲が広い変革が起こるというイメージでとらえているが、もう1つこの場での議論は物流に集中している。最初の入口の議論として、射程範囲がどういうものなのかということを教えていただけるとありがたい。

 そうすると、それに応じてやらなければいけないことが明らかになる。

 それから商慣行の話も、ここでの議論は物流に集中していますから、流通業界を変えなければいけないというスタンスで出てきているが、もうちょっと広い射程範囲を持ったものなのかを決めていただきたいと思います。

(委員) この研究会に集めた方々が物流と情報であるというのが1つあります。物流の部分は全体の大きなボトルネックになっていることは間違いないので、そこをかなり重点的に攻めると良いという扱い方だろうと思う。

 通信速度の最速化、バンドウイズが大きい方がいいか小さい方がいいかというのは、物流業界にとっては今そんなにボトルネックになっていないと思う。そうでもないですか。今の通信速度でギガの情報量が流れた、メガの情報量が流れたからどれぐらいいいのか。ただし、製品開発というと、例えば自動車1台の開発においては何テラビットもの情報を自由に流せる環境にしたい。

 この研究会の前提では、製品が完成した後の話をしている。製品開発や工場の中での生産までも本当は射程内だと思う。社会のインフラとしてはそこまでカバーしたいと思う。そこまで来るとすべての所でギガビットの通信速度で情報が受けられるようにしたいと思う。

(委員) 物流がネックになって、コストが高い。例えば音楽では、まだまだCDの方が安い。通信による音楽配信では、通信回線は高いし、ダウンロードするのに何分もかかるようでは相手にされない。ところが、安価で瞬時にダウンロードできるようになると、お客様に相手にされる。そうすると、CDを売る販売店は要らなくなる。物を運ぶ必要がない。

 だから、通信が発達して安くなれば、無形財を物として運ぶ必要がない。影響は大きいと思う。それは物流と切っても切り離せない関係にある。

(事務局) 日本の通信速度は28.8kbpsでアメリカは1.5Mbpsであるという話を聞いて、そんなに差があるのかとびっくりした。その速度を上げなければどうにもならないと思い、こういうネット上の通信速度の最速化を課題として置いている。

(委員) 情報が早くなり、無形財の物流が要らなくなれば、物流量全体としてはゼロにはならないが、道路の整備が要らなくなるという話になりかねない。その辺のバランスをどう考えるかが大きな問題かもしれない。

(委員) アメリカにおいてワイヤレスによる音楽配信の議論をすると、彼らはその有益性を理解できない。MP3で圧縮して1.5Mbpsの固定網で送信すればよいだとか、バックボーンの太いところに住んでいるから必要性を感じないということだろう。ところがワイヤレスがワイドバンドで384kbpsと2Mbpsとかのスピードになると、いつでもどこでもという自由度が生まれて新たなマーケットになるわけです。

 それよりも今の段階はプリミティブで、つながっているか、つながっていないかということの方が非常に大事である。つながっていれば全体としてインテリジェンスの高いシステムになる。オフラインになって、物すごく分断されているから全体としてのシステムが動いていないということの方が大きな問題ではないか。

(委員) そうです。遅くてもいいから全部つなげるのが最初に行うべきです。

(委員) 日本がインターネットグローバル化の中でどういうことになるのか。日本は製造業中心にやっていく。そのプロセスで、BtoBの調達の仕組みや製品開発や製造の高速化によって、良い商品を早く世界へ届けられるようになる。製造の高速化や高質化がどう最終的につながってきてグローバル化に対応していけるか。いま、議論しているのはドメスティックなところです。マーケティングの精度の向上など、いろいろなことがネット上で速くできるようになり、日本の製造業が復活し、さらに国際競争力を持つためには、国際的な調達ネットを導入する必要がある。それがどういうふうに変化をもたらし、我々は何をしていかなければいけないのか。最終的には製造業のところがキーになってくる。

(委員) 最近EDIを調べていたら韓国、台湾、シンガポールが物すごく進んでいる。国際競争力で、前は日本の賃金が高いから、土地が高いからといって海外に逃げたが、それに加えて、これらの国々で調達のシステムができあがっているから、日本は今非常にまずい状態にあると思う。

(委員) 港、生産基地、安い労働力があり、世界の情報が集まって物が輸出されてしまうと、日本には何が残るのか。

(委員) 製品設計に取り組んでいる方々はあと5年が勝負と言っている。あと5年経つと今の日本の強みがなくなる。日本に強みがあるとすると、コミュニケーションが大好きな女の子たちと、何でも作れる製造業であり、ポイントはその2つをどのようにつなげるかということです。女の子たちの感性で製品を作るということが、世界的に売れる。ほとんど証明されている。日本の消費者の感性でつくったプロダクトは世界に持っていくと売れる。製品設計と少女たちという両端をどうやってつなげられるか。

(事務局) 当面は物流が問題になっていると思うが、生産の効率化をすることと物流で起こりつつあることとが、パラレルに進むのか、当面は物流が変わりそれに応じて生産にも波及するのか、どちらなのか。例えばアメリカではどのような現象が起きているのか。

(委員) アメリカの場合はむしろアジアが供給拠点になっている。貨物がハブに入って、全米に向けて飛ぶというスタイルになっている。モノの調達はアジア、特に台湾が中心です。グローバルなモノの調達の流れでシンガポール、香港の貿易量の多さとかそういう情報投資の確保などを見てみれば、アジアの中でも日本は勝てる要素がなくなってきている。言葉の問題などの教育問題まで全部、シンガポール、香港、台湾が有利。日本は持っている技術力とか、従来からのメーカーの発想力、モノをつくる原点とかはまだ残っているが、それをどう維持できるか。

 日本型会社組織の生存自体も危ない。20世紀型の会社、ヒエラルキーで終身雇用で、その中で蓄積されていく日本の会社の構造も、このスピードネット時代では危ぶまれてます。それが崩壊していくと、日本は次に何ができるだろう。

(委員) 物流は社会システム的に考えなければいけないので、こういう場で議論するのは相応しい。しかし世の中の重要度という意味ではほかにも重要なポイントがある。生産システムの情報化がすごく大きいと思っている。

(委員) シンガポールの人口は300万人しかいない。もともと政府が強いという文化的な背景が多分にあると思うが、例えば通関にしても、トレードネットというコンピューターに物流業者がデータを入れさえすれば後はごく短い時間で全部やれてしまう。何かしら事を起こすときにはアクションは1回で済む。社会システムとして見ると、すごいインフラだなと思う。

(委員) 利用感覚が全然違う。

(委員) 生産拠点とモノが実際にグローバルに流れる中で、アジアの役割、アメリカのマーケット、日本のマーケットがある。生産基地としての強さは、これから中国、南アジアに行く。そこに情報が終日集まって関係してくると、日本は何を担うのか、アジアの中で何を担うのか。日本はハブの役割を担えなくなってきている。

(委員) 消費生活の場面において商品開発とかマーチャンダイジングとかというようなところと情報技術、物流インフラのシステムづくりについてどのようなことを考えているか。

(委員) 今までのマーチャンダイジングはある程度、市場の情報やメーカーの情報をとって、商品セレクトをしている。今はどちらかというとダイレクトにお客さんに聞くことも必要。だから、我々もモニターからの情報を大事にしている。

(委員) それはやはりフェース・トゥー・フェースで聞くわけですか。

(委員) インターネットでもやっている。当然自分のところの商品だけではなく、ほかの商品の意見も集めている。そうやって聞いていると、お客さんの嗜好は大分変わってきている。

(委員) それをまたサプライヤー側とデータを共有するわけですよね。

(委員) 共有します。昔は新製品をつくって渋谷で試食モニターを行っていたが、もうそれだけではだめです。モニター評価から製品になるまでの時間が早くなってきているというのがある。かなり、顧客のなかに入り込んで聞かないとマーチャンダイジングにならない。

(委員) 現実にインターネットで汲み上げた商品ニーズがの商品企画に移されて、また川上と共同していくという話ですか。

(委員) それと定点で評価を聞いて、それを3カ月サイクルでやっていく。だから今の商品開発は早い。1カ月も待たないかもしれない。不評の商品は2週間で見極められて消えてしまう。

(委員) 短期的課題と長期的課題をどう繋ぐかという大問題があるが、1つの手がかりとして、既存のものをどのような利用技術で最大限活用していくかという視点と、根本的な問題のところにどうやって手をつけていくかというハード的なインフラ整備の視点も考えなければいけない。

(委員) グローバル化の中での日本の役割とか、ネット社会の中での製造業を中心とした競争力とか、消費文化自体がどういう要因になるのか。グローバルとドメスティックの中での役割の違いとかしかけの違いがあると思う。

(事務局) 日本で物をつくらなければいけないというとらえ方はもうない。日本が製造にかかわるという意味での製造業であると思う。

(委員) 日本におけるヘッドクォーターや、研究開発の意味もなくなってしまうのではないか。情報が全部向こうに集まるわけだから、日本に情報が集まってこない。通過しないこともあり得る。アメリカの需要が、直接シンガポールであり香港でありアジア大陸へ飛んでしまう。

(委員) 少なくともプロデュース機能が、ヘッドクォーター機能みたいなものが日本にあってほしいということですか。

(委員) それも日本にある必然性はだんだん薄くなってきている。なぜなら、日本のメーカーは物をつくるときに、向こうのベンチャーと組んでつくったり発送してくる。

(委員) そろそろ時間です。皆さん、お疲れ様でした。どうもありがとうございました。


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