第3回人口減少下の経済に関する研究会

議事録

平成12年3月15日(水)
経済企画庁

第3回 人口減少下の経済に関する研究会 議事次第

平成12年3月15日(水)14:00~16:00
総合計画局会議室(732号室)

  1. 開会
  2. 人口減少のプラスとマイナス
  3. 自由討論
  4. 人口減少への対応の基本的方向
  5. 自由討論
  6. 今後のスケジュールについて
  7. 閉会

(資料)

  • 資料1  「人口減少下の経済に関する研究会」委員名簿
  • 資料2-1 人口減少のプラスとマイナス
    人口減少への対応の基本的方向  説明資料
  • 資料2-2 人口減少のプラスとマイナス
    人口減少への対応の基本的方向  参考資料
  • 資料2-3 分析に用いた「世代重複モデル」の概要
  • 資料3   今後のスケジュールについて(案)
  • 参考資料1 前回研究会(平成12年2月10日)における論点メモ
  • 参考資料2 前回研究会(平成12年2月10日)議事録

人口減少下の経済に関する研究会委員名簿

  • 委員(9名)
  • 座長  橘木 俊詔   京都大学経済研究所教授
  • 委員  井堀 利宏   東京大学大学院経済学研究科教授
  •     岩田 一政   東京大学大学院総合文化研究科教授
  •     小川 直宏   日本大学人口研究所教授
  •     小塩 隆士   東京学芸大学教育学部助教授
  •     外谷 英樹   名古屋市立大学経済学部助教授
  •     長岡 貞男   一橋大学イノベーション研究センター教授
  •     永瀬 伸子   お茶の水女子大学生活科学部助教授
  •     伴  金美   大阪大学大学院経済学研究科教授

(五十音順 敬称略)


(座長) ただいまから第3回の人口減少下の経済に関する研究会を始めたいと思います。本日は、委員の皆様お忙しいところお集まりいたたきましてありがとうございました。

 本日は2つ検討事項がございまして、一つは人口減少のプラスとマイナスについて、もう一つは人口減少への対応の基本的方向についてでございます。

 それでは、一つ目の検討事項である人口減少のプラスとマイナスについて、事務局からそのご説明をいただきたいと思います。

(事務局) それでは、まず最初に資料の確認ということで申し上げます。資料1・委員の名簿の下に資料2-1・人口減少のプラスとマイナスという説明資料、それから、同じく資料2-2が参考資料、それから、資料2-3としまして分析に用いた「世代重複モデル」の概要です。

 まず最初に、おわびをしなければならないのですが、前回この第3回目の研究会について予告いたしました日本経済の長期マクロモデルを使って実際に日本経済の姿、21世紀の姿を展望するというようなことを申し上げたのですが、そのマクロモデルの検討作業の進捗状況が必ずしも順調に行っていませんで、今回は間に合わなかったということがございますので、それにつきましては次回ということにさせていただきたいと思います。具体的な日本経済の姿というのは次回モデルでご覧いただくということにいたしまして、今回はもう少し原則的なことということでこの人口減少のプラスとマイナス、それから対応の基本的方向ということについてご議論いただきたいというふうに思います。

 それでは、資料の2-1に基づきまして最初に人口減少のプラスとマイナス、またはベネフィットとコストといいかえてもよいのですが、それについて説明いたします。

 なお、今回の世代重複型モデルというもの、これは前回もいろいろシミュレーション結果などを提示させていただきましたが、前回いろいろ有益なコメントをいただきましてこういったシミュレーションもしてみてはどうかというご示唆もいただきましてそれに基づいていろいろシミュレーションしてまいりましたので、せっかくの機会ですのでそれも含めてご説明いたします。

 最初に、資料2-1をご覧いただきますと、最初にバランスシートのようなものがございます。人口減少というものを考える上で何を評価軸にするかという問題はあるわけですが、マクロ的な問題でいえば、それこそ日本全体が世界の中での相対的地位が小さくなってくる、そういった国力ですとかあるいは世界での発言力、そういったような観点もいろいろあるわけでございますが。ここでまとめておりますのは主として経済的な側面、特に国民の厚生水準といいますか、そういったことにかかわることで主にここでプラスマイナスを書いております。

 生活面と生産面というふうに一応仕分けをしております。そのうち、人口減少のプラス面を生活面で考えますと、まずは費用負担の観点からですが、子供の比率の低下に伴う教育費等の費用負担の低減ということが一つ考えられます。

 次に生産面を考えますと、単に子供や高齢者のような非生産年齢人口部分にいろいろな扶養負担がかかるというだけではなくて、生産人口世代についてもいろいろな資本装備の必要があり、そこに費用がかかります。そこで、生産人口が増えないという事は、資本装備という点ではその負担は減少するということではないかと考えます。これは経済成長モデルなどでは常に定式化されておりまして、人口が増加して新たな世代が参入してくるということになりますと、資本の方を増加させなければ資本装備率が低下して賃金が低下し生涯での所得が低下する、そうならないためには資本を装備しなければならないといったことであります。

 これは、新たに生産人口となる世代が機械でも背負って入ってきてくれればいいわけですがそういうわけではないということです。一方出ていく人たち、引退して新たに高齢者になる人は貯蓄を保有しているわけですが、新たに生産人口に入ってくるそれまで子供だった人たちは持っていないということから生じるものでございます。この辺は子供と高齢者を考える上で一つの違いとして考えられます。

 それから、一方のマイナス面、これは子供に対しまして高齢者の方で、人口が減少するという過程では人口の年齢構成が高齢化しまして高齢者の割合が高まる、それに伴う負担の増大ということが当然起こるだろうということです。

 次に、これはなかなか定量化しにくいものでもありますが生産面を考えますと直観的に言って経済等の活力の減退ということがいろいろ考えられます。それから、労働力の中高年齢化の問題があります。これは新しい技術への適応力を低下させる可能性があるということではないかと思います。それから、経済社会の硬直化。これは、新規にいろいろなものが加わっていく、そういう世界で新規配分を変更することで全体の資源配分を変更していきやすい、つまり構造変化がしやすいということで。逆に新規参入の少ない場合はなかなか、例えば財政でいきましても一種の既得権益のようなものがそれを阻んでなかなか資源配分機能がうまく機能しないということがあると考えますが、同じようなことは労働市場の中でもあり得るのではないかということです。

 ほかにもいろいろあるかもしれませんが、ここでは以上を挙げております。このうち、特にある程度定量化しやすいと考えられる部分について数値を求めております。具体的にはこの生活面の子供の負担と高齢者の負担、それから生産面で資本装備の必要性、これらについて数値を求めて人口減少のプラスとマイナスについてトータルとしてどうなっているかということなどを探っています。

 資料2-2ですが、その1ページ目。これは資料2-1のバランスシートのようなもので表の囲いの中に書いてあるものの生活面でのプラスとマイナス、子供の費用負担と高齢者の費用負担をここでは表しております。まず扶養世代の費用は、実はどこまで費用と考えるかというのはなかなか難しい問題でありますが、ここでは高齢者あるいは子供であるがゆえにやむを得ざる、つまりどうしても必要となるような出費を考えています。多様な選択の時代ですからそれ以上の部分は自らの意思ということになるわけです。自らの意思というわけにはいかない、そういった部分と考えています。

 例えば高齢者でいきますと、健康の問題というのは誰にでも起こり得る問題であり、健康の問題が起これば何らかの形で費用がかかるということで、ここでは医療や介護について公的にカバーされる部分を一応そういう部分であるというふうにみなしています。具体的にどの程度かかっているかというのは表の中の網かけの部分でして、65歳以上全体では、一番左側にありますが、157万 4,626円ということであります。それを65歳から79歳と80歳以上に分けますと前者が年間108万円、後者が年間334万円ということになります。

 それから、下の方に育児の費用を考察しています。これもいろいろな費用が考えられるわけですが、ここでは非常にベーシックな費用ということで保育、それから高校以下の学校の公費負担される部分をとりあげております。一人当たり 102万ということになります。これは、実際に教育費などにもっとかかったりするわけですし、あるいはそれこそ食べさせるだけでも相当金がかかるということでありますが、基本的に子供というのは親の選択の結果として生まれてきたというふうに考えますと、基本的に何らかのベネフィットがあって効用があって、それと費用がバランスしているというふうに考えまして、必要最小限的な部分のみをここでは(社会としての)費用というふうに考えております。この辺はいろいろな考え方があるかと思いますが。

 実は、これらの数値を計算モデルの中に入れております。前回もいろいろシミュレーション結果を提示しました「世代重複モデル」というもので、これは資料2-3に説明があります。これは改めてお配りしておりますが、モデルの概要を書いております。これは人口コーホートを入れたマクロ経済モデルでありまして。人口の世代別構成、人口コーホートを入れて、各人がライフサイクルに応じた最適化行動を行う、そういったことがマクロ的な動学経路を決定していく、そういったモデルでございます。これは、生産関数の方も入れておりますのでいろいろ資本の動き、ライフサイクルの貯蓄が資本になってそれが生産に影響していく、そういったものも踏まえているものでございます。

 2ページに少し書いておりますが。特に私どもが持っております「世代重複型モデル」の特徴は59期間のモデルであるということであり、年齢でいきますと20歳から78歳までに分かれている多期間のモデルであるということです。それから、海外のシミュレーションもできるということでございます。3番目に書いております、高齢者の直接的費用を明示的に考慮することが出来ます。そしてこれが今から申し上げることであります。

 資料2-2の2ページ。これは前回もお示ししたのですが、今回は、介護等で費用がよりかかる確率が高い後期高齢者の問題なども緻密化して再度推定しているということであります。一番上の方に人口成長率を書いておりますが、これはモデルの技術的な制約もありまして、第一義的には人口がある一定成長率が続いた状態を描いたもので、これを計算するのが技術的には簡単ですのでそういった前提に立っております。長期間一定の人口成長率が続いたというものでございます。これで、一応2%からマイナス2%までを書いておりますが。その下の方に合計特殊出生率に換算すると幾らかということで、人口成長率がゼロだと2.05に、それからマイナス1%ですと1.32で、現実の合計特殊出生率が1.38ということですからマイナス1%の人口成長に近いということになります。

 それから、21世紀のいずれかの時期に、生産年齢人口がマイナス1.7%~1.8%ぐらいに一時的になるとみられる時期もありますので、マイナス2%まで一応ここでは幅をとってあるということであります。この場合の合計特殊出生率は0.79ですからかなり極端な少子化になってしまうわけです。

 真ん中のラインの下に生涯消費と書いておりますが、これはこの人口成長率がずっと続いたときに、技術進行率はゼロと見なして計算上仮定しておりますが、一人当たりの生涯消費はどのようになるかということでありまして、人口成長率がゼロの場合の生涯消費を 100と置いておりますが、プラス1%ですと 100.9、マイナス1%ですと98.1、マイナス2%で95.3ということで。人口がプラスの場合は余り大きく増えはしない。マイナスの場合は結構ゼロよりも小さくなって、マイナス幅が大きくなるとこの落ち方がやや大きくなる。こういった特徴があります。これは、基本的には80歳以上の人口の比率がマイナスになると高まってくるということで、人口成長率ゼロのときに 6.7%、これがマイナス1%となると10.2で、マイナス2%で14.6%。だんだん幅が、同じ1%でも幅が大きくなる、こういったことを反映しています。

 この種の数値は前回もお示ししましたが、今回は80歳以上を明示的に考慮した結果、マイナスになったときの落ち方がやや大きくなったということがございます。

 次に3ページ。これはちなみにということではじいてみたものでありますが。前回先生からもいろいろご示唆いただいたのですが。その前の2ページの人口成長率別の生涯消費から換算しまして、それぞれ合計特殊出生率に換算すれば幾らかというのはあるわけですが、ここでは、子供一人が生まれることによってどれだけ社会にとって便益のようなものがあらわれるかというのを計算したものであります。これは人口成長率0%の生涯消費を100と置いた2ページとは異なり、人口成長率3%時のそれを100と置いているのですが、例えば、人口成長率が0%とマイナス1%でご覧いただきますと、生涯効用は100.2 と98.3ということです。

これを一人当たりの消費、生涯消費で見ますと、0%が1億8,900万円、それからマイナス1%は1億8,500万円ということになりまして、これが合計特殊出生率では2.05と1.32に該当する。この差の0.73分だけ多く生まれることによってその生涯消費の差(400万円)が出るということから逆算していきますと、ちょうど一人の子供が生まれることによってその子供が将来ずっと働いて社会保障制度を支えていく、そういったことを現在価値に直すと 984万円という計算になるということであります。これは当然ながら人口が減れば減るほどこの価値は高まります。例えば、人口がマイナス2%からマイナス1%に向けて上がってくるというような状況の場合は、一番右のところにありますが、一人で 1,998万円ぐらい貢献するという計算になります。これは、人口が増えてくると余り貢献しなくなってくるわけで、人口が1%ぐらいになるとマイナスに転じるぐらいになってしまうということであります。このような、一応の目安として出してみたということでございます。

 以上が定常状態という状態を仮定して人口の増減のプラマイを一応トータルとしてはじいてみたというものでありますが。現実の経済を考える上では人口の現実の波動を考えていく必要があります。そこで4ページ、これは中位推計でありますが、総人口の増加率と生産年齢人口の増加率を年率で出しますとこういうことになるということです。生産年齢人口がちょうど団塊の世代、あるいは団塊ジュニアの世代の波動で振れているということでございます。

 これを人口学の方でよく使われる生産年齢人口、あるいは従属人口ということで分けてみて長期で見たのが5ページ。総人口に占める生産年齢人口、ここでは15歳から64歳ということに切っておりますが、この割合をご覧いただきますと、これは1950年からしばらく上がり始めまして、ピークが大体1995年ぐらいだったということになります。それが今度減少に転じて、2050年ぐらいまで下がって、これは予測ですが、またそのあと横ばいになっていくということです。つまり団塊ジュニアが高齢者になるまでこれは下がり続けて、そのあと横ばいになるということであります。

1950年以前はいろいろなことがあったのでいろいろな波動がありますけれども、ちょっと書いておりませんが、ずっと人口の増加が続いた時代で、それほど大きな違いはなかった。それが、団塊の世代が生まれまして急激に出生率が低下しはじめたころから上昇して、最近まで上昇し、それから減少していくということです。人口が増加する時代、19世紀からずっと続いていたわけですが、それが1940年代ぐらいに出生の面で転換を迎えて、それがしばらく経って半世紀以上経って全体の人口の減少に転じる。そして、そのあと高齢化が進む。そういった一時的に生産年齢人口が上がって、また下がって、ある一定の値に近づいていくというそういう波動が見られるわけです。いわば、人口増加から減少への移行期ということが言えるかと思います。

 2-1の方の資料で2ページ目に書いております移行期の問題。人口が増加する時代から減少する時代に転換するときには次のようなことが起きる。最初は子供が減って、従って従属人口比率は下がる。それが、次第に高齢者の上昇の方が優勢になりまして、生産年齢人口比率が再び低下していくということです。実は今少し前がピークで、これからしばらくというかほとんど50年ぐらい生産年齢人口比率で見ると低下する時代が続くということになります。ある意味で、見方によっては今までが転換期の中でラッキーだった時代で、これからは転換期の中の余りラッキーではない時代になるという見方もあるかもしれませんし、あるいは最終的にはもとに戻るだけだという言い方もあるかもしれません。その辺どういうふうに考えるかということでもありますし、どう対応するかということであるかと思います。

 それからもう一つ。実際にこれは日本のデータでよく言われる話ですが、極めて変化のテンポが速い。増加時代に非常に増加率が高くて、それが急激に1950年代に出生率が下がって、さらに少子化が現在もなかなか止まっていないということが追い打ちをかけているということで、非常にこれから迎える高齢化のテンポは速い。このことから非常にいろいろな調整というものが必要となってくるのではないかということでございます。

 先ほど定常状態でご覧いただいたモデルでのシミュレーション結果というのは、この1ページの中では一番上の子供の負担と高齢者の負担、それからプラス面で資本装備の必要性の減少、こうしたある程度数量化が容易な部分をインプットしてみたわけでありますが、この他、マイナス面のところ、なかなか数量化ができない部分、あるいはこういった移行期や変化が速い部分に伴うコストというものもいろいろとあります。また、先ほどの定常状態のシミュレーションには見られなかった部分もあります。

 資料2-2の6ページでありますが。これは実際の日本の人口に前述の子供と高齢者にかかる費用をインプットしたものです。下の方の破線が子供で太い破線が高齢者のかかるコストです。高齢者の方はごらんのように21世紀に入るとかなり上がりまして、子供の方が減る割合よりも大きく増えます。また、このモデルにおける公的費用の割合は真ん中の方にあるグラフであります。2000年を越えると次第に上がっていくということであります。

 ただ、高齢者と子供というふうに見る、あるいは逆に生産年齢人口が支えるというふうに見るというだけではなく、先ほど説明しました資料2-1の生産面のプラスの中で資本装備の必要性の減少を考慮いたしますと、真ん中の薄い線に上乗せして一番上の太い線になるということです。これも考慮すると少し負担の上昇というのは小さく抑えられるという姿が出てきます。言いかえると、生産年齢人口がドラスチックに下がる、あるいは従属人口指数のようなものがドラスチックに上がるというのは、労働力という観点から見ているわけですが、それ以外に生産する上で資本というものがあるわけですからそういったことも考慮してみると、もう少し負担は小さいということになるのではないかということでございます。

 いずれにしてもそれでも上がっておりますし、また過渡期の調整コストのようなものはここではなかなか折り込めていないなということでありますので、そうなかなか過度に悲観になる必要はないというふうに考えられますけれども、やはりいろいろな対応が必要なのではないかということでございます。この辺などのについて、どのようにごらんになるかということでいろいろご議論いただきたいというふうに思います。

 以上です。

(座長) はい、ありがとうございました。では、ただいまの説明に対して何かご質問やらご意見ございましたら、手を挙げて。どなたからでも結構です。

 では、なければ私の方から。資料2-2の3ページ目、人口成長率が1%当たりが一番効用が高いという数字が出ていますが、これは、日本におけるオプティマムな人口成長率が1%であるというように主張してもいいと思われますか。

(事務局) これは、1%とゼロ%で余り大きな違いはないということと、それから2%の方も、2%はそのような合計特殊出生率に戻ることは考えられないのですけれども、ほとんど頭打ちになっております。

(座長) まあ、1%に近いですよね。

(事務局) ほとんどこの辺は変わらないのではないかというふうに考えた方が…。

(座長) でも、この程度の数字というのはそんなに変わらないですよ。生涯効用とか生涯消費とか計算したらね。だから、微妙な数字の違いは避けられませんが、1%から2%の間あたりを行けば、日本のオプティマム人口成長率ですよと言ってもいいんですかね。

(委員) いつかみたいにゴールデンルール乗っかったとすれば、経済成長率と資本の収益率が等しくなっているはずですよね。

(座長) 人口成長率も一緒でね。

(委員) それと、タイムプレファランスが外生的というモデルだとすると、タイムプレファランスと成長率の和が収益率に等しいのですから、1%がマキシマムですから。タイムプレファランスを幾らに見ているのか知りませんけれども……

(事務局) 2%でございます。

(委員) 2%。だから、1と2足すと3ぐらいになるでしょう。そうすると、利子率というのが3%に近いということになっているのではないでしょうか。

(事務局) そういうことになります。

(委員) というような気がしますが。

 だけど、そこでちょっとお伺いしたいのは、貯蓄率の方なんですけどね。貯蓄率は家計の貯蓄率ですか。

(事務局) これは、経済全体の貯蓄率です。

(委員) グロスだということは、ネットにすると幾らになってしまうのですか。ほとんどゼロに近い。

(事務局) 人口成長率がゼロ%のものはネットゼロになります。経済が全く停止したようなものになります。

(委員) ゼロになりますね。だから、非常に低い数字がでています。グロスの日本の貯蓄率はもうちょっと今は高い……。

(事務局) これはある意味では一つ非常に技術的な問題がありまして、TFPといいますか、生産性をプラスにすると常に成長している姿になってしまうので定常状態の水準が出てこない、成長率しか出てこないということのためです。

(委員) なるほど、それで。

(委員) これは定常状態ですよね。要するに、社会厚生をどう評価するかというときに、定常状態の世代も効用が高いのが本当にいいのかどうかという、最適成長の新古典派の理論ですね。要するに、今から最後までの世代の効用のある時間選好率が出ていて、また世代間の割引率が入ってくるとどんどん将来成長しても世代間で割り引きますから有限な値が発散しないでありまして、移行期を含めた形の最適な成長率は出るはずですが。その場合は、各世代の中で現在と将来をどういう具合に割り引くと同時に、世代間で今の世代が将来の世代に対してどのくらいディスカウントするかということは当然入ってきて、その2つは一般的には乖離すると。それも入れると話は違ってくるのですね。要するに、将来はどんどん良くなっていく、それに対してその効用をディスカウントすれば有限な値で合計できますから、それで最適な成長率が出てくるわけです。

(事務局) ここでは、次の世代の効用をどう評価するかというのは考慮していない、オミットしてしまっているのですが、強いて言えば、次の世代を育てるための費用と効用がバランスしていてそれでオフセットするというような前提といいますか、強いて言えばそういうことになっているわけです。世代重複モデルですから、みんな自分の生涯のことまでしか考えてないというのは、このモデルの一つの前提であります。

(委員) すいません、ちょっと質問なのですが。2ページの表で人口成長率がこれぐらいだったと、各年齢の構成がこういう値だという表が書かれておりますが。これはどのような前提というのを聞かせていただければ。

(事務局) これは定常状態なので全く一定ですから、単純に出てしまうものです。

(委員) 例えば、2%であっても、これを一見すると高い人口成長になると若い人が多くて高齢者は低いというようなそういう関係なのですが。例えば、高い人口成長率でたくさん生まれてたくさん亡くなれば……、いいのか。ちょっとすいません。たくさん生まれてたくさん亡くなれば0%ですよね。要するに、人口成長率というのはどれだけ入ってきてどれだけ出ていくかというそういう関係ですので。それで、そこら辺は余り関係がないのですか。どれだけ入ってくるか。要するに、入ってくるのと出ていくので人口成長を求めているということ。

(事務局) モデル上の寿命は78歳までになっていますが、人口構成の推定は現実の生存確率を求めまして、それから計算しています。ですから、80歳以上の比率がこうなっているというのはその辺の年齢層の現実の生存確率から求めています。

(委員) その値はどの人口成長率も一定ということになっているのですか。

(事務局) ええ、生存確率は一定です。

(委員) ちょっとよろしいですか。2ページの表を見てみると、はっきり言えば人口の増加と減少をちょうど対称して表示しているのですが、そのとき生涯所得だけがどうして急にマイナスになるとがたんと落ちる。ところが、ほかのところは大体対称で、その対称がちょっと違うのが恐らく上の人口比率の違いの程度である。そこがどういう……。

(事務局) これは人口成長率を等間隔で並べているわけですが、80歳以上人口比率というのはマイナスが大きくなるとどんどん増えていくと。どういうふうに並べればいいのかという問題がちょっとあるのかもしれません。その間隔をどうするかという問題。

(委員) なるほど。逆に言うと、さっきの亡くなる比率を考えたときに、もしそれだけミゼラブルなのであれば、例えば死亡率を高くすることで80歳以上の人口率を抑えるメカニズムがあれば、多分対称になるだろうと思うのですよ。

(座長) どうやって死亡率を高めるかとなると……

(委員) いやまあ、実際にはない袖は振れないから。

(委員) いや、だけど正直な話それは可能性があると思います。OECDのエコノミストのグループが推計したところによると、死ぬ2週間前の集中医療で生涯総医療費の3分の2近くを使うわけですよ。ですから……

(座長) そうですか。わかりました。

(委員) 日本では余り言われてないけれども、外国ではよく言われています。

(座長) 外国では当たり前ということですか……

(委員) 私、個人的にはそれは悪いことではない。つまり、はっきり言えば、ICUの中で2週間生き延びて何の幸せかと思います。

(委員) 前からアメリカの医療経済学者らはよく言っているけれども、高齢者医療費はコンサンプションかインベストメントであるのかという議論に通じると思う。

(座長) わかりました。

(委員) ここの資本装備の必要性の減少のところで、これは多分キャピタルワイドニングだけを考えてディープニングは考えてないのですか。

(事務局) それはどういう意味でしょうか。

(委員) キャピタルを、人口が増えればそれだけ増えなきゃいけない、ワイドニングの問題です。そうすると、資本がかなり余ってくれば一人当たりの投入量が増えてくるでしょう。それが今度はディープニングになってくると思うのですね。その辺をどういうふうにしてモデルの中に入れているのかという問題がある。

 それから、もう一つは、公的費用についてイクイヴァレンススケールみたいなことを使っているのですけれども、子供と高齢者ですか、いろいろなコストを、1ページにあるのですけれども。これ本当は人口モデルをやろうとしたならばもう少し考え方を変えないとまずいのではないか。というのは、出生率の増減というのは、ゲーリー・ベッカーもそうですけれども、クオリティーとクオンティテーのサブスティテューションがあります。だから、その辺の経済学の視点からいくと、本当はこれがコンスタントのマトリックスを使ってやるということに対しては少し抵抗を僕は覚えるのですけれども。

(事務局) 最初のキャピタルディープニング、こういうことだと思うのですが。2ページの資料で資本労働比率が下から3行目にありまして、人口成長率が高いほど資本労働比率は低い。人口がマイナスになれば資本労働比率は高まるということに、均衡はそうなっていきますので。今先生がおっしゃっていることがそういうことであれば、そういう形であらわれています。

(委員) 一応ディープニングになるわけですね。結果的には。一人当たり。

(事務局) ディープニングになります。

(委員) この表現がちょっと、1ページ目の文章を見ると、ワイドニングから出てくるベネフィットなのかなという感じがしたんで。

(事務局) それから、2番目の問題ですが、ここでは非常に費用を狭くとっておりまして、もう本当に必要最小限だという部分に限っているつもりであります。確かに、いろいろな高齢者や子供、その他消費のニーズというのはあって、例えば子供は親と一緒に住んでいるからイクイヴァレンス・スケールで消費が少なくて済むという議論もありますし、高齢者はもしプライバシーの問題があれば子供と一緒に住みたくなければ住宅の費用がかかる、そういった問題はあるのですが、それはもう個人の選択の問題だということにして割り切りまして、つまり、そこまでは高齢者の費用ではあるが子供は費用にならないというような計算はしておりません。まさに、必要最小限の部分、健康の問題ですとかそういうところだけを費用にしている。その他は個人の選択の自由だという割り切りをしております。

 ベッカーの問題も、質の問題まで政府が、個人の子供にどういう教育をさせるか、あるいは子供がどこまで望むかという問題もあると思いますけれども、そこまでは論じてはいない。ここでは考慮していない、そういうことだと思います。

(座長) 言われたことを私流に解釈すれば、子供の数が少なくなったら教育を親が一生懸命やるだろう、そうすると生産性の高い子供がいっぱい出てくる。したがって、余り言われているほど心配しなくてもいいと。

(委員) 可能性はありますね。逆に言うと、インカムが上がってきて、本当はテイストが変わるわけですよね、親のね。そこでゲーリー・ベッカー流に言うとシフトが起こって。それで、子供一人に対する投入量が非常に大きくなって、いわゆるクオリティーチャイルドがたくさん出てきて出生率が落ちるという。

(座長) 労働生産性が高くなって少子高齢化の問題もやや和らげる効果があると。

(委員) それは逆に結果的にそうなるかもしれない。ゲーリー・ベッカーはどちらかというと子供は消費財であるという前提のもとで彼は議論を展開しているわけですから。先生が言われたのは、その結果として働いたときに多分そっちの方がリターンが大きくなるだろうと、その可能性もありますけれども。

(総合計画局長) そういう何かエビデンスみたいなものはあるのですか。

(委員) ないです。ただ、いろいろな状況から言って、日本のデータもそうですけれども、よくウェイジのファンクションをはじくとリターンがエデュケーションによって明らかに違いますよね。アメリカ、イギリス、日本の3つの国を比較してみたらやはり同じようなリターンになっているので、やはりエデュケーションというのは効いてきていることは効いてきていると思いますけど。

(座長) そのあたりはやはり我々も多少頭に置いておいた方がいいですね、今の委員の言われた問題ね。今まで余り言われてなかったから。

(委員) 今のに関連するのですけれども。資料2-2の3ページ目の推計なのですけれども、これは非常におもしろいのですね。今のお話を聞いていて気になったのは、左から2列目の生涯効用というところに子育てから得られる効用というのは入っているのでしょうか。それと、消費の数字が書いてありますけれども、これは子育て費用というのは入っているのですか。子供が増えたら子育て費用は増えるのですけれども、その費用を消費とみなしたら消費が膨らむんですけどね。そうすると、効用がそのまま膨らんでしまう。

(事務局) ここでは生涯効用にはもともと入っていない。子育ての効用は入っていません。

(委員) では、効用は何によって決まるのですか、消費量ですか。

(事務局) 本人の消費によって。

(委員) じゃあ、子育て費用は。

(事務局) 子育て費用は明示的には入っていないです。例えば子供が多ければ多いほど楽しいとか、そういうことは何も考慮していないという意味では明示的に入っていません。

(委員) 生涯費用というのは個人の生涯費用という意味ですね。家族の生涯費用という意味ではないですね。

(事務局) 個人です。一人当たりの、全国の消費額の数字を一人当たりにしています。込みになっていると言えば込みになっています。

(委員) では、そうしますとこのモデルでは人口成長率を外から与えていらっしゃると思うのですけれども。成長率をどんどん大きくすると、家計に対しては子育て費用を要求しているわけですかね。そうすると、予算制約がその分小さくなるだろうと思うのですけど。

(事務局) そういうことになります。

(委員) そうすると、子供が増えると消費が落ちるような気がするのですね。

(事務局) ここでは、明示的に子供の費用、コストとしているのは先ほどの公教育に該当する部分と、それからあとはキャピタルの部分です。実際に子育て費用で金を使っているとしても、それは自分の消費のようになっていますから子供の効用とそこでバランスしているというふうに考えることができるのではないか。子供を育てていくことは楽しいことが効用に入っていて、しかし、もう一方では金もかかっていくということでバランスしています。割り切ればそういうことだということだと思うのです。

(委員) それは子供を育てることで効用を得るかどうか……

(事務局) ですから、費用というふうには計上していない。実際には費用で私立学校に行っていれば授業料を払っているけれども、それによって効用も得ているというふうに考えられるので、このモデルの中ではインプリジットに、そこでバランスしているということです。

(委員) この3ページのモデルは人口は78歳で死ぬというモデルですね。そうすると、その前の80までと1ページに書いてある……

(座長) 20歳から始まっているのですよ、生活年齢は。

(事務局) 20歳から78歳で、モデル上は20から78でやっています。

(委員) 78というのは20足して98で死ぬということですか。

(事務局) ではなくて、モデル上は78で、それを換算しているのです。実際は八十幾つまで生きているということですから。モデル上は20歳から78歳まで59期間ある。59期間というのを1年というふうにとるかどうかの問題ですけれども。実際は人生八十幾つまで生きる人を平均が78で死ぬというふうに変換して求めているということです。実際のところは78の寿命をもっと伸ばそうとしたらプログラム上ちょっとうまくいかなかったということがありまして、外で操作して八十幾つの人も実際には入っているような格好にシミュレーションしているのです。

(委員) そうすると、78のうちの70から78ぐらいまでの一番最後の時期のところが……

(事務局) ええ、もう77・78歳ぐらいの人は現実の世界だったら80、81ぐらいで考えておかしくないと、そういうことです。

(委員) それで、その1期間というのは1年よりももう少し伸ばして、そういうぐあいに考えればいいんですね。1期間1年とすると78で死ぬわけですね。だから、1年を1期間よりもう少し伸ばして考えたら……

(事務局) はい。確率的な問題ですから、平均が78になるように。

(委員) 平均がというのは、確率的にあれですか、生存期間を変えているのですか。

(事務局) ここでは、80歳以上の人の費用ということで、実際そこは生存確率で生存分布みたいなものを考慮して入れているわけですが。それは、引退時期が63で、63から78までが引退時期ですので、その間に割り振っているといいますか、外から入れていますので、費用の部分は。それは外から計算して入れていることでそういうことが可能になっている。中で内生的に計算しているのではないのです。

(座長) ちょっとわからない。

(委員) 要するに、「みなし」を行っているわけですね。

(事務局) 「みなし」です。完全な「みなし」で。費用は外から計算して入れていると。

(委員) わかりました。

(座長) 今までの計算だと、後期高齢者のものはフォローしてなかったけれども、今回は後期高齢者を入れると人口がマイナスになるともっと日本は深刻ですよということが基本的なメッセージと理解したらいいわけですねいうことです。

(事務局) そういうことになります。

(座長) そういうことですよね。入れ方がちょっとわからないけど。趣旨はわかりました。

(事務局) 現実の日本の人口で考えても、21世紀になると後期高齢者がどんどん増えていくという問題はあるわけですから、それに沿ってそういうシミュレーションをしてみたと。

(委員) 良くわからなかったのでお伺いしたいのですが、3ページ目の人口成長率マイナス1%というのが今に一番近いというお話でした。また人口成長率マイナス1%下では子供が一人増加したときの 984万円の現在価値があるというそういうご説明でした。これは1ページ目のところで見て、高齢者の場合には80歳以上だと政府が 340万円ぐらい負担していると。それに対して、子供だと 102万円しか負担していない、そういう数字を外挿することで、マイナス1%のところでは子供が一人増えると、政府の会計が助かって結果として984万の利益が上がる、という風に数字が出てくるのですか。

(事務局) 社会全体として 984万円ネットでプラスがあるということですから、 102万円を払って、あとは親が子育てで負担していく、それは親が自分で効用も得ながら負担していくということですからプラスマイナスゼロで。そのあと子供が大人になって稼ぎだして、最終的には、現役時代に高齢者の費用を負担する形でこの九百何十万円貢献するという解釈ができます。

(委員) こういった数字を新聞などに出すとすると、ああ、子供を一人産むと現況では984万円の利益が社会に対してあるのか、ならば政府から1人あたり984万円出してもいいのではないかと、そういう話にもなりえると思いますが、これはどこがおかしいですか。

(座長) あなたの言われたいことは、子供を一人増やすために政府 984万円負担してくださいという。

(委員) これを見るとそう読めて、そういう議論の根拠になるような気もしますけど。どういう仮定に基づいてこの 984万円というのは出ているのでしょうか。

(事務局) 一種の子供の外部効果が 984万円あるということです。

(委員) つまり、私的に子ども負担した人は子ども1人に対して 984万円分の外部効果を社会に生み出しているということですね。実際には子供を3人や4人産んだ人や、一方でゼロの人もいるわけですけれども。私的に産んだ人は 984万円分の価値を社会に対して……

(事務局) 社会に対して生み出しているということだと思います。子供が迷惑でなければですけれども。そういうことだと思います。

(委員) そういうふうに解釈して、これはよろしいのですか。

(委員) どうもよくわからない。本当にそうなんですか。

(座長) 何か意見があったらどうぞ。

(委員) だけど、失礼。だって、この計算にはあれですか、私も計算の仕方はわかりませんが、子供の将来のライフサイクルベースでいった社会のコスト便益というのが全部入っているのかどうかよくわかりませんね。

(委員) 例えば子供を4人産んだ人にはそれだけの税の還付をして、ゼロのところはうんと税金を取るとか、そういう議論の土台になり得る数字ですが、この数字はどういう仮定に基づいて出てきたもので、この推計にはどういう真実とどういう問題(バイアス)があるのでしょうか。

(事務局) 一つもし解釈するとすればですが、これはいろいろな解釈があると思いますけれども、それが正しいかどうかというのはまたいろいろあると思いますけれども、マイナス1%というのが現在の瞬間的な出生率にほぼ近い。そうすると、これ以上少子化が進んだ方が望ましいのかどうかという一つの基準というと強いのですけれども、そういう話にはなるのかなという気はします。確かに、厳密に言われますと親に少し還付するかどうかとかそういう話はありますが、生涯かかっての話なので、それだけ遠い話が一般に浸透するかどうかというとなかなか……。

(委員) これは言いかえると、政府負担のあり方において、子供には余りお金を出していないけれど、高齢者に対しては非常に出しているという現在の仕組みから来るのでしょうか。高齢者が高齢期・終末期に自分でケアできない場合は政府が面倒を見るけれども、子供を産むという行為は私的に自分で勝手にやることであって、各人が勝手にお金を出すと想定している。そういう社会的な制度があるゆえに、子供を一人産むということが国全体に、個人は随分私的負担をするわけですけれども、大きい外部効果を及ぼす。その外部効果は国民全体に行き渡るが、反対に言えば個人的に負担した親からは 1,000万円近いベネフィットが流出してしまう。そして子どもを生まなかった人は 1,000万円近いベネフィットを社会、つまり現行の税制及び社会保障制度から受けているという、そういう解釈と考えてよろしいものでしょうか。

(座長) だから、今世の中で結婚しない人、子供生まない人、ペナルティーをかけて税を取ってトランスファーせよという議論が出てくる証拠になるのではないですか。

(委員) そういうふうになると思いますけれども。これはこれでよろしいのでしょうか。

(座長) そういうことをもう言っている人がいますからね。なり得るかもしれませんね。

(委員) でも、なり得るとは思いますが、政策的な判断をする場合、評価基準に関して合意がないとですね。

(座長) それはおっしゃるとおりですよ。

(委員) 要するに評価基準のところが多少議論のまだ余地はあり得る。ここだけで、今……。これは一つの試算だという。もう少し。

(事務局) 子供を持つことの効用とその負担をどうするかという問題というのは、もうここではばっさりとバランスしているというふうにあっさりと割り切っていますけれども、その問題というのは非常にある意味でその辺も本当はよく考えないと今の問題……

(委員) いや、子育て以外、普通の消費でもお金を出してコストを払ってそれで効用を得ているわけですからね。その辺が全部子育てと同じようにチャラになっているはずなのです。だから、同じように扱わないといけない。

(座長) その方法論についてはいろいろ問題はありますけどね。一つのインプリケーションとしては先ほどお話が、きょうのお話で2つすごい政策提言が考えられる。一つは費用の大きい高齢者のあり方に焦点を当てる。それから、非婚者、子供を持たない人にはペナルティーをかけて税をとってトランスファーせえというものすごい、それはもう社会の同意が多分ないと思いますよ。モデル化したらこの2つの提案が出てくる可能性を秘めたすごいインプリケーレーションだと理解しましたけれどもね。やたら外には出せないと思いますけど。そんなこと言ったら……。

(委員) ちょっとよろしいですか。今のと幾らか関係あるのですけれども。要するに、家計が貯蓄をして、それからある種のベッカー流のタイム・マイヴィジョンというのですかね、ルーカスでもいいんですけれども。そして、例えば貯蓄でしたら国内の実物資本等を蓄積するのに使う。それから、部分的には教育投資、教育費というのは百何十万円か公費で幾らと出ていますけれども、教育投資にも使っているわけですよね。つまり、日本において貯蓄のかなりの部分は教育目的の割合があるわけですよね、現実に。そうすると、人的資本に対する投資に受けるというのがもちろんあって。それから、オープンエコノミーだと海外に出ていってしまうというのがあるわけですね。今日本は対外資産幾らなんて使うと、GDPで2割かそこら行っていると思うのですけれども。3通りぐらい貯蓄で言えば使い道があるわけですよね。

 今までこうやって、要するにヒューマンキャピタルの中身が大きく言えば2つあって。一つは、まさにアキュムレーションする方で教育投資をする。リターンがあとで戻ってくるという意味のヒューマンキャピタルへの投資。それから、リプレースメント・インベストメントと言うのですかね、つまり年取ってきたらいろいろ健康に気をつけなきゃいけないので維持費用がかかる。先ほどの2週間というのはまさに維持費用がプロヒビィティブになるという話ではないかと思うのですが。高齢化するとやはりメンテナンスの部分というのですか、健康維持するための人的資本を維持するための投資の割合が増えてくるのではないか。だから、最初の方のプレゼンテーションで子供が減ると子供にかかる費用が減る、そのかわり老人にかかる費用がふえるというようなそういう言い方なのですけど。人的資本という観点から見れば、メンテナンスとかあるいはリプレースメントのための投資の費用の割合が上がるというふうなことなんじゃないかと思うのですね。

 ただ、ヒューマンキャピタルへの投資というのは単にお金がかかるというだけじゃなくて、基本的にはもっと時間がかかるわけですよね。つまり、教育というのはレジャー、ここのモデルではレジャーはみんな外生的になっているわけなので、つまり、教育の方にアロケートするというのではないのですよね。だけど、これから考えることは、今もう既にそうだと思うけど、もうちょっと長く大学にいようとか、生涯通じてまたやってこようとか。このごろ大学の試験でも大分リタイアした人が受けにきて結構なのですが。そういうふうに時間の生涯を通じてのアロケーションが変わってくるのではないかと思うのですね。

 ですから、基本的なモデルの問題はやはり人的資本の扱いをどのくらいに考えるのかというのがやはり大きい問題なのではないかという気がするのですね。

ルーカスの1980年だったかな、論文で、どうしてお金はインドに流れないのかという、資本がですね。今アメリカだって資本が流入していますよね、ネットで。リッチな国に資本が流入してプアな国からキャピタルフライトのバックも含めると、実はさかさまになっている可能性もあるわけですね、その資本になるのに。ルーカスの答えは、人的資本のレベルが違う、蓄積ですね。アメリカの労働者はインドの労働者の5倍ぐらいの生産性を持っている。つまり、人的資本の蓄積の度合いがそのぐらい違う。そうすると、資本の方は海外から入ってくるのですね、ほかが同じだと。だから、その話はやはり人的資本の蓄積をどのくらいにするかということが、実はここで資本労働比率とかと計算してやっているのですけど、実はオープンエコノミーにすると資本の方はもっと自由に出たり入ったりしますから、気にすればいいのはもしかすると人的資本のところだけでいいのかもしれないということですね。ちょっと極端な言い方をしていますけれども。

(座長) でも、質問なのだけど、アメリカの今ハイテク、IT革命になっているのはインド人ですよ。だから、キャピタルだけではなくて……

(委員) だから、その問題はもう一つあって。

(座長) レーバーが移動していますよ。

(委員) レーバー移動しているし、移動しなくってもいいと思うのですよね。つまり、委託すればいいんで、インドに。バンガロールの労働者に委託すればいいんですよ。在宅勤務というのはそういうことなので。在宅勤務を国際化してやればそういうことになるわけですよね。だから、現実には直接投資というのをしなくたって契約さえすれば、その労働者と。人だっていらない。つまり、労働力が減ると言っているけど、減る部分は情報化でもって委託生産をどんどん海外に頼めばいいわけですよね。そうすると、労働力が減るとかあるいは資本が実物資本の蓄積に使われる資本が国内で調達できないとかというのは余り意味がない、というのは私の印象なんですけどね。重要なのは、人的資本の水準をどのくらい高くしていくかという、そこで高生産性の人的資本の非常に高い人材をそろえておけば、あとは何とか調達できる、こういう感じですけど。

(座長) わかりました。ヒューマンキャピタルの問題は確かに大事なので記憶に置きましょう。

 時間の関係で次のテーマに移らせてください。人口減少の対応への基本的方向ということに関して事務局からお話しいただいて、あとはフリートーキングの時間がございますので、そのときにまたお話ししたいと思います。では、お願いします。

(事務局) それでは、資料2-1の3ページに一覧表があります。これは人口減少への対応の方向と期待される効果ということで書いております。対応の方向としては、経済構造改革、これは必ずしも人口そのものとストレートに結びつくものではありませんが、いろいろな人口が変動することに伴うマイナスを小さくしてできるだけプラスを大きくするとか、そういったことを書いたものです。

 それから、社会のシステムというのは人口が増加した時代にできてきたわけですから、それがどうも減少型にまだ対応していないのではないか。これはさらに変化(高齢化)のテンポが速い日本の現状を考えるとより大きな影響を及ぼすとも思われます。また、年功序列的なシステムというのは日本の一つの特徴だったのですが、年齢によって役割が決まっているというこのシステムは各年齢のコーホートの波動があるといろいろな摩擦を生むのではないかということもあります。その事は世代間の公平の問題にもかかわるかもしれませんし、それから先ほどのシミュレーションではその問題ではないのですが、蓄積の問題にもかかわるかもしれません。また、年金の積立型制度のようなものが必要なのかどうかということもあります。それから、少子化も一つの大きなリスクだというふうに考えたときに、それに不利なシステムというのが必要なのだろうか。こういった原理原則的な問題があるということであります。

 効果の方で若干数値的な話も含めて申し上げます。これは、資源配分ということで産業構造転換等の円滑化というような話がここに載っておりますが。これは、こういう話がどこまで本当に問題になるのかどうかというのはわかりにくい面もあるのですが、人口が増えないということは、新規の労働力の供給、特に新卒が多くない事が挙げられます。そうした新卒の人たちが今までは新しい分野に張りつくという形で産業構造の転換が行われてきたわけですが、どうもそうではなくなってくる。若い人が減ってくるということになりますと、途中でいろいろ移動できるような仕組みを考えていかなければいけないということです。ご参考までに、7,8ページに、転職者は若い人が多いというような資料を載せております。

 それから、マクロ経済の効果で労働力の問題で、高齢者や女性の労働力率の上昇に関してですが、前回も女性の数字などを提示いたしましたが、例えばどのくらいのマグニチュードがあるのか、大きさが期待できるのかというふうに考えますと、9ページに60代の高齢者の増加というのがどのくらいであるか、ここにその数字があるのですが…、これについては、次回日本経済の実際の姿でシミュレーションなどをやってまたお示ししたいと考えています。

 それから、10ページに女性の数値があります。前回出したものから非自発的失業者相当分を引いたりしたものであります。これも次回において、実際に経済モデルに入れてシミュレーションをしたいということです。

 それから、11ページに若干これはご参考までにということなのですが、就業構造基本調査というのがありまして、就職を希望している人のデータがあるということで、これもどこまで強く希望しているのかどうかという問題もあるわけですが。こういう数字を上乗せしますと、いわゆるM字というのは埋まっているということで、その他もかなり高いところにありますので、こういったところが実際に就業すればそれなりに増えるということではないか。この辺なども前提にしまして、次回シミュレーションで出していきたいということであります。

 それから、いろいろな対応を考えるときに、実際に政府が制度的な対応をしたり、あるいは労使が雇用慣行といいますかそのようなものを考えていったりといろいろあるわけですけれども、政策的に行うものとしてはマーケットが実際にそういったものを市場の機能として人口減少のマイナス面のようなものがあらわれるのを和らげていくということも考えられるのではないか。事実ということで言えば、規制緩和という形でいろいろマーケットが働くようにするのは当然必要なわけですけれども、IT関連投資もどのくらい期待できるのだろうかというのがあるわけであります。TFPが非常にやはり重要ではないかということです。

 17ページ。これは人口そのものとは直接関係ありませんけれども、情報化投資で、これは経済白書に載せているものでありますが。日本はアメリカに比べるとIT投資の比率も余り大きくない。これはむしろこれからそういった余地があるのかもしれないということを示唆するのかもしれないというふうに言えるかもしれないと考えられます。

 18ページですが、よくIT関係で生産性パラドックスということも言われるわけですが、実際にこれまでもIT、通信機器を含めて電気機械関係というのは非常にコストダウンが大きくて、これを通じて経済全体の生産性を高めてきたという面もあって、こういった傾向というのは今後も続きいろいろ活用できるのではないか、そういったことであります。

 それから、国内への対応だけではなくて海外の話ということで、委員が先ほどおっしゃった話で、12ページにモデルのシミュレーションをやっております。これは世代重複モデルを回したということで、ここに資本がある程度スムーズに流れる、全く 100%ではないのですけれどもスムーズに流れるという想定になっておりまして、ケース3つほどありますが、対外純資産対GDP比を出しております。

(委員) これは4倍とか3倍とかそういうことですか。

(事務局) ええ、単位は倍です。50年間続いたらこういうことになってしまうということになるわけです。特に、海外のTFPが高い、海外の成長率が余り鈍化しないということになれば、モデルでやると姿はこの様になります。

 ただ、13ページですが、ケース1、2、3とありまして、日本のGNPの推移を出していますが、結局、長期で考えた場合、やはりTFPがどうなるかによって随分開きが出るということです。これを14ページと比較していただくと、14ページはケース2で対外純資産が、この3つのケースの中では大体真ん中だったと思いますが、一番少ない。それでも対外純資産がGDPの2倍半ぐらいまで行くというケースで、GDPとGNPはどのくらい乖離するかというのを若干見てみたものです。金利が大体最終的に3%ぐらいまで低下していくと、このぐらいの違いだと。GDPとGNPの違いは1割ちょっとです。十数%ぐらいの違い。国内でかせぐ分の1割ちょっとぐらいを海外でかせぐ、そのような感じになります。

 それから、15ページにあるような姿ですが、極端なケースの形ですが、仮にこういう海外との取り引きをしないで自分の国だけで対応するという一国経済になると、これは、海外とつながりを持った場合と持たない場合で何%消費支出が違うかというものをあらわしたものであります。二十何%ぐらい違うことがあり得る。

 それから、16ページに実際に日本の人口と世界の人口を入れてどうなるかというのを、モデルの上ですけれどもシミュレーションしてみたということです。世界の人口がまだ増え続けて若いわけで、そういったところに投資をすることを通じて消費水準を1割ぐらい高めに保つことができる、そのようなシミュレーションであります。

 大体海外も入れると少しこういうことがプラスである。ただ、先ほどのTFPの違いというのは非常に大きいので、やはり国内でいろいろ経済をしっかりさせていくということが最大の課題ではないか、そういうことでございます。

 私の説明は以上でございます。

(座長) はい、ありがとうございました。では、ただいまのご説明にご質問ご意見等ございましたら。

(委員) 要するに、前の資料2-2・3ページの最適な人口成長率の実現にどういった政策的な対応が必要かという答えで、子供が一人出生するとその外部性が九百万円とか何とか、額はともかくとしてあの評価が仮に正しい数字だとしますと、そのときに政策的にどう対応していくかという問題を考えると、あのモデルでは人口は外生ですから、いくら出産に外部性があって、出産者に対してトランスファーしたかといってもモデル上の人口は変わらないのです。その上で単なる所得再分配やっているだけなので。ここで問題になっているのは資源配分の問題ですから、その意味では所得再分配で少子化対策として、子供をたくさん持っている人にお金を出しても何も起こらない。それはよくプラスサムのお金でわんさか出るだけで人口は変わらないわけです。そこで、こうした少子化対策の効果を考えるのであれば、人口を内生的に決めるようなモデルにして、どのくらいそれに追加的にお金を出してくると人口がどれくらい増えるのか。そのコストとメリットがここで出てきた 900万円なら 900万円の仮にこれが正しい外部効果の数字だとすると、特にそれと比較して意味があるかどうかという話をしなければいけないという話だろうと思います。

 あくまでも外生的人口モデルで仮に最適な成長と違ったところに実際の解があるとしても、だからといってどれだけ少子化対策でお金を出すべきかというのはまた別な話であろうと思う。

そのときに、ここで仮に少子化対策をいくらしても全然効果がない、人口が外生だと基本的にこういうものだと思うのですけれども。そのときには次の対策として、少子化で極めて人口が最適なところから乖離しているのだけれども、それを補完するような、是正するような政策としてどういうものがあり得るかということで、出てきたように人口が減少しているときに社会保障とかいろいろな問題で対応はあると思うのですけれども。

 一つ考えられのは、要するに人口は減少していること自体が問題だったら、それと代替できるものをつくればいいということで、要するに人的な資本を高めるとか、労働節約的な技術進歩するとか。事実上人口を経済的な意味で労働力を増やす方向に行けば、これは人口自体が外生的に乖離していてもサイズ的に過少になったとしてもそれを埋めることができる。そういう意味では、そういった技術進歩とかあるいは人的資本を高めるような政策というのが代替的な政策としては一番、仮に少子化で少なすぎるというのが試算としてでてきたとした場合、それに対応することが出てくるのかなというそういう気がします。

(委員) 三つのコメントがあります。第一に、少子化の外部効果についてですが、効果があるかは別にして、外部性自体が評価できれば、それをオフセットする税金ないし補助金を出すのはアプローチとしては正しい。トランスファー自体が問題だというのはあるかもしれませんけれども、外部性のメジャメントができればそれをオフセットすればいいというのは政策の一般論としてある。

 それから、負の外部性の程度を小さくすることも考えて行くべきだと思います。このモデルだと介護などの高齢化の費用を全部国が面倒みるということになっています。プライパタイズすることによって外部性自体を減らすという政策の選択も重要だと思います。

 それから、私は全く財政の専門家ではないのですけれども、賦課方式の問題は単にクラウディングアウトだけでなくて、国が積立金を運用して、国が世代間のトランスファーをやることによる資源配分の存在します。積立方式にすれば資金の運用について民間が判断できるので、特に海外への資金運用というようなことも考えれば、資金のより有効な運用ができるではないかということが言えるのではないかなというふうに思います。

 それから、3番目ですけど、シミュレーションでは、オープニングアップをしても余り大きな影響がない結果となっていますが、これはコブ・タグラス関数を前提としているために、キャピタルレーバー・レシオが大きく変わってくることをかなり摩擦なく国内で吸収できるということなのでしょうか。もし、もっと資本と労働の代替性が低ければ金利はもっと下がってしまうでしょうし。従って、海外で資金が運用できることのメリットはもっと大きくなる。エンピリカルに資本と労働の代替性について1や、より高いか低いかというのはなかなか難しい問題ですけれども。シミュレーションにはかなり柔軟に資本と労働がサブスティテュートできるという前提があるがゆえに、海外に資本を輸出できることの効果が比較的小さいという結果になっているなという印象を受けました。以上です。

(事務局) 今の最後の点ですが、実際にGDPに対する対外純資産の比、実感からするとかなりあることはあります。ところが、実際にGDPとGNPの差はそんなにない。金利がもしかしたら若干が低いということもあるのかなと思うのですが。どうしても実感としては対外純資産のレベルというのはかなりのものではないかという、日本のような大きな国がこれだけ対外純資産を持つというのはかなりのもので。むしろ資本市場がスムーズすぎてこうなっているという気がしないでもない。

(委員) ただ、海外に投資できるかできないかでそれほど大きなウェルフェアの差がないということになっているのではないのですか。GDPとGNPの差が余り大きくないことを考えると、余り大きくないという感じがしますね。

(事務局) 実際に海外への投資の量への影響というのは人口よりも、一番大きいのは時間選好率がものすごく大きくて、それからTFPで。TFPと人口はそれほど変わらないかもしれませんけれども。時間選好率を少し変えたらぽんと違います。その違いを調整するのは一番効用に影響を与えて。人口だけですと、そんなに大きくは出ない。

(委員) 効用関数はどういう形なのですか。

(事務局) 通常の形で、相対的危険回避度型。

(委員) それで、代替の弾力性とか何かでかなり動くのではないかと思いますが。維持転換の代替の弾力性はいくらですか。

(事務局) 1に近い値です。

(委員) 1に近いのですか。そうすると……

(事務局) これはいろいろな文献を見ても幅がものすごく大きいのですが、モデル上は余り幅を大きくするといろいろな問題を起こしてしまって、コトリコフがやっているのは確か非常に小さいのですが、もっとものすごく大きい値を入れている人もいて、これは具体的に見えるものではないですからなかなか難しいですけれども。一番オーソドックスな1前後かなということで1を入れています。

(委員) 遺産は入れていますよね。遺産がなければ純粋ライフサイクルだと、多分ホリオカさんがやっているように高齢化すると貯蓄率はマイナスになるということですから。そうすると、こんなにどんどん高齢化が進んだときに対外資産を組み込むのが向こうへ出てくるような、ちょっと気になるのですけど。

(事務局) 人口が減少し続けるからこういうことが起きるのだと思いますが。実は、対GDP比で上がってくるといっても、GDPも下がってくる、TFPゼロの場合はですね。

 対外純資産を取り崩しながら対GDP比では上がっていくと。国が小さくなりながら対GDP比は上がっていく、こういう姿もTFPゼロの場合は出てきます。

(委員) よろしいでしょうか。

(座長) はい、どうぞ。積立型を主張されている方が、ご説明。

(委員) それを言おうかなと思ったのですが。人口が減少していくもとでの経済政策のタイプは2つあると思うのですよ。一つは、人口が減少していくのは仕方がないから、世の中の仕組みとか社会保障の仕組みを変えていきましょうというのがありますよね。もう一つは、今の仕組みはとりあえず置いておいて、人口は減少するというメカニズムをなるべく軽減していきましょうという、もっと言えば少子化対策みたいなものだと思うのですけど。どっちがいいかというのは、やはりコストベネフィットを勘案して比較しないといけないのではないかなと思うのです。

 ここでは、ネットで見た効用の変化が示されているというふうに仮におきますと、どういうことが言えるかというと。現状はどこに近いかというと、先ほどのお話なのか聞いているとマイナス 1.0%の、93.2というところだろうと思うのですね。今ここに我々がいるとして、どういうふうな政策が望ましいかというふうに考えたときに、先ほど2つの政策のタイプがあると申しましたけれども、人口をマイナス1からゼロに引き上げるような政策をしましょう。そのとき人々はどれだけハッピーになるかというと、95.6から93.2を引いた 2.4ポイントですよね。それはあきらめて、というのはなぜかというと、マイナス1からゼロに上げるというのは、出生率で言うと 1.32 から2.05に上げるというものすごいドラスティックな政策を必要としますので、それはちょっと無理だということで。例えば、賦課方式から積立にいきましょうということになると、人口の成長率がマイナス1のままで98.1にぽんと飛んでしまう。差し引きすると 4.9ポイントですよね。そうすると、どちらの政策の方が人々を幸せにするかというと、いろいろな社会保障を含めて今の仕組み、もっと言うと人口がある程度増加していくということを前提に組み上がっている仕組みを直す方が人々を、これは定常状態だけなので移行期にどういうふうになるかという問題は残っているので何とも言えないのですけれども。どちらかというと、仕組みを変えた方がいいのではないかなというふうな気が私はいたします。

 それと関連するのですけれども、出生率を1.32から2.05に上げるのは本当に大変なので、それを相殺するような政策のタイプとしては幾つか挙げられていますけれども。先ほどのお話にもありましたけれども。例えば女性の労働力率を上げるとか、あるいは高齢者の就業率を上げるというような政策が出ていますけれども。私はそういうふうな発想で、例えば女性の労働力率を上げるというのは余りいい発想ではないのではないかなというふうな気がします。男子も女子も、いろいろなライフスタイル・就業形態の選択肢があって働くことも今まで以上に簡単にできますよ、高齢者もそうなんですけど、そういう発想だったらいいんですけれども。人口が減っているからみんな働くようにというのはちょっとどうかなという気がいたします。

 以上です。

(座長) 今非常にいいお話と思って聞いていたのですが。じゃあ、人口を減らすのがそんなに困難だったら、いろいろな女性が働いたり教育投資したり何だかんだ大変なことより移民を入れたらどうですか。あっと言う間に解決するという案は、それは机上の話ですけどね。それに対してはどういうご意見ですか。

(委員) それはどちらがよろしいでしょうか。

(座長) 人口をふやすのは大変なコストがかかるというのはわかりますよ。いろいろな日本人の発想を全く変えなきゃいかんというのもようわかるけど。

(委員) 外国から人を入れるというのにもやはりコストがかかるのではないでしょうか、それと同じ。いろいろな社会的なコストとか、学校に外国人の子供たちをどういうふうに……

(座長) 非常にクオリタティブにコストかかるけれども、クオンタティブにはそんなにかからないですよ。

(委員) 来週ロサンジェルスのアメリカ人口会議へ行くのですけれども。そこで新しく出てくるのは、今度国連が初めて提唱するのですけれども、リプレースメントマイグレーションという言葉が出ているのですね。高齢化しているところにどれだけ外国人移動を投入していったら各国とも高齢化が止まるかという計算を全部してみようと。

(座長) ああ、そうですか。じゃあ、日本もリプレースしようと。

(委員) 多分近々国連がそれ全部推計出すと思います。

(座長) だから、日本もどれだけ移民を入れたらハッピーになるというような数字が出てくるというわけですか。

(委員) ハッピーというか高齢化を止められる数字の試算として。先ほど先生おっしゃっておられた、女性のという発想法よりも、人口が多いところかなりありますから、どこから入れるということは別なのでしょうけれども。

(座長) いや、それは確かに抵抗はものすごくありますよ。それは、日本の社会、あなた言われたように学校の問題とか犯罪の問題とかね、そういう問題を一応無視したら、今の話聞いていたらそういう案で……

(委員) 移民を入れると。

(座長) いやいや、これは私の個人的な意見なので発表する気はありませんが。

(委員) これは私の個人的な分析による結果ですが、先だって人口問題研究所の一番新しい平成9年実施の『第11回出生動向調査』を使って分析をした結果についてちょっとご紹介します。結婚して一番早く子供を産むのは専業主婦ではないのですね。結婚から出産までの期間が一番短いのは公務員の女性です。そして、一番遅いのは民間企業に勤務している女性です。これはサバイバル分析を用いて推計した結果です。また就業継続については、結婚、出産を通じた就業継続確率がもっとも高いのも女性の公務員です。つまり、就業継続の見込みがある場合には出産離職によって所得が落ちることもありませんから、そういう意味では期待所得水準が高いから子供を早く産む。またどうせ就業継続するのだったら若いうちにせっせと産もうということになる。だけれども、民間企業のように続けることが難しい状況があるのだったら稼げるうちに稼いでおいてたくさん貯めてからやめようという行動が実際に見られております。つまり、外国人労働力を入れるとか、そこまで話が跳ぶ前にやるべきことが私はたくさんあるというふうに思います。

 一方「子供が欲しいと」か「大事だ」とかそういう子どもを持つことに対する意識が落ちているかというと、ほとんど落ちてはいないのですね。落ちていないままに晩婚化が進み、結婚から出産までの時期が長くなっているわけで。これはやはり何か障害があるためだと考えるべきであって、突然に外国人労働力に話が飛ぶのは少しどうかと思います。

 さらに、もう一つこれは私どうしてもわからないことなのですが、公的年金について積立方式にするとうまくいくという話がありますけれども、これは20歳のときから寿命まで、例えば80歳くらいになるまで、60年間近い間の運用を考えるわけですよね。国内で運用したらうまくいかないにしても、海外で分散運用すればうまくいくという話を聞きます。しかし日本のような大国であり、かつ資本の供給量が世界最大のところが一斉に海外に運用をして、そして60年後も年金はきちんとうまく運用されているという、そういうことがあるでしょうか。一人だけがやるのだったら、うまくいくかもしれませんけれども、大国である日本の公的年金全体でやってうまくいくとは私には到底思えません。やはり、古今東西老人の面倒は若い人が見るというのが人間社会の根本……(笑)

 経済学というのはいろいろな単純化と仮定の上に成立していますから、モデル構築すれば上手く行くモデルを作ることができるかもしれませんが、ごく常識的に考えると、やはり産める社会をつくるという方がずっと大事なように私としては思います。

(座長) 今3つの代表的な意見が出たのですよね。こちらは年金の積立方式をやれ、こちらは女性が産めるような政策をやれ、私は外から移民を受け入れたらいいんではないかという3つの意見が出てきて。これは、どれを我々が取るかというのは難しいですけどね。対立する3つの意見から非常にみんなわかりやすいんじゃないですかね。それのコストとベネフィットが絶対あるわけでね。何かありますか、積立方式はやっていけんというのが、彼女の意見なのですが。

(委員)というか、よく考えてもどうしてもそんなにうまくいくとは思えないのですが。

 80歳になるまで、海外にうまく投資していけばどうにかなるというのは、私だったら信じがたいような。

(総合計画局長) 結局、いろいろな仕組みがあって提唱者はいいことばっかり言うけど、それぞれの仕組みはやはりそれぞれのメリットとデメリットがあり、負わなきゃいけないコストや、どこか別のところにあるところのリスクをなくせば、別のところでコストやリスクを負うことになります。そういうものの相対でどれを選ぶかということであって、どれかが恐らく一番いい仕組みでこれが最上なのだということではないのだろうと思うのですね。今の政府が準備している年金だってそれなりに正しいではないですか。やはりいろいろ中途半端な面もあるけれども、全く全否定するというようなことでもないと思います。おっしゃるような積立だっていい面はあるけれども、また一方で今おっしゃったような40年間も積み立て40年間さらにもらうとかという過程で何も起こらないということもない。バブルのときのことを考えると、必ず何かあると思ったりする。

 やはりいろいろなそういうメリット、デメリットというのをきちんと整理した上で、ではどれを選ぶかというのはなかなか難しい話だと思うのですけど。何か一方的にどっかの隅のメリットだけとらえてそれを強調してこれだというのもいかんなという気もしますけど。

(委員) 私もどっかで線引きをしないといけないと思っています。100%積立にすべきだとは言ってないのですけど。ではどこで線を引くかってやはりわからないのですね。

 一つは、これはちょっと年金の話と外れてしまうのですけど。やはりリスクをどういうふうにカバーするかということと、それから収益をどういうふうに見るかということ、その2本立てで決めないといけないと思うのですよ。積立の場合はリスクはやはりあるのですよ。ただ、でも賦課の方も、特に確定給付の場合リスクがなくなるかというとそうじゃなくて、例えば将来人口が予想以上に減るとか、出生率がゼロ台に落ちるとかそういうこともありまして。何かポートフォリオ選択みたいな感じで積立と賦課のベストの組み合わせを考えるというふうに思います。その話は年金だけと違って、少子化のもとでの経済政策のコンビネーションでもやはりベストの組み合わせというのがあると思いますので。

(座長) はい。ほかの方は今の3つの案に何かプレファランスございますか。

(委員) 方向としては、要するに今の年金は基本的には賦課に特化しているわけですね。ですから、移行するときに完全積立に移行するかどうかは別にして、もう少し積立的な要素を入れないと少子化、高齢化社会ではもたないという、そういう方向です。どこまで積立でいって、しかもそれを公的なところで一元的に積立方式でやるのがいいのかどうか、これはまた別な話だと思いますけれどもね。方向としては、多少積立的な要素を入れないとなかなかうまく受け皿もいかないし、いろいろな問題、世代間のつながりである得る、そういうことではないでしょうか。

(座長) 何かご意見ありますか。

(委員) これに関しては特にはないですけどね。今3つ挙げられたのですけど、人口流入ですか。アメリカは基本的には人口流入したらいいという考え方をどっかに持っているのではないかと思いますけど。高齢化、やはりアメリカもなるわけですけどね。

 それと、やはりわからないのが、物理的にどこまでマイグレーションしなくちゃいけないかというのが私はよくわからない。人が本当に動かないとすべての仕組みがうまくいかないのかですね。国境を越えて動いてないといけないのか。サービスの自由化なのかとも関係あるのですけど、サービスっていろいろな形態があり得るわけですよね。実際に物理的に人が動かなくてもいいサービスというのはあるわけですよね。

(座長) インドで働いてもらう、中国で働いてもらうと。

(委員) それから、教育費が負担が減るのではないかということに関しては、もし質的に教育をよくしようというのですか、今よりももっと質を高めるということであれば必ずしも減らないのかもしれないですよね。一人当たり倍ぐらい費用をかけるということがもしかすると必要ということがあるとすればですね。

(座長) 委員の意見としてもお聞きしたいのですが。あなたは産め産めいう政策がいいのか、彼のような政策がいいのか、入れた方がいいのか。

(委員) 少なくとも産みやすい環境づくりという手段はほとんど可能性はないと思いますね。先生に悪いんだけど。というのはなぜかというと、いろいろな国際比較をやってみると、今出生率が高いのはアメリカとイギリスですよ。要するに、不介入モデルで、余り家族政策もなく何もやらないところが強いのですね。民間の力でやっているところです。先進工業国で、1990年代から今合計特殊出生率が2を超えているのはアメリカだけですよ。これは移民だけではなくて合計特殊出生率だから国内で産む子供が、要するに婚外子が50%増加に寄与して、結婚内のものが50%寄与しているわけですよね。イギリスも積極的には打っているわけではないけれども、公的ではなく民間の保育サービスで支えている。逆に公的にやったスウェーデンというのが1990年の初頭はよかったのです。ところが、90年は 2.14もあったものが今はもう1.51です。要するに、5年間で0.6 合計特殊出生率が下がったわけですから、平等主義的な公的な政府介入型のモデルというのは躓いてしまうとえらく反動が大きい。

(委員) その前にちょっとお聞きしたいのは、その統計上ヒスパニックは白人扱いなのですか、それとも白人扱いではないのですか。

(委員) カラーの方に入ると思います。

(座長) 先生は意見ありますか。あなた余り発言しなかったけど。

(委員) 基本的には3つもということではなくて、多分どれかの組み合わせになるだろう。ただ言えることは、きょうのシミュレーションにもあったし、皆さんおっしゃっているけれども、要するにグローバルの中でどう解決していくかだけだと思うのですね。つまり、日本の中ですべてやろうというのでは解決にはならない。だから、さっき先生おっしゃったように、外との絡みをどうするか。あるいは、人口移民も基本的にそうですね。その視点を絶対に忘れないということだろうと思うのですね。

 だから、僕は最初にこの研究会のときも言いましたけれども、人口の減少というのは日本全国どこでも既に起こっているわけですよ。だから、それをグローバルな形でどういう具合に解決していくかというところが基本的には重要であって、そこの視点ですね。そうしたときに障害、はっきり言えば確かに今は国境という障害を設けているわけですけれども、それがいいことかどうかも含めて考えてみるというところが一番やってほしいなと思います。

(座長) 先生、何かないですか。あなたのご意見は。

(委員) 最後になってしまったのですけれども。3つの説というか、私も、今言われたように3つともの組み合わせだと思うのですけど。その中でも即効性があるのは、恐らく移民で、明日から開放してしてしまえば良いし、制度も国がそういうふうに決めれば即効性はあるけれども、持続するかどうかというのはちょっと疑問だと思いますね。

 その逆で、子供が増えるような社会をつくるという、いろいろ国によって違いがあるので困難があると思いますけれども。例えばコンビニに行くような感覚で子供をぽっと預けて、そういうのを国がやるか民間がやるか。民間でやっても結構需要があると思うので。例えばちょっときょう1日頼む、よろしくと、コンビニがそういうことを育児施設みたいなことをやれば需要があると思うので、そういうことを導入するとか。そういうことを通じて人口減少をくい止めるようなものも、即効性はないかもしれないのですがやっていくことが、いろいろと最初のお話にあったように、人口減少の経済へのプラスとマイナスという話があったのですが、これだけのことがあったとすればやはり人口減少というのはいろいろな意味で本質的な問題になり得ると思うので。即効性ももちろん重要なのですが、持続的な結果が重要なのはそういう人口を増やす。もし仮に日本国というのが今後維持していくのであれば、今委員が言われたようにグローバル化で国境の意味がなくなればまた話は違いますが、今後続くのであればそういうのも必要だと。その効果に応じて進めればいいというふうに思います。

(座長) 委員は。

(委員) 私は先生への質問ですけれども、アメリカの出生率が高いのは全くレッセフェールという面が本当なのか、それともむしろ女性を差別してはいけない政策の意図せざる結果というかですね。そういう面もあるのではないかという感じがするのですけど。それはいかがでしょうか。

(委員) それは結婚内の子供でしょうけれども、アメリカの出生数が増大したうち50%は婚外子です。こういった要するに価値観の変化というのは起こると意外と出生率が戻ります。80年代以前、白人の出生率は低かったのですから。

(委員) それは、子供の教育水準等で問題があるのでは……

(委員) それはいろいろ議論があるのですよ。それをまた言うと、幾つか……

(座長) まだタブーですね。

(委員) いや、実際にそういう論文はあります。アメリカンソシオロジカルレビューに出ています。IQが幾つか下がってくるのですが、その論文をパブリッシュするだけでも問題があったようです。(笑)

 ただ、一つだけ座長に申し上げたいのは、マイグレーションですね、外国人の場合に一つ我々が見落としている重大な欠陥がある。それは何か。アジアのほかの国ですが、その出生力の落ち方が日本と同じかそれ以上に、大変速い。

(座長) そうなんですか。じゃあ、来なさいと言っても余り……

(委員) 高齢化で。

(委員) だから、供給源はインドネシアぐらい……

(委員) いや、インドネシアも急激に下がりつつありますからね。タイ、それから韓国、中国、これらの国々の方が高齢化のテンポが、日本よりいずれも速いです。だから、そうすると2010年ぐらいで日本が外国から輸入したいときには、ほかの国でも労働力が必要になってくるわけですよ。そうすると、アジアの中でのちょっと奪い合いになってしまう。

(座長) いや、話は尽きませんが非常に皆さんの率直な政策提言なりディスカッションなりやって、非常にきょうは我々の研究会も意義あったと思います。いろいろあると思いますが、きょうはこのぐらいにしまして。何か意見がございましたら事務局なり私なりに言っていただければと思います。

 では、次の日程に関して事務局よりお願いします。

(事務局) 資料3をお配りしておりますが。次回、4月19日ということで、人口減少と日本経済、人口減少と産業・貿易ということでご議論いただきたいということで考えております。

 それから、5回目が5月10日の開催ということで、場所等につきましてはまた後日ご連絡申し上げます。

(座長) はい、では第3回の研究会、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

- 了 -